本研究の目的は,温熱要因(27, 31, 34℃の3条件)と聴覚要因(暗騒音,風鈴の音の2条件)が色彩の注視行動に与える影響を明かにすることである。検証実験を行なった結果,以下のことが示された。1)温冷感が暑い側であるほど,暖色への注視回数率及び注視回数率及び注視時間率が低く,寒色への注視回数率及び注視時間率が高い傾向が見られた。これは坂本ら(2007)の報告と合致したものであった。2)高温不快域での検証を行なうことで,温冷感申告値『7(暑い)』での注視回数率及び注視時間率の知見を得た。3)風鈴の音は,暖色への注視回数率及び注視時間率が低く,寒色への注視回数率及び注視時間率が高い傾向をより顕著にさせるが,与える影響の大きさは温熱環境によって異なることが示唆された。
抄録全体を表示