経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
13 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 高原 康彦, 齋藤 敏雄
    2005 年13 巻4 号 p. 1-16
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本論文では,問題解決システムの設計と実装を,システム論に基づく方法論(MGSTアプローチと呼んでいる)に従って行う場合のユーザモデル構築について考察する。この方法論は,定義から原理的には全ての問題が対象となり,またEUD(End User Development)を念頭に置いたレベルではかなりの問題が解けているという意味で,汎用的方法論である。

    はじめに,本論文の狙いと位置付けを具体的に明示するために,方法論の概要とそれを適用する対象問題の分類を説明する。この方法論では,対象とする問題をユーザモデルと呼ぶ定式化された形で表現する。ある問題のクラスに対しては,ユーザモデルを導出する操作的方法が存在するが,他のクラスには操作的方法が存在しなかった。本論文では,操作的方法が存在しないクラスに対し,goal orderとcompleteness orderという二つの概念を導入し,ユーザモデルを導出する方法を示す。対象とするクラスは4つのサブクラスに分けられるが,最後に,その各々に対し例題をあげて適用の仕方を示す。

  • 鈴木 勘一郎, 森 健
    2005 年13 巻4 号 p. 17-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    「組織IQ」とは,組織機能の効率や知識創造の効果を数量化する手法である。組織IQは企業組織を一種の大きな情報システムと捉え,その組織対応のプロセスに「外部情報認識」「内部知識発信」「効果的意思決定機構」「組織フォーカス」「継続革新」の5原則が存在することを仮定している。そのフレ一ムワークを用いて,5原則間の因果関係に関わる仮説を検証した。用いたデータは2000年度に旧通商産業省が行なった日米国際競争力の比較プロジェクトのアンケート調査によるもので,日本のハイテク企業14社17事業部を対象に実施された。結果は(意思決定を除く)4原則の一連の因果関係を持ったモデルと,効果的な意思決定への部分パスを組み込んだモデルの有意性が示された。それによって①観測変数に基づく因子として組織IQの各原則の存在が確認されると共に,②5原則の間に情報系から資源系へと至る因果関係が検証された。すなわち資源を有効に活用するためには,情報感度や知識共有の向上が前提となる。また効率的な意思決定が実現されるためには,情報系原則のみならず資源系原則がうまく機能することが必要条件となることが示唆される。

  • 高井 文子
    2005 年13 巻4 号 p. 35-51
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    オンラインビジネスが急速に広まるにつれて,当該分野を対象とした数多くの研究が行われるようになっている。しかし,具体的な業界やビジネスを取り上げ,そこでの成功要因を定量的に分析した研究はほとんど存在しない。そこで本稿では,急成長が進むオンラインビジネスのなかでも,いちはやくモルタル市場からオンライン市場へのシフトが進んだ証券業界を取り上げ,どのような要因が有力専業企業のパフォーマンスに影響を与えるのかという点に関して,定量的な分析を行った。その結果,(1)先行者の優位性が存在すること,(2)コア顧客が限られているため,口座数を増やすだけではパフォーマンスが向上しないという「規模の不経済」が働いていること,の2点が明らかになった。

  • 小橋 麗香
    2005 年13 巻4 号 p. 53-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    ITシステムの発展により,企業が得られる情報は質量ともに大きく変化した。しかしながらそこから望ましい効果をあげられていない企業も多い。鍵となるのは,組織が情報を価値へ転換していけるかどうかである。本論では,「情報の収集・分類・意味抽出」の各段階からなる,組織の情報活用プロセスに焦点をあわせた。

    企業の主要ITシステムの一つである自社HPのアクセス数とシステム導入の効果の相関関係に対して,組織的情報活用プロセスが媒介変数として影響を与えていた。プロセス全体を通して,能動的な情報活用がアクセス数と効果の結びつき方に好影響を与える。しかし,いくつかの通説とは異なる結果も導き出された。第一に,プロセス前半での受動的な情報活用も,プロセス後半での能動的な情報活用と組み合わされることで有効となる。第二に,取引企業を含めたオープンな情報共有は,効果の内容によっては有効ではない。情報活用プロセスの各段階での方向性と求める効果内容を組み合わせて議論することが必要なのである。

  • 角埜 恭央, 椿 広計
    2005 年13 巻4 号 p. 69-86
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は企業内のIT経営に関する因果構造の解明である。すなわちIT(情報技術)による経営価値の創造を促進または抑制する上で企業の内部にはどのような構成要素が存在するか,それらの構成要素の間にはどのような因果構造が想定されるかについて考察する。この目的に対して仮説検証と探索的な方法を用いた。まず先行研究と実務家へのインタビューにより構造モデルと初期仮説を構築した。これを基に日本の大手企業に対するIT経営度調査をおこなった。つぎに調査に回答した509社から得たデータに基づき仮説検証をおこなった。最終的には探索的な方法を援用して当てはまりの良い構造モデルへと修正した。分析の結果,IT化に関する経営トップの意識と行動が企業のIT化の仕組み(経営とITの連携,IT構築力,将来への備え)に影響し,IT投資・装備と相まってITによる経営効果を創造する因果構造が明らかとなった。さらにこの因果構造は企業の規模や業種の差異によらず安定的であることが判明した。

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