持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)施行中にDIC治療薬が投与された患者では,CRRTの回路寿命が有意に延長することが報告されている。しかし,DIC治療薬の違いによって回路寿命に差が生じるかについては明らかになっていない。そこで,CRRT施行中の患者における,リコンビナントヒトトロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin:rhTM)とダナパロイドナトリウム(danaparoid sodium:DS)の投与が回路寿命に与える影響について後方視的観察研究を行った。rhTMが投与された33回路をTM群,DSが投与された65回路をDS群として,2群間における48,72時間後の回路開存率を比較した。回路寿命に影響すると考えられる背景項目を2群間で近似させたマッチドペア解析では,48時間後においてTM群で有意に開存率が高い結果となった(83.4% vs 54.7%)。しかし,72時間後において有意差は認めなかった(62.4% vs 54.7%)。回路交換周期を48時間とする場合,rhTMはDSに比べてCRRTの回路凝固を予防する可能性がある。
今回われわれは,間質性肺炎急性増悪に対してPolymyxin B immobilized fiber column-direct hemoperfusion(PMX-DHP)を実施した症例において,カラムへの好中球吸着と肺酸素化能の改善効果との関連について検討したので報告する。症例は,81歳の男性。間質性肺炎急性増悪により当院救命救急センターへ搬送され,肺酸素化能改善目的にPMX-DHPを1回目22時間,2回目28時間施行した。1回目PMX-DHP施行後にP/F ratioは96.3から165まで上昇したが,2回目施行後にはP/F ratio 98.6へと低下した。その際にカラム前後での好中球数の変化率を算出したところ,1回目は1時間後:−32.5%,2時間後:−1.1%,6時間後:1.8%であり,2回目は1時間後:−21.4%,2時間後:−13.9%,6時間後:0%であった。間質性肺炎急性増悪患者に対してPMX-DHPを施行し肺酸素化能は一時的に改善したが,好中球吸着能と肺酸素化能の改善との関連は認められなかった。
63歳女性,総胆管結石をERCPにより排石,ERBDが留置された。処置後,急性膵炎を発症,膵酵素阻害薬等にて改善せず,polymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion(PMX-DHP)療法を実施した。PMX-DHP開始前の尿L-FABP値は485.2μg/gCreと高値を呈し急性腎障害発症は必発と考えられCHDF(PMMA膜)を行った。尿L-FABPはPMX-DHP 1回目:485.2μg/gCre⇒364.7μg/gCre,2回目:177.7μg/gCre⇒5.4μg/gCreと低下,急性膵炎も改善,腎障害悪化を認めなかった。血清Creは正常だが尿L-FABPが高値であり,血清Cre上昇に至らない早期急性腎障害を念頭に腎代替療法を実施した。急性腎障害の早期診断に尿L-FABPの有用性が示唆された。