経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
13 巻, 3 号
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「技術経営アプローチと経営情報学」特集号
招待論文
論文
  • 石田 勇矢, 日下 泰夫
    2004 年13 巻3 号 p. 9-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    近年,企業が必要とする全ての技術を自社単独で開発することは非常に困難であり,製品開発において外部の技術を積極的に導入することが重要な課題となりつつある。しかしながら,このような戦略的な意思決定に関する定量的な研究はほとんど行われていない。本研究では,製品開発における技術導入代替案選択の問題に定量的な手法を導入することによって,技術導入選択に対する分析・考察を試みる。その狙いは,新規なモデルや新技法を提案することにあるのではなく,技術導入という戦略的な意思決定が既存のモデルの適用によって定量的に評価可能であること,さらに,分析を通じて技術導入に関する重要な洞察が得られることを明らかにすることにある。具体的には,コア技術を除く各要素技術に対して「自社開発」と「技術導入」の代替案を想定し,それらを組み合わせて選択する製品開発の問題を考える。この問題に対して,日下らのプロトタイプモデルを適用し,定式化する。次いで,最適解の効率的な解法として本研究で使用される分枝限定法の概要を説明する。最後に,製品開発における技術導入の効果と重要性を定量的かつ視覚的に分析する。すなわち,最適パフォーマンスに対する技術導入代替案のパフォーマンスの割合を示す「技術導入指数」を定義し,その挙動をコスト制約,時間制約,コンカレント度という3つの要因との関連で考察する。想定され得る6つのケースに対する数値解析の結果,技術導入が効果的となる諸状況がこれらの諸要因によって説明づけられることを明らかにした。

  • 犬塚 篤
    2004 年13 巻3 号 p. 27-37
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    社内技術の有機的活用の問題は,技術経営の分野における重大な関心事のひとつである.本論文では,顧客ニーズの把握,知識活用,知識創造に関わる組織体制の影響を,情報関連企業における質問票調査をもとに分析した.その結果,互恵主義の重要性,ITを用いた知識データベースの限定的効果などが示された.同時に環境条件による影響から,顧客ニーズの粘着性,知識の局所化,組織成員の技術志向を見出した.以上の結果をもとに,技術経営を考える上で留意すべき点について言及した.

  • 清野 武寿, 丹羽 清
    2004 年13 巻3 号 p. 39-55
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    我が国の製造業における技術経営上の課題の一つは,新製品を生み出す設計技術部門と従来の強みであった生産技術を有する生産技術部門との効果的な連携のマネジメントの実現である。これは両部門の連携強化が,製造業の競争力強化の重要要素である製品の性能・機能向上,品質向上,コスト低減,期間短縮の実現に必須となるからである。本論文では,今日の日本の製造業が今後も競争力を強化するために,設計技術部門と生産技術部門の連携に着目した「生産技術マネジメント」の方法を提案することを目的とする。設計技術部門と生産技術部門の連携の課題を解決した先進的事例を分析することによって,両者の連携の課題である「情報伝達の欠如」と「活動の柔軟性の欠如」を解決するための生産技術マネジメントの施策を考察する。さらに連携の成功事例を応用展開する方法として,両者の連携の基本モデルを定義し,その結合によって連携の連鎖を表現することで連携の真の成功要因を解明する方法を実際の事例とともに提案する。

  • キャタン ジョンソン, 宮崎 久美子
    2004 年13 巻3 号 p. 57-77
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    顧客数が少ない後発者であるKDDIの方が3Gモバイルサービスの顧客獲得において,先発者であるNTTドコモに比べて成功している。本稿ではKDDIやドコモを対象とし,3Gモバイルの普及要因について実証的に分析する。主な普及要因として,オペレーターの経営戦略,バックワードコンパティビリティーやスタンダードに関する技術戦略,顧客の採用形態などが上げられる。分析データは携帯電話産業に関わる産官学から成るキーパーソンのインタビュー,学生を対象としたアンケート調査,その他の統計データ等3種類のデータを利用した。3Gモバイルの普及において,バックワードコンパティビリティー,スタンダードの選択,スタンダード切り替えのタイミングなどに関するオペレーター技術戦略の重要性が明らかになった。

  • 石黒 周
    2004 年13 巻3 号 p. 79-95
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    従来,国家主導で行われた長期的で大型の研究プロジェクトに対してプロジェクトの推進にネガティブな影響を与える10の要因(NKF)が指摘されている。本報告では,このNKFを抑制しうるNPO型分散研究システムと呼ぶ新たな研究システムを,技術経営の重要な課題である日本型イノベーションシステムのひとつとして提案する。この研究システムは,NPOが①研究目標(研究のゴール)と使命を提示,②研究者相互の国際的な競争と連携促進のための場とルールの設定,③研究成果を活用した産学官セクターとの協働事業と市民参加型事業の企画・実施,の3つの役割を担い,この中核NPOと自律分散的な産学官の研究組織・研究者がネットワークされ,研究ゴールを目指す研究システムである。ビジョンドリブン性,競争と淘汰性,オープン性,協働性,自律分散性,低制約性の6つの組織特性によってNKFを抑制することが可能である。あわせて,この研究システムにおいて研究の活性化や実用化に寄与する9つのマネジメント施策を抽出し,RoboCupという実例の中でその効果を確認した。

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