土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造)
Online ISSN : 2185-6567
ISSN-L : 2185-6567
70 巻, 4 号
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和文論文
  • 細田 暁, 二宮 純, 田村 隆弘, 林 和彦
    2014 年 70 巻 4 号 p. 336-355
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     山口県が構築し施行しているひび割れ抑制システムは,実構造物から得られたデータベースに基づいて,合理的にコンクリート構造物の温度ひび割れを抑制することを可能にしている.本研究では,ひび割れ抑制システムの骨子を説明し,ひび割れ低減の効果を定量的に示した.また,3次元温度応力解析を用いた分析により,山口県の構造物のひび割れ発生強度が高い可能性を指摘した.さらに,ひび割れ抑制システムの重要な柱の一つである施工の基本事項の遵守が,構造物の表層品質の向上に寄与する可能性に着目し,目視評価法,表面吸水試験,構造物から採取したコアの分析結果に基づいて,表層品質向上の効果を定量的に示した.
  • 高田 浩夫, 恩田 陽介, 藤代 勝, 小林 孝一, 浅野 幸男, 六郷 恵哲
    2014 年 70 巻 4 号 p. 356-369
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
     ASRにより長期にわたって膨張するHPFRCCを開発した.適用の一例として,この材料に鉄筋を配置して膨張を拘束しケミカルプレストレスを導入した.ダンベル型供試体による一軸引張試験では,降伏強度と引張強度に顕著な変化は認められなかった.引張終局ひずみの一様な低下が見られたが,複数微細ひび割れの性能は維持され,ひび割れ幅の平均,標準偏差への影響は認められなかった.鉄筋補強したHPFRCCはりの長さ変化試験では,膨張エネルギー一定則が成立することを確認し,曲げ載荷試験では,導入されるケミカルプレストレスによりひび割れ荷重が増加することを確認した.ケミカルプレストレスが導入されたはりは,本実験の範囲では,乾燥収縮後も膨張が残存すること,亜硝酸リチウムを含浸することでASR膨張を制御できることを確認した.
  • 原田 哲夫, 生田 泰清, 佐々木 謙二, 大畑 裕志, 徳山 ミョーキン
    2014 年 70 巻 4 号 p. 370-389
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
     CFRPより線などの連続繊維緊張材の定着法として,筆者らによって開発されたのが定着用膨張材(Highly Expansive Material : HEM)を用いるHEM定着法である.HEM定着法を用いれば,連続繊維緊張材のみならず,PC鋼より線の定着も可能である.本研究では,CFRPより線およびPC鋼より線をHEM定着した場合の静的載荷試験を実施し,定着具内部の力の伝達を考察し定着機構について検討した.これより,HEMをせん断バネと仮定した連立微分方程式を誘導し,数値解析を行った結果,実験結果をシミュレートできる有効な解析法であることが分かった.さらに,より線タイプのPC緊張材の定着に必要な膨張圧の大きさと定着長の関係を明らかにし,HEM定着具の設計についても言及した.
  • 酒井 雄也, 中村 兆治, 岸 利治
    2014 年 70 巻 4 号 p. 390-401
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
     ある厚さを有するコンクリートを透過する際に通らざるを得ない最小の空隙直径を「透過抵抗代表径」と定義して,各種物質移動抵抗性との比較検討を行った.まずエポキシ樹脂により被覆した試料を対象とした水銀ポロシメトリーにより,コンクリート試料の透過抵抗代表径を抽出する方法を提案した.得られた透過抵抗代表径と透水および表層透気係数を比較した結果,いずれも高い相関を示した.厚さの異なるコンクリート供試体を対象としたガスの拡散および液状水の浸潤挙動に関しても,表層透気係数から換算された透過抵抗代表径と高い相関を示した.以上は,上記の物質移動においては空隙構造という物理的な影響が支配的であること,また様々な形態の物質移動に対する抵抗性が,透過抵抗代表径により統一的に評価可能であることを示していると考えられる.
  • 宮川 義範, 永田 聖二, 松村 卓郎
    2014 年 70 巻 4 号 p. 402-416
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
     曲げ降伏後のせん断破壊がクリティカルなモードとなりやすい火力・原子力発電所の地中構造物にとって,鉄筋コンクリート部材のせん断破壊を判定する変形指標の導出は重要な課題である.本研究では,片持ち形式の柱7体と,逆対称曲げ形式の柱11体の正負交番静的載荷試験を行う.画像から変位の分布を計測し,幾つかの変形指標と水平耐力との関係を整理する.特に,部材の厚さ方向の膨張(平均引張ひずみ)に応じて水平耐力の残留率が単調に減少すること,その膨張量が除荷後も残留しやすい指標であることを示す.続いて,材料非線形性を考慮した有限要素解析によって実験結果を追跡し,実験と同様の傾向が得られることを確認する.
  • 綾野 克紀, 藤井 隆史
    2014 年 70 巻 4 号 p. 417-427
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
     蒸気養生を行ったコンクリートは,AE剤を用いても,必ずしも高い凍結融解抵抗性を得ることはできない.しかし,高炉スラグ細骨材を用いたコンクリートは,AE剤を用いることなく凍結融解抵抗性を高めることが可能なため,蒸気養生を行っても,高い凍結融解抵抗性を得ることができる.一般のコンクリートでは,骨材界面に多くの水酸化カルシウムが析出する.低温下では,骨材界面に析出した水酸化カルシウムが水に溶け易くなり,その間隙に水が溜まる.本論文では,水酸化カルシウムの溶け出した間隙に溜まる水が凍ることで膨張圧が生じ,粗骨材の周辺にひび割れが生じること,また,反応性の高い非晶質な高炉スラグ細骨材を用いた場合には,骨材界面に析出する水酸化カルシウムの量が少なくなるために凍結融解抵抗性が向上することを示す.
  • 綾野 克紀, 藤井 隆史
    2014 年 70 巻 4 号 p. 428-440
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
     本論文は,乾燥収縮ひずみの最終値に与えるコンクリートの養生中の温度履歴の影響を調べたものである.橋梁の上部工においても,支間の長大化にともない,高強度コンクリートの使用に加えて,部材厚の増加により,養生中のコンクリート温度が高くなる傾向にある.本研究では,実構造物レベルの部材において,コンクリートが養生中に受ける温度履歴が,乾燥収縮ひずみに与える影響を調べ,養生中の温度が高いほど,乾燥収縮ひずみの最終値は小さくなることを実験的に明らかとした.また,コンクリートの乾燥収縮ひずみの最終値と養生温度の関係を表す構成則と,その構成則を用いて,養生中に種々の温度履歴を受けるコンクリートの乾燥収縮ひずみの最終値を求めるための硬化則を提案した.
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