日本急性血液浄化学会雑誌
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最新号
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症例報告
  • 進藤 俊介
    2023 年 14 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,重篤な肺炎の他,腎障害,神経筋障害を引き起こす。COVID-19の治療指針は明示されつつあるが,横紋筋融解症合併症例は報告が少なく,治療は確立していない。60代女性が入院4日前にCOVID-19を発症した。呼吸苦と四肢筋力低下があり,CK 49,920IU/L,Cr 4.01mg/dLを認め,横紋筋融解症と急性腎障害(acute kidney injury:AKI)を併発したCOVID-19の診断で入院した。大量補液も乏尿改善せず,第2病日に腎代替療法,第3病日に人工呼吸器管理を併施したが,第9病日,第13病日に腎代替療法と人工呼吸器をそれぞれ離脱できた。運動機能障害のリハビリ目的に第104病日に転院した。横紋筋融解症とAKIを合併したCOVID-19に対して早期から人工呼吸器管理下に腎代替療法を併施することで長期的な酸素療法や維持透析を回避し得た可能性が示唆された。

技術・工夫
  • 塩素ガス発生事例とその対策
    下村 太郎, 中條 聡, 佐上 善昭
    2023 年 14 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    集中治療室において間欠的透析を行う際は,個人用水処理装置および個人用透析装置が必要となる。当院では,過去に治療準備時の配管誤接続が原因で個人用透析装置より水が噴出し,洗浄用の塩素系薬剤と酸性薬剤の混触によって塩素ガスが発生する事例が生じた。原因は,ヒューマンエラーがきっかけであったが,個人用透析装置へ個人用水処理装置の排水が逆流するという想定外の機序で生じたものであった。その後,塩素ガスが発生しないための対策および,塩素ガスが発生した際に被害を最小限にとどめるための対策を講じた。塩素ガス発生事例を経験し,長期間継続してきた日常業務であっても,その陰には大きな事故につながる要因が複数潜んでいることを痛感した。業務の運用を決定,見直しする際は,あらゆる可能性を考慮し,二重三重の安全対策を実施する必要がある。

  • 安達 普至, 崔 権一, 志水 元洋
    2023 年 14 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    当ICUでは,毎朝多職種カンファレンスを行い,患者の病態や治療方針を確認・共有するチーム医療を行っている。近年,終末期医療の在り方について社会の注目が集まるなか,さまざまな機関,学会などから終末期におけるガイドラインや提言が発表されている。ICUで治療される重症患者のなかには,適切な治療を尽くしても救命の見込みがなく「終末期」と判断される症例を経験する。これらの症例に対して,われわれはガイドラインや提言を参考にして,多職種カンファレンスで十分なディスカッションを行い,より慎重かつ客観的に判断したチーム医療を行っている。また,患者本人が治療の意思決定ができず,家族らに意思決定をゆだねなければならない症例も多い。血液浄化療法の適応がある患者に対しては,家族らと十分に話し合い,合意形成後に血液浄化療法を「forgo(見合わせ)」している。現在のコロナ禍では,面会制限などにより家族らと十分に話し合う機会や時間が減るなど,新たな問題が発生している。

  • 髙橋 科那子, 井上 弘行, 小川 輝之, 文屋 尚史, 成松 英智
    2023 年 14 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【症例】60歳台,男性。SARS-CoV-2 PCR陽性となり,発症12日目に呼吸状態が悪化,当院へ転院し体外式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation:VV-ECMO)を導入した。急性腎障害を合併し持続的腎機能代替療法(continuous kidney replacement therapy:CKRT)を開始した。第6病日にCKRTを離脱したが,第19病日に2,000g/日を超える難治性下痢症を生じpH 7.19の代謝性アシドーシスとなりpHの維持が困難となった。同日にCKRTを再開し透析液内に重炭酸イオン(HCO3 )40mEq/Lとなるよう重炭酸ナトリウム(Na)を添加した。3日後にPaCO2≧50mmHg下でpH 7.34へと改善した。添加を中止すると代謝性アシドーシスが悪化し再度同量で添加したところpHが維持されVV-ECMOのweaningが開始可能となった。第41病日にVV-ECMOを離脱した。【結語】重度の代謝性アシドーシスに対し,長期化したVV-ECMO離脱を目的とした重炭酸Naの透析液内への添加は安全に施行でき,感染曝露時間の短縮と静脈路の減少に寄与し有用と考えられた。

  • 長井 幸二郎, 森 典子, 森 潔, 三宅 章公, 登坂 直規, 田中 聡, 松尾 研
    2023 年 14 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    クラッシュ症候群は災害時,透析が必要となる代表的な疾患である。災害時は,混乱した状況であり,医療資源(設備,人員,物品など)が不足し,モニタリングも困難な状況に陥っていることが多い。そこで,国際的なreviewを参考に,通常時の透析室における物品や薬品の在庫を考慮して,クラッシュ症候群患者の受け入れ準備と透析のマニュアルを改訂した。災害は想像を超えたレベルで起こるものであり,想定外のケースが多発する。マニュアルを作成しておくこと,設備の確認をしておくこと,災害訓練をしておくことも大事であるが,普段から院内の各部署や他施設と定期的な連絡をとり,顔の見える,連携の取りやすい体制を整えていくこと,緊急時の,院内のみならず他施設との連絡手段を確立しておくことが重要な災害対策の一つと考える。

  • 功力 未夢, 岡本 裕美, 別所 郁夫, 関根 ひかり, 佐川 竜馬, 小竹 良文
    2023 年 14 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    当院は,病院移転に伴い当直体制を導入したことで,緊急時の急性血液浄化業務においても当直者が対応する形へと変化した。そのため,男女関係なくすべてのスタッフが交代して当直業務を行っている。しかし,急性血液浄化業務をはじめとする臨床現場で働く女性CEは,業務とライフイベントの両立が難しく,現場を一時的に離れざるを得ない状況に直面する場合も少なくない。当院の女性CEで,産休や育休を経て勤務しているスタッフがおらず,そのような状況は未経験である。そのため,今後ライフイベントなどで現場を一時的に離れなければならない状況に直面した際,バックアップ体制が未構築では欠員に伴って業務継続が困難になることも予測される。また,組織力の低下にも繋がってくるため,体制の見直しが求められる。女性CEが働き続けられる環境作りの構築は組織だけでなく,施設や社会全体での支援体制の構築や見直しも重要である。

  • 保育器の加温方式の違いによる影響
    石坂 直樹, 大橋 直人, 畑中 祐樹, 菊池 安己, 村杉 浩, 友利 浩司, 岡田 浩一, 中元 秀友
    2023 年 14 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    新生児急性血液浄化療法における血液回路への加温効果の影響について検証した。方法は室温を25℃・27℃とし,36.0℃に加温した模擬血液を血液回路内に灌流させたときの静脈側チャンバーと患者接続部の温度を測定した。次に保育器を使用し,保育器の開放モードと閉鎖モードで保育器内の留置回路長を変化させ,静脈側チャンバーと患者接続部の温度を測定した。室温の違いでは両温度で静脈側チャンバーから患者接続部まで温度低下を認めたが,室温が高いほど温度低下の影響は少なかった。また,保育器モードの違いでは両モードで静脈側チャンバーから患者接続部まで温度上昇を認め,開放モードで保育器内の留置回路を80cmとした場合の患者接続部温度が35.8℃と最も高い結果を認めた。本検討より,血液回路は室温および保育器のモード,さらには留置する回路の長さなどの環境により加温効果の影響を受けることが示唆された。

  • 渋谷 陽平, 花澤 勇一郎, 風呂 正輝, 窪田 彬, 鈴木 俊郎, 柴原 宏
    2023 年 14 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    感染を契機に発生する高サイトカイン血症に対し,サイトカイン吸着能を有するpolymethyl methacrylate(PMMA)膜を使用する持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)の有用性が報告されている。今回,同じ膜であるPMMA膜を使用した血液濾過透析/透析(PMMA-HDF/HD)の有用性について検討した。2021年1月から2022年3月までの期間,インターロイキン-6(IL-6)高値の敗血症症例10例(男性6/女性4例,平均年齢73.6±14.3歳)に対し,PMMA-HDF/HDを施行した。PMMA-HDF/HD施行後にIL-6とWBCは有意に低下し,全例生存した。PMMA-HDF/HDは透析条件の変更により集中治療室でのCHDFに近い治療内容を透析室で行うことができるため,感染早期から急性血液浄化療法を施行することになり,重症化予防に貢献すると考えられた。

  • 岡田 和也, 牧野 淳, 三井 恵, 飯塚 祐基, 原田 佳奈, 加茂 徹郎
    2023 年 14 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    ICU入室を要する急性腎障害患者や維持透析患者は予後不良とされているが,それは腎不全であることそのものよりも併存疾患や重症度に依存しており,その予後は不明瞭である。透析の開始と継続中止に関する共同意思決定診療ガイドラインでは,透析を必要とするが予後が不明な患者,または透析を行うことについて合意が得られない患者に対して期間限定の透析試験を検討することを推奨しており,当院ICUでも症例を選びこれを実践している。期間限定の透析試験では集中治療医,腎臓内科医両者が互いの強みを活かして協働していくことが理想である。ICU入室が長期化する症例や持続的腎代替療法離脱困難例,倫理的にコンフリクトを抱える症例などでは集中治療医,腎臓内科医を含む多職種でJonsenの四分割法を用いたカンファレンスを積極的に行い治療方針決定に役立てている。自験例を交え,当院ICUでの終末期患者に対する透析への取り組みについて紹介する。

  • 松岡 友実, 五十嵐 公嘉, 齋藤 智之, 高田 希望, 橋本 玲奈, 一條 聖美, 小林 悠, 田中 裕也, 馬場 晴志郎, 岡本 裕美, ...
    2023 年 14 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において透析患者は重症化リスクが高く,流行初期は入院加療が望ましいとされていたが,感染者数の増加により,入院調整が困難な状況であった。そのため,東京都は2021年12月中旬に透析実施が可能なCOVID-19透析患者の収容施設として,旧病院跡地に酸素・医療提供ステーションを開設した。2022年1月1日〜8月31日まで,当施設で受け入れたCOVID-19透析患者の現況を報告する。入所患者は211人,平均年齢は65.1歳,転帰は,自宅退院194例(92%),転院16例(7.6%)(そのうち重症化13例(6.2%)),死亡1例(0.5%)であった。当施設は治療の介入により重症化や入院を予防し,東京都のCOVID-19透析患者の入院待機者数の減少および病床ひっ迫の緩和の機能を果たしており,施設の運用は有効であった。

  • 水盛 邦彦, 岡本 一彦, 小池 克和, 土井 麻友子, 高島 弘至, 吉田 好徳, 阿部 雅紀
    2023 年 14 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    ICUにて昼夜問わず,長時間施行される持続的血液浄化療法(continuous blood purification therapy:CBP)においては,体外循環によるリスクを常に意識した安全管理が必要とされる。CBPのリスクマネジメントにおいては装置の安全機能の追加などハード面での安全対策に加え,運用システムや教育,多職種連携などソフト面での安全対策も重要になる。当院においてはチーム医療においてCEのICU 24時間常駐による管理など,積極的な介入によって各職種がおのおの専門性をもって携わり安全体制を構築している。しかし,当院で発生したアクシデント事例を解析すると,背景要因の一つとして明確な役割分担による連携不足やコミュニケーション不足が考えられた。CBPのリスクマネジメントには多職種連携による多角的視点が必要であり,連携不足を防ぐためには各職種間での情報共有・コミュニケーションが重要であると考えられた。

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