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- 大阪府阪南市のケーススタディ -
伊勢 昇
p.
645-651
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年、我が国では、AI オンデマンド交通の導入の動きが全国的に広がりつつある。しかしながら、オンデマンド交通の利用実態に関する要因分析や当該交通サービスがもたらす日常生活への影響に関する統計的検証は十分になされておらず、利用ニーズと日常生活への影響の双方に配慮したオンデマンド交通の導入に関する定量的な議論は困難な状況にあると言える。そこで、本研究では、自由経路ミーティングポイント型/非固定ダイヤ型/BB(バス停等↔バス停等)に該当するオンデマンド交通に着目し、1)個人属性と自宅周辺環境の双方を勘案したオンデマンド交通の利用実態に関する要因分析、並びに 2)オンデマンド交通導入前後の日常生活の変化に関する統計的検証を中心に行うことで、上記の課題解決のための基礎的知見を得ることを主たる目的とする。
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-福井県あわら市の事例-
菊池 武晴, 杉浦 宏季, 吉村 朋矩, 三寺 潤, 武 可, 吉原 翔太
p.
652-655
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年地方部では乗用車普及と人口減少等のため、地域公共交通が衰退し様々な問題が生じている。一方で、公共交通を利用すると歩行量が多くなり、健康増進に繋がるという多くの研究がある。公共交通利用による医療費抑制額を算出する既存研究もあるが、自動車依存度が強い地方部での調査はほとんどみられない。そこで本研究では、自動車依存が強い福井県あわら市が運行するデマンド乗合タクシーによる医療費抑制効果を算出するため、あわら市民25名に対し14日間に渡る行動記録と歩数把握調査を実施した。その結果、年間1人あたり平均5,376円と算出された。歩数測定に際して家庭内歩数を含めるため、従来の歩数計に代わり、被験者に24時間スマートバンドの着用を求める新しい方法を採用した。
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鈴木 渉, 山崎 基浩
p.
656-663
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
地域公共交通の確保に資する交通手段としてオンデマンド交通が挙げられるが、利用者数の増加とともに希望の乗車時間に予約ができない面も指摘される。そこで、本研究では、オンデマンド交通の予約不成立の発生状況に着目し、どういった利用者に予約不成立が生じているのか、そして、それがどのタイミングで何故生じているのかを明らかにすることを目的とする。データの集計結果から、利用登録者や乗車回数に関わらず予約不成立となる可能性があること、予約不成立の 5~6 割は乗車希望の 2 時間以内に予約申込を行っていること、予約不成立の 3~5 割は 2 時間以上先しか空きが無いためであることが明らかとなった。そして、これらの事項が予約不成立を解消するための施策の根拠となる点で、意義があるものと考えられる。
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吉武 哲信, 原口 愛菜, 白石 悦二
p.
664-669
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究は、貨客混載を実施する交通事業者が事業推進上の問題をいかに認識しているかを把握する第1段階として、バス事業者3社を対象にヒアリング調査を行い、事業の成立過程、事業スキーム(路線、価格、ダイヤ等)等の実態や、制度や行政の役割等に関するバス事業者の考え方を整理したものである。調査の結果、従来指摘されている行政の役割や事業収入の取り扱い方等の課題に加え、a)バス事業者と宅配事業者の拠点位置関係や制度的制約により、必ずしも効率的な運行経路がとれない場合があること、b)荷物の重量やサイズに関する規定運用が明確でなく、混乱が生じる場合があること、c)委託金額算定の基準や根拠が様々であること、d)過疎地域では貨物量が小さく、車両改造費補助は事業インセンティブになっていないこと等の課題が明らかとなった。
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―歩行者とバス待ち客を対象として―
平山 絢健, 篠原 蓮, 黒澤 順, 九岡 大輝, 牛田 啓太, 森田 哲夫
p.
670-675
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
AI を用いた映像分析の活用が進んでいる。本稿では,歩行者の計数・動態調査などにおいて AI 映像分析を用いるにあたっての,撮影条件と性能の関係を調査した。これを通じて,歩行者分析を実施するに際してのカメラの設定・設置の指針を与えることが本稿の目的である。バス停において,歩行者とバス待ち客をさまざまな条件で撮影し,YOLO11 で分析するとともに,歩行者の属性分析を実施した。結果として,カメラは対象とする空間を正面から遮蔽物を避けて設置すると良好な性能が得られることがわかった。また,画角について,広角で撮影すれば広い範囲で計測できるが,人物の重なりが判別しにくくなり,人物以外のものを誤認識しやすくなる。望遠で撮影すれば,正確さが高まる一方,狭い範囲しか分析できない。これらの特徴を踏まえた条件設定が望まれる。
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戸村 昂太郎, 佐藤 凜宮, 小堀 清太, 鈴木 伶, 森田 哲夫
p.
676-683
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では群馬県前橋市の循環バス「マイバス東循環」を対象とし、バス停のバリアフリー化の実態と自治体との地域連携を通した改善活動の評価を検討すること目的とする。2022 年に第 1 回調査を実施し、車いす利用を想定してバス停周辺のバリアを記録した。調査から得た問題個所を前橋市に要望書として提出し、対応についての回答を得た。2024 年に行った第 2 回調査では第 1 回調査の要望や回答を基に改善状況を調査した。その結果、軽度な整備で対応できる問題個所は改善が認められた。一方で歩道及び路肩の幅員が狭いことや地面の不整に関する問題個所の改善は認められなかった。本研究は、自治体との連携に焦点を当て、住民等と行政と地域連携の効果を検討した。
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山田 崇史, 駄場 愛乃
p.
684-690
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では、路面電車保有都市において、路面電車利用者を対象として、路面電車停留所および停留所周辺の危険意識を調査する。そして、路面電車の利用行動、停留所の危険意識に関する分析を行い、安全性の観点から、利用者が安心して利用できる路面電車停留所の整備はどのような要因が関係するか明らかにすることを目的とする。調査・分析の結果、停留所の利用者属性によって、停留所周辺の危険度、周辺環境を良くするための取り組みについて、考え方の傾向に違いがあることを見出した。停留所周辺の危険意識に関する要因は、停留所に不足しているものを何かしら回答しており、十分な乗降スペースが不足している、停留所の仕様が「ノーガード電停」あるいは「安全地帯のみ」の停留所をよく利用している、年代が「20~40 代」である。
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堀口 良太, 村上 雄馬, 甲斐 穂高, 邢 健, 荒川 太郎, 桂 聡, 大口 敬
p.
691-697
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
首都高速中央環状線,東京外環自動車道,首都圏中央連絡自動車道の整備が進んだ首都圏では,高速道路会社(東日本高速道路株式会社,中日本高速道路株式会社,首都高速道路株式会社)を跨いだネットワーク全体での高度な交通運用の必要性が高まっている.ネットワーク全体での高度な交通運用には,高速道路会社間を跨いで同一の評価手法や評価指標を扱うことが重要である.そこで本研究では,高速道路間を接続した ETC データを活用し,高速道路会社間を跨いだ大都市圏全体の交通シミュレーションモデルの構築と,その運用に必要な周辺データ生成などの技術開発を実施した.
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村上 雄馬, 甲斐 穂高, 邢 健, 荒川 太郎, 桂 聡, 堀口 良太, 大口 敬
p.
698-702
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
首都高速中央環状線,東京外環自動車道,首都圏中央連絡自動車道の整備が進んだ首都圏では,高速道路会社(東日本高速道路株式会社,中日本高速道路株式会社,首都高速道路株式会社)を跨いだネットワーク全体での高度な交通運用の必要性が高まっている.ネットワーク全体での高度な交通運用には,高速道路会社間を跨いで同一の評価手法や評価指標を扱うことが重要である.そこで本研究では,高速道路会社間を接続した ETC データを活用し,高速道路会社間を跨いだ大都市圏全体の交通シミュレーションと,その運用に必要な周辺データ生成などの技術開発を行った.本論文では,実際の工事規制を対象としたケーススタディを通じて,実務への適用可能性を検討した結果を報告する.
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北川 永遠, 中村 俊之, 三輪 富生, 須川 清諒, 中山 裕昭, 伊藤 大貴
p.
703-710
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では,名古屋高速道路 3 号大高線上りの事故多発区間を対象として,事故リスク情報提供の社会実験を行い,情報提供効果を分析する.対象区間の車両相互事故の発生頻度が負の二項分布に従うと仮定してそれをモデル化し,事故リスク関数を推定した.さらに,交通量や路面状態等に関するリアルタイム情報から事故リスクを推定し,事故多発区間の上流に設置した簡易情報板から事故リスクに関する情報提供を行った.情報提供時の速度やその分散の変化を分析し,事故リスク情報の提供によって速度が上昇し速度の分散が低下する傾向がみられることを確認した.また,名古屋高速道路大高線の利用者を対象とした Web アンケート調査を実施し,事故リスク情報の提供によって安全に配慮した運転を行うドライバーが増加することを示した.
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松永 惟月, 葛 杭麗, 小杉 雄斗, 市川 暢之, 川﨑 健史, 越塚 登
p.
711-718
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
高速道路利用者に渋滞予測情報を事前に提供して交通需要を分散させるため、1 日以上先の長期的な渋滞予測が求められる。しかし、渋滞実績とカレンダー情報に基づく従来の経験的な予測手法は、天候や突発的な行楽需要などの外部要因を考慮することが困難である。そこで本研究は、経路検索履歴データを用いて高速道路上での長期的な渋滞予測の精度を向上させる新たな手法を提案する。経路検索履歴データは、将来の移動に備えて検索を行う人々の潜在的な交通需要を反映すると考えられる。本手法は、経路検索履歴を時空間的な数値データに変換し、時系列交通データとともに深層学習モデルに組み込む。関越自動車道の実データを用いた評価実験の結果、本手法が翌日の交通量および速度の予測精度を改善し、特に交通需要が集中するお盆期間の予測に大きく貢献することが示された。
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板橋 昂汰, 桂 聡, 難波 尚樹, 藤本 想, 隠田 歩乃加, 小暮 佑亮, 立澤 智春
p.
719-722
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
首都高速道路では,現在,首都高全線の日単位の渋滞の程度を 4 ランクで表す渋滞予想カレンダーを公開している.しかし,ランクの的中率が約 8 割に留まってることや,個々の利用者への情報提供に対応していないことが課題である.そこで本稿では,渋滞指標を高度に予測する手法を検討する.具体的には,AI を用いた予測の検討によって,曜日等のトレンドや事故等の突発事象が渋滞予測に大きな影響を与えることを示す.また,首都高全 OD および時間帯別の所要時間予測への拡張に向けて,ある OD を例に,朝ピーク時の所要時間の予測手法の検討を行う.
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竹田 晴輝, 峪 龍一, 内田 賢悦
p.
723-729
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
札幌エリアの高速道路の一部区間においては、多様化する通勤形態への対応、および、高速道路の混雑緩和を目的として、ETC 車に限定した高速道路料金割引が導入された。そこで本研究では、ランダム効用理論に基づく Nested Logit モデルを行動理論の基礎とした統合均衡モデルを、札幌近郊の自動車-鉄道ネットワークに対して適用を行い、高速道路への通勤パス導入による利用者の行動の変化が引き起こす、他交通手段への影響を含めた評価を行った。その結果、本研究におけるモデルにおいて高速道路への定額の割引率の導入により、一般道及び鉄道利用者の高速道路への移動が表現することができた。また、一般道における混雑を緩和する際に、必要とされる高速道路の妥当な割引率を求めることが可能となったことから、本モデルの有効性が確かめられた。
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井ノ口 弘昭, 佐藤 実紗
p.
730-734
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
高速道路の通行料金の徴収において、ETC の普及が進んでいる。このことから、多様な通行料金設定が可能となっている。本研究では、都市高速道路の時間帯別料金の有効性を検討する。具体的には、阪神高速道路を対象として、アンケート調査結果から時間帯別料金導入時の出発時刻の変更者割合を推計する。その後、利用者均衡配分モデルを用いて、時間帯別に交通量を推計し、一般道路を含めた総走行時間・通行料金収入などの評価指標を用いて、時間帯別料金の有効性を評価する。この結果、現行の深夜割引(0~4 時・2 割引)と比較して、割引率の増加、割引適用時間帯の拡大を行うことによって、総走行時間の削減および通行料金収入の増加につながることがわかった。
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兒玉 崇, 岩里 泰幸, 中田 諒, 大藤 武彦, 佐橋 功一, 河森 大樹, 西村 拓哉
p.
735-741
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年の IoT の進化や AI などの情報処理技術の目覚ましい発展に伴って、旧来の交通マネジメントは大きく進化していくものと目されている。そのため、阪神高速では、情報社会のさらなる発展を見据え、NTT グループと共同で、デジタル技術を活用した新たな交通マネジメントの社会実装を目指しており、阪神高速道路ユーザを主な対象とした新たな交通需要マネジメント(TDM)に係る実証実験を、大阪・関西万博の期間中に実施することを計画している。本稿は、大阪・関西万博の期間中に実施する次世代の TDM を具現化した TDM システムについて、そのあり方や、開発要件、実験サービスの内容と、それを用いた実証実験計画について,とりまとめたものである。
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水野 杏菜, 羽佐田 紘之, 森田 一平, 北村 清州, 金森 亮
p.
742-749
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
新たなモビリティを導入し,適切なサービスを提供するためには,地域内の移動の需要を把握することが重要である.本研究では,愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウンを対象に,パーソントリップ調査の小ゾーンよりも細かいメッシュ間の移動需要を詳細に推計する手法を構築する.まず,スマートフォン利用者の各時刻の位置情報を移動軌跡として記録したポイント型 GPS データから,250m メッシュ間のトリップを判定する.そして,国勢調査やパーソントリップ調査の結果を用いて拡大することにより,個人属性・時間帯別のメッシュ間移動量の総数を推計する.この高解像度な OD 表は,地域交通施策の基盤として,路線・ダイヤ検討や施設整備支援,オンデマンド交通の運行設計などへと広く活用されることが期待される.
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光岡 恭介, 藤田 素弘, 荒谷 純輝, 鈴木 笙太
p.
750-754
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年高速道路の混雑状況を考慮した料金施策が検討されてきており,施策評価のための時間帯別交通配分手法の精度向上が求められている.そこで本研究では時間帯別均衡配分で用いられる時間 BPR 関数の精度向上と ETC データによる精度検証方法の検討をした.まず,車両感知器から得られた交通量と所要時間の 1 時間値を 1 分毎に算出する連続 1 時間値を活用しつつ,従来の BPR 関数の課題を踏まえ,自由流と渋滞流を適正に表現可能な修正 BPR 関数を示した.次に, ETC データの集計方法を検討し,大きいばらつきの抑制方法や,交通量―所要時間関係に基づいて修正 BPR 関数の精度検証ができるように工夫した.精度検証の結果,修正 BPR 関数は,連続1時間値でみられた所要時間増加傾向を表現して精度を向上できることが分かった.
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北原 拓真, 赤羽 弘和
p.
755-762
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では一般道路の過飽和信号交差点の交通需要を、停止線におけるビデオ観測と ETC2.0 プローブ情報を組み合わせて推定する手法を提案する。対象信号交差点の停止線通過時刻をビデオ画面から計測してプローブ情報と照合し、上流チェックラインからの旅行時間に基づいて遅れ時間を推定する。停止線からの発進台数の累積曲線上のプローブ車の通過時刻を、遅れ時間分だけ繰り上げた時刻が累積仮想到着曲線上のサンプル点と見なし、補間および差分計算で交通需要を推定した。プローブ車の測位点は車両毎に異なり、かつ測位間隔は一定ではないため、前後の測位点情報により停止線通過時刻を補間計算で推定した。主交通が右左折し、かつ過飽和度が高い千葉県船橋市・中野木交差点を対象として提案手法を適用し、分析結果を考察した。
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中原 義人, 西地 孝英, 大枝 良直, 外井 哲志
p.
763-770
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
郊外の工場集積地域は, 公共交通機関が十分に発達しておらず, 通勤時間帯に交通需要が集中するという特徴を持ち, 渋滞や事故のリスク増加, 騒音などの交通問題を引き起こしうる。本研究では, このような地域における通勤時の交通流を交通流シミュレーションによりモデル化して通勤環境を把握したうえで, 一般的な左折信号現示改善, 通勤用シャトルバスなどの TDM 施策, ITS 導入時の交通環境の変化, ならびに通勤者の行動変化を交通流シミュレーションと自宅出発時刻決定モデルを組み合わせて評価した。その結果, 交通混雑削減の面や交通需要が増えるケースにおいて自動車通勤者の行動変化を表現することができたため, 本研究での手法は, 実際に施策を導入する前段階の評価において有効であることが示唆された。
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PT 調査の代替・補完から OD 逆推計への展開
有田 禎之, 高橋 君成, 佐々木 邦明
p.
771-774
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では、開発途上国における都市交通計画への携帯端末の GPS 位置情報の応用可能性について検討した。従来のパーソントリップ(PT)調査と比較しつつ、端末 ID 数とゾーン別の発生集中量の比較、位置情報から抽出した端末の移動軌跡、および道路通過端末数と交通量の関係を多面的に分析した。分析対象はラオス・ビエンチャン都であり、2019 年の GPS 位置情報記録および JICA による PT 調査及び交通調査を用いた。端末 ID 数とゾーン OD との相関分析では、PT 調査に近似する精度を得るために必要な端末数の目安を検討した。さらに、個別端末の軌跡追跡により、測位精度やトリップ識別の課題を明らかにした。交通量との比較では、端末数と交通量の相関は一定水準を示すも、時間帯別・地点別のばらつきが大きく、位置情報の限界も確認された。今後、記録密度と精度の高いデータの活用や補完調査との連携により、携帯端末の GPS データによる PT 調査の補完や OD 逆推計への応用が期待される。
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廣瀬 暖, 橋本 成仁, 海野 遥香, 氏原 岳人, 樋野 公宏
p.
775-782
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年、少子化に伴う小学校の統廃合や徒歩通学中の交通事故・犯罪の多発を背景として、小学生の通学手段が多様化し、徒歩通学の機会が減少している。徒歩通学は子どもの健全な成長・発達や都市の持続性の観点において重要な役割を担っていることから、多様化する通学手段の実態を把握し、地域の特性に即した通学政策やまちづくりの方向性を検討していく必要がある。そこで本研究では、通学手段の一つとして家族による送迎に着目し、送迎行動と地域特性の関連について人口特性、土地利用・施設特性、交通環境、気象・地形条件の観点から分析した。その結果、送迎行動とこれらの地域特性の間に統計的に有意な関連があることや、居住地の都市的な環境や徒歩通学に要する時間によって傾向が異なることなどを明らかにした。
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松永 隆宏, 羽藤 英二
p.
783-790
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究では自己回帰言語生成モデルを基盤とした day-to-day 活動経路生成モデルを提案する.本モデルでは Vanilla Transformer の encoder-decoder 構造の代わりに decoder only の構造を採用し,過去トークン列に基づきトークンを自己回帰的に順次生成することで可変長な活動系列の柔軟な表現を可能にする.個人属性や前日の行動履歴といったコンテキスト情報はシーケンス先頭に付加することで条件付き生成を実現し,アーキテクチャの単純さを損なうことなく条件付けを行う.Encoder-decoder モデルに比べモデル規模と学習パラメータを大幅に削減しつつ,day-to-day な人間行動の多様性と連続性を効果的に学習可能である.東京都市圏を対象としたパネルデータを用いたケーススタディでは 1 週間分のデータを用いて学習・推論を行い,生成結果が元分布の特徴を十分に再現することを確認した.
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中山 周一, 塩崎 一詞, 大森 正勝, 吉村 充功
p.
791-794
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
都市間交通における空飛ぶクルマの他交通機関に対する所要時間優位性を定期航空便の変遷を通じて検討した。九州内の定期航空便空路として福岡~宮崎ルートが存在し両都市間交通の主力を担っている。類似の空路として福岡~鹿児島ルートが以前存在していたが、九州新幹線の開通により所要時間の優位性を失い便数が急減した。空飛ぶクルマの事業成立性も基本的には他交通機関に対する所要時間短縮にあると考え、所要時間検討結果にコストを反映するという順番で進めることとし、まず所要時間を検討した。空港での待ち時間や区間速度と飛行速度の違いについて航空工学の知見を活用し空飛ぶクルマの条件を設定した。同条件を設定した最短経路問題を検討した結果、主要都市から 10 分で離陸可能なバーティポートを設置することができ、新幹線と直接競合しない OD であれば、他交通機関に対する移動所要時間の優位性があるとの結果が得られた。
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-環境負荷低減に対する意識・行動との関連に着目して-
岡村 篤, 阿部 佑平
p.
795-801
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
運輸部門における温室効果ガスの削減を図る上で、電気自動車の普及は重要な課題である。しかしながら、電気自動車の普及はハイブリッドカーと比較して非常に低い水準にある。また、電気自動車の購入要因に関しては未だ不明確な部分もあり、特に積雪寒冷地における普及要因はまだまだ知見が不足している状況にある。そこで、本研究では、積雪寒冷地在住の電気自動車の非購入者を対象に、電気自動車自体の整備体制や保有のメリットだけでなく環境負荷低減行動の実態も含めて、電気自動車の購入意識に影響を及ぼす要因を広範に明らかにした。その結果、電気自動車の購入意識に対して、電気自動車自体の優位点の他、環境負荷低減に関する意識や行動が寄与していることが示唆された。
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杉山 梨奈, 大沢 昌玄
p.
802-805
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年、乗用車の大型化や重量増加が進んでいるが、駐車場規格の観点から実態が把握されておらず、将来的には入庫できない問題が発生する恐れがある。特に、EV の普及により車両重量が増加し、機械式駐車場の耐荷重を超える懸念もある。また、労働環境の変化による 2024 年問題を踏まえ、荷捌き車両も大型化になる傾向にあり、これまでの駐車場の規格、特に高さに問題が生じつつある。その結果、これまで設置されていた駐車場マスに収まらない課題も出てきている。本研究では、こうした状況において、乗用車と駐車場の規格の整合性を調査し、現状を把握し、時代の変化に応じた適正な駐車場規格について論じることを目的とする。
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- 長野市中心市街地を対象として-
柳沢 吉保, 轟 直希, 宮之内 健斗, 浅野 純一郎, 高山 純一
p.
806-813
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
本研究は、長野市中心市街地を対象に主目的施設までのイグレス距離および回遊行動に対する駐車行動とを分析する。ここでは、市街地への自動車利用者の中心市街地内での回遊トリップ数を阻害することなく駐車場の立地場所を制御することを目的としている。とくに、自動車利用が多い中央通り全区間の歩行者優先道路整備化に向けた取組みの一つとなる。駐車場から主目的施設までの徒歩距離と回遊トリップ数をハザード分析を適用した駐車確率モデルを用いて駐車行動の要因分析を行う。長野市中心市街地における駐車場と歩行者優先道路の整備ガイドライン作成のための資料とすることを目的とする。
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-京都市内の 4 車線道路を対象として-
小川 圭一, 栗山 燎
p.
814-819
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
クルマ中心からヒト中心への道路の利活用を進める中で、日本の状況にあわせたロードダイエット(車線削減)の実現可能性の検討をおこなうことは重要であると考えられる。京都市内には往復 4 車線(片側 2 車線)道路が多く存在するが、その中には交差点の右折車線が整備されていない道路や、路上駐車が多く存在する道路も多い。これらの道路では車線利用率に偏りがあり、実質的に 1 方向あたり 1 車線分の交通量しか通過していない状況が見受けられる。本研究では、京都市内の往復 4 車線道路について車両走行挙動の調査をおこない、自動車交通量、右折車線の有無、路上駐車の状況などの視点から交差点間と交差点付近の車線利用率の比較をすることにより、都市内の往復 4 車線道路におけるロードダイエットの実現可能性の検討をおこなう。
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片桐 龍之介, 森本 章倫
p.
820-827
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
我が国では、少子高齢化や電子商取引(EC)の利用増加により、物流業界は深刻な人手不足などに直面している。ラストワンマイル配送の効率化手段として自動配送ロボットが注目されており、物流効率や再配達削減に対する期待が高まっている。しかし、自動配送ロボットの導入には、道路空間における適切な走行位置の選定と道路利用者の受容性向上が課題となっている。本研究では、自動配送ロボットの走行位置を類型化し、3DVR で可視化した道路空間を用いてアンケート調査を実施した。その結果、郊外の歩道走行での受容性が最も高く、市街地型車道走行が最も低い受容性であることが示された。ロボットとの距離感が受容性低下の要因であり、自動配送ロボット導入時の課題が明らかになった。
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白 忱, 井桁 由貴, 中村 文彦, 出口 敦
p.
828-835
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
都市の道路空間は「車中心」から「人中心」への転換が求められ、多様な活動を受け入れる空間としての利活用が注目されているが、現状は商業活性化に偏った傾向が見られる。本研究は、地域特性に応じた道路運用を検討するため、道路交通法に基づき制度化された「歩行者用道路」に着目する。東京都の歩行者用道路を対象に類型化を行い、交通規制関連の公的データを元に構築した GIS データベースを用いて各類型の立地特性を把握した。さらに、多様な活動を受け入れる見込みのある道路に注目し、地域での活用可能性と安全確保に関する課題を検討した。その結果、3 つの道路類型の規制内容と立地特性を明確にし、特に都心部の住商混在地域に立地し長時間開放される道路は、多様な活動を受け入れる空間としての可能性を示す一方、安全性での課題も確認された。
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平岩 洋三, 鳥海 梓, 霜野 慧亮, 本間 健太郎, 渡邉 健, 瀬川 雅也, 田中 浩一, 大口 敬, 須田 義大
p.
836-843
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
日本政府が自動運転システムの社会実装に取り組む中、物理的な道路インフラの改良が自動運転システムの技術的難易度を低下させ、安全で低廉な自動運転システムの実現を促進する可能性がある。これに着目する本研究においては、千葉県柏市での実証実験を通じて、自動運転バスの走行空間改善のため、ラバーポールの設置、停止線位置のセットバック、導流帯形状の縮小、路面標示の設置、乱横断対策、バルブアウト構造、自己位置推定支援設備の設置・配置といった方策を試み、その効果を検証した。この結果、これらの方策は、自動運転バスの手動介入の減少や交通の安全性向上に寄与することが確認された。さらに、アンケート調査を通じて、これらの方策に対する地域住民や道路利用者の受容性も確認し、走行空間改善に向けて有効な知見をまとめた。
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齊藤 将大, 木村 仁宣, 平岡 大和
p.
844-849
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
原子力災害時、放射性物質による汚染の有無を確認するため、住民は避難経路上に設けられた「避難退域時検査」を受ける必要がある。住民は自家用車等で避難するため、避難退域時検査会場の混雑が懸念される。著者らは検査会場の処理能力の定量化及び効率化を目的に避難退域時検査会場シミュレータの開発を進めている。ここでは、レーン配分やセクションの配置方法等、レイアウト構成を変えて、多数の車両を短時間で効率的に処理できる会場レイアウトを検討した。その結果、除染が必要となる基準値を超える汚染がある車両が多い場合は確認検査レーン数を多くすると効率的であり、少ない場合は、通行証交付セクションを検査終了後の各レーンに複数配置した上で指定箇所検査レーン数を多くすることで、効率的に検査を実施できる可能性が示唆された。
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堀合 紳弥, 奥村 誠
p.
850-853
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
これまでの津波避難計画等の行政計画では、津波発生時には徒歩避難が推奨されてきたが、2011 年東日本大震災での各地の被災状況から、徒歩による避難の限界が明らかとなった。また、想定される巨大津波に対する避難の在り方について見直しが求められ、計画改定が進められている。しかし、避難計画の中では、車両の走行条件に与えられる速度は一定値であり、避難開始から最終時点までスムーズな走行が可能な状況を想定している。実災害では多様な要因による交通流への影響に留意する必要がある。本研究では、積雪道路上での走行性能の低下について着目し、加速度を変化させてエージェントベース避難交通シミュレーションを実施し、避難交通流への影響を分析する。
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國重 啓, 佐々木 邦明, 内田 成司
p.
854-860
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
近年,予測困難な短時間の大雪により大規模な車両滞留が各地で頻発し,車内に取り残された人々だけでなく道路ネットワークを利用する広範囲の人に多大な被害や経済的損失をもたらしている.本研究ではミクロ交通流シミュレーションと観測された交通量を用いて,降・積雪状況時に観測される交通状態を適切に表現する最適車両パラメータの動的な変化を推定した.パラメータ変化と気象条件および除雪活動などとの関係を分析し,降雪,気温,除雪や凍結防止剤散布などの状況を踏まえて大幅な通行速度の変化を短期予測できる可能性を示した.リアルタイムデータを用いて交通流を自動的に再現し続け,車両滞留につながるような通行速度低下などの短期予測を実現し,運転の取りやめなどを促す情報提供につなげることを目指す.
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塩田 朋史, 菊池 省二, 栁沼 秀樹
p.
861-868
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
ETC2.0プローブデータは,路側機を通過した際に,ETC2.0車載器にそれまで蓄積した情報をアップリンクする狭域通信(DSRC)で収集する.ETC2.0プローブの一時蓄積データは取得までに遅れが発生するが,マップマッチング処理等を伴う様式生成までのプロセスを経ず取得可能なため即時性が高く,災害時の交通状況把握に役立つ可能性がある.本検討では,ETC2.0の一時蓄積データの活用可能性をアップリンクの遅れ時間の観点から評価した.次に,一時蓄積データが保持する個車の位置情報と地点速度をメッシュ単位で集計した結果を活用した異常検知モデルを構築した.構築した異常検知モデルは,被害の大きい道路冠水による交通異常の面的な広がりを捉えており,道路管理への適用可能性を確認した.
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岩岡 浩一郎
p.
869-874
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
グリッドロックは、重度の渋滞で交通流動が極度に低下する、もしくは完全停止する現象で、大震災時に都市部での発生が想定される。2024 年 8 月には南海トラフ地震臨時情報が初めて発表され、新たな大規模地震の発生する可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられており、その抑制制御の確立が急務となっている。本論文では、シングルグリッドネットワークの時計回り交通流動(交差点での右折)のグリッドロックを抑制するサイクル長およびオフセットを反時計回り(交差点での左折)を含めた双方向交通流動に応用し、効果検証を行う。さらに、このサイクル長とオフセットに交通流動最大化を目的とした強化学習によるスプリット制御を加えた総合的な抑制制御を提案し、その効果を交通流シミュレーションで検証する。
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藪崎 琳太郎, 森田 格, 中野 雅章, 古谷 貴史
p.
875-882
発行日: 2025年
公開日: 2025/09/10
会議録・要旨集
認証あり
平成 30 年 7 月の豪雨災害では、交通ネットワークが損傷し、通勤・通学などの都市機能維持に必要な移動が深刻な渋滞の影響を受けた。特に災害後の交通渋滞は大きな問題となり、適切な優先順位付けに基づいた交通マネジメントが求められる。そのためには、道路途絶による迂回損失と移動を中止せざるを得ない場合の機会損失の両方を考慮した道路重要度の評価が必要である。本研究では広島県呉市周辺を対象に、時刻別の自動車等 OD を用いた動的な交通量推計モデルと、迂回・機会損失額の算出モデルを構築した。人流データに対して交通手段推定を行い、自動車等の OD データを生成した上で、出発地や到着地の被害による移動の変更・中止を考慮した。これにより、移動困難者の道路利用ニーズに応じた復旧手順を検討し、経済損失の抑制が可能であることを示した。
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