実験社会心理学研究
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45 巻, 2 号
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原著論文
  • 岡本 香, 高橋 超
    2006 年 45 巻 2 号 p. 85-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,コミュニケーション相手との親密度が高い群と低い群におけるメディア・コミュニケーション観の差異を,3種類のコミュニケーション形態(対面,携帯電話,携帯メール)で比較検討した。実験は,大学生の男女301名を対象に,質問紙を用いて行った。その結果,対人緊張,親和感情,情報伝達という3つのメディア・コミュニケーション観因子が抽出された。また,2(親密度:高群,低群)×3(コミュニケーション形態)の分散分析の結果,親密度高群と低群とのメディア・コミュニケーション観の差は,コミュニケーション形態ごとに異なることが明らかになった。さらに,親密度の違いによって,メディア・コミュニケーション観因子の因果関係が異なることが明らかになった。この結果から,メディア・コミュニケーション評価を測定する際には,コミュニケーション相手を特定することが必要であるといえる。
  • 尾崎 由佳
    2006 年 45 巻 2 号 p. 98-110
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    特定の対象への接近あるいは回避の身体的動作を反復することにより,その対象に対する潜在的態度が変容することを検討した。まず,IAT(Implicit Association Test)によって楕円と四角に対する潜在的態度を測定した(Time 1)。続いて,楕円あるいは四角が描かれたカードを分類する課題を行った。参加者はカードを一枚ずつめくり,描かれた図形に応じてそれらを分別した。楕円接近条件では楕円のカードを手前側に置き(i.e.接近),四角のカードを向こう側に置く(i.e.回避)ことによって分類し,四角接近条件ではその逆であった。この作業の後,Time 1と同じIATを実施した(Time 2)。事前・事後の測定値を比較したところ,接近した対象にはより肯定的な方向に,かつ回避した対象にはより否定的な方向に潜在的態度が変化していた。したがって,接近行動の反復は対象とポジティブな感情価の連合を強化する一方,回避行動の反復は対象とネガティブな感情価の連合を強化する効果があると考えられる。この結果にもとづき,非意識的な態度変化のプロセスや,潜在的態度と顕在的態度の関係性などについて議論した。
  • 黒川 雅幸, 吉田 俊和
    2006 年 45 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究の主な目的は,小学校高学年(5,6年生)を対象に,学級内の仲間集団に焦点を当て,仲間集団内における個人と集団の他成員との双方向による役割期待遂行度が,関係満足度に与える影響を検討することであった。予備調査では,10項目からなる仲間集団関係満足度尺度の作成を行った。本調査では,予備調査で作成した尺度を用いて,個人が他の集団成員にもつ役割期待に対する他成員による遂行度と,集団の他成員が個人にもつ役割期待に対する個人の遂行度,仲間集団内地位が仲間集団関係満足度に及ぼす影響について性差,集団サイズを考慮して検討した。その際,役割期待項目の個人および,仲間集団の他成員が捉える重要性の重みづけを行った。階層的重回帰分析の結果,性差や集団のサイズにより違いが見られ,男子および小集団では,個人と集団の他成員が一致して重要と捉える役割期待が多いこと,女子および大集団では一致した役割期待における集団の他成員がもつ役割期待に対する個人の遂行度の高さ,さらに大集団においては,個人が重要と捉える役割期待における個人がもつ役割期待に対する集団の他成員の遂行度の高さおよび仲間集団内地位の高さも加えて関係満足度を高く予測していることが示された。
  • 河野 由美
    2006 年 45 巻 2 号 p. 122-135
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は一つの実験と二つの縦断的調査から構成されている。研究の第1の目的は入棺体験によるDeath Educationの効果を実証的に検証することである。第2の研究目的は,その効果の持続性を縦断的研究(調査1)から明らかにすることである。第3の研究目的は,被験者の宗教性によりDeath Educationの効果がどのように異なるのかを解明することである(調査2)。
    結果から,①経験的Death Educationは否定的死観を低減させ肯定的死観を強める効果があること,②Death Educationの効果の持続性は死を知ること以外は乏しいこと,③経験的Death Educationの効果は被験者の宗教性により異なることが明らかとなった。
  • 杉万 俊夫, 谷浦 葉子, 越村 利恵
    2006 年 45 巻 2 号 p. 136-157
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    大学病院の中堅看護師(卒後数年の看護師)を対象としたリーダーシップ研修において,研修期間中に研修生が自らの職場改善を開始する研修プログラム(Already-Started型研修)を開発した。その研修プログラムでは,まず,2日間の集合研修において,①研修会場で研修生が自らの職場を分析し,職場改善のための行動計画案を策定する,②一旦,職場に戻って上司(看護師長)と計画を練り直した上で,計画実行の第一歩を踏み出す,③再び研修会場に戻り,各自の行動計画と第一歩の成果を発表し合う,というプロセスを踏む。その後4ヵ月の計画実行期間を挟んで,第2回目の集合研修(1日間)をもち,再び上司との話し合いによって,それ以降5ヵ月間の行動計画を固める。
    通常のOff-the-Job-Training(Off-J-T)では,研修中に意思決定したことが,職場復帰後,実行に移されにくいという問題があるが,本研修プログラムによって,その問題がかなり克服されることが見出された。また,本研修は,上司をはじめ職場集団が変化する有効なトリガーとなることも見出された。
  • 唐沢 かおり, 三谷 信広
    2006 年 45 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は有利な立場にいる人たちの不公平さの認知が他集団に対しての支援的態度に与える影響を,責任帰属と罪悪感の媒介的役割に着目して検討した。データは仮想世界ゲーム(SIMINSOC)の参加者124人がゲーム前半終了時に回答した質問紙から得た。仮想世界ゲームは2つの豊かな地域と2つの貧しい地域から構成されており,貧しい地域に所属する参加者がゲーム内で生存するためには豊かな地域からのサポートを得ることが重要である。豊かな地域に所属した参加者からのデータをパス解析により分析した結果,不公平さの認知が,貧しい地域の苦境に対して自分たちの地域が責任を持つという認知につながり,罪悪感を喚起した。さらに,罪悪感が友好的な関係志向につながり,そのような関係志向が支援的態度を高めた。考察では,罪悪感が実際の相互作用を伴う状況でより重要な役割を果たす可能性や,罪悪感の起源を視野に入れた研究の必要性を議論した。
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