実数値を直接出力できる特長を持つ簡略化ファジィ推論モデルは制御システムの分野にしばしば応用される.一般的には, ファジィルールの前件部のファジィ分割数を増加させることによって, 精度のより高いファジィ推論モデルの生成が可能である.しかしながら, データ配置に粗密があるような現実環境に近い教師データを用いた場合, データの疎な領域では, ファジィルールの生成に必要な情報が少ないため, その領域におけるファジィルールの推論誤差が大きくなり, 極端な場合にはそのファジィルールの生成もできないことがある.更に, ファジィ分割数を増加させても, 生成できないファジィルール数が一層増えることもあり, その領域で推論誤差を下げられないだけでなく, かえって上げることにもなりかねない.また, 教師データに外乱値を含む場合も, ファジィ分割数の増加にとともに, 外乱値に対して感度が強くなり, 推論誤差が大きくなる.本論文では, これらの問題を解決するために, 逐次移動窓を用いた多分割層ファジィ推論モデルを提案し, 単分割層ファジィ推論モデルの代表的手法である簡略化ファジィ推論モデルと多分割層ファジィ推論モデルの特性の論議を通じて, 多分割層ファジィルールの有効性を検証する.
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