近年の地球温暖化に伴う学校教育現場における夏季温熱環境の悪化は児童生徒の健康・精神面から危惧されている.この対策として安易に機械的な冷房設備に頼る前に,健康管理と省エネの観点から,地域の気象と建物特性に順応したサスティナブルな手法を検証することが大切である.本研究では,北九州地域の福岡県苅田町立の小中学校(8校)を取り上げ,2007年夏季における周辺と教室内の温熱環境を実測・解析した.すべての校舎は冷房設備のない鉄筋コンクリート造であり,その大きな熱容量に起因する蓄熱環境が観測された.次いでシミュレーションにより,夜間冷気導入が極めて有効であること,また最上階教室に対しては断熱材による屋上の遮熱対策が必須であること,さらに,すだれ,庇,Low-Eガラスなどの窓周辺対策との相乗効果が顕著であることを示し,改善提案を示した.
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