日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
7 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • 髙橋 良光, 風間 順一郎, 田中 杏実, 西澤 良史, 渡辺 俊哉, 山本 卓, 成田 一衛, 追手 巍
    2016 年 7 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    バスキュラーアクセスカテーテル(カテーテル)は,急性期腎不全患者に有用であるが,カテーテルの血管壁吸引,血栓形成による脱血不良の問題がある。血栓はシリンジで除去できるが,カテーテルが血管壁を吸引する場合は対応が異なりカテーテル位置の調節や生理食塩液のフラッシュにより改善を試みるが,その手順が正しいとは限らない。本研究ではカテーテルの血管壁吸引時にカテーテルの位置調整のみの対処手技有効性評価法の確立を目的とした。カテーテルが血管壁を吸引した状態をモニタリングした報告例は今までないため,ブタ血管を用いてex vivoで血管壁吸引を目視で確認し,手技により改善可能か評価した。手技は,カテーテルの引き抜き方向の移動と回転である。3cm以内の引き抜き方向の移動では,全条件で改善を認めなかった。回転角度を30°ごとに増加するに従い改善の頻度が増加した。本結果は血管壁吸引の改善の可能性を示唆する。

  • 林 鳳娟, 野中 誉子, 笹田 一樹, 足立 禄樹, 宮坂 武寛
    2016 年 7 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化領域では,血液透析器と類似形状の血液濾過器が用いられるが,血液透析に比して血液流量が半分以下の条件で使用されることが多く,血液が中空糸に均等に分散していない可能性が考えられる。中空糸毎に血流量が異なれば,局所での濾過流量が異なることも予想される。本研究では血液側に色素粘性溶液を灌流し,濾過器の断面観察による血液分散評価法と,中空糸内表面の観察から局所での濾過状況の評価法について検討した。その結果,血液濾過器エクセルフローとヘモフィールでは断面部位により染色状況に差がみられ,流量に分布のある可能性があることが分かった。さらに,中空糸の長さ方向の位置によっても染色分布があることから,濾過流量が異なることが考えられた。以上のように,血液濾過器の血液側に粘性色素溶液を灌流するという簡便な手法で,血液分散の状態や濾過流速分布を観察・評価できる可能性が示唆された。

  • 小野 裕明, 斎藤 秀敏, 原 正高, 國廣 龍雄, 高橋 秀暢, 廣橋 伸之
    2016 年 7 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    当院では,腹腔内感染症を契機とした敗血症性ショックに対してエンドトキシン吸着療法と併用してPMMA-CHDFを行っている。2013年10月よりヘモフィールCH-1.8W®が使用可能となり,ヘモフィールCH-1.8W®導入前後での当院での使用現状を,ヘモフィールCH-1.0N®と比較した。CH-1.8W®は1本あたりの施行時間が長く,施行開始から12時間後にはカテコラミン使用量は有意に減少し,24時間後の時間尿量は有意に高値を示した。このことから,腹腔内感染症を契機とした重症敗血症症例においてPMX-DHPと併用してPMMA-CHDFを行う際は,大面積のヘモフィールCH-1.8W®が適すると示唆される。

  • 早崎 裕登, 塚本 功, 土屋 陽平, 渡辺 裕輔
    2016 年 7 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(CRRT) で用いる血液濾過器(hemofilter)の選択は,小児・新生児領域を除いて明確な基準がないのが現状である。そこで,ポリスルホン(PS)膜とセルローストリアセテート(CTA)膜hemofilterの膜面積が,膜寿命に与える影響を後方視的に検討した。方法は,埼玉医科大学国際医療センターでCRRTを施行した36症例70sessionを膜面積1.0m2以上(L群)と未満(S群)にわけ,24時間達成率,回収・回路交換理由をPS膜とCTA膜hemofilterでそれぞれ比較した。その結果,PS膜hemofilterの24時間達成率は両群間で差はなかったが,CTA膜hemofilterはS群に対してL群が有意に高値(p<0.05),回収・回路交換理由はL群で濾過圧異常を認めなかった。結論として,CTA膜hemofilterの膜面積は,濾過性能の違いによって膜寿命に影響を与える可能性がある。

症例報告
  • 大地 嘉史, 後藤 孝治, 佐々木 美圭, 荻原 洋二郎, 牧野 剛典, 甲斐 真也, 安部 隆国, 古賀 寛教, 安田 則久, 日髙 正剛 ...
    2016 年 7 巻 2 号 p. 118-121
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    近年,急性血液浄化療法を敗血症症例に行うことは一般的となった。今回,急性腎傷害を伴う敗血症性ショックにhigh-flow/high-volume continuous hemodiafiltration (CHDF)を施行した34例を対象に,循環パラメーターと腎機能の推移を後ろ向きに検討した。その結果,high-flow/high-volume CHDF開始2時間後より平均動脈圧の有意な上昇,6時間後より尿量の有意な増加を認め,同時に有意な体温の低下と末梢血管抵抗の上昇を認めた。high-flow/high-volume CHDFは血行動態改善効果および腎機能改善効果を有する可能性が示唆された。

  • 金城 紀代彦, 佐久田 豊, 山内 昌喜, 伊良波 禎, 沖山 光則, 伊泊 広二
    2016 年 7 巻 2 号 p. 122-125
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    重症急性膵炎(SAP)へのPMMA膜ヘモフィルターを用いた持続血液浄化療法は有効な治療方法である。2011年1月から2015年12月までに20例の重症急性膵炎に対して,全例PMMA膜ヘモフィルターを用いた持続透析で治療を開始し,改善が得られなかった6例に対して大口径PMMA膜ダイアライザーを用いたhigh flow-volume PMMA-HDFを追加し,良好な治療結果を得,うち2例を報告した。1例のみ死亡となった。SAPの経過中に併発した感染性膵壊死,ARDS,血球貪食症候群様症候に対してhigh flow-volume PMMA-HDFの併用が有効であった。

  • 小原 成美, 関根 広介, 鵜澤 吉宏, 笹野 幹雄, 安田 英人, 林 淑朗
    2016 年 7 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    【背景】CRRT(continuous renal replacement therapy)施行中のリハビリテーション(リハビリ)の安全性が報告されているが,アラームの発生によりリハビリが実施できないことを経験した。【目的】ICUにてCRRT施行中にリハビリを実施した患者のアラームの発生状況と,リハビリの実施可能性を調査すること。【方法】2014年4月から12月に当院ICUに入室しCRRTを施行されリハビリを実施した患者のアラームの発生と種類,リハビリ状況,カテーテルトラブルを観察した。【結果】ICUにてCRRTを施行した患者は9名,リハビリ処方があったのは4名であった。アラームは鼠径部にカテーテルが留置された患者2名に生じた。【結論】CRRT施行中のリハビリ時にはアラームが発生する可能性がある。リハビリを実施する際には,カテーテル留置部位や血管内循環血液量への配慮が必要であることが考えられた。

  • 田中 智基, 園田 寛道, 橋本 賢吾, 宮武 秀光, 藤井 恵美, 山根 哲信, 辻田 靖之, 高橋 完, 谷 眞至, 江口 豊
    2016 年 7 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    65歳男性。S状結腸癌に伴う穿孔性腹膜炎にて緊急手術を施行。術中に血圧低下したためカテコラミン投与開始,ICU入室1時間後にPMX-DHPを開始した。一旦血圧上昇するもその後低下傾向となり,PMX-DHP開始から3時間後にAN69ST-CHDFを併用した。開始後から徐々に血圧は安定し,カテコラミンも漸減可能となった。その後回路内凝固により,カラム交換が必要となり,PMMA-CHDFに変更した。術後2日目には自尿増量(3,108mL/24h)を認め,3日目にはCHDFを離脱しその後呼吸循環は安定した。臓器障害なく術後5日目に抜管,10日目にICU退室となった。敗血症性ショックに対して早期にPMX-DHPとAN69ST/PMMA-CHDFを併用することで多臓器不全に陥ることなく抜管,ICU退室が可能であった症例を経験した。

  • 上原 舞美, 山香 修, 長井 孝二郎, 森田 敏夫, 渡邊 順子, 今井 徹朗, 中村 篤雄, 高須 修, 山下 典雄, 坂本 照夫
    2016 年 7 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    メープルシロップ尿症(Maple Syrup Urine Disease:MSUD)は分枝鎖アミノ酸の先天代謝異常症であり,血中leucine(Leu)値が上昇することで重篤な神経症状を引き起す。MSUDの急性増悪に対しアミノ酸除去目的で血液浄化療法を施行したので報告する。症例1は9歳男児で搬入時GCS 2T,CT上脳浮腫著明であった。Continous hemodialysisを浄化量35mL/kg/hで17時間施行し,Leuは20から11mg/dLに低下したが意識レベルの改善を認めなかった。症例2は6歳男児で搬入時GCS 11(E4V3M4),CT上異常所見なし。Sustained low efficiency dialysisをQb 100mL/min,Qd 200mL/minで1日目8時間,2日目9時間施行。Leuは1日目15.95から3.21,2日目5.15から2.37mg/dLへ低下し,3日目に意識レベル正常となった。症例1に比べ症例2では,中枢神経症状が軽度の早期に浄化量を増加した血液浄化療法を施行したことで,速やかにLeu値が低下したことが良好な神経学的予後に寄与したと考えられた。

  • 亀山 実希, 川久保 弥知, 宇仁田 亮, 上野原 淳, 田窪 一誠, 橘 薫, 寺田 統子, 宮本 将, 鷹取 誠
    2016 年 7 巻 2 号 p. 138-140
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    症例は2歳女児。無脾症候群,単心室にて生後9ヵ月でGlenn手術施行。発熱,意識レベル低下を認め,血液・髄液培養,末梢血検鏡にて肺炎球菌が確認された。交換輸血後,持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltlation:CHDF)を開始,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)に対して,r-thrombomodulin,nafamostatを投与した。ICU入室4,5日目に濾液を検査し,肺炎球菌莢膜抗原(莢膜抗原)は陰性であったため,持続血液透析(continuous hemodialysis:CHD)に移行し,良好な経過を辿った。本症例では早期からの交換輸血,CHDFなどを中心とした集約的治療が効果的であったため,救命し得たと考え,報告する。

技術・工夫
  • 津久井 宏行, 岩朝 静子, 山崎 健二
    2016 年 7 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    2013年1月より,「血液浄化療法」,「ドレーン管理法」,「腹部臓器保護法」を骨子とした新周術期管理法を導入した。2008年1月より2014年9月までに開心術を施行した連続100例を対象とした。新周術期管理法群(M群,35例)と,これまでの周術期管理法群(P群,65例)の2群に分け,術後急性期の成績を比較し,その有用性を検討した。P群では周術期死亡が8例(12.3%)であったのに対して,M群では0例(0%)に改善した(p=0.048)。術後挿管期間(p=0.034),入院期間(p=0.025)の短縮が認められた。

  • 大石 竜, 柿沼 浩, 西山 謙一, 大段 剛, 西堀 英城
    2016 年 7 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    慢性腎臓病(CKD)患者は,高血圧・糖尿病・高脂血症などの心血管病の危険因子を有していることが多く,心血管手術では極めて予後不良のためより厳密な電解質や水分管理などの周術期管理が求められる。本学においては,施設毎に治療方針が異なるものの全施設とも術前より各種血液浄化療法や治療スケジュールを考慮し,高カリウム血症などの電解質の是正や厳密な水分管理が行われている。また,術中の血液浄化療法は設備環境の違いによりDilutional ultrafiltration(DUF),CHD(F)およびHDが選択されている。術後はとくに循環動態が不安定な症例ではCHDFが施行されているが,病態によっては持続低効率透析(SLED)などが施行されるなど周術期管理における血液浄化療法の役割は非常に高いと考えられる。しかしその効果については一定の見解を得られていないため,今後は客観的指標を用いた血液浄化療法の施行や治療成績の比較評価システムの構築が必要である。

  • 古川 豊, 服部 憲幸, 山根 慎滋, 石井 祐行, 小林 美知彦, 並木 陸, 長野 南, 中田 孝明, 織田 成人
    2016 年 7 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2016/12/01
    公開日: 2022/02/17
    ジャーナル フリー

    近年,RO装置の性能向上や厳格な水質管理基準により,高度に清浄化された透析液が得られるようになり,透析施設を中心にOn-line HDF(OHDF)が数多く行われている。当院ではICUの移転に伴い,多人数用RO装置をICU内に設置し,水質基準に準拠した管理体制を整えた。設備導入に際して検討不足の場面もあり対応が必要な問題点もあったが,対処後は現在まで安定した水質を維持できている。実際の治療ではOHDFを持続治療に応用し,On-line CHDFとしている。2012年1月からの2年間で24時間以上の持続治療を16例経験し,ICU生存率88%であった。施行にあたっては連続運転が大きな課題となり,超純粋透析液の清浄度維持,普段の透析治療とは異なる操作への対応,薬剤・有用物質の損失などの問題が明らかになった。OHDFを急性血液浄化に応用するには,RO装置の運用にも留意し,安全かつ効果的な治療を行えるように治療体制を確立する必要がある。

feedback
Top