日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
13 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
第32回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
総説
  • 小丸 陽平, 土井 研人
    2023 年 13 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化療法は,とくに腎障害を合併した重症者管理における主要な治療手段の一つである。急性血液浄化療法開始の至適タイミングについては,近年相次いで大規模なランダム化比較試験の結果が報告され,急性腎障害のステージ分類や経過時間のみに依拠した「早期開始」に臨床アウトカム改善効果が乏しいという結果が多かった。一方,急性血液浄化療法の離脱時期についての検討は少なく,尿量を参考としつつも担当医がおのおの離脱時期を決定しているのが現状である。本稿では急性血液浄化療法の開始・終了時期についての既存のエビデンスに触れた上で,最近実施された「バイオマーカーによる持続的腎代替療法実施患者の生命予後および離脱成否の検討(多施設前方視的観察研究)」について報告する。開始時の尿中NGALや血中IL-6は患者の生命予後と関連し,離脱時の尿中NGALは離脱成功を予測する指標となる可能性が示唆された。

第32回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • PMXの使用経験
    窪田 彬, 風呂 正輝, 渋谷 陽平, 鈴木 俊郎, 柴原 宏
    2023 年 13 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    COVID-19肺炎に対する治療法としてpolymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion(PMX-DHP)の報告が散見されている。今回,COVID-19肺炎患者29例にPMX-DHPを施行した。PMX-DHP施行前後で,血液検査上はinterleukin-6とCRPが有意に減少していた(p=0.022,p=0.033)。PMX-DHP施行後,酸素投与量が減少した21例(72.4%)は重症度にかかわらず全例生存したが,酸素必要量が増加した8例中6例が死亡した。PMX-DHPはCOVID-19肺炎におけるサイトカイン吸着や呼吸状態の改善に寄与する可能性が考えられた。12例に回路内凝固を認め,COVID-19肺炎による凝固能異常の存在が示唆された。今後も症例数を増加させた検証が必要である。

原著
  • 吉田 圭介, 山香 修, 木下 正啓, 内村 鴻一, 福田 理史, 平湯 恒久, 中村 篤雄, 山下 典雄, 高須 修
    2023 年 13 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【目的】小児・新生児では,持続的急性血液浄化療法(CBP)施行中に低体温に陥りやすい。急性血液浄化装置では補充液加温と血液加温のいずれかの加温を行っており, ACH-Σ®(A)は補充液加温,プリズマコンフォート®(PC)は血液加温装置である。小児回路を用いた水系実験において,AとPCの加温性能を比較した。【方法】水道水をCHD,除水なし,透析液流量400mL/h,血流量(QW)10,20,30mL/minの条件で水温37.5℃の恒温水槽内に再循環させた。加温器の温度設定はAでoff,40℃(A off,A40),PCでoff,40,43℃(PC off,PC40,PC43)にした時と,A40の返血回路に43℃のPCを装着(A40+PC43)した時の返血出口の水温を測定した。【結果】どのQWでも返血水温はPC43,PC40,A40+PC43,A40の順で有意に高かった。【結論】小児回路を用いた水系実験において,血液加温は補充液加温より加温性能が優れていた。

症例報告
  • 横山 雄樹, 関根 秀介, 都築 有美, 松井 俊之, 齋木 巌, 今泉 均, 内野 博之
    2023 年 13 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    尿管閉塞による腎後性AKIでVFを呈した高K血症,septic shockに対して,high volume high flow(HVHF)CHD,PMX-DHPによる血液浄化法が奏効した症例を経験した。【症例】71歳,女性。【既往歴】狭心症,腹部大動脈瘤,右水腎症。【現病歴】意識消失にて入院した翌朝,意識消失およびVFを認め,胸骨圧迫とDCを施行し,自己心拍再開後にICUに入室した。腎後性AKIによる高K血症からVFを発症したと診断し,HVHF-CHDを開始した。また尿路感染によるseptic shockに対し,敗血症に対する治療を開始するとともにCHDのカラムをAN69STに変更しPMXを開始した。【結語】腎後性AKIによる高K血症からVF発症後,尿路感染に伴うseptic shockを併発したものの,循環モニタリングに基づくカテコラミンの調節とともに,HVHF-CHD,PMXの併施により,ショックからの離脱,腎機能が回復しICUを退室できた症例を経験したので報告する。

  • 御供 彩夏, 石岡 邦啓, 岩渕 晟英, 師田 まりえ, 尾畑 翔太, 藤原 直樹, 山野 水紀, 持田 泰寛, 岡 真知子, 真栄里 恭子 ...
    2023 年 13 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    統合失調症,糖尿病既往のある73歳男性。脱力・体動困難を認め,救急搬送された。血圧89/68mmHg,脈拍113/分,体温37.1℃,CK 283,500U/L,LDH 8,131U/L,Cr 2.53mg/dL,CRP 16.383mg/dL,尿蛋白3+,尿潜血3+を認め,横紋筋融解症・急性腎障害の診断で入院した。補液や利尿薬による治療を先行するも,第3病日にCr 7.11mg/dLまでの上昇・無尿をきたし,第4病日より血液濾過透析(hemodiafiltration:HDF)を開始,第14病日まで計6回施行した。第15病日時点でCK 90U/Lまで軽快したが,Cr 5.70mg/dLと依然高値で乏尿も持続したため,第16病日より血液透析(hemodialysis:HD)に変更した。尿量は徐々に改善し,第32病日にHDを離脱した。横紋筋融解症によるAKI治療について,さまざまな血液浄化療法が報告されているが,治療法は確立していない。本症例ではmedium cut-off(MCO)膜によるHDFを先行,CK値を勘案しながらHDFからHDへ移行し,透析を離脱した。MCO膜によるHDFの先行が有効であった一例であった。

  • 小沢 俊貴, 佐々木 裕介, 葉 優寿, 池田 敬太, 伊佐 祐也, 金山 由紀, 森田 高志, 廣瀬 賢人, 清水 泰輔, 小川 智也, ...
    2023 年 13 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    新生児における先天性代謝異常に伴う高アンモニア血症は,非特異的な神経学的異常を発生するため,速やかに血中アンモニアを除去する必要があり,体外循環による血液浄化療法が適応となる。そこで急性高アンモニア血症に対し持続的腎代替療法の工夫や治療条件を調整した一例を報告する。症例はOTC欠損症の男児,生後2日目(第0病日)よりアンモニアの目標値150μg/dL以下,浸透圧は随時CT測定し脳浮腫がないことを確認しながら持続的腎代替療法を開始した。治療開始前血清アンモニア値3,426μg/dL,開始後3,411μg/dLと改善が軽微であったため,透析液流量を300mL/hrまで徐々に上げていった。透析効率の微調整や,投薬による浸透圧調整を考慮したことで,頭部CTに異常所見はみられず,第5病日で持続的腎代替療法は離脱となり,第19病日に紹介元の病院に転院となった。

短報
技術・工夫
  • 入院期間短縮への工夫
    渋谷 陽平, 風呂 正輝, 窪田 彬, 鈴木 俊郎, 柴原 奈美, 柴原 宏
    2023 年 13 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    高齢症例の急性腎障害(acute kidney injury:AKI)は,病態の改善が難しく治療に時間を要すだけでなく,治療後の日常生活動作(activities of daily living:ADL)低下が大きな問題となる。今回,高齢症例のAKIに対する血液浄化療法施行時にカフ型カテーテル(tunneled cuffed catheter:TCC)を使用する有用性について検討した。2018年1月〜2020年6月の期間,75歳以上でAKIに対する血液浄化療法施行時にTCCを使用した6例(平均年齢83.7±3.7歳,男性4例,女性2例)を対象とした。血液浄化療法開始時のバスキュラーアクセスは直接穿刺1例,非カフ型カテーテル4例,TCC 1例だったが,TCC以外の5例もTCCへ移行し,全例がTCCを使用しつつ外来維持透析となった。TCCは構造上の特性から,高い安全性を持ち,制限が少なく,外来管理可能なカテーテルである。高齢症例のAKIに対しTCCを使用することで,入院期間を短縮,ADL低下を予防し,外来維持透析へ繋ぐことが可能であったと考えられた。

  • 清水 弘太, 栗山 直英, 森山 和広, 加藤 政雄, 中村 智之, 原 嘉孝, 幸村 英文, 稲熊 大城, 西田 修
    2023 年 13 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】われわれの施設では血液浄化装置ACH-Σ,Prismaflexを用いてAN69STヘモフィルターを用いた持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)を施行している。今回,ACH-ΣとPrismaflexを使用したAN69ST-CHF施行時における回路凝固の発生について後ろ向きに検討を行った。【方法】AN69ST-CHFを施行した症例を抽出し,ACH-Σ(Σ群)またはPrismaflex(P群)を使用し,ナファモスタットメシル酸塩の総投与速度が30mg/hr(Σ群では分注投与法,P群ではフィルター前投与法)のものとした。1本のAN69STで22時間以上CHFを行えた場合を目標達成と定義し,目標達成率,凝固箇所について比較した。【結果】CHFの目標達成率は両群で差を認めなかった(Σ群:72.7%(16/22施行) vs P群:77.3%(17/22施行),p=0.73)。P群ではVチャンバー凝固の発生が有意に少なかった(Σ群:5/6施行 vs P群:1/5施行,p<0.05)。【結語】AN69ST-CHF施行時において,目標達成率は両群で差を認めなかった。凝固箇所の検討では,Vチャンバー凝固の発生頻度がP群で有意に少なかった。

連載
feedback
Top