日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
10 巻, 2 号
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特別寄稿
  • 酒井 清孝, 福田 誠, 滑川 亘希
    2019 年10 巻2 号 p. 73-88
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    Thomas Grahamが拡散の原理を1854年に発見し,Dow Chemical社が1968年に中空糸型血液浄化器の量産を始めてから,血液浄化技術は大きな進化を遂げた。その中でも血液浄化膜の進歩には特筆すべきものがあり,特に高分子の合成と中空糸膜の製膜技術などの工業化学を巻き込んだ進歩は一大医療機器産業へと発展した。さらに,顕微鏡観察技術などの評価法が確立され,並行して理論的・定量的アプローチによる膜透過理論が進化した。そうした膜科学と実用化技術は,米国,ドイツおよび日本が先行するが,最近は中国,インドおよび中東諸国の追い上げがすさまじい。血液浄化膜のイノベーションは中空糸膜とポリスルホン膜の登場であった。そこでこの特別寄稿では,血液浄化膜の誕生とその後の進化についてレビューする。血液浄化膜の最新技術について生体適合性と膜透過理論という二つの観点から検討し,今後の持続的および破壊的イノベーションにも触れたい。

総説
  • 今求められる機能と標準化
    峰松 佑輔, 南 茂, 高階 雅紀
    2019 年10 巻2 号 p. 89-96
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    集中治療領域で使用している血液浄化装置は,これまでたくさんの変遷を重ねながら安全面や操作面など臨床で求められるものへと発展を遂げてきた。しかし,これらに関連した医療事故は一向になくならない。このような医療事故を未然に防ぐためには,医療機関と製造販売業者が連携する環境づくりが必要なのはもちろん,装置本来のパフォーマンスを発揮できるように日ごろから整備する体制を整えておくことが重要である。本稿では,集中治療領域における血液浄化装置の開発の歴史において,その操作者と装置間に存在するマンマシンインターフェースに焦点を絞り,操作性と安全性について人間工学的な観点から見つめなおし,将来の血液浄化装置に求められる機能と展望について未来志向な内容も含めて提示する。

解説
  • 末光 淳輔
    2019 年10 巻2 号 p. 97-101
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)で使用される濾過器には,1.長時間使用可能であること,2.生体(血液)適合性に優れていること,3.透水性能と除去性能に優れていること,が求められる。持続緩徐式血液濾過器エクセルフローは,生体適合性に優れたポリスルホン中空糸にグラジエント構造を持たせ,シャープな分子量分画特性と高い透水性能を持つ。また,透析器と比較して大内径の中空糸を,内径が太く,有効長の短い(低L/D) 容器に収めることで,圧力損失を低く抑制し,血球への刺激低減を図った。さらに,長時間の治療を実現するために,CRRT専用濾過器としてヘッダー構造やウレタン面などに血液の滞留を抑制するなどの改良を行った。本稿では,それらの設計思想や特徴を物理的特性などを交えて紹介するとともに,我々が考える最適な持続緩徐式血液濾過器について報告する。

第29回日本急性血液浄化学会学術集会 Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
原著
  • 竹本 雄一, 森山 和広, 山下 千鶴, 原 嘉孝, 西田 修
    2019 年10 巻2 号 p. 106-110
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    敗血症,肺炎等で当院ICUに入室し間歇的高効率血液浄化法(SHEDD-fA)を施行中の患者の理論上のクリアスペース率から推定したバンコマイシン(VCM)の投与方法が,有効血中濃度を維持できるかについて後方視的に検討した。解析対象となった症例は6症例7施行分でありSHEDD-fA施行中に6時間毎にVCM1.0gが投与された症例を検討した結果,SHEDD-fA開始時,6時間後,12時間後のVCMの血中濃度の中央値はそれぞれ20.5μg/mL(13.9〜22.6),18.4μg/mL(17.1〜22.3),19.7μg/mL(16.4〜21.4)であった。対象症例には自己腎機能が保たれている症例,血液浄化に依存している症例が含まれており,高効率血液浄化療法中のVCM投与は自己の残腎機能によらず一定の投与量で血中濃度を維持することができる可能性が示唆された。SHEDD-fAと同等の血液浄化量で施行されるHDFやSLEDDの場合でも同じことが言えると考えられる。

  • 竹内 正志, 中島 正一, 東 治道, 阪本 雄一郎
    2019 年10 巻2 号 p. 111-114
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    sequential organ failure assessment(SOFA)スコアとHEpatic failure, LactatE, NorepInephrine, medical Condition, and Creatinine(HELENICC)スコアにて当院のcontinuous blood purification(CBP)施行患者94例の長期予後予測を行い,HELENICCスコアの長期予後予測が可能であるか検討を行った。SOFAスコア,臓器毎のSOFAスコア,HELENICCスコアを28日,90日生存・死亡で検討した。またSOFAスコアとHELENICCスコアのROC曲線のAUC面積算出とその比較を行った。結果は,SOFA,HELENICCスコア共に死亡群で高値を示した。28日で肝,凝固,循環,90日で凝固,循環が予後規定因子として選択された。ROCは2つのスコア共に中等度の予測能を示し,ROCのAUCに差はなかった。以上より,CBP施行患者にとって肝,凝固,循環不全が予後を悪化させ,HELENICCスコアはCBP患者の長期予後予測能を持つ可能性がある。

  • 千野 有紀子, 中ノ内 恒如, 岡崎 哲也, 青柳 就介, 石井 里奈, 池田 貴之, 鈴木 惟司, 木林 卓弥, 新部 友子, 西端 純司 ...
    2019 年10 巻2 号 p. 115-118
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    【目的】DIC(disseminated intravascular coagulation)を合併していた病態でAN69ST膜を使用したCHDF(continuous hemodiafiltration)を施行した症例における,リコンビナントトロンボモジュリン製剤(rTM)投与の有無と,濾過器および回路トラブルの関連性を検討した。【方法】急性期DICスコアが4点以上であり抗凝固薬としてメシル酸ナファモスタットを使用した42例をrTM投与群と非投与群に分け,濾過器および回路トラブル発生率,目標治療時間達成率を検討した。【結果】投与群において濾過器および回路トラブル発生率は有意に低く,目標治療時間達成率は有意に高かった。【結語】DIC治療としてのrTM使用は,膜・回路トラブルの回避に有効である可能性がある。

  • 堀 和芳, 石田 等, 並木 陽一, 安池 智一, 東 千秋
    2019 年10 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    重症敗血症に対する持続的血液浄化療法に用いられる,polymethylmethacrylate(PMMA)膜,AN-69ST膜などのヘモフィルターは,膜自身の陰性荷電によりサイトカインの高い吸着能を示しているが,長時間におよぶ治療のため,血小板および凝固因子の付着による目詰まりが問題となっている。今回,抗血栓性の高いヘモフィルター用の膜を開発すべく,血管内皮と同様の構造を持つリン脂質2-methacryloylox-yethyl phosphorylcholine polymer(MPCポリマー)とacrylonitrile(AN)を共重合したpolyacrylonitrile(PAN)MPCポリマーを作成し,既存のPAN膜(AN69膜)に被覆法にてコーティングした。コーティングした膜を24時間実験用ウサギ新鮮血に浸し,走査型電子顕微鏡にて抗血栓性を検証した結果,ノンコーティングPAN膜は血小板が散在していたのに対し,PAN-MPCコーティングPAN膜は血小板の付着が認められなかった。

  • 稲野 祥宗, 熊野 諒太, 篠﨑 浩司, 尾崎 洋介, 三浦 剛, 仲佐 啓詳
    2019 年10 巻2 号 p. 125-130
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    AN69ST膜hemofilterはcytokineに対して高い吸着能を有するが,治療に用いる抗菌薬に対しても吸着除去することが懸念されている。そこで,メロペネム(MEPM),パズフロキサシン(PZFX),セフォゾプラン(CZOP),バンコマイシン(VCM),テイコプラニン(TEIC)についてin vitroの実験系でAN69ST膜に対する吸着の影響を検討した。抗菌薬溶液にAN69ST膜を加えた後,経時的に溶液を分取し吸光度を測定した。その結果,TEIC,PZFX,VCMはAN69ST膜を加えなかった溶液と比較し含有率が減少したが,MEPMとCZOPは減少しなかった。よって,TEIC,PZFX,VCMはAN69ST膜に吸着し除去されたと考えられ,AN69ST膜hemofilter使用中に用いる場合は吸着による抗菌薬の血中濃度減少を考慮し投与量を設定する必要があると示唆された。

症例報告
  • 吸着の原理の可能性
    樋上 拓哉, 原 嘉孝, 西田 修
    2019 年10 巻2 号 p. 131-134
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    血液浄化の原理は,透析,濾過,吸着である。ミオグロビン(Mgb)は分子量17800Daの中分子量物質であり,透析の原理で除去できない。濾過の原理に着目し,high cut-off膜を用いる方法が報告されているが,アルブミン喪失が問題となる。吸着の原理は膜素材と溶質の相互作用によるため,膜の吸着特性がMgbと合致すれば除去できる可能性がある。しかし,Mgb除去に関して吸着の原理に着目した報告はない。今回我々は,高Mgb血症の患者に対し,AN69ST膜を用いたcontinuous hemofiltration (AN-CHF)およびpolymethylmethacrylate(PMMA)膜を用いた間歇的高効率血液浄化療法(sustained high-efficiency daily diafiltration using a mediator-adsorbing membrane:SHEDD-fA)を施行しMgbクリアランスを算出した。Mgb 197328 ng/mlと著明な上昇を認め,AN-CHF(QB:150ml/min,QF:1000ml/h)を開始し,その後SHEDD-fA(QB:150ml/min,QD:300ml/min,QF:1250ml/h)に変更した。AN-CHFの血液クリアランスは9.1ml/minであり,SHEDD-fAは37.9ml/minであった。ふるい係数が1.0の物質でさえSHEDD-fAの理論的濾過クリアランス限界値は20.8ml/minにすぎず,SHEDD-fAの血液クリアランスは非常に高い。Mgbの分子量を考慮すると吸着の原理の関与が考えられた。

  • 勝田 賢, 幸村 英文, 河田 耕太郎, 原 嘉孝, 栗山 直英, 中村 智之, 中島 葉子, 伊藤 哲哉, 西田 修
    2019 年10 巻2 号 p. 135-138
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    新生児高アンモニア(NH3)血症においては,迅速なNH3値の低下が望まれる。急性血液浄化療法は強力なツールではあるが,新生児では十分な血流確保など困難が伴ううえ,至適な施行条件は定まっていない。血液浄化の原理からして,十分なクリアランスを得るためには,血液流量(Qb)の確保とその2倍以上の透析液流量(Qd)が必要である。我々は,先天性代謝疾患により,高NH3血症を呈した新生児2症例に対して,QbとQdの比率を保ちつつ,徐々に効率を上げることで安全に持続的血液透析(CHD)を施行できた。症例1ではQb 3.57mL/kg/min,Qd 1200mL/h=7.14mL/kg/h,症例2ではQb 4.55mL/kg/min,Qd 1800mL/h=9.09mL/kg/minまで効率を上げたところ,NH3値の低下を認めた。新生児高NH3血症に対しては,少なくともQb 3.5mL/kg/min以上とその2倍のQdを確保したCHDがNH3値低下に効果的であると思われる。

  • 白前 達大, 澤田 博文, 最明 裕介, 加藤 隆史, 佐生 喬, 山田 昌子, 伊藤 貴康, 村田 智博, 石川 英二, 大橋 啓之, 盆 ...
    2019 年10 巻2 号 p. 139-142
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    エンドトキシン吸着療法(PMX療法)は敗血症の治療に用いられている。低容量カラムが開発され,新生児領域でもPMX療法が施行可能となった。今回,B群溶血性連鎖球菌(GBS)により敗血症に至った生後3日の新生児に対しPMX療法を含めた血液浄化療法を行い,救命した。在胎期間36週,出生体重2504g。生後3日目に血圧維持が困難であり,プロカルシトニンが高値を示したため,敗血症と診断され,血液浄化療法を施行した。PMX療法の導入後より呼吸・循環の改善を認め,53時間で血液浄化療法を離脱した。低容量カラムを用いることで新生児領域においても血液浄化療法が施行可能であった。

技術・工夫
  • 北原 良明, 岸野 留美子, 恒川 将大, 趙 承宗, 加藤 ゆり, 秦 慧児, 玉木 良宙, 中野 薫, 首藤 隆太, 樽井 滋郎, 宇津 ...
    2019 年10 巻2 号 p. 143-147
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2022/01/08
    ジャーナル フリー

    個人用透析システムにおけるエンドトキシン(ET活性値)と生菌数の低減のため,RO水循環ユニットを開発し,集中治療室に準拠した設備環境を備えた4人床の重症部屋(機能的ICU)に導入した。本システムは,主にROタンクと循環ポンプで構成された装置であり,個人用RO装置からのRO水の給水を受け,ループ配管へRO水を供給する。今回,本システムのRO水循環ラインにおいてET活性値と生菌数の測定を行い検討した。検体の採取を,本システムの給水ライン,供給ライン,ROタンク内で行い,ET活性値は<0.0001EU/mL(測定感度未満),生菌数は0〜0.03CFU/mLを維持することができた。本システムの使用により,良質なRO水を維持でき,安定供給が可能となるため,個人用透析システムにおいて有用であると考える。

Letter to the editor─技術・工夫 「個人用透析システムにおけるRO水循環ユニットの有用性」へ向けて
Letter to the editor ─Letter to the editor「急性血液浄化における水質管理のあり方」へ向けて
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