土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
77 巻, 5 号
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木材工学特集号(論文)
  • 君島 真美, 青木 由香利, 後藤 文彦, Hamid VALIPOUR
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_1-I_7
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     近年,二酸化炭素排出量の抑制が最も対処が必要な環境問題の一つとなっている.そんな中,二酸化炭素排出量を削減でき,なおかつリサイクルにも最適なサステイナブルな建設材料として木材が見直され,その有効利用が世界中で促されている.本研究では,日本の土木業界における木材利用を促すことを最終目標に,木材と鋼材を組み合わせたハイブリッド部材の研究開発を進めている.

     これまでの先行実験研究により,木材に不可避の特徴である節の存在が新しい木部材の強度を弱めることが分かっているため,ここでは,木部材に節を再現した数値解析モデルを作り,応力分布や破壊形状などを数値解析的に検証するパラメータスタディーを行った.

  • 加藤 英雄, 久保島 吉貴, 園田 里見, 原 忠
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_8-I_13
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     縦振動法による木材の固有振動数は,木材のヤング係数を評価する指標として有効で,構造材の品質管理にも適用できることから,工場の生産ラインや建設現場で木材の力学的性質を推定または評価するパラメータとして用いられている.また,固有振動数の測定には,マイクロフォンや加速度計等の測定センサを使用するが,屋外環境の建設現場では測定センサの特性が測定結果を左右することがあり,センサの違いが測定の正確性や作業性に影響すると考えられる.特に,測定センサが加速度計の場合,その取り付け方法は幾つもあり,どの方法が適切なのか判断することが難しいことがある.更に,測定対象の木材の形状も縦振動法による固有振動数の測定に影響することが考えられる.

     そこで,縦振動法による円柱材の固有振動数を屋外環境の建設現場で正確かつ効率よく測定する方法を明らかにすることを目的とし,マイクロフォン,レーザー変位計,加速度計を測定センサの違いとするとともに,両面テープ,ゴムバンド,ネジを介した取り付け方法を加速度計の取り付け方法の違いとし,これらが円柱材の固有振動数の測定に及ぼす影響を検討した.

  • 下川 亮太, 佐々木 貴信, 澤田 圭, 佐々木 義久, 上田 麟太郎
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_14-I_21
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     公共建築物等の木造化の機運に伴い,大断面長尺の木質梁の必要性が高まっている.トドマツ角材を幅方向および積層方向にCFRPシートを介して接着した木質ハイブリッド重ね梁を作成し,曲げ性能を評価した.曲げ破壊試験は,シートの配置,角材同士の縦継および積層接着の有無についての計8条件に分けて行った.幅方向に角材を2本並べた中央へ垂直にCFRPシートを配置したタイプでは,角材同士の積層接着をしない場合でも曲げ強度を保持した.また,引張側にもCFRPシートを配置したタイプでは,角材の縦継を有する場合,曲げ強度がシートを配置しないタイプの平均196%であった.一般流通材の小断面の角材から木質大断面梁を作る際の省力化および長尺化の可能性が示された.

  • 平沢 秀之, 菊池 幸恵, 戸沼 淳
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_22-I_30
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     短時間で組み立てが可能な災害時の仮設橋として,著者らは木製ワーレントラス橋を2010年に開発した.この橋梁は,組み立て作業は人力のみとし,半日以内に架設が完了できることを実験により示した.しかしながら,トラス部材端部に接合用鋼板を挿入するための加工が必要なこと,接合用鋼板製作時に溶接ひずみの除去が必要であったこと等の課題が残った.そこで本研究では,トラス部材にはボルト孔以外の特殊な加工を不要とする接合法を用いる,接合用鋼板の形状を見直し溶接を一切行わない構造形状とする等,大幅に改良した木製トラス橋を提案する.建築材として広く流通し入手が容易な2×8材をトラス部材として今回新たに採用した.本稿では橋梁構造の諸元を示し,屋内での架設実験(仮組立て),屋外での架設実験の状況を詳細に述べ,災害時における仮設橋としての適用性を考察する.また,トラス橋としての構造性能を有しているかを確認するため,屋外で実施した静的載荷試験についても報告する.

  • 正田 大輔, 沼田 淳紀, 村田 拓海
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_31-I_37
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     丸太を打設した地盤(複合地盤)のせん断補強効果の検証のため,ここでは小型模型実験により検討を行った.本実験では,丸太打設の有無と,打設間隔の相違,および複合地盤に対する拘束圧の相違がせん断補強効果に与える影響について検討を行った.その結果,丸太の打設本数が増え,打設間隔が狭まることで上載する荷重が増加しても10mmの変形まで至らず,丸太打設時には100mmを超える大変形には至らない.丸太打設により,ねばり強さが増すことがわかった.実験時の側面からの地盤変形写真から,丸太の打設間隔が狭まることで,地盤の変形が抑制されて対策の効果が発揮されることが定性的に明らかになった.丸太による対策により,無対策と比べて極限の荷重が増加した.丸太を打設することにより,せん断変形時の地盤強度が大きくなることが示唆された.

  • 村田 拓海, 沼田 淳紀, 宮島 昌克, 平田 慈英
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_38-I_44
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     気候変動緩和策として木材の長期大量使用が有効であることから,著者らは丸太を用いた液状化対策を開発・実用化してきた.これに対する設計は,サンドコンパクションパイル工法の方法Aの設計チャートを用いて行う.この設計チャートには施工時の地盤の隆起が含まれると考えられるが,丸太を用いた液状化対策ではこれがほとんど確認されていない,かつ,改良後の補正N値が設計値以上となることが多いため,過剰設計となっている可能性がある.本研究の目的は,設計法の合理化のための第一歩として,丸太打設による地盤の鉛直変位の特性を明らかにすることである.本研究では模型実験を行い,丸太打設による鉛直方向の地盤の体積変化は膨張だけでなく収縮も発生し,それらは丸太打設後の初期相対密度と関係があることを明らかにした.

  • 及川 大輔, 藤原 有沙, 後藤 文彦, 野田 龍, 石黒 駿
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_45-I_54
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     わが国での近代木橋の歴史は1987年に第1号橋が架設されてから34年と欧米と比べ非常に浅く,架替えの適用もまだ少ないため,撤去した部材に対する部材強度のデータ蓄積はあまり行われていない.今後,土木材料として木質材料を利用していくためには,供用されていた木材の部材強度等のデータは非常に重要である.本研究では,2020年に架替えが行われた めおと橋の部材を回収し,静的・動的方法から各部材の剛性や強度を求めた. その結果,部材の剛性はアーチリブ,補剛桁など構造上主要な部材では10%程度の低減であり,アーチ部材・床桁ともに応力照査では許容応力内に収まっていた.アーチリブ端部など,腐朽の進んだ箇所の部材については測定していないが,それ以外の箇所については,27年経年した木材も一定程度の剛性と強度を有していることがわかった.

  • 小川 虹輝, 後藤 文彦, 佐々木 貴信, 荒木 昇吾, 青木 由香利
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_55-I_63
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     CLTは,疲労耐久性が高く軽量であることから橋梁床版としても期待されているが,床版としての普及を促すには,防護柵を取り付けられること,またその安全性を確認することが必須である.そこで,本研究では鋼製防護柵を鋼製部材でCLT床版に接合する構造を提案するが,車輌の衝突による防護柵の破壊形態としては,防護柵基部の降伏と取付金具のCLT床版へのめり込みを想定している.こうした破壊に至る直前の接合部の応力状態を,鋼製材料とCLT材料に弾塑性モデルを仮定することで,比較的簡易に有限要素解析する手法を示し,防護柵や取付金具の寸法が応力状態に与える影響等を考察する.

  • 下妻 達也, 渡辺 浩, 大隣 昭作
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_64-I_69
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     CLT(Cross Laminated Timber)は直交集成材と呼ばれるもので,板材を交互に直交させながら接着し一体化したものである.CLTはコンクリート製や鋼製の床版と比較して極めて軽量であることから橋梁用床版への適用が期待できる.CLTの橋梁床版への適用に関する事例はいくつか存在するが,CLTの平行層や直交層の構成を変えて床版に生じるたわみや応力を減少させることで使用条件に応じた合理的なの設計が可能となる.本研究では橋梁床版としての使用を想定したCLTについて平行層,直交層の構成を変えた解析を4ケース行い,力学的特性の検証を実施した.結果,CLTを構成する板側面は接着した方が幅員方向の荷重伝達に有利であること,等級の高いラミナの平行層を増やした方が応力を低減できることが分かった.

  • 手塚 大介, 五十嵐 盟, 原 忠
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_70-I_76
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     木材を地盤補強材として安定的に普及させるためには,地中部にて生物劣化が発生せず,供用中に断面欠損することなく半永久的に機能を発揮することを示す必要がある.本研究では,地下水の存在する深度まで埋設した丸太杭の埋設初期段階における性状変化について評価することを目的とし,木材保存処理を施した材料と無処理の材料を約1か月間埋設した際の健全性及び吸水量の経時変化,吸水による地盤・地下水成分の木材内部への吸収について評価した.一連の結果より,本試験期間内において生物劣化が起こらず健全性が保たれていたこと,素材密度や心材割合等により吸水性に変化が生じること,土壌成分が吸水に伴い木材内部へ吸収されたことが示唆された.これらの結果は,今後,木材を地中利用する際に長期耐久性を論ずる上で新たな視点として活用されることが期待される.

  • 末次 大輔, 那須 龍斗, 神山 惇, 福林 良典
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_77-I_83
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     粘性土地盤における木杭の極限支持力は末口径を直径とする円柱体の周面抵抗力で評価される.木杭は元来テーパー形状であり,単体あるいは継いで使用されるので,テーパー角や継ぎ部の形状が支持力に影響を及ぼすことが考えられる.本研究では同一末口径のストレート形状およびテーパー角が異なる4種類の一本杭と,2種類の継杭の模型木杭を用い,粘性土中における木杭の鉛直載荷試験を行って,木杭形状が鉛直支持力と周辺地盤の状態変化に及ぼす影響ついて検討した.粘土中の木杭の鉛直支持力はテーパーを有すると大きくなること,継杭では上下杭接合部において杭と周辺粘土との非接触領域が増加すると鉛直支持力が低下することを明らかにした.さらに,木杭は杭周辺の粘土の含水比を低下させる効果を有することを確認した.

  • 吉田 雅穂, 久保 光, 野村 崇, 沼田 淳紀, 村田 拓海
    2021 年 77 巻 5 号 p. I_84-I_94
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/11
    ジャーナル フリー

     1948年福井地震は軟弱な沖積地盤である福井平野の市街地直下を震源とする地震であったため,甚大な人的被害と構造物被害をもたらした.本研究はその烈震域に存在していた木杭基礎を有する橋梁と建築物を対象に,木杭の打設状況と当時の設計法との関係,地震動や液状化が木杭に与えた影響,掘り出した木杭の健全性について調査した.その結果,福井地震を経験した木杭基礎構造物の,地震動や液状化による上部構造物の被害は極めて軽微であり,その基礎である木杭も健全であることを示した.

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