経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
9 巻, 4 号
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論文
  • 小高 哲也
    2001 年9 巻4 号 p. 1-17
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    近年の不確実性の高い市場環境においては,経営のスピードと柔軟性が企業の勝ち残りの最も重要な条件である。そして,企業の情報システム部門は,このような経営の要求に応えるために,情報システムの設計開発を効率化し,それをできる限りフレキシブルな状態で維持しなければならない。

    設計開発のモデリングとその具体的表現を与えるデザインラショナーレは,製品やシステムの仕様が決定される過程とその背景を図的に表現・記録するための方法論である。企業の情報システム部門はこれを導入し,設計開発プロセスにおける議論の変遷と,意思決定局面における「何故」を組織として共有することにより,手戻り等の非効率となる問題の検出や情報システムの高い保守・拡張性を維持することが可能になる。

    しかし,設計開発プロセスを効率化するためのツールとしてデザインラショナーレを見た場合,仕様の決定に至る背景だけでなく,議論の変遷を多面的な角度から観察することがより効果的である。

    本稿では,まず,これらの視点のうち「議論の行われた時期」,「議論の種類」,「議論の権威」について着目し,それぞれについて設計開発プロセスのマネージメントに有効な分類定義を与える。そして,これらの分類をもとに,“設計空間遷移モデル”と呼ぶモデルとそれに基づくデザインラショナーレを提案する。また,事例の分析を行うことによりその有効性を検証する。

  • 市川 照久, 辻 秀一, 笠原 久美雄, 片木 孝至
    2001 年9 巻4 号 p. 19-32
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    企業内研究所における研究開発において,近年,その経済効果や投資効果がますます大きく期待されるようになっている。このような経営からの要求と技術の特質を両立するためには,的確な研究開発の評価法を確立し,これにもとづく研究管理を実施することが大変重要である。本論文では,企業の研究所における日常の研究管理に用いる知的生産性の評価法について提案し,筆者らが所属する総合研究所に適用することにより,知的生産性評価法とこれにもとづく研究管理方式の妥当性および有効性を実証した。本評価法で採用した指標は,研究所の日常活動の中から得られる客観的で定量的なデータである特許,社内技術資料,社外発表,社外論文などの知的成果物の件数から算出するものである。

  • 久島 道夫
    2001 年9 巻4 号 p. 33-52
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,管理者の情報システム活用の有効性について論述する。管理者の行動や意識の諸側面の中でも,ワークコミットメント,リーダーシップ行動に注目,これらと情報システム活用,パフォーマンスからなる分析モデルを構築し,アンケートによる企業調査に基づき構成概念間の因果関係の解明を試みた。その結果,組織活力を高めるためには,管理者のリーダーシップ行動のうち「部下育成」と「垂直連動」行動が有効であり,「全社事業状況把握」と「情報交換」のための情報システム活用が「部下育成」と「垂直連動」行動を高めていること,管理者自身のパフォーマンスを高めるには,管理者のリーダーシップ行動のうち「計画遂行」行動が有効であり,パフォーマンスが高い管理者は「社外情報把握」のために情報システムを効果的に活用していることが確認された。

  • 西岡 久充, 宇井 徹雄
    2001 年9 巻4 号 p. 53-69
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    本論文では,GSSにおける評価懸念とただ乗りという2つのプロセスロスの軽減において,個人の識別化に関する相反する要求をうまく処理することができると考えられるPen Nameを導入する.そして,非同期/分散環境でのアイデア生成プロセスを支援するGSS(集団支援システム)に関して, Pen Nameが匿名,実名と比較してどこに位置付けられるのか,あるいはどのような効果があるのかを実験により検証する.また,ブレーンストーミング法とそれを応用した欠点列挙法,仮想状況設定法と呼ばれる3種類の発想法を用いて実験を行い,それらの発想法が各環境にどのような影響を与えるのかということについても検討を行う.

研究ノート
  • 河野 宏和, 山下 裕丈, 坂爪 裕
    2001 年9 巻4 号 p. 71-83
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    受注から製品の納入に至る過程では,一般に,顧客から確定受注情報が伝えられる前に,内示などの不確定情報が顧客と企業の間や企業内の関係する部門間でやりとりされ,それに基づいて資材の手配や生産計画といった仕事が行なわれている。したがって,対象とする仕事において情報のやりとりに関する問題点を的確に分析するためには,確定受注前に発生する不確定情報の流れについてできるだけ正確に分析すること,また時間の経過に伴う情報内容の変化とその理由について深く考察することが必要になる。

    本研究では,このような問題意識のもと,部門間での情報の流れのパターンと伝達される情報の内容という2点に着目し,時間の経過の中で流れのパターンを示す「情報フロー・パターン図」と,伝達される情報内容の時系列上での変化を示す「情報内容推移表」という2種類の分析図表を提案し,これら分析図表から系統的に問題点を発見するための着眼点を問いかけとして整理している。その上で,提案した問いかけを実際の自動車ランプメーカーの事例に適用し,系統的に改善の着眼点をリストできることを確認している。

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