沙漠研究
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28 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • ~ティグライ州東部ゾーンキルテ-アウラエロ郡の南部の事例から~
    平田 昌弘, 小川 龍之介, Gebremedhin Birhane Gebreanenia, 竹中 浩一
    2018 年 28 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,エチオピア国ティグライ州高地を対象とし,1)近年の自然・社会環境の変化を鑑みながら,土地利用の変化,放牧パターン,家畜頭数の変化を把握し,2)家畜頭数の減少とその要因について分析するとともに,3)家畜頭数の減少が栄養摂取に負の影響を与えていることを明らかにすることを目的とした.帝政時代から社会主義時代を通じて,大部分の土地はいまだ家畜放牧や薪伐採が自由な自然草地・森林地であった.世帯毎にウシを十数頭から三十頭ほどを飼養し,農牧複合民は資金的にも栄養摂取的にも豊かであった.人口の増加により農耕地の不足が発生し,民主主義時代になって自然草地・森林地での農耕地開拓が進行することになり,自然草地・森林地が急速に縮小していった.また,放牧禁止・森林保護地,季節禁牧地の拡大により,一年を通じて放牧できる自然草地・森林地は更に縮小していった.そして,村落における学校教育が開始され,放牧を担当する牧童が不足するようになっていった.これらの結果から,世帯当たりの飼養家畜頭数は減少していった.家畜を数頭しか飼養できなくなったため,一年を通じて搾乳できず,乳製品を頻繁に摂取できなくなり,乳製品の栄養摂取への貢献度は限定的になっているのが現状となっている.利用可能な飼料資源量の減少と牧童の減少は,世帯当たりの家畜飼養頭数を少ないままに抑制し,今後ともティグライ州の農牧複合民の生業に対して大きな制限要因となり続けていくことであろう.
小特集 : 2017年度CADAL講演会
  • 石川 祐一
    2018 年 28 巻 1 号 p. 17-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本沙漠学会乾燥地農学分科会主催・一般社団法人日本ジビエ振興協会後援により,「ドローン・ロボットを用いた牧畜への新展開:熊対策からジビエまで,そして沙漠・草原へ」と題して行われた講演会の講演内容をまとめたものである.本講演会は2017年11月7日(火)に東京大学中島薫一郎記念ホールで行われた.講演会のプログラムは以下の通りである.13:00-13:05 開会の辞 吉川賢(日本沙漠学会会長) 13:05-13:50 ドローンを利用した放牧地の管理とその応用に向けた課題 (独) 国際農林水産業研究センター研究員・川村健介 13:50-14:35 小型UAV空撮・三次元化技術を用いた農村ランドスケープの復元 農研機構農村工学研究部門主任研究員・栗田英治 14:45-15:30 動物型ロボットの対動物アバターとしての可能性 ~人類と動物の間に立てるか,特にクマとの間に 秋田県立大学准教授・齋藤 敬 15:30-16:15 ジビエの現在と将来… 麻布大学名誉教授・押田敏雄 16:25-17:25 全体討論 モデレーター:石川祐一(分科会会長) 17:25-17:30 閉会の辞 石川祐一 地方における農業就労者の高齢化や減少に伴い,耕作放棄地が拡大している.耕作放棄地の拡大に伴い,クマやシカをはじめとする野生獣の被害が年々顕在化しており,超高齢化社会における危機の一つとして挙げられている.その解決法の一つとして捕獲された野生獣を地元で消費するジビエが近年注目を集めている.一方,ドローンをはじめとする小型無人航空機(UAV)が急速に普及し,多様な利用法が展開されている.ニュージーランドでは牧羊犬に代わり小型UAVを用いて羊を管理している例がある.日本国内でも砂丘地や放牧地の管理そして害獣対策に小型UAVを利用した研究がなされている.このような背景から講演会では4人の講師にご講演いただいた.聴講者はこれらの最新・在来技術に関係及び関心をもつ大学,公的機関,コンサルタント,資材会社,建設会社など多岐にわたった25名であり,様々な分野の第一線で活躍されている演者からの講演テーマ及び内容は好評であった.
  • 川村 健介, 林 志炫, 吉利 怜奈, 渡辺 也恭
    2018 年 28 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    近年,無人航空機(UAV)を用いたリモートセンシング技術を放牧地の管理へ活用する期待が高まりつつある.一方で,運用の安全性やデータ管理,画像データの解析方法など解決すべき課題が多く残されている.本稿では,放牧地におけるUAVの活用に向けて,(1)UAVの応用場面と必要なカメラ(センサ)の要件を整理し,(2)UAV技術の発展と放牧地での研究事例を紹介した後,(3)今後の課題について考察した.
  • 栗田 英治
    2018 年 28 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    農村地域におけるランドスケープ・リテラシーの再構築に資することを目的に,近年,技術的な進歩の著しい小型UAVによる空撮と写真からの三次元化技術を用いた農村ランドスケープの復元を試み,その可能性の検討をおこなった.棚田地域を対象に調査を実施し,小型UAV空撮・三次元化技術の有する適時性・高解像度・三次元という特徴は,ランドスケープ・リテラシーの補助に有効と考えられた.
  • -人類と動物の間に立てるか-
    齋藤 敬, 榊原 大祐, 草間 裕介
    2018 年 28 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    我々は鳥獣被害対策に向け,動物に対しコミュニケーションを行う棲み分けロボットの開発を行っている.開発中の多脚歩行ロボット「しろやぎ」は機械的リンク機構の積極活用によって,低コスト化可能なシンプルさと強度の高さを実現している.直近はクマ対策に適用可能な新型機の設計に向け,鳥獣被害対策に向けた外装と威嚇用伸縮機構を追加し,動物に提示する試験を行っており,本稿において現在までの取り組みの概略を述べる.
  • 押田 敏雄, 坂田 亮一
    2018 年 28 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/25
    ジャーナル フリー
    地方における農業就労者の高齢化や減少に伴い,耕作放棄地が拡大している.耕作放棄地の拡大に伴い,シカ,イノシシをはじめとする野生動物による農業被害や,時としてクマによる人的被害も年々顕在化している.鳥獣被害を静観するのではなく,鳥獣を適正な数に抑制する動きも見られ,各地で鳥獣対策が真剣に取り組まれるようになってきた.ここでは,野生鳥獣被害による農業被害などの実態,対策などの現状と将来のジビエの方向性について触れることとする.
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