経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
17 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 山本 伸幸
    2009 年17 巻4 号 p. 1-12
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    製造業における需給業務の改善は議論されているが適切な対応策は見つかっていない.本研究で対象としたコピー機の製造業における消耗品の需給も状況は同じであり,日々の都度的対応に多くの時間を費やしている.物流・消費データが消耗品需給に役立つ経営情報として活用できていないのが実態である.本研究では,供給チェーンの過程や分析よりも,経営情報である顧客への物流データと顧客での消費データから顧客需要を推定できないかを考え,情報が少なく需要予測が難しい導入期において消耗品の需要推定ができる需給モデルを提案し,経営情報システムの一例として需要推定シミュレータを提案し,需給業務を改善することを目的とする.

    この需給モデルを実例データで検証して13%の在庫削減ができることと,需要推定シミュレータとして実装することで経営情報を活用した業務改善ができることを示した.

  • 渡部 和雄, 岩崎 邦彦
    2009 年17 巻4 号 p. 13-36
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    最近,新たな電子マネーが続々と登場し,発行枚数が急増している.本論文の目的は利便性が高いとされる「非接触ICカード型電子マネー」の普及課題を明らかにすることである.そのため,消費者の電子マネーに対する意識や利用意向の差異について7つの仮説を立てて,消費者アンケート調査を行い,分析した.その結果,主に以下のことが判明した.電子マネー利用者は交通機関利便性を高く評価しているが,非利用者は電子マネーの不便さ,不安感,利用場所の問題を懸念していること,利用者は今後も電子マネーを利用する意向が強いこと,流通系電子マネー利用者は買い物利便性を高く評価していること,地域により交通系電子マネー利用率や利用意向に大きな差があることなどである.電子マネーに対する消費者の意識と利用意向について共分散構造分析を行った結果,利用意向には交通機関利便性,不安感,利用場所の問題の3つの潜在変数が有意に影響していることが明らかとなった.最後に仮説検証とモデル化の結果をもとに,セキュリティへの不安や利用機会不足の解消など,電子マネー普及のための課題をまとめた.

  • 向日 恒喜
    2009 年17 巻4 号 p. 37-55
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,企業組織のソーシャル・キャピタルと知識創造プロセスとの関係を明らかにすることを目的とし,ソーシャル・キャピタルの議論における結束型ソーシャル・キャピタルと橋渡し型ソーシャル・キャピタルの概念にもとづき,人間関係やコミュニケーション形態とSECIモデルの各プロセスとの関係についてアンケートを用いて分析する.ネットリサーチ業者を通して,企業に勤務している1700人のサンプルに対してアンケート調査を実施し,上記の関係について分析した結果,以下のことが明らかにされた.

    1)共同化においては社内の人間関係だけで大きな効果が得られるが,表出化,連結化,内面化においては社内とともに社外の人間関係が加わることで大きな効果が得られる.

    2)共同化,連結化,内面化においては対面コミュニケーションが電子コミュニケーションよりも大きな影響を与え,表出化では電子が対面と同等の影響を与える.

    3)個人の一般的信頼が知識創造を直接活性化させるとともに,一般的信頼にもとづいた関係が知識創造を活性化させる.

  • 中野 広基, 熊谷 敏
    2009 年17 巻4 号 p. 57-78
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    TOC(Theory of Constraints)思考プロセスは,問題の因果関係に着目した問題解決手法である.その中で対立解消図は問題を解決するために重要であるが,対立解消の基準が明確化されておらず,解消の方法も複雑な論理検証を必要とする.そのため,対立解消図を使ってブレークスルー案を創出することが非常に難解である.本稿では,対立問題の前提条件を主張し,意思決定を代表する個人,または組織を「プレイヤー」と呼び,プレイヤーの利得を定義することで定量的な評価尺度によりブレークスルー案を評価する方法と手順としてCRD-Model構築ステップを提案する.この手法により,各プレイヤーはより合理的な解を得られ,それにより利得を改善できる.この解は,プレイヤー双方が納得できる妥結解となる.また,対立解消法により対立問題における有効な解決策を考案できるかを,ロングテール現象下におけるコンテンツビジネスの対立問題を事例に検証した.

  • 佐々木 宏
    2009 年17 巻4 号 p. 79-98
    発行日: 2009/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,一般事業会社からITサービス産業のヒエラルキーに連なる受発注関係をアウトソーシングの連鎖と捉え,その効率性を検証するところにある.一般事業会社が短期的にコスト面で有利とみてアウトソーシングを実施しても,ITサービス産業へのロックインによって機会主義的行動の脅威にさらされ,長期的にはITベンダー側が有利になってしまうことが,先行研究で明らかにされている.一方で,デフレ圧力や熾烈な受注競争により,IT関連企業に対するコスト削減要求が強まっており,業界が自ら無駄を排除していかなければ生き残れないという現実もある.そうした状況で,ITサービス産業のヒエラルキーは「効率化」に向かうのか,あるいはサプライヤー側に有利な「搾取」が起きているのか.ここに検証すべき課題がある.実証に際しては,売上高人件費率と従業員1人当たり売上高の関係に着目したツール(PRHS × LCPS曲線)を提案する.検証の結果,ヒエラルキーは3階層程度でマージンが確保できなくなり,最下層企業への効率化圧力が強まっていく傾向が把握できた.

feedback
Top