日本整形外科スポーツ医学会雑誌
Online ISSN : 2435-5828
Print ISSN : 1340-8577
40 巻, 3 号
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第45回日本整形外科スポーツ医学会学術集会 「ラグビーワールドカップ2019 勝利の方程式:~選手,トレーナー,ドクターの立場から~」
 
  • 面谷 透, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 松木 圭介, 渡海 守人, 星加 昭太
    2020 年 40 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    2005年10月から2018年3月にかけ,慢性発症の手関節痛を主訴に当院を受診した体操選手172例214手関節,右100手関節・左114手関節,男性172手関節・女性42手関節,平均年齢15.7歳(8~26歳),骨端線残存165手関節・閉鎖49手関節に対し,X線所見を調査した.骨端線の開大は橈骨53手関節・尺骨31手関節,骨端線すべりは橈骨1手関節・尺骨11手関節,茎状突起分離は橈骨14手関節・尺骨32手関節で認められた.尺骨の骨端線開大,また橈尺の茎状突起分離はこれまでに報告のない所見である.今後,骨端部に異常を有する症例において,成長障害を含めどのような変化が生じるのか調査する必要がある.

  • 安間 三四郎, 野崎 正浩, 小林 真, 川西 佑典, 村上 英樹
    2020 年 40 巻 3 号 p. 254-258
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:pivot shift testにおける不安定性(動的不安定性)の大きい前十字靱帯(ACL)損傷膝に対するACL再建術に追加する前外側支持機構(anterolateral structure;ALS)再建術の有効性をinertial sensorを用いて定量評価することである.

    方法:高度な動的不安定性を呈するACL損傷患者33例に対して二重束ACL再建術を施行した群(ACLR群,20例)とACLとALSの同時再建術を施行した群(2R群,13例)に分類し,inertial sensorを用いて術前と術中の動的安定性の定量評価を行なった.

    結果:2R群においてACL再建にALS再建を追加することで動的安定性が改善し,また2R群はACLR群よりも術直後の動的安定性が高かった.

    結論:高度な動的不安定性を呈するACL損傷膝に対しACL再建術にALS再建術を追加することで膝安定性を改善できる可能性がある.

  • 富原 朋弘, 谷内 政俊, 瀧上 順誠, 橋本 祐介, 島田 永和
    2020 年 40 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    2重束前十字靱帯再建術およびKnotless Suture Anchorを用いた外側半月板縫合後3年2ヵ月で,半月板縫合部位以外での新たな半月板損傷が生じ外側半月板部分切除術を要した症例を報告した.Knotless Suture Anchorの刺入部位(無血行野)や刺入針の直径が大きいこと,Knotless Suture Anchor使用本数が多いことなどが半月板縫合術後の新たな半月板損傷の原因と過去に報告されている.本症例ではKnotless Suture Anchor使用本数は少なかったが新たな損傷をきたした.その原因に膝窩筋腱裂孔周囲での縫合であったため,刺入方向が理想的ではなく刺入部位損傷が広がった可能性が示唆された.

  • 藤高 紘平, 谷口 晃, 小川 宗宏, 大槻 伸吾, 熊井 司, 田中 康仁
    2020 年 40 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:大学サッカー選手における,荷重による足部アーチの変化とJones骨折発生との関連を検討すること.

    対象および方法:大学男子サッカーチームに在籍したサッカー選手362名を対象とした.座位と立位のアーチ高率を測定し,サッカー競技中に発生したJones骨折を調査した.Jones骨折を発生した選手と,Jones骨折を発生しなかった選手とで,座位と立位のアーチ高率,アーチ高率変化を比較検討した.

    結果:Jones骨折発生選手は,アーチ高率変化が有意に小さかった.

    考察:Jones骨折を発生した選手は,足部アーチ構造における関節構造の柔軟性低下により,足部アーチでの衝撃吸収機能低下をもたらし,Jones骨折の発生に影響を与えたのではないかと考えられた.

  • 有馬 佑, 中瀬 順介, 下﨑 研吾, 浅井 一希, 豊岡 加朱, 土屋 弘行
    2020 年 40 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    大腿骨滑車溝の形態評価はsulcus angle,trochlear depthを始めとした単純X線像での評価が一般的である.しかし,単純X線像は軟骨を含んだ評価ができていないことから,滑車形態の正確な評価をするには限界がある.本研究の目的は,MRIで計測した軟骨性の滑車形態と単純X線像で計測した骨性の滑車形態に相関があるかを検討することである.方法は,MRI T2強調像水平断で軟骨性のsulcus angle,trochlear depth,単純X線軸位像で骨性sulcus angle,側面像で骨性trochlear depthを計測し,単純X線像での計測値とMRIでの計測値をそれぞれ比較検討した.また,MRIにおける軟骨性のsulcus angleと骨性のsulcus angleとの計測値も比較検討した.sulcus angle,trochlear depthともに単純X線像とMRIの計測値の間に相関関係を認めた(sulcus angle : r=0.6,trochlear depth : r=0.6).また,MRIにおける軟骨性のsulcus angleと骨性sulcus angleの間にも相関関係を認めた(r=0.7).しかし,いずれもMRIによる軟骨性の計測値と単純X線像による骨性の計測値に有意差を認めた.

  • 琴浦 義浩, 木田 圭重
    2020 年 40 巻 3 号 p. 275-278
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:成長期野球選手の上腕骨内側上顆を超音波装置で撮像し,その形態学的評価の検者間,検者内信頼性およびその評価法について検討した.

    対象と方法:小中学生野球選手50名の上腕骨内側上顆を超音波検査した.まず内側側副靱帯前斜走線維の長軸像で評価した.次に長軸像,短軸像で評価した.信頼性をκ係数で算出し,評価方法を比較検討した.

    結果:長軸像による評価では検者間信頼性は0.217~0.486,検者内信頼性は0.475であったが,長軸像,短軸像による評価ではそれぞれ0.630~0.846,0.843であった.

    まとめ:長軸像だけでなく短軸像も描出することにより検者間,検者内信頼性が高くなることが示唆された.

  • 弥富 雅信, 井上 美帆, 井手 衆哉, 鶴田 敏幸
    2020 年 40 巻 3 号 p. 279-283
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    投球障害肘にて肘内側上顆下端裂離を呈した骨端線閉鎖前の選手の,打撃実施の有無による骨癒合への影響について検討した.対象は,打撃を許可した許可群41名と投球・打撃を禁止しかつ簡易装具固定した禁止B群31名,ギプス固定した禁止G群41名の3群とし,骨癒合率,骨癒合期間を比較した.また許可群内での骨癒合有無による差も比較検討した.結果打撃許可群は禁止群と比べ,骨癒合率が低く,骨癒合期間も長かった.許可群内での骨癒合の有無において有意差のあった項目は打撃時の痛みのみであった.内側上顆裂離後の保存療法において,打撃の許可は骨癒合率低下や骨癒合までの期間遷延を来たす因子となりうることが示唆された.

  • 面谷 透, 高橋 謙二, 髙橋 達也
    2020 年 40 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    アキレス腱滑液包部に生じた骨性病変を有する体操選手3例を経験した.1例は保存的加療が奏効したが,2例は摘出術を要した.アキレス腱滑液包の遠位端を充填するKager's fat padの遠位端部は踵骨後上隆起とアキレス腱間の緩衝機能を有するとされるが,体操競技において最も強い負荷がかかるとされる踏切の瞬間は足関節の背屈が強制され,Kager's fat padの遠位端部は踵骨後上隆起とアキレス腱の間から脱出し,緩衝構造として機能しない.床運動によるアキレス腱の踵骨後上隆起表面への度重なる圧迫・剪断のストレスが踵骨後上隆起表面の骨軟骨組織の脱落を招き,アキレス腱滑液包内の炎症を招いたことが病態ではないかと推測した.

  • 奥脇 駿, 辰村 正紀, 小川 健, 万本 健生, 平野 篤, 山崎 正志
    2020 年 40 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    腰椎分離症における,CT矢状断の分離部骨折線の角度が臨床成績に及ぼす影響について調査した.期間は2015年4月から2019年2月までとし,第5腰椎におけるCT矢状断分離部骨折線の角度を調査した.骨癒合群(U群)56分離45例,偽関節群(F群)36分離30例であり,矢状断分離部骨折線の角度はU群で64.85±10.19度,F群で60.11±15.99度であり,両群間に有意差はなかった(p=0.14).また,矢状断分離部骨折線の角度が小さい水平群は全体の5.4%(92分離中5分離)と稀な病態であった.矢状断分離部骨折線の角度が骨癒合へ及ぼす影響は大きくなかった.

  • 小松 猛, 池田 樹広
    2020 年 40 巻 3 号 p. 294-297
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:入学後に足関節捻挫をした大学サッカー選手の入学時メディカルチェック(MC)結果との関係について検討すること.

    対象と方法:対象は,関西学生サッカー1部リーグ所属の大学サッカー部に所属し入学時にアンケートと足関節超音波検査を行なった111人のうち,入学後からの調査期間内に足関節捻挫を受傷した21人25関節について,MCの結果から捻挫する選手の傾向を分析した.

    結果および結論:身体接触を伴う捻挫(C群)が8関節,接触がない状態での捻挫(N群)が17関節であった.MCの超音波検査で前距腓靱帯の異常を認めた11関節中10関節はN群であり,前方不安定性を認めた関節はすべてN群であった.

  • 撫井 貴弘, 磯本 慎二, 田中 寿典, 杉本 和也, 田中 康仁
    2020 年 40 巻 3 号 p. 298-302
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    リスフラン靱帯損傷に対するスーチャーボタン固定の治療成績を報告する.

    対象は2012~2017年にリスフラン靱帯損傷で手術を施行した7例7足.第2中足骨と内側楔状骨,内側楔状骨と中間楔状骨をスーチャーボタンで固定した.術後臨床評価はスポーツ復帰時期(受傷競技への練習復帰)と疼痛の有無,X線学的評価は術前後の荷重時足正面像の第1・2中足骨間距離健患差を計測した.

    全例スポーツ復帰し,復帰時期は平均13.7週であった.5例は疼痛なく,1例でリスフラン靱帯部に圧痛が残存,1例で術後感染を生じた.第1・2中足骨間距離健患差は術前平均1.3 mm,術後0.5 mmで全例改善した.

    本術式は早期スポーツ復帰に対して有効な治療法の一つとなり得る.

  • 髙橋 知之, 田村 将希, 尾﨑 尚代, 鈴木 昌, 田鹿 佑太朗, 西中 直也
    2020 年 40 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:ゼロポジション保持機能と肩甲骨周囲筋筋力の関係を明らかにすること.

    方法:ゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力と肘伸展筋力および肩甲骨周囲筋筋力を計測した.ゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力高値群と低値群,ゼロポジション近似肢位での肘伸展筋力高値群と低値群に群分けし,肩甲骨周囲筋筋力を比較した.

    結果:ゼロポジション近似肢位での肩外旋筋力高値群は低値群より有意に前鋸筋筋力が強く,ゼロポジション近似肢位での肘伸展筋力高値群は低値群より有意に前鋸筋筋力が強かった.

    結論:前鋸筋筋力がゼロポジション保持機能に関係している可能性が示唆された.

  • 吉田 衛, 山崎 哲也, 舟崎 裕記, 丸毛 啓史
    2020 年 40 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    We administered platelet-rich plasma(PRP)therapy for injuries at proximal sites of medial ulnar collateral ligaments(UCL)of elbows in 8 baseball pitchers(1 professional, 2 corporation club, 1 college, 3 high school and 1 playing recreationally)resisted against prior conservative therapies administered for 3-7 months with a mean age of 24 years. The UCL injury was classified as grade IIA in one professional pitcher and in other non-professional pitchers as grade IIB based on magnetic resonance findings. Power Doppler analyses showed areas of pathological hypervascularization at proximal sites of the UCLs in all pitchers. The PRP injections were performed 1 to 3 times during 3 weeks. Seven pitchers accompanied with grade IIB injuries returned to their previous sport activities without symptoms and hypervascularization on power Doppler images disappeared. A one pitcher with grade IIA injury had initially begun interval throwing exercises following twice PRP injections, but, due to recurrent elbow pain and worsening joint instability he eventually underwent a reconstruction surgery.

  • 村木 孝行, 高橋 晋平, 石川 博明, 永元 英明, 黒川 大介, 高橋 博之
    2020 年 40 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    本研究の目的は,高校野球選手において立位release pushテストと肩肘痛との関係を調べ,他の機能評価と比較することである.高校硬式野球選手98人を対象とし,立位と腹臥位でrelease pushテストを行なった.投球側の押す力が非投球側より弱い場合に陽性とした.さらに,徒手筋力検査にて肩関節周囲筋力を評価し,投球側が非投球側を比較した.肩肘痛の有無はアンケートと問診にて調べた.その結果,肩肘痛と有意な関係が見られたのは立位release pushテストだけであった.立位release pushテストは他の機能評価では検出できない肩肘痛の要因となる機能的問題を検出している可能性がある.

  • 石川 正和, 亀井 豪器, 中前 敦雄, 安達 伸生
    2020 年 40 巻 3 号 p. 320-323
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    膝離断性骨軟骨炎(OCD)は大腿骨の特定の部位に発生することが分かっているが,その原因は明らかにされていない.内側半月板逸脱量と膝OCDの発生部位に着目し検討を行なった.当院で加療を行なった大腿骨内側顆および外側顆OCD患者を対象とした.Aichroth分類からclassical/extended classical type(MFC-C/EC群),inferior-central type(MFC-IC群)および外側顆OCD群(LFC群)の3群において,MRI冠状断像の脛骨内側縁から内側半月板逸脱距離を内側半月板の幅で除したrelative percentage of extrusion(RPE)による比較検討を行なった.RPEは他の2群と比較してMFC-IC群で有意に大きな値を示していた(P<0.01).内側半月板逸脱による大腿骨内側顆への過負荷がinferior-central typeのOCD発生に関与することが推察される.

  • 加藤 礼乃, 亀岡 尊史, 黒田 浩司
    2020 年 40 巻 3 号 p. 324-328
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    サーフィンを契機に受傷した股関節前下方脱臼の1例を経験した.股関節脱臼のうち前方脱臼は比較的稀で,高エネルギー外傷による受傷が多く,サーフィンでの受傷は珍しい.内転筋群の緊張が強く鎮静のみの徒手整復は困難であったが腰椎麻酔下で徒手整復された.受傷後18ヵ月時点で大腿骨頭壊死などの合併症は認めていない.

    2010年1月から2019年10月の股関節前方脱臼に関する文献から男女比は男性74%,女性26%,受傷機転は交通事故が最多で,57%で股関節周囲を含む骨折を合併していた.股関節脱臼単独であっても観血的整復への移行は13%,整復操作で骨折を併発した症例報告もあり脱臼整復時には観血的整復も考慮する必要がある.

  • 大石 隆太, 村 成幸, 結城 一声, 髙木 理彰
    2020 年 40 巻 3 号 p. 329-333
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    はじめに:大胸筋断裂に対し,受傷7ヵ月で一次修復術を行ない,良好な成績を得たので報告する.

    症例:23歳,男性.日本拳法の試合中に投げられ,左肩水平伸展を強制され受傷し,4ヵ月後に当院を受診した.左腋窩の大胸筋のレリーフは消失していたが,索条物を触れた.MRIでは断裂部を描出できず,CTで大胸筋の陥凹を認めた.大胸筋断裂と診断し,受傷7ヵ月で縫合糸アンカー3本を用いて,一次修復を行なった.術後2年で痛みなく,ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力評価でも左右差を認めなかった.

    結論:7ヵ月経過した陳旧性の大胸筋断裂でも,本症例のように断端が十分に引き出せる症例に対しては一次修復が可能であると考える.

  • 安達 玄, 押川 智貴, 阿久澤 弘, 金岡 恒治
    2020 年 40 巻 3 号 p. 334-338
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    男性大学野球選手19名を対象とし,3次元動作解析カメラを用いて立位姿勢の胸部屈曲角度および投球動作時の胸部伸展変化量を計測し,関連性を検討した.立位胸部屈曲角度は肩複合体最大外旋位を示すMER(r=0.65,p<0.01),ボールを投射するBall release(r=0.67,p<0.01)時の胸部伸展変化量と有意な正の相関を認めた.これは立位姿勢の胸部屈曲角度が増加するほど,投球動作のMER, Ball release時に胸部伸展変化量が増加したことを意味する.投球障害予防において,立位姿勢の胸部屈曲角度のみならず,実際の投球動作における胸部伸展の評価を合わせて検討する重要性が示唆された.

  • 仙石 拓也, 中瀬 順介, 下﨑 研吾, 浅井 一希, 吉水 陸人, 土屋 弘行
    2020 年 40 巻 3 号 p. 339-341
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    目的:前十字靱帯再建患者の術前心理状態が術後6ヵ月時の主観的膝関節機能とスポーツ復帰に影響を与えるか検討した.

    方法:前十字靱帯再建術を行なった73名を対象にProfile of Mood States 2nd Edition(POMS2)を実施し,ネガティブ群とポジティブ群の2群に分け,術前および術後6ヵ月の主観的膝関節機能を比較した.また,術後6ヵ月時のスポーツ復帰についても比較した.

    結果:術後6ヵ月の主観的膝関節機能,スポーツ復帰は2群間に有意差は認めなかった.

    結論:術前の心理状態は術後6ヵ月の主観的膝関節機能やスポーツ復帰に関連しないことが示唆された.

  • 安本 慎也, 大槻 伸吾, 柳田 育久, 大久保 衞
    2020 年 40 巻 3 号 p. 342-346
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    前腕屈筋群は,投球時に生じる肘外反ストレスに対するダイナミックスタビライザーとして機能していると報告されている.本研究では前腕回内筋と手指屈曲筋のトレーニングにより肘外反ストレス下での内側関節裂隙開大距離(SEMI)に変化が生じるか検討した.各筋の収縮でSEMIが制御されることを確認した後に,2群に各筋のトレーニングを割付け,実施させた.トレーニング前,直後,トレーニング30分後の3回,超音波画像診断装置を用いてSEMIを測定した.いずれの群も直後,30分後ともSEMIは減少していたが,2群間に交互作用は認められなかった.今回用いたトレーニングは肘関節外反制御に有効である可能性が示唆された.

  • 中村 光志, 阿部 雅志
    2020 年 40 巻 3 号 p. 347-350
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    症例は14歳男子.サッカー中に相手と交錯し左膝を受傷した.筋挫傷の診断で経過観察となるも,疼痛・可動域制限が持続し当院紹介受診となった.MRIで過伸展損傷を疑う大腿骨・脛骨前方の骨挫傷,後方軟部組織の高信号変化がみられた.拘縮解除のため,全身麻酔下に授動術を行ない可動域は改善したが,完全伸展位で末梢循環障害が出現,伸展時にエコーで膝窩動脈が圧排され,造影CTでは膝窩動脈の途絶がみられた.膝窩動脈の圧排を解除するため,後方アプローチで神経血管側背側の瘢痕組織を切離し,伸展時の循環障害は改善した.明らかな解剖学的異常はみられないが,外傷を契機とし急性に膝窩動脈捕捉症候群と同様の病態を呈したものと考えられた.

  • 原田 洋平, 岩堀 裕介, 梶田 幸宏, 平岩 秀樹, 吉田 雅人, 出家 正隆
    2020 年 40 巻 3 号 p. 351-354
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    名古屋市小学生軟式野球選手を対象とした野球検診において,上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)の発見率の3年間の推移を検討した.検診において超音波検査を用いて投球側のOCDスクリーニングを行ない,石崎分類を用いて軟骨下骨に異常所見を認めるStage S以上を小頭異常所見として二次検診の対象とし,二次検診でOCDの確定診断を行なった.2015年度,2016年度,2017年度それぞれの参加数は567,767,792名であり,一次検診での小頭異常所見発見率は7.4%,7.6%,4.4%であり,二次検診受診率は100%,91%,86%,OCD発見率は3.0%,2.1%,1.5%であった.検診初年度はこれまで指摘されていなかったOCDを多く検出したものと思われ,その後経年的に発見率は低下していた.

  • 森口 晃一
    2020 年 40 巻 3 号 p. 355-358
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    目的:投球時の肘下がりを想定したテストを考案し,その有用性を検討することである.

    方法:健常な中学野球選手(健常群)と投球肩・肘障害の診断を受けた症例群を対象とした.テストは,背臥位で投球側肘関節を耳孔の高さに位置させ,投球動作のlate cocking期に類似した肢位に設定した際に,肘関節が耳孔から耳垂の高さを維持できなかった場合は陽性と判定した.また,症例群の本テスト陽性者にストレッチ指導を行なった効果も検討した.

    結果:健常群と症例群でテストの陰性率に有意差を認めた.また症例群の陽性者にストレッチ指導を行なった結果では,ストレッチの実施頻度によって本テストの陰性率に有意差を認めた.

    結語:本テストの有用性が示唆された.

  • 蒲田 久典, 辰村 正紀, 須藤 彰仁, 奥脇 駿, 平野 篤, 山崎 正志
    2020 年 40 巻 3 号 p. 359-363
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    腰椎分離症の罹患高位別の潜在性二分脊椎(Spina bifida occulta; SBO)合併率と骨癒合率を検討した.腰椎分離症と診断した高校生以下の患者156例250分離を対象とした.SBOの合併率は87/156例(55.8%)であった.12歳以下,L5分離でSBO合併率が高かった(いずれもp<0.01).偽関節病変を除き保存療法を行なった新鮮腰椎分離症患者109例144分離における骨癒合率は,SBO合併群70.9%,SBOなし群90.8%だった.SBO合併群はSBOなし群と比較し骨癒合率が低かった(p<0.01).高位別にはL5分離のみSBO合併群の骨癒合率が低かった(p=0.03).L3, L4分離においてSBOの有無は治癒阻害因子ではなかった.L5分離ではSBO合併が治癒阻害因子であった.

  • 田中 洋, 二宮 裕樹, 駒井 正彦, 名越 充, 信原 克哉
    2020 年 40 巻 3 号 p. 364-368
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
    ジャーナル 認証あり

    野球投手はキャッチャーミットをしっかり見続けて投球するよう指導される.本研究は,「ミットをしっかり見る」教示前後の投球動作を動力学的に比較した.ハイレベル野球投手8名の投球動作をモーションキャプチャ・システムで計測し,動力学的パラメータを算出した.ミットをしっかり見る投球動作は,球速が低下し(P=0.002),体幹の開始タイミングが早かった(P=0.003).球速で正規化した最大肩内旋トルク(P=0.32)および最大肘内反トルク(P=0.19)に差はなかった.ミットをしっかり見る投球動作は,肩肘の障害リスクの変化に影響を示さず,さらに球速の低下を生じさせた.

  • 前園 恵慈
    2020 年 40 巻 3 号 p. 369-371
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:陸上長距離選手に生じた仙骨疲労骨折について検討すること.

    対象と方法:2016年1月から2018年12月に仙骨疲労骨折と診断された陸上長距離選手19例(男性9例,女性10例)を対象とし,自覚症状,Patrick test,発生高位,MRIで骨折線・仙腸関節の変化,症状出現からjog開始までの期間について検討した.

    結果:自覚症状は腰・殿部痛が多く,Patrick testは94.7%で陽性であった.発生高位はS1に最も多く,MRIでは骨折線を12例,仙腸関節変化を11例に認めた.症状出現からjog開始まで男性で3.7週,女性で3.4週を要していた.

    結語:陸上長距離選手で仙骨・仙腸関節付近に圧痛があり,Patrick testで疼痛が誘発される例では仙骨疲労骨折を疑いMRI等の追加検査を行なう必要がある.

  • 小川 健, 馬見塚尚孝 , 辰村 正紀, 万本 健生, 平野 篤, 山崎 正志
    2020 年 40 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    初発前思春期投球肘内側障害例の高分解能MRIを調査した.対象は,発症から4週間以内にMRI撮像できた15例である.単純X線で異常を認めたのは15例中9例のみであったが,MRIでは全例異常所見を呈していた.骨化核の異常が12例,軟骨膜の偏位が12例うち途絶は9例,尺側側副靱帯(UCL)またはその周囲組織損傷は14例,鉤状結節の異常は7例であった.前思春期の投球肘内側障害は,骨化核に形態学的な異常を認めずとも,骨化していない軟骨およびそれを取り巻く軟骨膜の異常と,UCLのたるみや信号上昇,そして周囲の軟部組織損傷が主体であり,その初発例は急性損傷の可能性が示唆された.

  • 門脇 俊, 山本 宗一郎, 内尾 祐司
    2020 年 40 巻 3 号 p. 377-380
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    学校運動器検診の結果から中学生のスポーツ障害の特徴について述べる.5年間で中学生のべ1,769名を対象に運動器検診を実施し問診と身体所見からスポーツ障害を推定した.スポーツ障害の推計有病率は16%に上り,膝疾患が42%を占めていた.1年生時の初回検診時に13%の生徒がすでにスポーツ障害をかかえており,検診時にスポーツ障害のなかった生徒の15%は翌年に新規にスポーツ障害を発症していた.スポーツ障害のある生徒を減らすには,すでに罹患している生徒の改善と新規発症の予防とが必要である.検診時にスポーツ障害のあった生徒,およびなかった生徒両者に対して保健指導および事後措置を講じるべきである.

  • 黒沢 一也
    2020 年 40 巻 3 号 p. 381-384
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    兄弟発症の上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)を報告する.症例は3人兄弟の次男と三男である.小学生のときは3人ともに同じソフトボールチームに所属していたが,長男は中学でテニス部,次男は野球部,三男はソフトボール部に所属した.長男は肘関節障害を発症することなく高校で野球部に所属し卒業したが,次男と三男は中学でOCDを発症した.次男は軟骨片を摘出しドリリングを行ない,三男は外側広範型OCDで骨軟骨柱移植術を行なった.家族内に喫煙者はなく受動喫煙が原因となった可能性はないと思われた.この兄弟では遺伝的な要因と,骨端線閉鎖前のスポーツ選択がOCD発症に関与したと考えられた.

  • 中山 哲, 豊岡 青海, 増田 裕也, 西原 信博, 中川 匠, 河野 博隆
    2020 年 40 巻 3 号 p. 385-388
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    脛骨顆間隆起骨折は小児期から学童期に多い.一方成人で,なおかつ骨折部に半月板が嵌頓して整復阻害因子になったという報告は少ない.症例は38歳女性,スキーをしている最中,新雪に右足を取られ転倒し右膝を捻って受傷した.単純X線,単純CTで右脛骨顆間隆起骨折Modified Meyers McKeever分類TypeⅢbと診断し,関節鏡視下での整復固定術を行なった.骨片は比較的大きく,内側半月板前角が骨折部に嵌頓し整復困難となっていた.内側半月板を前方に牽引し嵌頓を解除することで骨片の整復が可能となった.内側半月板前角と膝横靱帯は前十字靱帯の前方に位置しているため,骨片が大きい場合骨折部に嵌頓する可能性があり注意を要する.

  • 浦山 樹, 丸山 真博, 原田 幹生, 宇野 智洋, 村 成幸, 髙木 理彰
    2020 年 40 巻 3 号 p. 389-394
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:腰痛と指床間距離(FFD),下肢伸展拳上角度(SLR),および立位体前屈との関連性を検討した.

    方法:小中学生野球選手764名を対象に,FFDとSLRを測定し,腰痛と関連する基準値を分析した.また,立位体前屈にて床に手指がつくか否かを選手自身で評価し,腰痛との関連性を分析した.

    結果:腰痛の割合は,FFD 0.9 cm未満(未満29.2%,以上19.4%),非投球側SLR 70°未満(未満24.5%,以上17.2%),および立位体前屈にて床に手指がつかない選手で有意に多かった(つかない28.2%,つく20.6%)(いずれもp<0.05).

    結論:FFD 0.9 cm,非投球側SLR 70°およびセルフチェックとしての立位体前屈は腰痛に関連する体幹・下肢柔軟性評価の指標に有用と考えられた.

  • 鈴木 朱美, 成田 淳, 中島 拓, 髙木 理彰
    2020 年 40 巻 3 号 p. 395-397
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    膝前十字靱帯(ACL)再建患者で,手術待機期間による術後成績の差異について調査した.ACL再建術を行ない術後1年以上経過観察可能であった28例,手術時平均年齢26.6歳を対象とした.受傷から手術までの待機期間が6ヵ月未満の早期群19例と6ヵ月以上の遅延群9例の2群に分類した.手術時の半月板損傷と軟骨損傷の有無,術後1年時の臨床所見を2群間で比較検討した.手術時の半月板損傷は有意差を認めなかったが,軟骨損傷は早期群5.6%,遅延群33.3%であり有意差を認めた.臨床成績では有意差は認めなかった.受傷後手術待機期間が長くなることにより,術後安定性には差異は認めなかったが,半月板や軟骨損傷が増加するため,可能な限り早期に行なうべきである.

  • 伊與部 貴大, 中瀬 順介, 下﨑 研吾, 浅井 一希, 豊岡 加朱, 土屋 弘行
    2020 年 40 巻 3 号 p. 398-400
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    目的:下腿慢性コンパートメント症候群(CEOS)に対し,手術加療を行なった6例9肢を経験したので報告する.

    症例:CEOSと診断し筋膜切開術を施行した6例9肢(男性1例,女性5例,右側2例,左側1例,両側3例)を対象とした.発症から診断までに要した期間,術後スポーツ復帰までに要した期間と,術前後の疼痛はNRSを用いて評価した.

    結果:発症から診断までに要した期間は平均8.3±3.1ヵ月だった.NRSは6例中5例で改善し,術後スポーツ復帰までに要した期間は平均9.4±8.5週であった.

    考察:CEOSは診断に苦慮することが多く,アスリートの下腿痛に対してCEOSを鑑別にあげることが重要である.

  • 古川 由梨, 武田 秀樹, 中嶋 耕平, 半谷 美夏
    2020 年 40 巻 3 号 p. 401-406
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    比較的稀なスポーツ選手のハムストリング近位付着部損傷を3例経験したので報告する.全例,大腿二頭筋・半腱様筋の共同腱付着部断裂があり,受傷後10~19日に坐骨結節にスーチャーアンカーを用いた解剖学的修復術を行なった.術後5ヵ月以降に他動的SLRにて健患差および修復部位の伸展痛がないこと,さらに大腿近位部MRI画像を撮影し,修復状況が良好であることを確認したうえで競技復帰を許可した.全例,元の競技レベルに復帰することが可能であった.継続的に筋力評価を行なえた1例において,術後1年にても膝関節屈曲筋力は健患比61.3%と回復が遅れていた.筋力回復,再受傷の予防も含めて慎重に経過観察する必要がある.

  • 村上 陽司, 平野 康輔, 岩永 健之
    2020 年 40 巻 3 号 p. 407-410
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    Hyper external rotation test(以下HERT)は,internal impingementによる疼痛の再現性テストとして有用とされている.一方でHERT評価時に水平外転角度を増加させると疼痛が増強することをしばしば経験する.そこで従来のHERTに水平外転の評価を加えたものをHERT変法とし,評価を行なった.HERT変法陰性まで追跡できた21例全例で,HERT陰性化後もHERT変法陽性(水平外転角度>0°における過外旋で疼痛が出現)が継続し,HERT変法陰性となった.

  • 石田 知也, 鈴木 信, 松本 尚, 金子 知, 井上 千春, 青木 喜満
    2020 年 40 巻 3 号 p. 411-414
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/21
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    本研究の目的は,高校バスケットボール選手における膝前十字靱帯(ACL)損傷の受傷時期について調査し,その傾向を検討することである.初回ACL損傷を来した高校バスケットボール選手107人を対象に,受傷した月を調査した.受傷者数は各月で一様ではなく,4月(15人),5月(15人),8月(19人)の受傷が多いことが明らかとなった(P<0.001).また,これらの3つの月では,練習中の受傷が47.5%であったのに対し,その他の月では25.5%であり,受傷者数が多い月では練習中の受傷割合が高かった(P=0.029).本研究結果は高校バスケットボール選手におけるACL損傷には好発時期がある可能性を示唆し,詳細な調査を行なう必要性を示した.

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