日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
6 巻, 1 号
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解説
  • 塚本 達雄, 山田 敦美, 飯田 恵, 安馬 雅範, 柳田 素子
    2015 年6 巻1 号 p. 3-9
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    2011年11月京都大学医学部附属病院において,持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)回路交換を行う際に,膜型血漿分離器を取り付けたことに起因する医療事故が発生した。再発防止対策として,(1)CEによるCHDF回路組み立て24時間体制の確立,(2)CHDF物品指示と設定指示,(3)物品管理の徹底,(4)院内共通の手順書の作成,(5)継続的な看護師教育と院内認定看護師制度の実施,(6)他診療科と血液浄化部門の共同診療体制強化,が進められ,日当直CEへの年3回の講習および集中治療を担当する看護師を対象にした認定制度も開始した。一方,血液浄化器の血液ポートおよび透析液ポートは現在でも同じ規格で,同じ誤りが起こりうる。また,設定表示も機器毎に異なっており,再発予防対策を進めるためには,関連メーカー各社の協力も含めた一層の改良が必要と思われる。

  • On-line HDFの急性血液浄化への応用
    鷹取 誠
    2015 年6 巻1 号 p. 10-16
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    急性期血液浄化においては循環系の安定,腎機能の維持などが重要となる。このため,On-line HDFを急性期に応用するには,ICUにおける水質管理,CRRTとしての持続的使用と効率を制御する調節性が必要である。当院でのOn-line CHDFの経験から最大の問題点は水質管理であり,ICUにおける個人用透析装置,長時間持続使用や非定期的な使用という特殊条件下で原液ラインの滅菌など清潔操作の徹底,非稼働時の定期的洗浄などの対策により水質を維持している。持続的な使用については炭酸カルシウムの析出が大きな問題である。連続運転時間の制限と酸洗浄の徹底と濃度変更により現在は安定して稼働しているが,メーカーの保障はなく,今後も透析装置の長時間使用に関する検討が必要である。調節性はバイパス回路を含む特殊回路を用いることにより非常に広い範囲での調節性が確保される。On-line CHDFはコスト,マンパワーを節約しつつ広範囲の急性期血液浄化に対応できるシステムである。

原著
  • 東 龍英, 阿部 雅紀, 岡田 一義, 古川 哲也, 岡村 雅広, 根岸 英理子, 吉田 好徳, 及川 治, 丸山 範晃, 相馬 正義
    2015 年6 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【目的】頭蓋内圧亢進症急性期の維持透析患者に対する血液浄化療法として,頻回低効率短時間血液透析(frequent low-efficiency and short hemodialysis:FLESHD)と頻回低効率短時間血液濾過(frequent low-efficiency and short hemofiltration:FLESHF)の有効性について比較した。【方法】頭蓋内圧亢進症急性期の維持透析患者14名をFLESHD群(n=7)とFLESHF群(n=7)の2群間に無作為に分けた。両群とも最初の3回は,グリセロール400mL/回を使用し,FLESHDはQB 100mL/分,QD 300mL/分,ダイアライザAPS-11SA®,2時間で実施し,FLESHFはQB 150mL/分,QS 10L/回,ヘモフィルタAPS-15SA®,4時間で実施した。【結果】意識状態と転帰は両群に有意な差を認めなかった。血圧変化率と血漿浸透圧変化率には有意差を認めず,HCO3変化率はFLESHD群で有意に低値であり,体外循環時間も有意に短時間であった。【結語】頭蓋内圧亢進症急性期の維持透析患者において,FLESHDは有効かつ安全性も高い血液浄化法であると考えられた。

第25回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 宮坂 武寛, 村上 泰右, 井上 晃司, 佐伯 里詩
    2015 年6 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    現在使用されているバスキュラーアクセスカテーテルの外径は12 Fr前後であるが,挿入される内頸静脈の内径に対して比較的太く,静脈血流は影響を受ける可能性がある。また,カテーテルのルーメンは狭小であり,ポンプ設定流量通りに脱血流量が確保できないことも予想される。本研究では,疑似血液を流動した模擬血管チューブに各種カテーテルを挿入し,カテーテル挿入前後の血流量,血液ポンプ設定流量に対する脱血流量とその時の圧力損失を測定した。その結果,静脈血流量はカテーテルの挿入により1割程度低下した。カテーテルによる疑似血流からの脱血流量は,ポンプ設定流量に対して低値を示し,設定流量が高いほど乖離した。脱血時の圧力損失はカテーテルの先端形状や断面形状が影響することがわかった。カテーテルを用いた送脱血では,カテーテルの挿入により静脈血流量が影響を受けること,脱血流量は設定流量と乖離することが示唆された。

原著
  • 髙橋 良光, 風間 順一郎, 中村 藤夫, 生駒 俊和, 山本 卓, 成田 一衛, 追手 巍
    2015 年6 巻1 号 p. 29-34
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    血液浄化療法を迅速かつ安全に施行するために,バスキュラーアクセスカテーテル(カテーテル)は有用である。その反面へばりつき現象が治療の妨げとなる場合がある。臨床使用中のカテーテルの定量的評価は困難であるため,ex vivoの評価システムを確立した。生体を模擬した循環回路にはブタ静脈血管を設置し,内腔にブタ血液を循環血液流量(Qv)100~300mL/minで循環させた。血管内にカテーテルを挿入し,血液流量(Qb)100~200mL/minで脱血した。へばりつき現象の発現について,エンドホールタイプカテーテルは,Qv 300mL/min,Qb 100~300mL/minのときすべての条件で認めた。サイドホール付きカテーテルは,Qv 300mL/min,Qb 100と150mL/minで認めず,Qb 200mL/minで20%に認めた。今回構築した系により,カテーテル評価が十分にできたと思われる。

  • 藥眞寺 香奈, 安田 則久, 小野 浩平, 溝口 貴之, 中嶋 辰徳, 牧野 剛典, 蔀 亮, 大地 嘉史, 安部 隆国, 日高 正剛, 後 ...
    2015 年6 巻1 号 p. 35-39
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【目的】当施設のhigh-flow-volume CHDF(HFV-CHDF)において,UT-2100SとCH-1.8Wを使用した際の膜寿命およびtrans membrane pressure(TMP)の変化を比較し,CH-1.8Wが当施設のHFV-CHDFでの24時間施行に耐えうるのか検討した。【対象・方法】2014年4月から5月にHFV-CHDFを施行した症例を対象とし,凝固回収率,TMPを後方視的に抽出し,ヘモフィルターの膜寿命,TMPの経時的変化を検討した。【結果】凝固回収率はそれぞれほぼ同じであり,開始時TMPはCH-1.8WがUT-2100Sより有意に高く,経時的変化においても有意な上昇を示した。ただし,CH-1.8WはUT-2100Sと同等に24時間施行することができた。【考察】両者の膜の構造や特性の違いから,TMPに有意差が生じたと考えられた。しかし,凝固回収率は同等であり,CH-1.8Wは当施設におけるHFV-CHDFの24時間施行に耐えうると考えられた。

  • 岩上 将夫, 土井 研人, 康永 秀生, 野入 英世
    2015 年6 巻1 号 p. 40-45
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    [目的]日本の集中治療室において急性腎代替療法(RRT)を開始した敗血症性急性腎障害(AKI)と非敗血症性AKIの特徴と予後を比較する。[方法]2011年のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて,集中治療室で急性RRTを開始した成人について,敗血症群と非敗血症群に分け,年齢・性別・入院からRRT開始までの日数・RRTモダリティ・RRT開始日の治療内容・病院の特徴を比較した。院内全死亡率を比較し,カプランマイヤー曲線を描出した。多変量ロジスティック回帰分析を行い敗血症性AKIと非敗血症性AKIの院内死亡との関連を検討した。[結果]対象7,353人のうち,2,523人(34.3%)が敗血症性AKI群であった。敗血症性AKI群の方がわずかに高齢,男性の割合が少なく,CRRTを選択される頻度が高く,重症病態を反映した治療を受ける傾向にあった。院内全死亡率は敗血症性AKI群53.6%(1,353人/2,523人),非敗血症性AKI群42.2%(2,038人/4,830人)であった(P値<0.001)。調整後オッズ比(敗血症性対非敗血症性AKI群)は1.212(95%信頼区間1.086-1.353)であった。[結語]敗血症性AKIは非敗血症性AKIに比して重症であり,死亡率が高く,また独立して予後と関連していた。

  • 森實 雅司, 永渕 弘之, 鈴木 秀典, 半田 麻有佳, 相馬 良一, 佐藤 亜耶, 十河 剛, 乾 あやの, 川本 愛里, 角田 知之, ...
    2015 年6 巻1 号 p. 46-51
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【目的】体重10~15kgの小児急性肝不全患者を想定し,異なる膜面積下に血流量(QB),透析液流量(QD)を変化させた際の溶質クリアランス(CL)を評価する。【方法】膜面積は0.3m2と0.7m2,モードは持続的血液透析(CHD),QB:20,40,80mL/min,QD:20,40,80mL/min,測定対象溶質は尿素(Urea),クレアチニン(Cr),無機リン(IP),ビタミンB12(VB12)とし,CLとマスバランスエラー(%MBE)を算出した。【結果】Urea,Cr,IPのCLはQB,QDに依存し,膜面積の影響は少なかった。VB12ではQDだけでなく,膜面積の増量によりCLは増加した。すべての結果で%MBEは±30%以内であった。【考察】小分子量物質のCLは主としてQB,QDに依存し,急性肝不全で標的物質と想定される中分子物質のCLは膜面積を上げることでさらなる増加を見込めると考えられた。【結語】体重10~15kgの小児急性肝不全患者において,膜面積を0.3m2から0.7m2へ増大することは中分子量物質の除去効率向上と肝性昏睡からの離脱に有利となる可能性がある。

  • 吉澤 城, 本間 康一郎, 鈴木 昌, 佐々木 淳一, 並木 淳, 吉田 理, 林 松彦, 堀 進悟
    2015 年6 巻1 号 p. 52-57
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【背景】急性血液浄化療法は集中治療患者に必須な治療法であるが,本邦における救急受診患者のどれくらいの割合で急性血液浄化療法が施行されたかについての報告はない。【目的】東京消防庁から認定された三次救急医療機関として重症~軽症患者を診療する当施設における急性血液浄化の実施状況を調査した。【方法】2008年8月から2010年7月までの2年間に,救急搬入された患者12,733人を対象に,血液透析(HD),血液濾過透析(HDF),持続血液濾過透析(CHDF)が行われた頻度を調査した。【結果】救急車で来院し,緊急入院した患者2,192人(男性1,281人,年齢中央値66歳)のなかで,HD,HDFを施行した患者は85人(3.9%,男性60人,年齢中央値74歳),CHDFを施行した患者は47人(2.1%,男性30人,年齢中央値58歳)であった。以上を合計すると,急性血液浄化の対象となった患者は132人(6.0%,男性90人,年齢中央値68.5歳)であった。【考察】急性血液浄化は救急搬入した入院患者の6%に実施され,救急医療の質の確保に必須の処置であることが示された。

  • 岡島 友樹, 崎山 亮一, 安部 貴之, 石森 勇, 村上 淳, 金子 岩和, 菊地 勘, 木全 直樹, 峰島 三千男, 土谷 健, 新田 ...
    2015 年6 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    Polymethylmethacrylate(PMMA)膜はさまざまな中大分子物質を吸着除去し,とくに持続型血液浄化療法で効果的である。今回,高い抗血栓性の実現を目的に膜表面を改質した新規PMMA膜血液透析器であるNF-1.0H(NF)を従来型のBG-1.0PQ,持続緩徐式血液濾過器CH-1.0Nと比較した。実験は血流量100mL/min,透析液流量500mL/h,濾過流量1,000mL/hで行い,血液側に廃棄ヒト血漿1Lを再循環し,透析液側にサブラッドBSGをシングルパスで流した。すべての浄化器で尿素,β2-MG,α1-MG,アルブミン,サイトカインのクリアランスに大きな差はなかった。このことからNFは従来型と比べ,多くの溶質で吸着除去性能をそのまま維持していることが確認された。また,抗血栓性を高めたことにより,よりライフタイムの長い血液浄化器となる可能性が高いため,この領域での開発が望まれる。

症例報告
  • 日髙 寿美, 持田 泰寛, 真栄里 恭子, 石岡 邦啓, 岡 真知子, 守矢 英和, 大竹 剛靖, 小林 修三
    2015 年6 巻1 号 p. 63-66
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    50歳女性。3年前より発汗過多,1ヵ月前より両下腿浮腫,水様性下痢,呼吸苦を認めたため受診した。FT3 17.1pg/mL,FT4 6.87ng/dL,TSH<0.01μIU/mLより,甲状腺クリーゼと診断した。検査中に心肺停止状態となり蘇生にて心拍再開したが,呼吸・循環動態が安定せず,大動脈内バルーンパンピングや経皮的心肺補助装置の留置でも十分な昇圧が得られなかった。そのため,甲状腺ホルモン除去を目的として血漿交換療法(plasma exchange:PE)および持続血液濾過透析を施行した。1回目のPEでFT3は6.8から4.7pg/mL,FT4は4.29から2.49ng/dLと低下し,ノルアドレナリンの投与量を減量したが,末梢血管抵抗指数は636から816dyne・sec・m2/cm5と上昇し収縮期血圧は150mmHgに改善した。甲状腺クリーゼに伴う末梢血管抵抗の減弱による循環動態悪化に対しPEが著効した。

  • 山上 雄司, 中條 悟, 高原 賢守, 菅 健敬, 大場 彦明, 大西 聡, 川原 弘樹
    2015 年6 巻1 号 p. 67-70
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    当科では2007年12月に血漿交換療法(PE)を開始し,2013年8月までに63症例(男児41例/女児22例,月齢29.5±20.1ヵ月)に施行した。疾患内訳はγグロブリン不応性川崎病が51例と全症例の約8割を占め,その他肝不全,敗血症に伴う多臓器不全,若年性特発性関節炎などに施行した。平均施行回数は4.0±1.2回/症例,平均血液流量は60.0±13.3mL/minであった。当科のPEの特色として全身麻酔を含めPEに関連する一連の管理を単一科内で一貫して行う体制を整えており,迅速な施行が可能となっている。また,症例を積み重ねるなかで見出された小児特有の課題に対し改善を重ね,バスキュラーアクセスの確保,回路のプライミング,施行条件,抗凝固薬,鎮静など,現在の施行方法に至った。今後もPE対象症例は増加傾向となることが見込まれ,より安全かつ迅速なPEを目指していく。

  • 安達 普至, 吉本 広平, 臼元 典子, 鮎川 勝彦
    2015 年6 巻1 号 p. 71-73
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【症例】82歳,女性。気管支喘息に対してテオフィリン内服中であった。喘息発作を認め,近医でヒドロコルチゾン・アミノフィリンを投与後に当院に搬送された。来院時,K:3.4mEq/L,テオフィリンの血中濃度(STC):33.7μg/mLであった。同日夜にTorsade de Pointes(TdP),ventricular fibrillation(VF)を認め,第2病日にも再度TdP,VFを認めた。K:3.0mEq/L,STC:19.8μg/mLで,心電図のCorrected QT Interval(QTc):483msecだった。直接血液灌流(DHP)と持続的血液濾過(CHF)を直列回路で行い,DHPは4時間で終了し,その後はCHFのみ行った。DHP終了後のSTC:5.9μg/mLで,第3病日のSTC:2.3μg/mLでCHFを終了した。DHP施行中より心室性不整脈は消失し循環動態は安定した。【結論】本症例は,テオフィリン中毒,低K血症,QT延長などの病態が絡み合い,致死性不整脈を起こしたと考えられた。テオフィリン中毒は,血中濃度だけでなく臨床症状を含めて総合的に判断する必要があり,その治療にDHPとCHFは有効であった。

  • 澤田 真理子, 荻野 佳代, 林 知宏, 斎藤 真澄, 渡部 晋一, 脇 研自, 新垣 義夫
    2015 年6 巻1 号 p. 74-77
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児急性血液浄化療法の長期腎予後は明確にされていない。救命後,慢性尿細管障害を呈した乳児例を報告する。【症例】男児,日齢18左踵骨蜂窩織炎に対し抗菌薬治療された。日齢27左踵骨骨髄炎・膿瘍をきたし掻爬・ドレナージを施行された。日齢28創部出血からショックをきたし,当院ICUに搬送入院となった。来院時,傾眠傾向,乏尿,高K血症,凝固障害を呈した。不整脈はなく,グルコース・インスリン療法などの治療と持続的血液濾過透析を2日間施行した。日齢30 Cr値は正常化したが,Naの尿中排泄増加による低Na血症をきたし,慢性的な補正を要した。現在3歳,Na補正は中止できたが,尿細管障害は残存している。【まとめ】乳児期は尿細管機能の成熟期であり,慎重な判断を要する。長期的な腎機能の経過観察体制の構築が必要である。

  • 秋山 美奈子, 吉本 宏, 五十嵐 奈央子, 遠藤 陽子, 斎間 恵樹, 中井 歩, 山家 敏彦
    2015 年6 巻1 号 p. 78-81
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    【症例】58歳,男性。IgM-κタイプの原発性マクログロブリン血症(WM)であり,パラプロテイン沈着による末梢神経障害と急速に進行した腎不全を伴っており,維持透析を要した。WMに対し,化学療法を行ったが,副作用により断念,以後血液浄化療法による軽鎖除去を継続している。今回,透析条件などを変更し,除去率,除去量,クリアスペース(CS)を検討することでより効果的な軽鎖除去方法を検討した。【結果】除去率では,Ⅴ型ダイアライザの血液濾過透析(HDF)で高値であった。スピアマン順位相関係数検定ではκ鎖とβ2-MG, λ鎖とα1-MGで有意な相関を認めた。除去量では,PMMA膜の血液透析(HD)で最も高かったが,アルブミン(alb)の漏出も認めた。【まとめ】軽鎖除去において,除去に優れるⅤ型,PMMAともにalbの漏出が多い傾向にあり,透析方法検討の際は患者の栄養を始めとした全身状態への配慮が必要と思われた。今後も測定方法を含めさらなる検討が必要であり,症例の蓄積が望まれる。

  • 澤野 宏隆, 大山 慶介, 吉永 雄一, 夏川 知輝, 林 靖之, 甲斐 達朗
    2015 年6 巻1 号 p. 82-85
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    ECMO管理を要したインフルエンザ肺炎による重症呼吸不全に対してEVLWとPVPIを指標にCHDFで体液コントロールを行った症例を報告する。症例は50歳男性。人工呼吸器で管理不能な重症呼吸不全の治療目的で当院へ転院した。両側肺に高度びまん性浸潤影を認め,PaO2/FiO2は79.3と低下しておりECMOを導入した。気管支洗浄液からインフルエンザA/H1N1pdm09を検出しペラミビルの投与を行った。経肺熱希釈モニタリングでEVLW 32mL/kg,PVPI 6.7と著明な血管透過性亢進を伴う肺水腫を呈していた。EVLW・PVPIを指標にCHDFで除水を行ったところ次第に肺の透過性や酸素化能は改善して第39病日にECMOを離脱,第96病日に自宅退院した。重症肺病変の改善には長期間にわたるECMO管理とCHDFによる厳格な体液管理が有効で,EVLW・PVPIは除水量の指標になることが示唆された。

  • 佐藤 英一, 松村 大輔, 野村 まゆみ, 天羽 繭子, 井上 恵一, 亀山 伸吉, 小川 佳昭, 斉藤 和彦, 長崎 剛久, 安部 慎太朗 ...
    2015 年6 巻1 号 p. 86-89
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    79歳男性,呼吸苦を主訴に近医受診,呼吸不全を呈し当院入院となった。血液検査および画像検査所見から腎障害を伴わない急性間質性肺炎と診断した。ステロイド治療を開始したが呼吸不全が持続し第4,5病日にpolymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion(PMX-DHP)療法を施行した(各6時間)。第7病日P/F比67→165と改善も両側気胸を生じ呼吸不全が進行,第20病日に死亡した。尿L-type fatty acid binding protein(L-FABP)はPMX-DHP前104.3μg/g.Cre,第7病日40.8に低下,呼吸不全の進行とともに第15病日314.6に上昇した。尿L-FABPと血清乳酸値は同じ挙動を呈しており,呼吸不全が全身組織酸素代謝の悪化や近位尿細管虚血に影響し,PMX-DHPによりこれらが改善し得た可能性が示唆された。

短報
技術・工夫
  • インタラクティブセッション 急性血液浄化施行方法の標準化
    中永 士師明
    2015 年6 巻1 号 p. 92-96
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    血漿交換は血球成分と血漿成分に分離し,血漿成分を破棄してFFPなどの置換液で補充する治療法である。単純血漿交換では病因物質を含んだ血漿成分,とくに蛋白結合物質や免疫複合体などの高分子物質なども非選択的に除去できるため,適応疾患は多い。しかし,FFPを用いた場合にはクエン酸の上昇に伴う高ナトリウム血症,低カルシウム血症,代謝性アルカローシスといった副作用が起こりうる。そのため,施行時間の調整,CHDFの併用,選択的膜型血漿分離器を用いた血漿交換などさまざまな工夫が各施設で行われている。今回のインタラクティブセッションから適応疾患,施行方法,施行時間などについて,標準化できる部分とまだまだ検討の余地がある部分とが混在していることが明らかになった。血漿交換の標準化のためには,今後も今回のような企画が継続されることが望まれる。

  • 芝田 正道, 小川 哲也, 小林 利通, 川名 由浩, 樋口 千恵子, 磯谷 栄二, 日暮 久美子, 似内 武敏, 福田 廣光, 中澤 速和 ...
    2015 年6 巻1 号 p. 97-101
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2022/05/10
    ジャーナル フリー

    血液浄化療法における体外循環では常に空気混入や回路離断による出血などの危険性を伴い,長時間の治療を要する持続的血液浄化療法においてはその危険性はさらに高まるため,リスクマネジメントやセーフティマネジメントへの取り組みが必要かつ重要である。今回,われわれは軽微ミス報告システムを導入し解析を行った。医療安全に対する医療スタッフへの教育は必須であり,いかに浸透させて形骸化させないかが重要となる。

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