日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
12 巻, 1 号
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Invited review
  • 川西 秀樹
    2021 年 12 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化法は慢性透析療法を起源とするものと,集中治療を起源とするものがあり,主に参加している腎臓病医と集中治療医のそれまでの教育背景が異なり意思の疎通を欠くことが多々みられた。しかし近年ではKDIGOに代表される国際ガイドラインの発刊と本邦での日本急性血液浄化学会の活動によりその垣根は少なくなった。血液浄化法の基本は腎代替療法に拠っており,急性血液浄化法の多くはそれより派生している。本稿では慢性血液浄化の歴史的展開より急性血液浄化法の発展を考察する。

  • 塚本 功, 土屋 陽平, 渡辺 裕輔
    2021 年 12 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    体外循環技術を用いた血液浄化を施行するにあたり,バスキュラーアクセス(vascular access:VA)は必要不可欠である。とくに短期留置に優れた非カフ型カテーテルは速やかに挿入し治療を開始できるだけでなく,緊急時輸液ルートなどの利便性が高いため急性血液浄化におけるVAの第一選択である。非カフ型カテーテルは挿入から留置・固定における易操作性,血液回路の着脱時における安全性,優れた送脱血性能,血管壁への低侵襲性,非感染性能などについて十分な機能が必要であるが,直接的な操作はヒトである。つまり,非カフ型カテーテルを使用するにあたっては,その特徴を理解して適切に使用されるデバイスマネジメントが重要であると考えられる。そこで,切迫した状況下で持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)が展開される救急・集中治療領域において,非カフ型カテーテルを用いて安全かつ効率的に体外循環を行うための知見をまとめ,期待されるデバイス像について言及する。

  • 鈴木 健一, 中山 拓也, 市場 晋吾
    2021 年 12 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    COVID-19症例ではBMI 30以上の患者は重症化しやすく,ECMO導入のリスクが高い。また,非ECMO症例の重症AKI発症率は決して高くないが,ECMOを要する場合は重症AKIを高頻度で併発しており,CRRTが必要となる場合が多い。重症化の要因としてサイトカインストームがあげられるため,CRRT施行の際は炎症性サイトカインに対し吸着特性のあるヘモフィルターを選択する。しかし,フィブリノゲン・フィブリン分解産物やD-dimerが上昇する傾向にあり,CRRTの治療膜が凝固しやすくlife-time短縮の原因となる。APTTなどを適宜測定し,抗凝固剤の投与量を検討する必要がある。設備によりCRRTやHDが不可能な際は,high-flow RRTを用いた治療を検討する。また,医療従事者の感染を防止するため,CRRTからの排液や使用機器の管理にも細心の注意と工夫が必要である。

  • 道越 淳一, 宮脇 宏
    2021 年 12 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス陽性患者のなかには,重度の症状を呈し,急性呼吸窮迫症候群,敗血症性ショック,多臓器不全などを引き起こし体外式臓器補助が必要になることもある。なかでも,腎臓への影響は軽度のタンパク尿からAKIまでさまざまで,持続的腎代替療法(continuous kidney replacement therapy:CKRT)を必要とする症例もある。重症患者ではサイトカインストームに類似した病態を呈することがあり,吸着膜であるAN69ST膜やPMMA膜を用いた血液浄化も選択肢となる。とくに凝固亢進状態の可能性があるため回路凝固への対策を必要とする。また,重症の肺炎患者には,人工呼吸による腹臥位療法および体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)の導入症例もあり,合併症やCKRTとの併用にも注意が必要である。管理の工夫として,膜選択,抗凝固,感染対策(装置・排液),ECMOとの併用について勘案するが,最も重要なのが現場スタッフへの感染対策である。

  • 千原 伸也, 巽 博臣, 工藤 元嗣, 升田 好樹
    2021 年 12 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    クリティカルケア領域にて施行される血液浄化療法の中心となるのは持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)で,CRRT施行時の精密性や安全性を担保するのがCRRT専用装置である。CRRT専用装置の改善は各ポンプ流量制御の精密化からはじまり,現在では,種々の安全装置も備わるものへと進化してきた。欧米の装置は前希釈CHFを施行できるが,他にも,革新的なエアードリップチャンバー形状や加温装置を備えている。一方,国産装置は前希釈CHFに対応できなかったが,現在ではTR-2020(東レ・メディカル)が上市されたことで,前希釈CHFが安全に施行できるようになった。今後,CRRT専用装置の進歩の余地は残されていないかもしれないが,災害などに対応できるよう消費電力を抑制できるモードの開発や小型化,運搬性の向上などの進歩は期待できる。省電力化,小型化,運搬性に優れた装置が開発できれば,CRRTの活躍フィールドはさらに広がるであろう。

  • 山田 博之
    2021 年 12 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    20世紀に血液透析治療が腎不全患者に行われるようになって以来,急性血液浄化療法はさまざまな重症疾患の治療に応用されている。ここでは,血液浄化の対象疾患となることの多い急性腎障害(acute kidney injury:AKI),敗血症,そして新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)に焦点をあてて,近年改訂されたガイドラインの内容を紹介する。AKIに関しては,Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)ガイドラインの改訂に向けた議論が行われ,患者との円滑なコミュニケーション,病状に合わせた腎代替療法の提供が勧められている。敗血症ガイドラインでは,本邦のガイドラインが改訂され,腎代替療法の導入タイミングについて大きく変更されている。COVID-19については,さまざまな団体から腎代替療法の治療条件,感染管理,回路凝固などの推奨が提示されている。

  • 橋田 知明, 大島 拓, 中田 孝明
    2021 年 12 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    敗血症の新しい定義では,臓器障害への進展が重要視されている。敗血症の病態には高サイトカイン血症による過剰な生体反応が大きくかかわっており,それを制御する治療法の一つとして,血液浄化法が施行されている。そのなかでも,サイトカイン吸着能を有する血液浄化膜を用いて行う血液浄化法は,その有用性が報告されている。しかし,各種ガイドラインで指摘されているように,高いエビデンスレベルを持った研究はいまだ少ない。サイトカインの1種であるInterleukin-6(IL-6)に着目した研究で,高サイトカイン血症と急性腎不全との関連,そして多臓器障害との関連性が明らかになってきた。敗血症の治療では,その病態生理からも,臓器障害へ至る前に早期の血液浄化法の導入が必要であると考えられる。IL-6血中濃度のような有用なバイオマーカーを測定し,サイトカインに基づいた治療を行うことで,この領域で質の高いエビデンスを創り出すことが望まれる。

原著
  • トロンボモジュリンとダナパロイドの比較
    下村 太郎, 佐上 善昭, 白井 勇希
    2021 年 12 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)施行中にDIC治療薬が投与された患者では,CRRTの回路寿命が有意に延長することが報告されている。しかし,DIC治療薬の違いによって回路寿命に差が生じるかについては明らかになっていない。そこで,CRRT施行中の患者における,リコンビナントヒトトロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin:rhTM)とダナパロイドナトリウム(danaparoid sodium:DS)の投与が回路寿命に与える影響について後方視的観察研究を行った。rhTMが投与された33回路をTM群,DSが投与された65回路をDS群として,2群間における48,72時間後の回路開存率を比較した。回路寿命に影響すると考えられる背景項目を2群間で近似させたマッチドペア解析では,48時間後においてTM群で有意に開存率が高い結果となった(83.4% vs 54.7%)。しかし,72時間後において有意差は認めなかった(62.4% vs 54.7%)。回路交換周期を48時間とする場合,rhTMはDSに比べてCRRTの回路凝固を予防する可能性がある。

  • 山崎 竜魅, 小田 裕一, 矢野 武志, 谷口 正彦, 白阪 哲朗
    2021 年 12 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    当院の持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)に使用する抗凝固剤は,メシル酸ナファモスタット(nafamostat mesilate:NM)を第一選択としている。活性化全血凝固時間(activated clotting time:ACT)を指標としてNMの投与量を調節している。ACTには明確な基準がなく血液凝固によって回路閉塞を認めることもあるため,至適ACTについて検討した。対象はNMを使用してCHDFを実施した成人47症例で,血液濾過器出口側ACT(H-ACT)と動脈血側ACT(A-ACT)を測定した。H-ACTは48時間治療継続できた群(346±94.1s)と48時間以内に回路閉塞した群(261±92.5s)で有意差を認めた(P<0.001)。H-ACTを高値で管理すると回路閉塞のリスクが下がることが示唆された。また,ROC曲線解析から治療達成のカットオフ値は271秒(特異度69.6%,感度85.1%)とした場合,H-ACTは271秒以上が適切であることが示唆された。

症例報告
  • 西川 真那, 島田 典明, 安西 芳輝, 澤田 真理子, 池上 徹則, 福岡 敏雄, 浅野 健一郎
    2021 年 12 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    40歳台,女性。数時間前に量は不明もクレゾール石鹸液を飲み,嘔吐と意識障害をきたしたため搬送された。搬送時Glasgow Coma Scale 1-1-1,血圧 100/62mmHg,SpO2 99%(バッグバルブマスク換気)であった。頭頸部の約50%にクレゾールによる化学熱傷を認め,血清Crは0.97mg/dLであった。高カリウム血症のため第1病日から持続的血液透析を開始した。透析時も含め平均血圧を輸液や昇圧薬で65mmHg以上に維持し,体液量も適正に保った。その後尿量が低下し血液透析(HD)も要したが,13日間の乏・無尿を経て第21病日にHDを離脱でき,約9ヵ月後には血清Cr値が0.76mg/dLまで改善した。クレゾール中毒は腎臓を含め多臓器不全の原因となり,とくに経皮吸収では肝でのファーストパスエフェクトがないため毒性が出やすい。経皮吸収も加わったクレゾール中毒では腎障害や腎保護により注意を払う必要がある。

  • 山﨑 慎太郎, 鳩本 広樹, 宮川 幸子, 星野 耕大, 入江 悠平, 仲村 佳彦, 川野 恭雅, 喜多村 泰輔, 石倉 宏恭
    2021 年 12 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,間質性肺炎急性増悪に対してPolymyxin B immobilized fiber column-direct hemoperfusion(PMX-DHP)を実施した症例において,カラムへの好中球吸着と肺酸素化能の改善効果との関連について検討したので報告する。症例は,81歳の男性。間質性肺炎急性増悪により当院救命救急センターへ搬送され,肺酸素化能改善目的にPMX-DHPを1回目22時間,2回目28時間施行した。1回目PMX-DHP施行後にP/F ratioは96.3から165まで上昇したが,2回目施行後にはP/F ratio 98.6へと低下した。その際にカラム前後での好中球数の変化率を算出したところ,1回目は1時間後:−32.5%,2時間後:−1.1%,6時間後:1.8%であり,2回目は1時間後:−21.4%,2時間後:−13.9%,6時間後:0%であった。間質性肺炎急性増悪患者に対してPMX-DHPを施行し肺酸素化能は一時的に改善したが,好中球吸着能と肺酸素化能の改善との関連は認められなかった。

  • 佐藤 英一, 出川 まなか, 小野 貴央, 魯 紅梅, 松村 大輔, 野村 まゆみ, 森山 憲明, 天羽 繭子, 井家 麻紀子, 加藤 慶三 ...
    2021 年 12 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    63歳女性,総胆管結石をERCPにより排石,ERBDが留置された。処置後,急性膵炎を発症,膵酵素阻害薬等にて改善せず,polymyxin B immobilized fiber column direct hemoperfusion(PMX-DHP)療法を実施した。PMX-DHP開始前の尿L-FABP値は485.2μg/gCreと高値を呈し急性腎障害発症は必発と考えられCHDF(PMMA膜)を行った。尿L-FABPはPMX-DHP 1回目:485.2μg/gCre⇒364.7μg/gCre,2回目:177.7μg/gCre⇒5.4μg/gCreと低下,急性膵炎も改善,腎障害悪化を認めなかった。血清Creは正常だが尿L-FABPが高値であり,血清Cre上昇に至らない早期急性腎障害を念頭に腎代替療法を実施した。急性腎障害の早期診断に尿L-FABPの有用性が示唆された。

短報
技術・工夫
  • 八反丸 善裕, 下田 純平, 室 あゆみ, 厚美 菜々子, 土井 研人
    2021 年 12 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    本研究では血液浄化装置から出力される各種データを,持続的に記録可能なネットワークシステムを構築することにより,遠隔モニタリングと圧力変化などのリアルタイムな評価を可能とすることを目的とした。血液浄化装置との通信により動作履歴を取得するアプリケーションを作成し,権限を与えられたPCがデータの抽出および,ネットワークHDD(NAS)への伝送を可能とした。本システムにより各種圧力データの変化率を算出,自在なトレンドグラフの作成も可能となり院内ネットワーク上のNASを使用することで,さまざまな場所での情報管理が可能となった。血液浄化装置から取得可能なデータをリアルタイム蓄積・集約し,さまざまな場所で遠隔活用できるシステム構築は,血液浄化装置管理の質向上に貢献できると考えられる。

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