経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
19 巻, 3 号
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「環境問題と経営情報」特集号
論文
  • 壷井 彬, 高橋 正子
    2010 年19 巻3 号 p. 183-202
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    企業に対する環境問題に起因する圧力が年々高まるなか,環境情報開示に対する要求も強まってきている.特に環境保全活動を定量的に測定し開示する仕組みとして開発された「環境会計」情報が,日本企業による開示情報の特徴である.本研究では,環境会計における貨幣尺度で測定している企業の環境保全活動とその結果である環境パフォーマンスとの関係を,経済パフォーマンスの観点から分析し,環境会計情報を有効に活用するための方法を提案する.特に事業エリア内の環境保全活動と環境保全のための研究開発活動に焦点をあて,環境保全活動と環境保全効果とを同一の貨幣尺度上で論じる.環境会計情報に財務会計情報,マテリアルフロー情報,LCAを組み合わせて利用することにより,環境投資が環境負荷の削減へ寄与していることを示す.しかしながら,環境保全効果を貨幣評価することで,投資効率は高くないことがわかる.

  • 増田 靖
    2010 年19 巻3 号 p. 203-219
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    水道と農業は人間生活にとって不可欠であるが,いずれも環境負荷は大きい.これまで両セクターは必ずしも良好な連携関係ではなかった.ここに両セクターの協働を促進し,各々に環境保全型経営を可能にする新しいマテリアル「ポリシリカ鉄(PSI)」がある.現在,浄水過程で発生する泥土は産業廃棄物処分されている.それはアルミニウム系凝集剤が原因である.凝集剤をPSIに変更すると,原水中の土壌資源に「鉄とシリカ」が加わり,単に農地還元が可能になるだけでなく,有用な農業資材となる.本稿では,このPSIがまずは水道資材,つぎに農業資材,そして環境保全型「水道と農業」を可能にする3Rマテリアルへと変容していく過程を論考する.その際,変容の要因として経営現場における「語り」という言語行為に着目する.同時にその「語り」を経営情報と捉え議論する.そのため分析の枠組みには従来のナラティヴ・アプローチとは異なる「語り」論を用いる.

  • 北條 英, 下村 博史, 田中 達之輔
    2010 年19 巻3 号 p. 221-234
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    企業は,自社が利用する貨物自動車のエネルギー使用量を節減するとともに,貨物自動車から排出される二酸化炭素を削減しようと努力を重ねている.しかし,輸送現場の情報が不足していることが阻害要因となって,多くの企業は効果的な改善策を講じることができないままである.本研究では,貨物自動車の輸送効率を示す指標「ロードファクター」に着目し,輸送現場からどのような情報を収集すれば省エネルギーに効果があるか,について検討した.また,企業における貨物自動車のエネルギー削減の事例として,食品残渣の共同回収,求貨求車サービス,そしてエコドライブをとりあげて分析した.その結果,貨物自動車のトリップ単位で積載量データと走行距離データ,燃費データを取得することが効果的であることがわかった.

  • 鈴木 美保, 富田 智恵, 後藤 正幸, 増井 忠幸
    2010 年19 巻3 号 p. 235-258
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    近年,労働形態の変化,高齢化などの背景により,食材宅配サービスの需要が高まっている.しかしながら,生協などの販売企業からみれば,顧客数の増加に伴い顧客1人あたりの購買単価が継続的に減少しているという課題が生じている.これは,新規に加入した顧客(組合員)が増加しても,それに比例して購買金額が伸びない現象であり,少量の商品を注文する顧客の増加が原因である.その結果として,売上あたりの配送コストが増加するだけでなく,環境面から考えても,空箱に近いコンテナを大量に配送することになるため,無意味なCO2 排出量の増加を導くことにつながっている.本研究では,A生協の事例を対象に,2つのアプローチの併用により,マーケティングの側面から平均購入単価を向上させる方策について検討を行う.具体的にはまず,(1)コンジョイント分析を用いた顧客が好むサービス項目の検討を行い,その結果を用いることによって,高額購入者である優良顧客のみをターゲットとしたプロモーション戦略が可能であることを示す.さらに,(2)A生協の売上あたりの燃料費を経済効率,売上あたりのCO2 排出量を環境効率として,シミュレーションモデルを構築する.これにより,実際に想定されるさまざまな顧客平均単価向上施策が与える各効率へのインパクトを定量的に評価し,適切な平均購入単価向上策を提案する.結果として,常に売上向上のみを追及する経営方針ではなく,効率を重視する経営により,経済効率と環境効率の両立が可能であることを示し,1つの理想的なグリーン配送サービスのあり方について言及する.

事例研究
  • 田中 達之輔, 北條 英, 下村 博史, 古川 柳蔵, 石田 秀輝
    2010 年19 巻3 号 p. 259-273
    発行日: 2010/12/15
    公開日: 2025/04/01
    ジャーナル フリー

    日本の2007年度におけるCO2 排出量は1,304百万トンであり,この中で全体の6.8%を占める89百万トンが貨物自動車から排出されている.しかし,CO2 排出量削減に有効な鉄道輸送等へのモーダルシフトは進んでおらず,自動車貨物輸送からの排出量削減は今日の大きな課題である.また一方では,鉄道輸送能力の大幅な増強が困難,長距離ドライバーの確保が困難といった経営上の問題解決も課題として挙げられる.

    CO2 排出削減については,走行抵抗を低減するためのいくつかの輸送システムが実験やシミュレーション等によって報告されているが,最大でも30%程度の削減効果であり,それ以上の提案は行われていない.本稿では利用エネルギーの選択と,走行抵抗の低減方策についてケーススタディーを行い,外部給電式貨物自動車の隊列走行を実施することで,CO2 排出量を80%以上削減できる可能性のあること,さらにこのシステムが将来社会の物流システムを構築する上での課題を解決できる可能性があることを示した.

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