熱環境を設計および評価する上で,その指標の適用範囲と特性を把握することが重要となる。本論文では,人体と環境間の熱収支に基づくISOの2基準, ISO-7933(暑熱環境の指標)とISO-11079(寒冷環境の指標)について,生体工学的に検討した。その結果,ISO-7933に用いられる重回帰式の人体モデルが,必ずしも人体の温度状態と発汗の関係を表せる訳ではないことを確認し,発汗量を熱平衡の残差から予測するのではなく,生理状態に基づき予測するよう修正するべきであることを提示した。そして,人体への蓄熱および水分損失を評価基準とするISO-7933の概念に基づく温熱指標を作成する上で,人体への蓄熱と水分損失を同時生起として扱うことを提案した。ISO-11079では,全身冷却を対象とする必要着衣量IREQと屋外における局所冷却を対象とする風冷指数WCIの生体工学的解釈の類似性を報告し, ISO-11079におけるWCIの使用目的から, WCIの皮膚温を局所的に不快または危険となる閾値で与えるべきことを示した。
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