上來縷述するところを、要約すれば、次の如し。
(一) 作庭形式上より、日本庭園を分つて、整形・寫景・寫意の三類に大別する。但、茲に云ふ整形庭園は、西洋在來のものとは、大いに趣を異にし、僅かに庭園の地割に於て、中軸の左右に、地區的對象を成すに過ぎない。
(二) 寫景庭園は、日本に於ける庭園の、主流を成すものにして、筆者の所謂、林泉・縮景・借景・路地の諸庭園、之に屬す。庭上の自然の再現に關しては、東・西其の理念を異にすと難も、西洋在來の風景庭園、略之に當る。
(三) 寫意庭園は、日本に於てのみ見らるるものにして、庭上に使用せられたる、作庭資料の示現する景觀により、引き起されたる聯想が、觀者を、形而上の或る境地に到達せしむる様、意匠工夫せられたる庭園である。所謂、枯山水庭園・吉鮮庭園は、是が適例として擧げらるる。
(四) 寫意庭園は、其の意匠・手法の非寫實的・非羅列的・非読明的なるを、特徴とす。從而、此の種庭園を觀賞するには、觀者が、よぐ作者の意圖するところを理解し、其の庭園の持つ風格と、形而上の意義と、而して因て來るところの面白さとを、味得し得る丈の藝術的素養を、備へて居らなければならない。
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