沙漠研究
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27 巻 , 3 号
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原著論文
  • -ウズベキスタン共和国での適用事例-
    大西 純也, 池浦 弘, 山中 勇, 北村 義信, 藤巻 晴行
    2017 年 27 巻 3 号 p. 91-101
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

     乾燥地に位置する灌漑農地の一部では,過剰灌漑や排水不良を要因とした二次的塩類集積が進行しており,作物生産性の低下が深刻な問題となっている.そのような地域では節水が必要であるが,資金不足や機材の調達が困難であるため,効率的な灌漑法への移行が容易ではなく,依然として浸透損失の大きい畝間灌漑などが用いられている.

     畝間灌漑において農家が採用しやすい手法で節水することを目的に,Surge Flow法(以下,「SF法」)を簡素化した簡易Surge Flow法(以下,「簡易SF法」)を考案した.通常のSF法は,給水管やバルブを用いて4回程度に分けて間断的に給水することで節水効果を得るものであるが,簡易SF法は,通常の畝間灌漑(慣行法)を2回に分けて行うだけのものである.本研究では,簡易SF法を二次的塩類集積が顕著なウズベキスタン共和国(以下,「ウ国」)の灌漑農地に適用し,その節水効果を検証した.

     畝間湛水試験においては,給水1日経過後の土壌は,乾燥土壌に比べ湛水開始後60分間の積算浸透水量が9.5 mm減少し,また,ベーシックインテークレートも50%以下に低下した.

     慣行法と簡易SF法による畝間長100 m(勾配:1/800)での通水試験では,簡易SF法による第2回給水時の水足前進速度が増加したことによって,畝間末端に到達するまでの合計時間が簡易SF法で6,026秒(約100分)となり,慣行法の6,768秒(約113分)から742秒(約13分)短縮された.この結果,畝間への供給水量が約11%削減され,計画用水量を超える水量(損失水量)が約15%削減された.

     この結果から,簡易SF法は水管理に課題を抱える開発途上地域において有効な手法になるものと思われる.しかしながら,簡易SF法の節水効果は,ウ国フェルガナ州において,通常のSF法で得られた21%よりも小さかった.また,畝間の不陸による灌漑水の滞留は,簡易SF法の節水効果に影響を及ぼす恐れがある.このため,簡易SF法の現地適用に向けた今後の課題として,最適な畝間長,不陸による影響の抑制対策を検討する必要がある.

小特集原著論文:沙漠工学分科会第30回講演会
  • 田島 淳
    2017 年 27 巻 3 号 p. 103-104
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー
  • 松原 英治
    2017 年 27 巻 3 号 p. 105-109
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

     1980年代,ニジェールでは相次ぐ干ばつで沙漠化の危険にさらされていたが,圃場に残された地下部の残根からの萌芽を選定してアグロフォレストリー(AF)化を図る農家管理による自然再生(FMNR)が導入され,沙漠化防止につながった.AFは畑を立体的に利用するもので,バイオマス量が大きく,土壌侵食や風食の防止,土壌肥沃度や圃場内微気象の改善など多様な効果が得られる.AFによる沙漠化防止の事例を紹介し,安価で農家に受け入れやすいAF手法の方向性を展望する.

  • 花田 重義
    2017 年 27 巻 3 号 p. 111-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

     気候変動が進行する中で,最も脆弱性を示す地域はモンゴルをはじめとしたステップ気候帯と言われており,モンゴルは気候変動による影響を受け,草原の劣化,さらに砂漠化が進行し,現地の人々の生活の脅威となっている.現在,モンゴルでは多くの日本の団体が植林事業を実施しているが,多くの植林事業は家畜による食害のために,植樹作業が無駄になっている.持続可能な植林事業の推進には,地元住民の参加が不可欠である.収益を得るまで長い時間を要する植林事業には関心が薄く,経済的利益との組み合わせを計画する必要がある.本事業では従来無価値とされていた植物カラガナを有価物に転換し,TTM Aに基づいて,経済的インセンティブを引き出し,持続可能なアグロフォレストリーを導入し,遊牧民の行動変容を促す計画である.

  • 稲田 幸三
    2017 年 27 巻 3 号 p. 119-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/25
    ジャーナル フリー

     東日本大震災からの復旧・復興事業において,農地整備を行っている宮城県内の地区を中心に調査を行い,津波被災後の営農再開等に向けた合意形成の変遷や,復興の各段階における調整上の課題を抽出し,対応事例を整理することを試みた.一連の作業を通じ,国等が用意した各種支援策の活用状況・有効性等を検証した.各地区で復旧・復興に大きく寄与した施策は,①農業基盤に関する基礎データの整備,②地域コミュニティの維持・形成,③国や自治体からの目標の提示と,④国等からの補助金支援を含む外部からの資金,人材,ノウハウ等の導入があげられる.調査を通じ,地域活動を維持し,活発化していくことが,大災害への備えになることが示唆された.

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