日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
3 巻, 2 号
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総説
  • 松村 洋輔, 貞広 智仁, 仲村 将高, 渡邉 栄三, 安部 隆三, 中田 孝明, 森田 泰正, 大島 拓, 織田 成人
    2012 年 3 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    Severe sepsis/septic shockの病態生理にサイトカインをはじめとする各種メディエータが重要な役割を果たしており,PMMA膜を用いた持続的血液濾過透析(PMMA-CHDF)によるサイトカイン吸着除去を中心とした集中治療は良好な治療成績をもたらしてきた。一方で時折遭遇するrefractory septic shockにおいて,サイトカイン除去強化を企図してenhanced intensity PMMA-CHDF(EI-CHDF)を施行することで循環動態やICU生存率改善へ寄与することが示唆された。各種血液浄化法の特性と比較したうえでも,PMMA-CHDFは臨床的に有用性が高いと考えられた。さらに血液浄化法強化は,refractory septic shockだけでなくtoxic shock-like syndromeやgenetic high risk症例への早期導入が有効と考えられる。

  • 小路 久敬
    2012 年 3 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    欧州およびアジア諸国の一部で,PMXの臨床応用が始まっており,日本国内と同様に安全に使用されている。腹腔内感染症に伴い,術後も敗血症性ショックの持続する症例は,良い適用とされ,循環動態の改善は,等しく報告される効果の一つである。一方で,PMX適用の論理的合理性が,強く求められている。これには,エンドトキシン血症の迅速診断が必要で,一部の国々で,EAA法が採用されている。PMX治療のエビデンスの確立に向けて,フランス(ABDO-MIX)と北米(EUPHRATES)で,2つの臨床試験が進行中である。PMX治療の作用機序解明は,重要な研究課題である。メディエータの制御,免疫担当細胞の吸着除去による免疫調節の仮説などが提案されている。臨床での現象論的な観察から本質論に迫るためには,PMXの役割と,それに伴って臨床で起きる生物化学的変化を明確にする,さらなる研究が必要である。

原著
  • 中條 悟, 高原 賢守, 菅 健敬, 大場 彦明, 川原 弘樹
    2012 年 3 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    小児中核病院として機器を導入した平成19年12月から平成23年9月までの3年10ヵ月間に35名の患児に対して急性血液浄化療法を施行し,施行方法に関して標準化を進めてきた。カテーテルは,全身麻酔下にて,新生児には6Fr,乳児以降には7Frを右内頸静脈より挿入している。体重10kg未満の患児ではアルブミン(新生児は10%,乳児以降は5%アルブミン)で回路を充填し,回路循環後,新生児に対しては除水を併用し急速輸血を行っている。血液流量は新生児で25mL/min,乳児以降で50mL/minとしている。持続透析の透析液流量は,急性腎不全で500mL/hr,急性肝不全・代謝疾患でQd/Qb=1.0で開始している。血漿交換の場合,5%アルブミンまたは新鮮凍結血漿を置換液とし,置換量は80mL/kgとしている。標準化・簡素化することで迅速に導入することが可能となっており,今後救命率の向上が期待できる。

  • 持田 泰寛, 安 武夫, 松元 加奈, 森田 邦彦, 岩上 将夫, 古谷 玲, 堤 大夢, 石岡 邦啓, 真栄里 恭子, 岡 真知子, 守矢 ...
    2012 年 3 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    持続的血液濾過透析(CHDF)施行下のメロペネム(MEPM)の薬物動態の検討は,本邦では十分とはいいがたい。そこで,わが国で一般的に行われているCHDF施行下のMEPMの薬物動態と至適投与量を検討した。対象は敗血症と診断され無尿ないし無尿に近く,CHDFを要した患者8名で,MEPMは0.5gを1日2回12時間毎に点滴静注した。8名中4名はPS膜,4名はPMMA膜を使用し,血中濃度推移とtime above MIC(%T>MIC)を検討した。MEPMの%T>MICが40~50%以上を有効と定義すると,今回の検討では,MEPMに対するMIC が4μg/mL以下の細菌が対象の場合には,MEPM 0.5g 1日2回投与で十分治療しうる%T>MICに到達することが確認された。血中濃度の膜による差は認めなかった。重症感染症を有する患者ではcriticalとなるため,CHDF下での適切な投与量設定が重要である。

  • 平田 学, 松田 愛, 前田 知香, 奥 比呂志, 山崎 正記, 天谷 文昌, 小牧 和美, 萩原 暢久, 中ノ内 恒如, 佐和 貞治
    2012 年 3 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    Acute Kidney Injury(AKI)の背景は多様で比較困難なため術後集中治療(ICU)管理AKI症例に限定,検討した。対象と方法:術後ICU管理AKI 27例をrenal replacement therapy(RRT)施行有無で分類(R群,NR群)。群間でsequential organ failure assessment(SOFA)スコアを中心に比較した。またSOFAスコア,RRT施行を独立因子,術後年内死亡(年内死)を従属因子としロジスティック回帰分析を行った。結果:R群でSOFAスコア高値も,年内死割合に差はなかった。ロジスティック回帰分析上有意差はなかった。考察:SOFAスコアは年内死予測に有用でなかった。またR群の重症度,上記回帰分析の結果を総合するとRRT介入の有用性は否定されなかった。鋭敏な新たなバイオマーカーとそれを用いた介入が重要と考える。

  • 土濃塚 広樹, 久木田 和丘, 目黒 順一, 米川 元樹, 川村 明夫
    2012 年 3 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    造血幹細胞移植後早期の症例に血液浄化が必要となった場合,感染予防の観点からクリーンルーム(CleanRoom:以下CR)で行うことがある。本研究では,CRに血液浄化装置を搬入する際の環境検査を行った。血液浄化装置を対象とし,2種の除菌洗浄剤にて対象部位を洗浄した後,清浄度検査としてアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:以下ATP)およびアデノシン一リン酸(adenosine monophosphate:以下AMP)拭き取り検査を実施し相対発光量(Relative Light Unit:以下RLU)を測定した。管理基準値として,患者用テーブルなど凹凸のない平面部に汎用されている200~500RLUを適用した。洗浄直後では管理基準値外の検体もあったが,洗浄15時間後では採取場所や薬剤に関わらず測定部位の相対発光量は管理基準値内および基準値以下に低下していた。CRなどの特殊な環境下に血液浄化装置を搬入する場合は,治療前に洗浄することで清浄度を適切に管理でき感染の発生リスクを軽減できると考えられる。

  • 倉島 直樹, 大久保 淳
    2012 年 3 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    持続的血液浄化療法(CBP)における回路内凝固が検査データから危険因子を予測できるか検討を行った。対象は2009年11月~2011年8月までに当院でCBPを施行した96例中,ER-ICUで7日間以上継続し,24時間以内に回路凝固を認めた15例である。その15例の全治療日数は合計285日で治療期間中における連日の検査データを多変量解析し,回路内凝固に影響を及ぼす危険因子を同定した。緊急回路交換を要する危険因子としては,Hct 25%以下(HR:3.189,95%CI:1.606~6.335,P=0.0009),Fbg 350mg/dL以上(HR:4.266,95%CI:1.082~16.826,P=0.0382),FDP 30μg/dL以上(HR:3.077,95%CI:1.275~7.425,P=0.011)の3項目であった。回路内凝固の危険因子は,過凝固状態を示すFbg,FDP値の上昇とHct低値であった。Hct 25%以下,Fbg 350mg/dL以上,FDP 30μg/dL以上の症例では,回路内凝固の予測が可能であり,抗凝固剤の検討や回路交換時期の配慮が必要である。

  • 小児急性血液浄化ワーキンググループからの報告
    永渕 弘之, 和田 尚弘, 吉村 仁志
    2012 年 3 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦における小児急性血液浄化療法の実態を調査した。【方法】平成19年7月から平成20年7月までに15施設においてacute blood purification(ABP)を施行した20kg以下の小児50例(新生児~幼児)を対象とした。ABPの治療条件および28日生存率に関して検討した。【結果】敗血症,先天性代謝異常症,急性腎不全などの占める割合が高かった。バスキュラーアクセスは内頸静脈に6~8Frのダブルルーメンカテーテルが用いられていた。モジュールは0.3m2のものが汎用されていた。抗凝固剤は86.0%の症例でナファモスタットメシル酸塩が使用されていた。10kg以下の症例ではプライミング溶液に赤血球濃厚液が用いられていた。血液浄化量は体重,病態に応じ,適宜増減されていた。28日生存率は80.0%であった。【結論】20kg以下の小児に対しても市販の治療材料を用いて安全にABPの施行されていることが確認された。今後は,病態毎に治療条件を設定するなど小児ABPの標準化が必要であると考えられた。

症例報告
  • 今井 徹朗, 篠田 真教, 木嶋 涼二, 安達 梢, 佐野 茂, 久木原 通, 酒井 和子, 玻座真 琢磨, 楠本 拓生, 奥田 誠也, 岡 ...
    2012 年 3 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2012/12/01
    公開日: 2022/10/12
    ジャーナル フリー

    新生児に対する血液浄化療法は本邦において施行症例数が少なく,また施行に際してプライミングボリューム,バスキュラーアクセス,循環動態に与える影響など新生児特有の問題がある。今回,新生児の高アンモニア血症に対し血液浄化(Blood Purification:BP)を行い有効であった2症例について報告する。一般に新生児領域ではプライミングボリュームを減少させなければならないといった問題がある。当院では従来より新生児に対する血液浄化は自作の血液回路で施行してきており,警報と血液ポンプが連動しないなどの問題があった。症例1はこの従来方法で施行した。一方症例2では血液浄化装置と血液回路が同一社製のものを使用し,プライミングの自動化とプライミングボリュームの減量と,さらに警報と血液ポンプが連動し安全性が向上した。新生児領域にて積極的に血液浄化が施行できるように今後も,臨床工学技士の立場から安全面などをさらに検討していく必要がある。

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