実験社会心理学研究
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44 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 髙尾 堅司, 石盛 真徳, 金政 祐司, 谷口 淳一, 岸本 渉
    2005 年 44 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,社会的状況が人々の状況に対する満足度の規定因に及ぼす影響を検討した。模擬社会ゲーム(SIMSOC)を用いて,大学生を対象に実験を行った。模擬社会においては,2つの富裕地域(緑地域・黄地域)と2つの困窮した地域(青地域・赤地域)がある。参加者は,4つの地域にランダムに振り分けられた。各セッション後,参加者は地域内における決定手続きの公正さ,地域内の分配の均等さ,地域間の保有資源の均等さ,さらに状況に対する満足度についての評定を求められた。その結果,状況への満足度において時期と地域の交互作用が認められ,状況への満足度は状況要因と地域要因によって影響を受けることが明らかになった。この結果は,状況に対する満足度は状況要因と地域要因によって異なっていることを示している。
  • 樂木 章子
    2005 年 44 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,不妊のために子どもを産むことを断念した夫婦が,血のつながらない子どもと養子縁組を通して親子関係を結んでいくプロセスにおいて,養子縁組を支援するNPOが果たす役割を検討しようとするものである。具体的には,新しい養子縁組のあり方を模索しつつ,育て親を開拓する活動を展開しているNPO法人「環の会」でのフィールド研究に基づき,夫婦が養子を迎えるまでのプロセスや,養子に関する啓発活動等の一連の活動内容とその特徴を明らかにした。その結果,産みの親の存在を積極的に組み入れ,かつ,養子を迎えた後も育て親が会の活動を支えることにより,従来の養子縁組が持つ否定的なイメージが打破されつつあることが見出された。また,育て親希望者を対象とした「育て親研修」が,まだ見ぬ養子とともに新しい人生を歩んでいくために必要な先験性を構成する場であると同時に,その先験性は,子どもを迎えた後も,「環の会」と継続的にかかわるシステムに組み込まれることによって,維持・強化されていることを考察した。
  • 林 直保子, 与謝野 有紀
    2005 年 44 巻 1 号 p. 27-41
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    高信頼者は低信頼者に比べ他者の信頼性の欠如を示す情報に敏感に反応するという小杉・山岸(1998)の結果を4つの研究で検討した。調査1では,小杉・山岸(1998)で用いられた一般的信頼感の指標が,一般的信頼感のレベルと他者の信頼性情報への反応パターンの間の関係を検討するための適切な指標となっていなかった点を指摘した。調査1の結果に基づき,2つの実験とひとつの郵送調査では,一般的信頼感として異なるものを用いた。結果は,低信頼者が他者のポジティブ人格情報に敏感に反応し,対象となる人物を信頼するようになることを示していた。3つの研究から,高信頼者と低信頼者は対称な反応パターンを有しており,いずれも社会的な機会を拡大するという点で適応的であることが示唆された。
  • 竹ノ山 圭二郎
    2005 年 44 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,援助の意思決定における状況の重大性の影響およびWeiner(1995)の認知(原因帰属)―感情―行為モデルについて検討することであった。被験者は,重大性(高:車道で倒れる―低:歩道で倒れる)×倒れる人(病人―酔っぱらい)で構成された4種類のシナリオを読み,それぞれに対して,援助意思,重大性,原因帰属,および困窮者に対する感情を訊ねられた。その結果,重大性高―酔っぱらい条件の被験者は,重大性低―酔っぱらい条件よりも援助意思を高く評定していた。この結果は,重大性が高くなるほど援助意思も高くなるということを示唆していた。しかし,重大性高―病人条件と重大性低―病人条件の援助意思には有意な差がなかった。この結果は,重大性高―病人条件の被験者が困窮者に責任を帰属したことにより援助意思が低下したことを示唆していた。また,相関分析の結果は,酔っぱらい条件における援助意思と原因帰属の相関が病人条件よりも大きいことを示唆していた。
  • 戸塚 唯氏, 深田 博己
    2005 年 44 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    集合的防護動機モデルとは,集合的対処行動を勧告する脅威アピール説得の効果とメカニズムを説明するモデルである。同モデルは8つの要因から成る4つの評価が集合的対処行動意図を規定すると仮定している。本研究の目的は集合的防護動機モデルの妥当性を検証することであった。独立変数は脅威評価(高,低),対処評価(高,低),個人評価(高,低),社会評価(高,低),性(男性,女性)であった。被験者は大学生707人(男性365人,女性342人)であり,34条件(32実験条件と2統制条件)のうちの1つに無作為に割り当てられた。そして,実験条件の被験者にはダイオキシン問題に関する説得メッセージを読ませ,質問紙に回答させた。その結果,全ての仮説が支持されたわけではないが,脅威評価,対処評価が大きいほど,集合的対処行動意図が大きいことが明らかとなった。また男性被験者の集合的対処行動意図に対しては,わずかではあるものの社会評価の影響も見られた。
  • 花井 友美, 小口 孝司
    2005 年 44 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    孤独感研究は,対人関係や人格形成に否定的効果あるいは肯定的効果を及ぼすことを示す2種類に大別することができる。2種類の研究は,理論的背景が異なり,孤独感を捉える際に,否定的効果では孤独感を個人の特性とするのに対し,肯定的効果は主に誰もが経験する事象としていると考えられる。後者の立場で孤独感を経験と捉えると,孤独感に対してどのように対処したかも「孤独感」に含まれるであろう。すると,孤独感に対処した経験が,その後の行動や心理的特性を,孤独感に対処しやすいように肯定的に変容させると考えられる。そこで,本研究では過去の経験としての孤独感に注目し,それが現在の親和動機と社会的スキルに及ぼす影響を検討した。なお,過去の孤独感を示す変数としては孤独感の強さとそれに対する対処行動を取り上げた。女子大学生59名を分析対象とした。階層的重回帰分析の結果,過去の孤独感経験における(a)積極的問題対処は現在の親和動機を高め,(b)消極的問題対処は社会的感受性を高めていた。
  • 大橋 恵, 山口 勧
    2005 年 44 巻 1 号 p. 71-81
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/26
    ジャーナル フリー
    日本人には自分を「ふつう」よりも「ふつう」であると知覚する傾向がある(Ohashi & Yamaguchi, 2004)。このように自分の「ふつうさ」を過大視することから,日本では人を形容する言葉としての「ふつう」に望ましい意味が付与されていると考えられる。本研究は,「ふつうであること」は好意及び望ましい特性と結びついてとらえられているという仮説を立てた。大学生150名及び社会人61名にある一定の条件にあった人物を想起させ,その印象を測定する方法で,「ふつうの人」は,「ふつうではない人」よりも好かれていると知覚されていることを示した。さらに,「ふつうの人」の印象は「良い意味でふつうの人」の印象に近く,「ふつうではない人」の印象は「悪い意味でふつうではない人」に近いか(大学生)「良い意味でふつうではない人」よりも悪かった(社会人)。固有文化心理学の立場から理論的な考察を行った。
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