日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
1 巻, 1 号
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総説
  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会特別講演Ⅰより
    平澤 博之
    2010 年 1 巻 1 号 p. 3-16
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    Severe sepsis/septic shockの病態生理は,pattern recognition receptors(PRRs),pathogen-associated molecular patterns(PAMPS),alarminなどの概念が導入されてから大きく変化し進歩した。いまやLPSは単にPAMPSのひとつに過ぎないと位置づけられるようになってきた。またhypercytokinemiaが病態生理の中心をなしていることも今や広く認められている。さらにhypercytokinemiaに関して検討する場合にはcytokine産生関連遺伝子多型の影響を考慮しなければならない。Severe sepsis/septic shockに対する治療対策としては感染を制御した後はhypercytokinemia対策を中心に考えるべきであり,その一つの方法としてPMMA膜hemofiterを用いたCHDF(PMMA-CHDF)は有効であり,Surviving Sepsis Campaign guidelinesの推奨項目と共にPMMA-CHDFを施行することで,severe sepsis/septic shockの救命率は80%以上となった。PMX-DHPに関する新しいRCT(EUPHAS)が発表されたが色々問題もあり,PMMA-CHDFとPMX-DHPを比較した場合,新しい病態生理に対する合理性,有効性,医療経済性からみてPMMA-CHDFの方が優れていると考えられる。

Review
  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会シンポジウムⅠより
    西田 修, 中 敏夫, 日高 正剛, 升田 好樹, 仲村 将高, 中村 智之, 阪本 雄一郎
    2010 年 1 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化法を用いた,各種病態におけるメディエータ制御の研究が進んでいる。各演者のmodalityは様々であったが,それぞれに特色があり非常に興味深い発表であった。臓器保護を目的としたレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系制御手段として,high flow CHDFの有用性が報告された。High volume HDFは敗血性ショックにおけるHMGB1制御の可能性があると報告された。一次膜にhigh cut-off 膜を用いたsuper high-flux double hemofiltrationで,小分子量物質のクリアランスは維持したまま中分子量物質のクリアランスを増加させることができると報告された。敗血性ショックの早期からPMMA-CHDFを開始し,重症度に合わせてdouble PMMA-CHDFを開始する施行基準が報告された。病態に応じて高効率血液浄化法(High Flow-Volume Large Size PMMA-HDFなど)を組み入れるなど,病態に応じた血液浄化法を選択する必要があると報告された。スフィンゴシン1リン酸値はPMX-DHPの効果予測因子となりうる可能性があると報告された。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会シンポジウムⅡより
    川西 秀樹, 織田 成人
    2010 年 1 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    診療ガイドラインとは「医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決定を下せるよう支援する目的で,体系的な方法に則って作成された文章」と定義され,その作成の基本は「Evidence-based medicine:EBM)」の手順に則ってことを原則とする。急性血液浄化療法においても標準化のためにはガイドラインを策定することが必須となる。しかし限られたエビデンスと療法の多様化のために策定には超えなければならない多くのハードルが存在する。まず技術面を中心とした「急性血液浄化技術マニュアル(仮題)」を作成することが重要である。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会パネルディスカッションⅠより
    嶋岡 英輝
    2010 年 1 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,CRRT(continuous renal replacement therapy)施行時の薬物,特に抗菌薬の投与と栄養管理についての議論を総括した。CRRTでは,水分,有害な老廃物の体外への移動が緩徐に行われるが,一方で生体に必要な物質も少量ずつとはいえ除去される。濾過量/透析液量を増量して施行する場合は,除去量は相当量に達すると考えられ,外部からの追加補充を考慮せねばならない。特に,感染症の根本治療である抗菌薬に関しては,除去される量を考慮した上での繊細な投与量の決定が,予後を左右する可能性がある。また,CRRTの出現によって,必要エネルギーを投与するための水分量は除去することが可能になったが,主要栄養素あるいは微量栄養素も相当量除去される。このような問題点と対策について,自施設のデータを基に検討した5人の演者の発表要旨を紹介した。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会パネルディスカッションⅡより
    山下 芳久, 米川 元樹
    2010 年 1 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    血液凝固から血液浄化の回路,ヘモフィルタ寿命を延ばす工夫をテーマとして,各施設で検討されている内容を発表頂き議論した。具体的には,まず血液回路において血液凝固を起こしやすい部位を同定し,そのチャンバ内に血液凝固を起こさせない工夫に関して報告して頂いた。次に治療開始方法において体外循環を行ったら10分間の空回しをしてから治療を開始することがヘモフィルタの寿命に影響するのかについて報告して頂いた。次にポリスルホンを膜素材とした2つのヘモフィルタにおいて,施行時間,回路内圧変動,溶質変動およびACTと凝固線溶系バランスを比較検討し報告して頂いた。最後に持続的血液浄化療法でヘモフィルタと血液回路を長時間使用するための要件について,各種のデバイスや治療条件をまとめ,報告して頂いた。今後実際に持続的血液浄化療法を行う上で,血液回路やヘモフィルタが血液凝固を起こす関係について理解が深まれば幸いである。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会ワークショップⅠより
    小林 誠人, 片山 浩
    2010 年 1 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    第20回日本急性血液浄化学会学術集会における,ワークショップⅠ「sepsis治療における血液浄化法の意義」のreview を行った。血液浄化の原理として,血液吸着,血漿交換,拡散/濾過があげられる。血液吸着ではエンドトキシン吸着療法をEarly Goal-Direct Therapy(EGDT)に組み込むことで,迅速な肺酸素化能,循環動態の改善が認められ,救命率向上がもたらされた。その作用機序はメディエータ対策として生体反応を制御することと,immunoparalysis対策として免疫機能を回復させることが示唆された。血漿交換に濾過透析を組み合わせたPlasma Dia-filtration は,生体反応の制御から多臓器不全患者の致死率改善をもたらすことが示唆された。拡散および濾過の浄化量を増大させた高効率血液浄化の間歇的施行は,サイトカインを含む病因物質が広く除去され,病態改善および救命率向上がもたらされることが示唆された。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会ワークショップⅡより
    津島 健司, 巽 博臣, 山下 千鶴, 阿部 信二, 松田 兼一
    2010 年 1 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    ポリミキシン(Polymyxin)B固定化線維カラム(以下,PMX)は血中のエンドトキシンを除去し,グラム陰性桿菌感染に伴う敗血症ショックを改善させる目的で開発された血液浄化デバイスであるが,近年,急性肺障害(acute lung injury:ALI)/急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS),および特発性間質性肺炎や膠原病肺の急性増悪病態に対しての有効性が報告されている。ALI/ARDS実験モデルに対する検討から,PMXは敗血症以外の肺障害に対しても酸素化の改善を含めて有効性が認められた。その作用機序としては炎症性サイトカインや活性化好中球制御の可能性が示唆された。敗血症に伴うARDS症例に対する検討ではより長時間のPMX施行が酸素化の改善に有効であり,さらに間質性肺炎の急性増悪に対しても同様に酸素化の改善が報告されている。

  • 第20回日本急性血液浄化学会学術集会ワークショップⅢより
    海津 嘉蔵, 宗万 孝次, 阿部 雅紀, 大岩 功治, 中山 友子, 谷口 総志, 小柳 邦治, 大熊 尚人, 山口 郁恵, 望月 香苗
    2010 年 1 巻 1 号 p. 58-73
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    近年,急性血液浄化療法は急速に進歩し,かつ国内に広く普及した。この中で持続緩徐式治療モード(CHDF,CHF,CHD)が70%を占める。医師,看護師,臨床工学士がチーム医療で協力してこの治療に参加する。安全にしかも効果的にこの治療を実施するには,病院の全面的協力とともに各職種の個々の工夫と協力が求められている。

原著
  • 相馬 泉, 佐々木 健志, 山中 昭広, 南 茂, 金子 岩和, 山崎 健二, 峰島 三千男, 岡崎 聡一郎
    2010 年 1 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,新規に開発・発売された持続的血液浄化装置ACH-Σ(旭化成クラレメディカル社)の安全面に関する性能評価を行ったので報告する。評価内容として,液系バランス機構の誤差性能,新規採用されたエアフリー圧力チャンバの長時間使用,装置使用前点検項目と組立・プライミングに関する点を従来装置であるACH-10との比較の4点とした。液系バランス機構のゼロ除水時の誤差性能はメーカー公表値は0.5%であるが,水系実験の結果は0.02~0.09%と良好な結果であった。ACH-10と比べても誤差性能は低値でありこれは,従来3液それぞれを別の重量計で計測していたものを3液をひとつの重量計で計測する方式に変更した結果,誤差が小さく抑えられたものと考えられる。エアフリー圧力チャンバはドリップチャンバとは異なり,空気に接触することなく回路内圧を測定できることから長時間の回路使用が可能と考えられた。今回の検討ではドリップチャンバとの間で回路使用時間の延長はみられなかった。治療開始前の使用前点検項目は従来装置と比べ,43項目から24項目に減少しており装置自己診断機能の充実が伺えた。本装置は自動プライミングとガイド機能によって組立・プライミングを行うが,スタッフの習熟度や専門性によらず同様なパフォーマンスが得られることが示唆された。これらのことから,ACH-Σが従来装置に比べ安全性での向上が見られることを確認できた。

  • 梶原 吉春
    2010 年 1 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    近年,輸液ラインに注射器や輸液ルートの接続を誘因とする細菌汚染や血流感染の防止対策に閉鎖式輸液システムが使用されている。バスキュラアクセスの感染対策の一つとしてダブルルーメンカテーテルに閉鎖式輸液システム(Qサイト®)の使用を試みた。Qサイト®を接続した状態で脱血・返血回路抵抗が上昇するものは使用できないため実験を行った。結果として脱血圧,返血圧は通常血液浄化療法で使用される穿刺針とも有意な差はなく,血液浄化療法前の血栓吸引も良好であった。長期間使用した場合の血栓形成も無く,接続部からのリークも皆無であった。閉鎖式輸液システムは年々新商品が開発されるが,特徴や構造を理解して使用しないと不都合も発生することから,特徴や構造を理解して使用することが重要である。Qサイト®は操作性・安全性・経済性において有用であった。

  • 阿部 雅紀, 岡田 一義, 丸山 範晃, 鈴木 緑, 奈倉 千苗美, 藤井 由季, 石原 有子, 池田 和也, 宇都 栄作, 松本 史郎, ...
    2010 年 1 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    目的:急性腎障害(AKI)を合併した重症患者に対し,ICU内で持続的血液濾過透析(CHDF)を施行することが多い。当院では個人用水処理装置を導入したことによりICU内で長時間血液濾過透析(sustained hemodiafiltration: SHDF)の施行が可能となった。そこで従来のCHDFとSHDFとの臨床効果を比較検討した。方法:対象は2006年3月から2009年11月までに当院入院となり,AKIを合併し,急性血液浄化法を施行した71例(男性48例,女性23例,平均年齢67.4歳)。CHDF群36例とSHDF群35例の2群に分けて比較検討した。CHDFの治療時間は原則24時間とし,血液浄化量は総排液量(透析液量+補充液量+除水量)35mL/kg/hを指標に施行した。SHDFの治療時間は患者個々の病態に応じ4~8時間とし,透析液量 300~500mL/min,置換液量14L以上/回とした。結果:患者背景で,APACHEⅡスコア,SOFAスコア,慢性腎臓病の併存率等に2群間で有意差は認めなかった。ICU滞在日数はSHDF群で有意に短期間であった。ICUでの生存率に有意差は認めなかったが,院内生存率および60日後生存率はSHDF群で有意に高値であった。また,血液浄化法の離脱率はSHDF群で有意に高かった。結論:SHDFはCHDFより腎機能回復率が高く,生命予後を改善することが示唆された。

  • 心拍変動スペクトル解析を用いた検討
    山田 吉広, 須澤 大知, 熊藤 公博, 百瀬 光生, 床尾 万寿雄
    2010 年 1 巻 1 号 p. 94-96
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    【既往歴】56歳女性。白血病に対して骨髄移植施行。平成19年透析導入し,PS膜使用の影響と考えられる発熱があり,EVAL(EK)膜に変更して安定化後,当院に転院。平成20年,EK膜の発売停止により新たな透析膜への変更および生体適合性を検討した。【方法】1.EVAL(KF)膜,2.RC膜,3.VEP膜(ビタミンE固定化膜,VPS-HA),4.PEPA膜の順に使用した。心拍変動の解析を基にHF,LF/HF,CVRRを算出し,心拍数,体温変化も評価した。【結果および考察】透析中の体温,心拍数の上昇率,ならびにLF/HFの交感神経活性ではVEP膜が低く,HF,CVRR活性の副交感神経活性では,VEP膜が亢進していた。副交感神経活性は交感神経活性と相反した。今回の症例では,発熱抑制にはEVAL膜よりもVEP膜の方が優れ,ビタミンE固定化による透析膜の生体適合性の向上が関連していると考えられた。

  • 内田 祐司, 徳井 研太, 藤江 遼平, 鳴海 敏行, 川邉 学, 柗澤 雅史, 宮崎 真一, 本多 仁, 山下 芳久, 大浜 和也, 鈴木 ...
    2010 年 1 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    生命維持管理装置のメインテナンスは,医療法改正により重要視されている。適正な保守点検を計画的に実施することは,急性血液浄化療法において用いられる持続的血液浄化装置にも必要である。当院では,持続的血液浄化装置に対する保守管理として,持続的血液浄化装置に内蔵されている動作点検プログラムを利用した使用前点検およびメーカー推奨の定期点検周期を基に年間計画を作成し定期点検の取り組みを始めた。2008年10月から2009年9月までの期間で行った使用前点検は98件で,うち5件において使用前点検時に不具合がみられた。使用中の装置不具合は1件であった。使用前点検に要する時間が全スタッフ15分以内と短時間且つ簡便に行えた。使用前点検と定期点検を行うことで,使用中の装置不具合を未然に防ぐことが可能となった。適正な保守管理として使用前点検・定期点検を計画的に実施することは,持続的血液浄化装置を安全に使用するために必要である。

  • 瀧 史香, 津川 友介, 小松 康宏
    2010 年 1 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】AKIの栄養管理については未知な点が多い。当院のICU患者におけるAKIの有無と栄養療法とその予後につき報告する。【対象・方法】診療録に基づく後向き観察研究。2007年4月から1年間のICU入室患者を対象に,AKI群・非AKI群の2群に分け,患者背景他以下の項目につき比較検討行った。1.栄養処方内容;経路,各種栄養素含有量2.栄養指標;SGAおよび血液検査データ3.転帰【結果】224人の全入室患者のうちAKI群は62人(28%)。AKI群では非AKI群に比べ経腸栄養開始時期が遅れ,エネルギー,蛋白,K,P,Mg投与量が有意に少なかった。またAKI群では栄養指標も低下しており,さらに30日生存率が低く,これには血清Albumin値の低さが規定因子となっていた(寄与危険度=2.35,P=0.038)。【結語】AKI患者の予後不良のひとつに低栄養の関与を考慮すべきと示唆された。

  • 土屋 陽平, 塚本 功, 村杉 浩, 高根 裕史, 鈴木 洋通
    2010 年 1 巻 1 号 p. 107-115
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    集中治療領域で取り扱う急性腎障害の多くは多臓器不全によるものが多く含まれるため,臓器障害の程度を継続的に追跡し病態の進展を予防,阻止することが重要である。そこで,急性腎障害を呈し持続的血液浄化療法(CBP)を施行した202症例を対象に,重症度評価としてSOFAスコアの呼吸,凝固,肝臓,循環に対応する項目,Cr上昇率,尿量およびCRPをスコア化したレーダーチャートを用い,急性腎障害に対するCBPの離脱条件の検討を行った。その結果,CBP終了後から間歇的血液浄化療法(IHD)へ移行することなく,生存した74症例はCBP開始時から終了時において尿量,循環,Cr上昇率,呼吸スコアで有意な改善を認めた。しかしCBP終了後,観察期間中に死亡した12症例は尿量,Cr上昇率の改善は認めたが,循環,呼吸スコアの改善は認めなかった。これらの結果は,尿量1000mL/day以上,Cr上昇率2倍未満,renal dose程度のDOA≦5γor DOB投与(投与量問わず),P/F≧200(人工呼吸サポートなし)が持続的血液浄化療法の離脱条件であることが示唆された。

  • 千葉 健太, 鈴木 泰, 渡邉 志保, 泉田 拓也, 高橋 学, 柴田 繁啓, 井上 義博, 遠藤 重厚
    2010 年 1 巻 1 号 p. 116-119
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    重症敗血症は高サイトカイン血症を呈し,臓器障害や組織灌流低下をきたす重篤な病態である。Polymethylmethacrylate膜を用いたcontinuous hemodiafiltration(PMMA-CHDF)は敗血症性ショックも含めその臨床効果は多く報告されているが,当施設ではCHDF施行時は1時間毎にコンソール付属プリンターで回路内圧をモニタリングしているが,TMP上昇,濾過圧の低下が認められることがあり,PMMA膜のlife-timeが短縮し安定したCHDFが施行できない症例も存在する。そこでcontinuous hemodialysis(CHD)モードへ変更し,そのlife-timeが延長できるか確認するため,continuous renal replacment therapy(CRRT)での回路内圧の変化について検討した。今回われわれは,4例の重症敗血症,敗血症性ショック患者に対しPMMA-CHDを施行し1時間毎に回路内圧を検討したので報告する。2例でPMMA-CHD施行時に入口圧の上昇を認め,24時間以内に回路交換が必要とされた。他の2例では安定した回路内圧でPMMA-CHDが長時間施行できた。全例28日死亡率は0%であった。さらにPMMA-CHD施行症例を追加検討中であるが,PMMA-CHDは適量の抗凝固薬を使用すれば,PMMA膜でも十分なlife-timeが得られ,臨床的効果が十分期待できることが推測された。

  • Vascular access選択の重要性
    古山 政幸, 水谷 誠, 谷口 貴美子, 上田 博章, 石塚 喜世伸, 梶保 祐子, 藤井 寛, 近本 裕子, 秋岡 祐子, 相馬 泉, 金 ...
    2010 年 1 巻 1 号 p. 120-123
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    1996年1月から2009年6月までに当院で経験した,体重30kg未満の小児に体外循環を用いた急性血液浄化療法の施行症例を対象として検討した。対象となったのは16例で,体重10kg未満が3例,10kg以上15kg未満が9例,15kg以上20kg未満が2例,20kg以上30kg以下が2例であった。それぞれの症例で平均3.4回の血液浄化が施行されていた。急性血液浄化療法の適応となった原疾患は川崎病が最多の10例で,劇症肝炎が2例,多発性硬化症における視神経炎の増悪が2例と続いた。対象となった全16例中14例で単純血漿交換療法が行われていた。ほぼ全例で右鎖骨下静脈にVascular access(VA)が確保されていた。中止もしくは中断せざるを得なかった理由として血圧低下が2例,カテーテルトラブルによる脱血・送血不良が4例で,その他の症例では血液浄化療法を中断することなく安全に施行できた。小児における体外循環を用いた急性血液浄化療法では十分な血流量を確保することが治療の継続に不可欠であり,そのためには適切なVAを確保することが重要であることが確認された。

  • 井上 芳博, 土橋 弥生, 大坂 守明, 津川 友介, 瀧 史香, 小松 康宏
    2010 年 1 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    [目的]出血リスクを有する患者の持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)では,メシル酸ナファモスタット(nafamostat mesilate:NM)を使用することが多い。そして凝固時間の測定にACTが用いられるが,至適ACTの報告は少ない。今回,われわれはCRRTでNMを使用した際の,至適ACTを検討した。[方法]本研究は2006年7月~2009年6月に聖路加国際病院においてNMを使用しCRRTを実施した51症例を対象とした後向き観察研究である。ACTや各種データより,血液凝固の起こり易さと相関性のある項目の検討を行った。[結果]送血側ACTが180秒未満の群は,全例で血液凝固を認め,それに対し180秒以上の群は37%(11/30)で血液凝固を認めた(p=0.006)。また送血側ACTを225秒以上に調節した症例では69%(11/16)で体内のACTの延長が観察された。さらに重回帰分析より送血側ACTはNM投与量,血清アルブミン,CRPと相関を認めた。[結論]CRRTでは,送血側ACT値を180~225秒に調整することが望ましいと考えられた。

  • 徳井 研太, 鳴海 敏行, 宮崎 真一, 本多 仁, 大濱 和也, 井上 勉, 鈴木 洋通
    2010 年 1 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    当院の重症急性膵炎に対する持続的血液浄化療法(CBP)の現状を調査し,CBPの意義について検討した。2005年4月1日から2009年9月30日までにCBPを行った重症急性膵炎19症例を対象としretrospectiveに調査した。補正Ca値はCBP導入時で8.43±1.14mg/dL,離脱時では9.35±1.00mg/dLと有意な上昇を認めた。白血球数,CRPはCBP施行に伴い低下傾向を示し,導入前と離脱時では白血球数:15.25±6.22×1000 /μL,12.23±6.68×1000/μL,CRP:21.31±11.75mg/dL,13.8±8.68mg/dLと有意に減少を認めた。水分のIN-OUTバランスに関して,CBP導入前は多くの症例でIN-OVERであったが,除水を行うことでゼロに近づき,理想的な体液バランスを保つことができた。重症急性膵炎の治療においてCBPが果たす役割に関しては諸説あるが,水分や溶質・電解質のコントロールを主とした体液管理のためにCBPは重要な治療手段の一つである。近年,急性腎障害を呈した重症患者において,厳密な体液量管理が生命予後に深く関わる事が明らかとなっており,今後もCBPの積極的な利用が期待される。

  • RIFLE分類重症度は腎予後予測因子となりうるか?
    山田 成美, 山下 友子, 藤原 紳祐, 中道 親昭, 高山 隼人
    2010 年 1 巻 1 号 p. 136-140
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    RIFLE分類を用いて敗血症による急性腎傷害 Acute Kidney Injury(以下AKI)の腎予後を検討した。2003年1月1日から2009年3月31日までに当救命救急センターで急性血液浄化療法を施行した敗血症によるAKI 74名をRIFLEで分類し,APACHEⅡ,SOFAスコアや急性血液浄化療法施行日数,BUN変化率,Cr変化率との関係を検討した。またこれまでの検討で敗血症によるAKIの腎予後予測因子と考えられたbase excess(BE)・総ビリルビン・血清カリウムK・CRPとRIFLE分類との関係も検討した。結果,RIFLE分類でのAKIの重症度とSOFAスコア,急性血液浄化療法施行日数,Cr変化率でRIFLE分類との有意な関連がみられた。腎予後予測因子では,BE・K・CRPでRIFLEとの関連がみられた。よってRIFLE分類は腎予後予測に有用であることが示唆され,今後の敗血症に合併するAKIの診療において積極的に考慮すべきと考えられた。

症例報告
  • 川元 健, 宮元 一隆, 原田 尚樹, 山下 順正
    2010 年 1 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    【はじめに】急性腎不全を合併したマムシ咬傷の1例を経験したので症例提示するとともに当院治療例の臨床的検討を行ったので報告する。【症例】67歳,女性。治療にマムシ抗毒素血清は使用せず。急性腎不全を合併したため,持続血液濾過透析(CHDF)を行った。18日後にCHDF離脱し,受傷45日目に軽快退院となった。【対象と方法】2001年4月から2009年8月までに当院で治療した64例を対象とし,臨床所見,治療内容に関して検討を行った。【結果】入院日数の中央値は8(2~44)日であり,CPK値が高いほど入院期間が長くなる傾向を認めた。マムシ抗毒素血清は21例(33%)において使用しており,副作用は3例(14%)に認められた。Grade Ⅳ以上の重症例を30例(47%)認め,特に血清を使用していない症例においてGrade Ⅴとなる傾向が認められた。【結語】初診時に腫脹が軽微な症例であっても経過中に腫脹が進展する場合には早期にマムシ抗毒素血清を使用すべきであると考えた。

  • 坂手 克彰, 岩藤 晋, 片山 浩
    2010 年 1 巻 1 号 p. 146-150
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    当院では,4機種10台の持続的濾過透析装置を使用している。装置を使用する前は,臨床工学技士によって始業点検が行われている。今回,始業点検時に4件のクランプ異常を検出したので報告する。始業点検は,装置内蔵の動作点検プログラム機能を利用している。クランプ点検では,空の血液回路チューブをクランプに挟み,透析液,補液,濾液,気泡の順に手動で動作させ,クランプが閉じた状態で血液回路チューブが上下に動かなければ正常と判断している。検討期間中,398回の始業点検において,JUN-600(JUNKEN MEDICAL)という機種で,気泡2件,透析液1件,補液1件の計4件のクランプ異常を発見した。クランプ異常は,クランプが閉じた時の隙間が正常範囲から外れていたことが原因であった。クランプの隙間は,隙間ゲージを使用して測定し,異常があれば調整する必要がある。通常の始業点検操作に加え,定期的に隙間ゲージを使用した詳細な点検を心がける必要がある。

  • 山本 豊, 杉山 和宏, 黒木 識敬, 田邉 孝大, 明石 暁子, 濱邊 祐一
    2010 年 1 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    症例は26歳女性,入院1週間前頃より続く全身倦怠感と黄疸を主訴に当院救急外来を受診した。急性肝炎と診断され内科にて入院治療を受けていたが間接型優位の高ビリルビン血症やクレアチニン値やアンモニア値に見合わないBUN値の低下などの重篤な肝予備能低下を認めていた。第11病日にⅡ度の肝性脳症を認めPT活性28.7%や入院後の検査所見と併せて薬剤性の亜急性型劇症肝炎と診断,同日より救命センターに転科となり人工肝補助療法(Artificial Liver Support:ALS)を中心とした内科的集学治療を行ったが病態に改善を認めず,第16病日に移植施設に転院とし同院で生体肝移植が施行され救命に成功した。急性肝炎治療においては劇症化の可能性を常に念頭に置いて的確にALSの開始時期や移植適応の判断を行うとともに,必要な場合には直ちに移植施設へ搬送可能な医療連携体制下に患者の救命に当たる必要がある。

  • 猪原 拓, 津川 友介, 瀧 史香, 小松 康宏
    2010 年 1 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    症例は62歳女性で,呼吸苦と下腹部の発赤を主訴に救急外来を受診した。救急外来にて初療中の来院5時間後,下腹部の発赤拡大,色調変化,水泡形成を認め,同時に血圧低下を認めた。壊死性筋膜炎,敗血症性ショックの診断にて入院となった。入院後,創部よりG群溶血連鎖球菌が検出され,抗菌薬加療,大量輸液,人工呼吸管理にて全身管理を行った。第3病日より本症例にHigh-volume HDF(hemodiafiltration)に移行したところ,High-volume HDF施行前後にて収縮期・拡張期血圧の上昇を認め,カテコラミンを減量することができた。血圧上昇を認めた理由として,ダイアライザーの前後にて炎症性サイトカインと同程度の分子量であるβ2 MG,α1 MGの除去を認めており,サイトカインの除去が行われている可能性が示唆された。今回,壊死性筋膜炎に対してhigh-volume HDFが奏功した1例を経験した。High-volume HDFは敗血症性ショックに対して,サイトカイン除去による血圧上昇,カテコラミン減量に寄与する可能性が示唆された。

  • 成宮 博理, 熱田 晴彦, 高倉 康人, 井上 衛, 出口 雅子
    2010 年 1 巻 1 号 p. 161-166
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    症例は74歳の男性。胸痛とその2日後の一過性意識消失を主訴に,当院へ搬送された。血圧は触診で50mmHg,脈拍は30~60回/分,体温は38.9度。心電図と心エコーで亜急性心筋梗塞と診断,IABPおよび経静脈的ペースメーカを挿入し,心臓カテーテル検査を行った。左前下行枝中間部の完全閉塞を認めprimary PCIを行い,血行再建は成功したが,低血圧とペーシング不全,房室解離が続いた。左前下行枝の病変のみで病状を説明することは困難で,敗血症を合併しcardiac depressionを呈していると考えられた。高サイトカイン血症に対してPMMA-CHDFを開始したが,ショックは改善しなかった。さらにPMX-DHPを併用したところ,直後から洞調律へ復帰し,血行動態は劇的に改善した。後日,血液培養からグラム陽性球菌が検出された。Cardiac depressionを呈した敗血症に対するPMX-DHPの効果は限定的と考えられているが,高度徐脈,ペーシング不全,IABP不反応のseptic cardiac depressionに対してPMX-DHPが血行動態の改善に有効であった1例を経験したので報告する。

  • 後藤 京子, 巽 博臣, 今泉 均, 佐々木 英昭, 吉田 真一郎, 北 飛鳥, 升田 好樹, 澤田 理加, 千原 伸也, 浅井 康文
    2010 年 1 巻 1 号 p. 167-171
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    発症から12日目に施行した血漿交換が有効であった中毒性表皮壊死症(TEN)の1例を経験した。症例は76歳女性。抗菌薬投与後にTENを発症し,発症5日目に当ICUに搬送された。ICU入室当初は皮膚病変の進展はないと診断し,重症熱傷に準じた全身管理と局所管理を行った。しかし,皮膚病変が悪化したため,第8 ICU病日より血漿交換を2日間施行した。その後は順調に上皮化が進行し,全身状態が安定した第45 ICU病日に前医へ転院した。TENに対する血漿交換の有効性の機序としては,原因薬剤およびその代謝産物や,炎症性サイトカイン,可溶型Fasリガンド(sFasL)の除去が報告されている。本性例では,発症早期ではなく,経過中に皮膚病変が増悪した時点で血漿交換を施行し,上皮化と全身状態の改善に有効であった。

  • 山﨑 章生, 後藤 武, 坪 敏仁
    2010 年 1 巻 1 号 p. 172-175
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    過去に報告されたアルブミン含有透析液でのビリルビン除去目的の基礎研究で血漿アルブミンと透析液アルブミンとの間でビリルビンの交換が行われ透析側に移行したとの報告がある。しかし,各種膜素材のなかPMMA膜のみ血漿中のビリルビンは低下したが,透析液には出現しないという奇妙な現象があったとの報告がある。われわれはPMMA膜に強い吸着特性があると考え,術後,腎不全から多臓器不全に進行し高ビリルビン血症を併発した患児に対し,腎補助継続とビリルビン吸着目的にPAN膜CHDからPMMA膜CHDに変更し,著明なビリルビンの低下を認めた。また,濾過をかけないCHDでの治療であったが,PAN膜ではほとんど出現しなかった透析液中のビリルビンが,PMMA膜では排泄を認め吸着に加え,内部濾過の影響が示唆された。また,治療経過と伴に白血球の著明な減少も認め,PMMA膜の白血球吸着も危惧し,PAN膜に再度変更したが,白血球の上昇を見ることなく交換から4日目に死亡した症例を経験したので報告する。

  • 高氏 修平, 山崎 圭, 長間 将樹, 坂東 敬介, 秋田 真秀, 遠藤 晃生, 松井 俊尚, 奥田 耕司, 佐藤 朝之, 岡田 昌生, 斉 ...
    2010 年 1 巻 1 号 p. 176-179
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    Ⅲ度熱中症による肝不全に対し人工肝補助療法を行い救命し得た1例を経験したので報告する。症例は35歳男性,10kmのマラソン大会に出場し,ゴール直後に倒れこみ,意識障害,痙攣のため前医へ救急搬送となった。意識レベルJCS 300,体温40.8度,Ⅲ度熱中症と診断された。意識は改善したが入院3日目に肝不全へ進行したため当センターへ転院となった。既往歴に統合失調症がある。転院時の血液検査で肝機能上昇,凝固系機能低下を認め,熱中症に伴う肝不全と診断し,同日,血漿交換(PE)およびHigh Flow CHDF(HF-CHDF)による人工肝補助療法を開始した。PEは1回のみ施行,2日間のHF-CHDFと1回のHDFにより血液浄化を離脱し,入院17日目に転院となった。発症初日のバイタルで予後不良が予測される場合,および基礎疾患を有する症例では肝不全発症早期より積極的な人工肝補助療法を施行するのが望ましい。

  • 佐藤 尚代, 秋山 健一, 澁井 香織, 鈴木 智, 片岡 浩史, 山口 憲児, 渡邊 喜彦, 小原 まみ子, 望月 隆弘
    2010 年 1 巻 1 号 p. 180-183
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    中枢神経性筋弛緩剤であるバクロフェン服用後に,急速に意識障害,呼吸抑制を呈した維持透析患者の1例を経験したので報告する。症例は透析歴3年の74歳男性。72歳からマントル細胞リンパ腫 の診断で当院血液腫瘍内科に通院しており,今回下血で入院となった。経過中に難治性吃逆に対しバクロフェンを服用した。その後意識障害,呼吸抑制,痙攣を生じ,気管挿管,集中治療室管理となった。バクロフェンによる代謝性脳症の診断で当科へ血液透析の依頼となった。バクロフェン血中濃度は中毒域ではなかったが,血中濃度の遷延を認め,血液透析にて血中濃度の低下ともに全身状態が改善した。腎機能低下症例では,バクロフェン血中濃度が非常に遷延し感受性が高まることがあり,特に吃逆に対して使用した場合に生じやすい可能性がある。腎不全患者では低容量から注意して使用する必要があり,また有効血中濃度についても再考すべきである。

  • 小久保 雅宏, 髙木 誠, 市川 誠, 向後 恒吉, 方山 真朱, 宮内 義浩, 渡邊 隆, 市川 大介, 新谷 紘史, 伊良部 徳次
    2010 年 1 巻 1 号 p. 184-187
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    対象は93歳女性,体重44.7kg。クレアチニンクリアランスは25mL/minであったが,コハク酸シベンゾリン(CIB)100mgを3回/日服用で徐脈・低血糖・無尿・ショック肝等を呈し利尿再開までに6日を要した。CHDFでのCIBクリアランス(C-CIB)は13時間分の濾液中CIB量を血中濃度時間下面積で除し9.87mL/minで濾液速度の50%程であった。TDMソフトで実測値にフィットさせるには母集団平均に対し生体側C-CIBは極度の,分布容積(Vd)は50%程度の,低下が必要であった。CIBは高Vdで腎外C-CIB224mL/minにて半減期22.4時間とされているが,高濃度では腎外C-CIB低下の可能性がある。文献値C-CIBはHD≒50~100mL/min,DHP≒100mL/minであり腎機能廃絶状態のCIB中毒例には日単位での長時間HD施行での効果を検証すべきと考える。

  • 増田 幸子, 阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 横田 裕行
    2010 年 1 巻 1 号 p. 188-192
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    34歳男性,28%熱傷の診断で8病日に植皮術を施行。術後40℃の熱発あり,肺炎,創感染からのSepsisとなり第10病日P/F比31と低下した。PCPSとPMMA-CHDFを施行したが翌日のP/F比も55と依然低値であった。11,12病日,各6時間PMX-DHPを施行しモニタリングとして圧波形分析式心拍出量測定装置(Pulse Contour Cardiac Output:PiCCO)を用いたところ,循環動態としては心拍出量(CI)の改善を,呼吸機能としては従来のP/F比,胸部X線の改善と共に肺血管外水分量(ELWI)の改善(29→19mL/kg),肺血管透過性係数(PVPI)の改善(9.3→4.5)を確認した。【結語】PMX-DHPによる呼吸循環機能改善の可能性をPiCCOシステムにより確認した。肺酸素化能の改善には肺血管透過性の改善が関与している可能性があると考えられた。

  • 山田 成美, 西元 裕二, 山下 友子, 藤原 紳祐, 中道 親昭, 高山 隼人
    2010 年 1 巻 1 号 p. 193-196
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2023/02/22
    ジャーナル フリー

    症例は31歳女性。精神不安定を主訴に精神科病院入院するも意識障害や痙攣が出現し,脳炎疑いで当院神経内科紹介,当救命救急センター入院となった。感染性脳炎を疑い,抗生剤,抗ウイルス剤を開始したが,自己免疫性脳炎の可能性もありステロイドも投与。第3病日痙攣出現,抗痙攣薬投与するも次第に重積状態となり,第5病日気管挿管および人工呼吸器管理開始,ミダゾラム持続静注開始。しかし痙攣コントロールは困難で,第6病日ステロイドパルス療法開始。症状改善みられず第11病日血漿交換開始(1回3L置換,隔日で計3回施行)したところ,第20病日頃より痙攣軽減。第24病日卵巣摘出術施行。その後痙攣消失し,全身状態改善を得て第57病日集中治療離脱。リハビリ後,独歩退院となった。後日血清・髄液より抗N-methyl-D-aspartate(以下NMDA)受容体抗体陽性が確認された。集中治療を要した痙攣重積に対して血漿交換は,即効性は乏しいが症状改善に有効と考えられた。

技術・工夫
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