日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
5 巻, 1 号
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総説
  • 斎藤 明
    2014 年 5 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    血液浄化法は血液透析として始まり,延命と社会復帰を実現し普及した。主に膜型透析器と濾過器が開発され,進展した。その後,膜型血漿交換法,血液および血漿吸着法,白血球除去法なども開発され,急性腎不全,急性肝不全,重症膵炎,自己免疫疾患などの治療にも用いられた。しかし,膜型血液浄化法では病因物質除去と体液恒常性維持は可能だが,代謝機能を代替することができず,限界があることが指摘された。人工膜と細胞を用いたハイブリッド治療システムはその限界を克服できる可能性があり,まずヒト尿細管上皮細胞と中空糸モジュールを用いたバイオ人工尿細管デバイスが開発され,全身性炎症反応症候群から致死的な多臓器不全に移行する患者の救命の研究が開始された。両腎摘出48時間後致死量のLPSが静注されたヤギに用いられ,血清IL-6濃度低下,サイトカインmRNAの発現亢進の抑制,救命などの効果が明らかになった。近い将来の臨床使用が期待される。

  • 久保田 孝雄
    2014 年 5 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    地震災害治療の基本は,(1)特異病態,(2)限定初期治療,(3)後送重視,(4)DMAT(Disaster Medical Assistance Team)である。阪神淡路大震災(平成7年1月)および中越地震(平成16年10月)ではクラッシュ症候群やエコノミークラス症候群が注目され,大規模自然災害における急性血液浄化療法の有用性が広く認識される好機を得た。その後,中越沖地震(平成19年7月)では慢性維持透析の近隣地域連携が,さらに東日本大震災(平成23年3月11日)では大規模広域避難と遠隔避難先での透析医療連携が実施された。被災地が担う初期治療は急性血液浄化を含め,自ずと限定したものにならざるを得ない。他方,本邦でもDMATの早期進出が確立しており今後とも大いに期待される。しかしながら,安定している慢性維持透析患者はDMATの対象となりにくい。それゆえ,被災地域では発災当初から慢性維持透析医療のダウンサイジング,とくに広域・長期避難連携を検討する必要がある。

原著
  • 小林 美知彦, 大島 拓, 山根 慎滋, 石井 祐行, 古川 豊, 並木 陸, 渡邉 栄三, 安部 隆三, 服部 憲幸, 松村 洋輔, 織田 ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】今回CHDFを施行する際のヘモフィルタとして,polysulfone(PS)膜ヘモフィルタとcellulose triacetate(CTA)膜ヘモフィルタとの比較を行ったので,報告する。【方法】2011年8月から2012年7月までの1年間にPS膜,CTA膜を用いてrenal indicationでCHDFを施行した症例について後ろ向き観察研究を行い,各膜のライフタイムについてTMPの上昇率を指標として検討した。【結果】対象となったPS膜の延べ使用本数は107本,CTA膜は113本であった。膜交換時の平均TMP上昇率は0.52±0.54,0.83±0.71(p=0.002)であった。【考察】PS膜はCTA膜と遜色ないライフタイムを示し,TMPの上昇率についてはPS膜の方が有意に低値であった。【まとめ】今回の検討では,CTA膜と比較してPS膜の方がライフタイムの指標として用いたTMPの上昇率において優位であった。

  • 森實 雅司, 十河 剛, 半田 麻由佳, 鈴木 秀典, 相馬 良一, 佐藤 亜耶, 高橋 雅雄, 乾 あやの, 小松 陽樹, 川本 愛里, ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    小児急性肝不全における人工肝補助療法の設定,デバイスなどはいまだ標準化されていない。当院では2009年5月より,30kg以下の小児に対して,プロトコールを作成し,人工肝補助療法を導入している。肝不全における単純血漿交換療法(PE)は血中からの有害物質の除去だけでなく,凝固因子の補充療法としても重要である。今回,本プロトコールで規定しているPEの置換血漿量(100~150mL/kg)が凝固因子の補充量として十分であるかどうかを検討した。急性肝不全昏睡型の患児7症例(体重6.4~19.3kg)を対象とし,初回PE前後のプロトロンビン時間(PT-INR,PT活性)を比較した。7例中6例(86%)でPT-INR,PT活性はそれぞれ,PT-INR<1.5 and PT活性>40%に改善し,出血性合併症を認めることもなかったため,本プロトコールで規定しているPEの置換血漿量は凝固因子の補充という点で妥当であると考えられた。

  • 鳴海 敏行, 本多 仁, 大濱 和也, 星 均, 井上 勉, 高根 裕史, 竹中 恒夫, 岡田 浩一, 鈴木 洋通
    2014 年 5 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    Severe acute pancreatitis(SAP)に対して体液管理目的で実施した持続的血液浄化療法について検討したので報告する。2005年4月1日から2012年4月1日までに当院においてcontinuous blood purification therapy(CBP)を行った重症急性膵炎28症例を対象としretrospectiveに調査した。生存例と死亡例にわけて比較した結果,膵炎重症度スコアは有意差を認めなかったが,CBP開始時のAPACHEⅡスコア,SOFAスコアの平均は死亡例で有意に高値であった。生存例では,初期の大量輸液にも関わらず全経過において中心静脈圧,PaO2/FIO2とも適切に維持され,換気状態の悪化も無く,溢水も回避されていた。死亡例では徐々にin-overとなり中心静脈圧の上昇,血圧維持が困難となり,除水量の減少を認めた。SAPの治療において,水分や溶質・電解質のコントロールを主とした体液管理目的のためのCBPは重要な治療手段の1つであった。

  • 竹内 正志, 中島 正一, 井福 武志, 東 治道, 阪本 雄一郎
    2014 年 5 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    【目的】今回,CBP(Continuous blood purification)施行患者のなかで重度のDIC(Disseminated Intravascular Coagulation)を合併している症例に対して遺伝子組み換えヒトトロンボモジュリン製剤(rTM)などを投与した患者におけるCBP回路凝固との関係を検討した。【方法】24時間を区切りに短時間凝固群と非凝固群の2群に分け,患者背景,転帰,ICU入室期間を比較した。また,DIC治療薬剤(rTM,アンチトロンビンⅢ製剤,メシル酸ガベキサート)の有無でのCBP短時間回路凝固症例数の比較を行った。さらに,rTM投与有無での転帰,ICU入室期間の比較を行った。【結果】患者背景,転帰に短時間凝固群と非凝固群の2群間で差を認めなかったが,ICU入室期間は非凝固群で有意に短期間であった。rTM投与群でのみ,短時間凝固の症例数が有意に少なかった。rTM投与有無で転帰やICU入室期間に差は認めなかった。【結論】rTMを併用すると,治療効果を変えることなくCBP回路凝固を延長できる可能性がある。

  • 後藤 孝治, 安田 則久, 安部 隆国, 小坂 麻里子, 大地 嘉史, 蔀 亮, 古賀 寛教, 日高 正剛, 首藤 敬史, 和田 朋之, 廣 ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    心臓手術術後患者において,心臓手術に関連した急性腎傷害(cardiac surgery-associated acute kidney injury: CSA-AKI)を併発した場合は予後が悪化するが,術後3日以内の早期に持続的腎機能代替療法(CRRT)を行うことが予後改善に有効であったとの報告がある。しかしながら,施行条件,機序などは依然として明確でない。今回,CSA-AKIを併発した人工心肺下心臓手術後循環不全患者8例におけるhigh flow-volume CHDFの有効性を後ろ向きに検討した。high flow-volume CHDF開始後に各血行動態値の改善が認められcatecholamine index(CAI)も有意に減少していた。また,血清乳酸値,血清Interleukin-6(IL-6)値,体温の有意な低下と時間尿量の有意な増加を認めた。術後CRRT開始までの日数1.6日,high flow-volume CHDF施行日数2.3日,CRRT総施行日数8.6日,ICU滞在日数13.1日,維持透析への移行率0%,28日生存率100%,院内生存率87.5%であった。CSA-AKIを併発した人工心肺下心臓手術後循環不全患者に対する早期のhigh flow-volume CHDF施行開始は,血行動態改善ならびに腎機能改善効果により,有効な治療手段となりうることが示唆された。

第24回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 大久保 淳, 倉島 直樹, 前田 卓馬, 宮本 聡子, 中村 紋子, 瀬島 啓史, 岡戸 丈和, 頼 建光
    2014 年 5 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    救急集中治療領域において急性血液浄化療法は広く施行され,アフェレシス療法も重要な一角を担っている。とくに自己免疫疾患などの急性増悪時には,血漿交換療法(Plasma Exchange:PE)や二重濾過膜血漿交換療法(Double Filtration Plasmapheresis:DFPP)が施行されている。置換液にアルブミン(Albumin:Alb)溶液を用いたPEとDFPPを比較すると,自己抗体が存在するIgGを65%除去する場合,PEでは循環血漿量(Plasma Volume:PV)の0.9倍,DFPPではPVの1.15倍の血漿処理量が必要であり,フィブリノゲン(Fibrinogen:Fib)はPEでは64%,DFPPでは75%除去される。PEはDFPPと比較して,必要血漿処理量ならびにFib除去を有意に低く抑えることができるため,抗体除去を目的にアフェレシスを施行する場合,手技的に簡便なAlb溶液を用いたPEも1つの選択肢になりうる。

原著
  • 回路離断モデルにおける静脈圧変動
    山中 光昭, 三木 隆弘, 二藤部 英治, 古川 エミ, 関根 玲子, 江口 友英, 辻 一宗, 岡本 一彦
    2014 年 5 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    CBP施行中の静脈側アクセス部からの回路離断は生命に関わる重大な医療事故である。そこで,回路離断を検知するための静脈圧下限警報について検証を行った。実験はCBP施行中の静脈圧と回路離断時の静脈圧を模擬した,バイパスモデルと回路離断モデルを作成した。さらに,各モデルにて血液流量やHct値の施行条件を変化させた際の回路離断時の静脈圧および,バイパスモデルと回路離断モデルにおける静脈圧の差圧から適切な静脈圧下限警報を検討した。また,回路内凝固による圧力上昇時における静脈圧の変動もあわせて検討した。各モデルにおいて血液流量やHct値,回路内凝固によって静脈圧も変化した。また,差圧の変動は血液流量の変化が最も大きく関与し,血液流量が上昇するにつれて大きくなった。そのため,差圧の最小値が実験におけるすべての条件下において回路離断時の静脈圧を下回らない静脈圧下限警報域となることが明らかとなった。実際の設定は「静脈圧-37mmHg未満」で回路離断を検知することができると考えられた。

  • 澤田 真理子, 荻野 佳代, 林 知宏, 田中 紀子, 斎藤 真澄, 久保田 真通, 高橋 章仁, 藤原 充弘, 佐野 薫, 渡部 晋一, ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    2000年~2013年5月の期間に,当院小児科で施行した血液浄化症例(のべ112件,89症例)をまとめ,その特徴と転帰を報告した。症例は男女比1.3,年齢は日齢0~25歳(中央値3ヵ月),体重は0.4~70kg(中央値3.8kg)であった。血液浄化法は,腹膜透析(PD)35件,持続血液濾過透析(CHDF)45件,エンドトキシン吸着療法(PMX)17件,血漿交換(PE)12件,血液吸着(HA)2件,血液透析(HD)1件であった。予測死亡率は,全体63.8%,PD 54.1%,CHDF 76.6%,PMX 91.4%,PE 23.0%,HA 0.5%,HD 1.0%に対し,3ヵ月死亡率は,全体34.8%,PD 40.0%,CHDF 42.2%,PMX 29.4%,PE 8.3%,HA・HD 0%であった。未熟児・新生児を含め血液浄化療法は安全に施行でき,救命率の向上に寄与し得る治療法である。

  • 木村 竜希, 江間 信吾, 水口 智明, 森田 耕司, 峯田 周幸, 加藤 明彦
    2014 年 5 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    メシル酸ナファモスタット(NM)では複数の後発医薬品(後発品)が発売されているが,NMの先発医薬品(先発品)と後発品の抗凝固作用を比較した研究は少ない。今回,心臓血管手術の翌日から持続的血液濾過透析(CHDF)を開始した維持透析患者43例を対象とし,抗凝固薬にフサン®を使用したF群(22例)とコアヒビター®を使用したC群(21例)について,CHDF回路寿命(CHDF 開始から初回交換および中断までの時間),CHDF開始前の血算,生化学,凝固系,活性化凝固時間(ACT)について,後ろ向きに比較した。CHDF回路の寿命はF群,C群それぞれ1,390±433分(23時間10分),1,225±434分(20時間25分)であり,C群で短い傾向にあったが有意差はなく(p=0.219),その他の項目も差がなかった。したがって,今回用いた後発品では,透析患者の心臓血管手術後のCHDFにおいて,回路寿命に影響しなかった。今後は,より出血リスクの高い患者を対象として,他社の後発品の抗凝固作用に関し,さらなる検討が必要と思われる。

  • 宮坂 武寛, 上村 沙矢香, 華岡 里奈, 三井 康平, 久高 勝也, 佐伯 里詩, 井上 晃司, 村上 泰右
    2014 年 5 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法で用いられる持続緩徐式血液濾過器(血液濾過器)は,治療時間の経過とともに中空糸内で血液が凝固して閉塞し使用困難となる。臨床現場では血液凝固による中空糸の閉塞状況は血液側入口圧や膜間圧力差によって評価されることが多いが,血液が血液濾過器のどの部分で凝固し閉塞しているのかを評価した研究は多くない。本研究では牛血液を用い,ポリスルホン膜製血液濾過器(SHG-1.0,AEF-10)における血液凝固による中空糸閉塞状況を確認するため,血液濾過器の血液入口部,中央部,出口部の3ヵ所を切断し,閉塞した中空糸の分布を観察した。その結果,血液濾過器により中空糸の閉塞状況は異なることがわかった。血液入口部では断面中心部分の閉塞が少なく,SHGにおいてはその傾向が出口部まで継続し,中心部の流れがスムーズであることが示唆された。また,血液濾過器中央部で閉塞する中空糸が多いことが示唆された。

  • 千葉 二三夫, 山内 貴司, 岡田 拓也, 那須 敏裕, 鈴木 学, 斎藤 大貴, 今野 裕嗣, 菅原 誠一, 千葉 直樹, 渡部 悟, 古 ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    2003年1月から2012年12月までの10年間に15歳以下の小児症例30例を経験し,小児血液浄化療法の対策として急性期には充填液にアルブミンを用い,有血充填時では持続的血液透析(continuous hemodialysis:CHD)モードにて洗浄後治療を開始し循環動態の変動を最小限に抑えるよう工夫した。血漿交換(plasma exchange:PE)併用例では新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)置換液の影響による低カルシウム血症など電解質の補正にPE+持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)直並列法を用いた。また直並列専用回路を応用することで脱着を簡便化した。体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)併用例ではECMO回路にCRRT回路を組み込むことでバスキュラーアクセスが困難な小児症例には有用な方法であった。小児の血液浄化療法では,循環血液量に対する充填量の割合,バスキュラーアクセスの確保など小児血液浄化の特殊性を考慮しさまざまな工夫により安全に施行しなければならないと考える。

症例報告
  • 神山 理明, 島 久登, 岡 雅俊, 秋山 健一, 下村 浩祐, 渡邉 喜彦, 小原 まみ子, 望月 隆弘
    2014 年 5 巻 1 号 p. 78-80
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    40歳代女性。躁うつ病で心療内科かかりつけで,過去に複数回,薬物過量内服歴がある。2012年4月,突発的に炭酸リチウム4,400mg,ジアゼパム100mg,フルニトラゼパム25mgを内服し,当院救急外来へ搬送された。来院時,構音障害と傾眠傾向を認め,リチウム濃度2.89mEq/Lと中等度以上の濃度が検出されたため,血液透析を施行した。血液透析を開始し,程なく,意識レベルクリアとなり,会話も可能となった。透析後にはリチウム濃度1.0mEq/Lと低下していた。細胞内から血中への移行も考慮し,翌日も4時間血液透析を行い,リチウム濃度0.36mEq/Lと著明に低下した。過量内服によるリチウム中毒に際し,血液透析を施行することにより,血中濃度上昇を抑えることができた。

  • 井上 芳博, 藤丸 拓也, 山田 竜平, 齊藤 大輔, 瀧 史香, 金 学粋, 長沖 優子, 辻本 信一, 小野 林太郎, 中川 真智子, ...
    2014 年 5 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    全身性単純ヘルペスウイルス感染症に伴う急性腎障害,肝機能障害,播種性血管内凝固症候群を呈した新生児に,Sustained Low Efficiency Dialysis(SLED)を施行した。技術的側面を含め報告する。〔症例〕日齢14日,2,608g。〔装置・材料〕装置にはKM-8900,血液濾過器にはEXCELFLO AEF-03,血液回路には低ボリューム回路を使用し充填量は70mLであった。〔治療条件〕Vascular Accessは動脈血管(24ゲージ)静脈血管(22ゲージ)とした。血液流量15~20mL/min,透析液流量0.25L/hrで治療時間は4~11hrとした。〔治療経過〕計6回のSLEDを安定して実施することができた。その後,腎機能が回復し66病日に退院となった。〔まとめ〕新生児でもSLEDは可能で血液凝固,体温低下のリスク低減,他治療の実施の観点からも有効である。

  • 安達 普至, 吉本 広平, 臼元 典子, 中尾 匡孝, 千葉 貴人, 中塚 昭男, 鮎川 勝彦
    2014 年 5 巻 1 号 p. 85-87
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    後天性第V因子(FV)inhibitorはまれに致死的出血を呈することがあり,手術適応の判断が難しい。治療法として免疫抑制療法や血漿交換などが推奨されているがその効果は確立されていない。【症例】81歳,男性。Burn Index 35の重症熱傷に対して,第7病日にデブリドマン・分層植皮術を施行した。術後よりINR,APTTが徐々に延長し,ビタミンKとFFPを投与しても凝固系は改善せず,予定していた2回目の植皮術は延期した。INR 4.78,APTT 124秒,FV活性<3%,Cross mixing testのinhibitor patternからFV inhibitorの存在を疑い,inhibitor除去目的に第19病日から血漿交換(PE)を行った。INR,APTTは一過性にしか改善せず,第21病日よりprednisolone(PSL)を開始した。後日,第18病日のFV inhibitorが 64 Bethesda U/mLと分かり,診断が確定した。PSL開始後もINR,APTTは改善せず,第46病日から再度PEを行ったが,効果は一過性だった。第67病日のFV inhibitorは59 Bethesda U/mLであった。【考察】PEはFV inhibitorに対する根本的な治療法ではなく,施行するに当たりその適応や時期を十分検討する必要がある。

  • 小坂 麻里子, 蔀 亮, 大地 嘉史, 安部 隆国, 安田 則久, 日高 正剛, 後藤 孝治, 野口 隆之
    2014 年 5 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    ブロム酸塩中毒は,重篤な急性腎傷害および内耳障害を生じ,救命した後も慢性腎臓病となり透析を必要とする症例も多い。今回,パーマ液服用によるブロム酸塩中毒に対して高流量大量持続的腎機能代替療法および間欠的血液透析を併用し,良好な経過を得た症例を経験した。【症例】68歳女性。自殺企図でパーマ液第2液を服用し,当院へ救急搬送。来院時,意識清明,呼吸・循環動態は安定しており,腎機能は正常であった。第1病日に急激な聴力低下およびCr値の上昇を認め,無尿の状態となったため,高流量大量持続的腎機能代替療法を開始。第3病日から血液浄化量をさらに増加させ,間欠的血液透析を併用した。第10病日で血液浄化療法を離脱。聴力も改善し,第20病日に転院した。【結語】急性期に積極的に血液浄化療法を導入することで,長期的な機能予後が改善する可能性があると考えられた。

  • 好川 貴久, 澤田 真理子, 石井 裕子, 齋藤 真澄, 渡部 晋一, 新垣 義夫
    2014 年 5 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    症例は発熱,左半身の間代性痙攣が主訴の4歳の女児である。高サイトカイン血症(血清IL-6 36,144pg/mL,髄液IL-6 2,455pg/mL)を伴った痙攣重積型急性脳症で予後不良と予測された。ステロイドパルス療法や大量免疫グロブリン療法に抵抗し,多臓器不全の増悪を認めたが,血漿交換とサイトカイン除去膜を用いた持続的血液濾過透析を施行し救命できた。頭部MRI拡散強調画像で右大脳半球皮質下白質の高信号域を認め,片側痙攣―片麻痺症候群と診断した。入院の約2.5ヵ月後に自力歩行可能な状態まで回復して退院した。血液浄化療法はサイトカイン除去の有効な手段であり,インフルエンザ脳症治療ガイドラインに,特殊治療としてあげられている。急性脳症・脳炎において,血液浄化療法によるサイトカイン除去は,高サイトカイン血症を急速に改善することで組織障害の進行を阻止し,予後を改善する可能性がある。

短報
技術・工夫
  • 竹内 正志, 井福 武志, 東 治道
    2014 年 5 巻 1 号 p. 100-102
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化を施行する集中治療領域では医師,看護師,臨床工学技士をはじめさまざまなコメディカルスタッフが患者の治療にあたっている。昨今の医療の進歩,専門性の分化により,チーム医療はなくてはならないものとなってきており,急性血液浄化の分野においても例外ではない。ピットフォールは,専門性不足,情報共有不足,連携不足により発生すると考える。それぞれの対策を立てて実行していくことが必要である。われわれは,急性血液浄化のチーム医療におけるピットフォールは必ず存在しうることを念頭に置き,すべてのチーム員で埋める作業を行うことが重要である。

  • 急性血液浄化においての臨床工学技士の立場から
    岡本 裕美, 平尾 健, 青木 文明, 齋藤 拓郎, 日野 由香里, 加藤 文彦, 大沢 光行, 別所 郁夫, 森下 正樹, 小竹 良文
    2014 年 5 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    血液浄化装置は,救急・集中治療領域におけるさまざまな重篤病態に対する生命維持管理装置として普及している。急性血液浄化はチーム医療として,医師・看護師・臨床工学技士が携わるのが一般的である。しかし,各職種間にて「隙間」が生じることで,ピットフォールが発生する可能性が危惧される。今回,当院でのインシデントおよびアクシデント(I/A)事例について検討を行った結果,チーム医療としてのコミュニケーション不足が原因でピットフォールが発生している現状が明らかとなった。そこで,各検討内容から対策を立て同じI/A事例が起きないように努力している。ピットフォールの発生を防止するためにも,常に治療に携わるスタッフが情報共有し相互支援することが望ましいと思われる。

委員会報告
  • 小野 淳一, 松田 兼一, 山下 芳久, 浅井 康文, 松村 治, 久野木 忠, 秋葉 隆
    2014 年 5 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 2014/06/01
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化法の安全な施行と管理を推進することを目的に,日本急性血液浄化学会安全管理・倫理委員会では,当学会会員の所属施設による急性血液浄化法の施行状況ならびに安全に関する施設アンケート調査を行った。会員892名を対象にアンケートを郵送にて配布し,有効回収数は104施設(現在施設数493)であった。急性血液浄化法の施行場所は,ICUを中心に実施されていたが,血液浄化の指示はさまざまな専門性を有する医師が行っていた。発生頻度は極めてまれであるが,留置型カテーテル挿入時において気胸や気道狭窄など,血液浄化法の導入,終了時において患者体内への気泡混入や薬剤,透析膜アレルギー,カテーテル操作ミスによる出血などを経験している施設が確認された。急性血液浄化法は,医師,看護師,臨床工学技士とさまざまな職種によるチーム医療として提供されるため,共通した教育プログラムを構築していくことが必要と思われる。

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