本研究では,東京証券市場を分析対象として,2003年から2014年までの12年間のニュースデータを用いて,テキスト分析によってニュース記事のトーンを計量し,個別銘柄の株式リターンに対する予測力の検証を行った.さらに,ニュース記事の本文とテキストの情報量の少ないニュース記事のヘッドラインとの両方を利用し,予測力の検証について比較も併せて行った.検証の結果,ニュース記事のトーンは1営業後の株式リターンに対しての高い予測力を持つことが示された.とりわけ,本研究の分析方法ではニュース記事の本文よりもヘッドラインから得られたトーンの方がより予測力が高いことが示された.さらに,ニュース記事のヘッドラインのトーンは,取引コストを加味してもなお予測力が残ることが示された.一方で,2営業日後や3営業日後の株式リターンに対しては予測力が低いことが示された.
本稿は,2サイドプラットフォーム論の中核的概念であるクロスサイドネットワーク効果(CSNW効果)における萎縮効果とその時系列変化について論じる.最初に,ビデオゲーム産業における間接的ネットワーク効果の実証研究および直接的ネットワーク効果における萎縮効果,そして2サイド市場モデルのシミュレーションに関する先行研究を整理する.次にシステムダイナミックスを用いて,コンシューマゲーム産業の2サイド市場モデルを構築する.家庭用ゲーム機3事例のシミュレーション結果から,CSNW効果が萎縮効果を含まない場合,過渡的あるいは定常的な萎縮効果を含む場合の3分類と,業者側とユーザー側における追越型あるいは定常型のCSNW効果の2分類の組み合わせた類型化とその特性を記述する.最後に事例調査から得られた特徴的な事象とシミュレーション結果の対応づけによる,プラットフォーム事業者の経営方策に関する仮説提示を試みる.