土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
78 巻, 1 号
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和文論文
  • 山岸 祥希, 佐川 孝広, 伊藤 始
    2022 年 78 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     練混ぜ水に海水を用いる場合にはコンクリート中にNaClが増加する.また,コンクリートのアルカリシリカ反応性を評価する際にはNaClを添加する場合が多い.しかしながら,封かん養生条件でNaClを添加したコンクリートの圧縮強度に関する知見は少ない.本研究ではNaClを添加した供試体を水中養生と封かん養生に供し,各材齢で圧縮強度試験を実施した.加えて,水和反応解析と自己収縮測定を実施した.

     それらの結果から,封かん養生した場合,材齢初期(材齢28日まで)の圧縮強度は,NaCl添加量の増加により減少することが確認された.水和反応解析の結果から,この圧縮強度の減少の原因は,養生条件にかかわらずアルミナゲルの生成によって水和反応が阻害されること,封かん養生時にはこの影響に加えて自己乾燥が卓越することであると推察された.

  • 土屋 智史, 渡邊 忠朋, 斉藤 成彦, 牧 剛史, 石田 哲也
    2022 年 78 巻 1 号 p. 13-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     プレテンションPC中空床版桁のウェブや下フランジ外面に,PC鋼材に沿って軸方向に進展するひび割れについて,材料と構造を連成したマルチスケール解析を適用する検討を行った.このようなひび割れは,一般に内部鋼材の発錆やアルカリシリカ反応,かぶり不足等により生じるとされるが,本検討によって,標準的な材料を用いて入念な養生・施工と適切な管理が行われた構造諸元であったとしても,温度と湿度の季節変動を受けることで,供用後10年~数十年後にひび割れが顕在化し得る可能性があることを示した.また,ひび割れの発生要因について考察するとともに,感度解析を通して各要因の関連度合いについて確認した.さらに,ひび割れが耐荷力に及ぼす影響は小さいことを示し,解析結果に基づいて,今後の対策についての提案を行った.

  • 竹田 京子, 佐藤 靖彦
    2022 年 78 巻 1 号 p. 30-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

     せん断圧縮破壊に至るせん断補強筋を持たないRCはりのせん断抵抗機構とせん断疲労破壊機構の解明を目的として静的および疲労載荷試験を行った.サンプリングモアレ法による画像解析を用いて斜めひび割れ幅とずれ量を得ることで,既往のせん断伝達モデルによって骨材の噛み合わせによるせん断抵抗成分を算出するとともに,骨材の噛み合わせとコンクリート圧縮部によるせん断抵抗成分の分担割合の変化を示した.その結果,低サイクル疲労において,繰返し回数が増加しても骨材の噛み合わせによるせん断抵抗の損失は生じておらず,圧縮応力とせん断応力によるコンクリート圧縮部の疲労破壊がRCはりのせん断圧縮破壊を決定づけていると考えられることを実験的に明らかにした.

  • 輿水 良亮, 尾崎 允彦, 佐藤 靖彦
    2022 年 78 巻 1 号 p. 46-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究において,せん断補強筋を持たない鉄筋コンクリートはりを対象としたせん断耐力予測AIモデルを開発した.その特徴は,ニューラルネットワークに,中立軸のような力学的解釈に基づく説明変数と引張鉄筋の細目に関わる説明変数を組み込んだ点にある.本モデルは,スレンダービームからディープビームまでの幅広い実験結果に対して,従来のニューラルネットワークモデルや実験式よりも高い精度でせん断耐力を予測できる.また,本モデルは,教師データに全く依存しない新規のデータセットに対しても,その適用範囲に留意することで高い精度でせん断耐力を予測できる.さらに,引張補強材にFRPを用いたはりのせん断耐力を,せん断抵抗機構に基づく解釈を本モデルに反映させることで適切に予測できる.

  • 神頭 峰磯, 前田 拓海, 五十嵐 数馬, 栖原 健太郎, 李 春鶴, 辻 幸和
    2022 年 78 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     膨張コンクリートの使用効果について,ケミカルプレストレス量を仕事量一定の仮定から定量評価を行い,これまでに対称断面となるコンクリート構造物のひび割れ抑制に活用してきた.今回,対象とする構造物の範囲を広くするため,提案した非対称断面に対するケミカルプレストレスの推定方法を実大規模の鋼桁,床版および壁高欄を有する道路橋の試験体の各々のひずみを長期間計測して検討した結果を報告する.その結果,壁高欄の打込みの順序により,非対称断面になった場合にも仕事量一定の仮定を用いて,ケミカルプレストレスを定量的に評価できることが示唆された.また,実大規模の道路橋の壁高欄において,膨張コンクリートの単位膨張材量を増加させることにより,ひび割れ抵抗性を高めて,乾燥収縮ひび割れの発生を遅延できることが確認された.

  • 天谷 公彦, 角田 貴也, 高谷 哲, 山本 貴士
    2022 年 78 巻 1 号 p. 72-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     プレキャスト工法の適用範囲の拡大を目的とし,プレテンション部材から延びたPC鋼材を再度緊張し接続部材にプレストレスを導入して一体化を図る「ハイブリッドPC(HPC)構造」の開発を進めている.本研究では,コンクリート強度とPC鋼材のエポキシ樹脂被覆の有無をパラメータとした定着実験と再緊張実験を実施し,プレストレス導入時および再緊張時のPC鋼材の付着機構について考察した.さらに,実験で得られた付着応力-すべり量関係を非線形FEM解析に導入し,PC鋼材の挙動の再現を試みた.検討の結果,プレストレス導入時と再緊張時で,またPC鋼材のエポキシ被覆の有無で付着特性が異なり,HPC構造には高強度のコンクリートが適していることが分かった.さらに,FEM解析にてPC鋼材の付着挙動を一定の精度で再現できた.

  • 並松 沙樹, 伊藤 裕一, 久保 淳一郎, 稲熊 唯史, 宮里 心一, 岩波 光保
    2022 年 78 巻 1 号 p. 90-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,内在塩分と中性化の複合作用を受けたコンクリート中の鉄筋腐食抑制効果に及ぼす表面被覆工の亀裂の影響を把握することを目的に,コンクリートの水セメント比およびコンクリート中の塩化物イオン量,表面被覆工施工後の表面被覆工の亀裂の有無と中性化の進行範囲の違いが鉄筋腐食に与える影響について分割鉄筋を用いた促進腐食試験を実施した.また,実験結果より鉄筋腐食抑制効果が得られる表面被覆工の適用条件を整理した.水セメント比が大きく,表面被覆工に亀裂があり,中性化の進行範囲が広い条件では,亀裂なしと比較し,総腐食電気量密度が著しく大きいことを確認した.さらに,塩化物イオン量を2.5kg/m3含みかつ亀裂ありでは,中性化の進行範囲に関わらず腐食が進行するため,鉄筋腐食抑制効果が十分に期待できないことを確認した.

  • 渡辺 健, 中村 麻美, 石田 哲也, 渡邊 忠朋
    2022 年 78 巻 1 号 p. 105-120
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     コンクリート構造物の様々な設計条件に対応するために,従来指摘されていた配合や外気相対湿度に加えて,混合セメント,骨材収縮ひずみおよび水掛かりの影響を入力可能な,コンクリートの収縮ひずみ予測式を構築した.予測式は,3次元材料-構造連成応答解析システムDuCOM-COM3に基づき定式化しており,構造物を想定した部材厚や,水結合材比の低いコンクリートも含めて,収縮ひずみの長期材齢への適用性を確保している点に特徴がある.また,高炉セメントコンクリート(B種)を用いた供用中のプレストレストコンクリート(PC)桁に生じているコンクリートのひずみおよびPCラーメン橋のたわみなど,コンクリートの収縮が一因とみられる現象が,予測式を用いて説明されることを確認した.

  • 牧 剛史, 土屋 智史, 斉藤 成彦, 渡邊 忠朋
    2022 年 78 巻 1 号 p. 121-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     二次元空間に対して提案されたコンクリートの損傷指標(平均化偏差ひずみ第二不変量および平均化正規化累加ひずみエネルギー)を三次元空間へ拡張し,異なる破壊モードを呈するRC部材の三次元非線形有限要素解析による損傷評価への適用性を検証した.これらの損傷指標を用いて,形状や支持条件の影響で三次元的な応答を示す部材や,三次元的な複合外力を受ける部材の挙動評価を試みた結果,提案指標の組合せによって,三次元的な損傷過程や耐荷力を評価できることを明らかにした.本手法により,構成部材の形状や境界条件,外力の組合せに依存せず,耐荷機構を明確にした構造物の性能評価が可能となる.

  • 井貝 武史, 佐伯 竜彦, 斎藤 豪, 本間 健
    2022 年 78 巻 1 号 p. 138-153
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,鉱物組成の異なる数種の骨材を用いて,骨材種類や混和材が遷移帯性状に及ぼす影響について検討を行った.また,練混ぜ時の骨材表面ゼータ電位に着目し,骨材表面ゼータ電位が遷移帯に及ぼす影響について検討を行った.その結果,練混ぜ時の骨材表面ゼータ電位が卑の傾向にあるほど水和物相組成中の水酸化カルシウムの割合が高くなる傾向が示された.また,特にシリカフュームを置換した配合において,空隙の複雑性を示す指標である空隙形状補正係数が高く,遷移帯の塩化物イオン拡散係数が低減することが明らかとなった.

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