交通工学研究発表会講演集
Online ISSN : 2760-2400
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第 45 回 交通工学研究発表会
  • 阪本 浩章, 邢 健, 山本 隆, 甲斐 穂高, 土屋 三智久, 黒瀬 雄亮, 石川 大輝
    p. 315-320
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    高速道路の区画線は,ドライバーの線形認識や運転支援のレーンキープアシスト機能の正常動作の観点から,その重要度は高い.NEXCO3 社の区画線維持管理では,点検員の目視による健全度判定とともに,補助的な指標として夜間再帰反射輝度を測定している.一方,近年の運転支援車と区画線劣化度の相関を調べた研究 4)では,区画線劣化度として剥離率を用いている.この知見を高速道路の区画線維持管理に導入する場合,現在の NEXCO の点検手法が援用可能かを検討するため,本研究では剥離率と点検員の目視による健全度判定および夜間再帰反射輝度との相関を調査した.その結果,点検員の目視による健全度判定と剥離率の間には一定の相関が見られ,現在の点検手法を援用可能であることを示した.一方,夜間再帰反射輝度と剥離率の間には強い相関は見られなかった.

  • 大谷 勇人, 近田 博之, 張 馨, 中村 英樹
    p. 321-325
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    近年、都市間高速道路において、車両や利用者の意識の変化により車両の追従状態が変化している可能性がある。本稿では主に追従車の行動の変化が、近年の都市間高速道路の交通性能の経年低下の原因と考え、車両感知器パルスデータを用いて、追従車の車頭時間分布の経年変化の分析を行った。そこで重要となる追従状態の判定方法について、2 つのものを用い追従車の車頭時間分布の経年変化を確認し車両の追従状態が変化しているということを示した。また追従車の車頭時間分布と非追従車の車頭時間分布をそれぞれガンマ分布に仮定し、その 2 つを組み合わせ合成車頭時間分布のパラメータを推定し、パラメータの推定を行った。その結果、時点の違いによる車頭時間分布の形状に与える影響は、道路交通条件の違いが与える影響よりも小さいということを示した。

  • 石田 貴志, 大口 敬, 邢 健, 山本 隆, 村上 雄馬, 中林 悠
    p. 326-332
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は、2001~2023 年の 23 年間、全国の都市間高速道路 21 地点を対象として、ボトルネック交通容量の経年低下状況を分析している。ボトルネック交通容量として渋滞発生時交通流率、渋滞中交通流率とも、2001 年から 2019 年にかけて低下していることを改めて確認している。また、2019 年と 2023 年の比較においても低下しており、経年低下が継続していることを明らかにしている。2023 年における基本交通容量に対する低下率は、渋滞発生時交通流率が 32~33%、渋滞中交通流率が 39%である。近年のボトルネック交通容量の期待値は、片側 3 車線の渋滞発生時交通流率で 4,460 台/時、渋滞中交通流率で 4,020 台/時、片側 2 車線の渋滞発生時交通流率で 2,950 台/時、渋滞中交通流率で 2,650 台/時程度である。

  • 長嶋 右京, 河本 直志, 土肥 学, 田中 良寛
    p. 333-340
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    設計基準交通量の算出に用いられる可能交通容量は、実現最大交通量を基に設定された基本交通容量に大型車の混入や車線幅員・沿道状況といった、道路・交通条件の諸要因による補正率を乗じて算定される。先行研究では、可能交通容量の算出方法及び各種補正率について、見直しの必要性があることが報告されている。本研究では、全国の高速道路と直轄国道における近年の常時観測交通量データを用いて、実現最大交通量及び可能交通容量を整理し比較検証を行うことで、現在の可能交通容量の算出方法の妥当性を検証した。その結果、各種補正率と実際の交通容量について車線数毎に変動特性が異なるが、一定の変動特性までは今回検証したデータからは見られなかった。また、可能交通容量の算定値は概ね実現最大交通量より大きい傾向であることを確認した。

  • 井上 祥吾, 高橋 健一, 張 馨, 中村 英樹
    p. 341-346
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    日本の道路の旅行速度は、特に一般道路において欧米先進国に比較して低い水準にあり、かつ国道、県道、市町村道等の間にあまり差異が見られない。本研究では、交通量の影響を無視しうる閑散時に着目し、信号交差点や規制速度、沿道の状況といった道路構造が及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。分析の結果、道路構造、交通運用が及ぼす影響に地域差はなく、各地域に共通して信号交差点密度や規制速度が与える影響が強いことを明らかにした。また、各地域の閑散時旅行速度の頻度分布の形状はこれら信号交差点密度や規制速度など、道路構造と交通運用に起因していることを示した。

  • 友納 玄伍, 高橋 健一, 張 馨, 中村 英樹
    p. 347-352
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    日本の幹線道路ネットワークは量的にかなり整備が進んできたが、道路の計画設計段階において実現する旅行速度といった交通性能の評価が十分に行われておらず、求められる交通性能を発揮できていない道路が多数存在しているのが実態である。旅行速度に基づく交通性能の照査には、旅行速度性能曲線が必要となる。本稿では、オンラインで入手可能なデータや交通流シミュレーションを活用し、中断流区間の様々な条件下における旅行速度データを取得し、道路構造や交通運用と自由速度、信号交差点に関わる要素と旅行速度との関係を分析した。

  • 久々宮 悠介, 小根山 裕之, 柳原 正実
    p. 353-360
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    信号制御設計の照査においては、交通需要が捌けることのチェックとして、設計時間交通量 q が交通容量 Ca を超えないこと、すなわち q/Ca<1.0 となることを確認することとなっている。現在の照査では、q と Ca の変動は考慮していないが、実際には q、Ca ともに変動することから、変動の影響を考慮して q/Ca の上限値である照査基準値を適切に設定する必要がある。しかしながら、その設定手法については検討が十分になされていない。そこで本研究では、q、Ca の変動を考慮した簡易シミュレーションによる数値分析を行い、各変動を考慮した場合の照査基準値は 1.0 よりも相当低い値を設定すべきであることを提示した。

  • 青山 恵里, 中村 明乃進, 小早川 悟, 下川 澄雄
    p. 361-366
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    近年の調査・分析により飽和交通流率は経年的に低下している傾向が示されている。この低下は車間時間の増加によるものとされているが、車間時間が経年的にどのように変化しているのかは明らかでない。そこで、飽和交通流率の経年変化の傾向を明らかにするとともに、その要因を、車尾時間を構成する車間時間と占有時間とに分けて検討する。その結果、飽和交通流率は引き続き低下している実態が示され、2000 年前後から大きく低下している可能性が明らかとなった。観測された車尾時間を占有時間と車間時間とに分けてそれぞれの経年変化を分析したところ、2018 年頃までは占有時間はほとんど変わらず、車間時間が増加していたが、近年の観測結果では占有時間も増加している可能性が示された。

  • 市川 遼, 青山 恵里, 小早川 悟, 下川 澄雄
    p. 367-372
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    信号交差点の交通容量は、飽和交通流率と有効青時間の割合から算出され、有効青時間は黄信号表示時間および全赤信号表示時間を設定したのち損失時間を算出し、その損失時間をもとに決定される。大型車は車長や車両性能が乗用車と異なるため、本研究では、大型車が混在する状況において飽和交通流率と発進損失時間を取得し、大型車混入が発進損失時間に与える影響の分析と、大型車の混在を考慮した交通容量の試算を行った。その結果、飽和交通流率が大型車混入率の増加に伴って小さくなるだけでなく、発進損失時間も大型車混入率が高くなることで大きくなる可能性があることが明らかになった。さらに、飽和交通流率と発進損失時間の観測値を用いて交通容量を試算したところ 1~9%程度減少する結果となり、過大に評価している可能性を確認した。

  • 宮森 航希, 小根山 裕之, 柳原 正実
    p. 373-379
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    信号交差点の設計において,右折交通容量はサイクル長や信号現示方式,各現示長の決定に重要な役割を果たす.現在,実務においては理論的に導かれた式を用いてその算定を行い照査値として用いているが,特に青丸現示表示後に右折専用現示が表示される状況を考慮した式の妥当性の検証は行われていない.本研究では,青信号の後に右折青矢印が表示される場合の交通容量算定モデルを対象として実データの観測に基づき検証を行い,算定式による交通容量の比較分析ならびに式を構成する種々の要素の比較分析を行った.その結果,飽和交通流率としてより実態を反映した実測値を用いて右折交通容量を算出しても,青丸現示中右折交通容量の算定値は実測値に比べて過大となり,右折矢現示中交通容量は実測値に比べて過小となる結果が明らかとなった.

  • ~北海道江別市野幌町交差点を対象として~
    奥村 航太, 四辻 裕文, 中村 浩, 有村 幹治
    p. 380-385
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では北海道江別市野幌町の信号交差点を対象に AI 物体検知技術を用いて冬期の飽和交通流率を計測し,1985 年の資料と比較した.近年,信号交差点における飽和交通流率の低下が指摘されているため,冬期の路面状態毎の車頭時間および発進遅れの影響に着目して観測を行った.飽和交通流率については,1985 年と観測条件の整合を確保した場合,乾燥路面・湿潤路面ともに有意な減少が見られ,乾燥路面では 1,297 台/有効青 1 時間であり,経年変化として約 23.3%の低下が確認された.車種を考慮した車列構成の内,小型車相互間の車頭時間に経年的な有意差が認められた一方,大型車を含む車列や圧雪路面など雪氷路面の影響については,多くの条件で有意差は確認されなかった.今後は,路肩の雪堤による有効幅員の減少等の要因を含め分析を進めていく予定である.

  • 吉岡 慶祐, 宮下 虎丸, 三浦 悠登, 轟 朝幸
    p. 386-392
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は、「平面交差の計画と設計 基礎編」の一時停止交差点の交通容量算出の考え方では考慮されていない、主道路からの左折車両が従道路車両の流入判断に与える影響について分析したものである。 T 字の一時停止交差点において流入判断の実測調査を行い、さらに主道路左折車両が交通容量に及ぼす影響の程度を数値シミュレーションにより解析した。その結果、主道路左折車両が交差点から 30~40m 付近に存在するとき、流入の判断が難しくなるために流入確率が低下することが明らかとなった。さらに、主道路左折車両の影響がない場合と比較して交通容量は最大で 200~300 台/時程度低下し、その影響を交錯交通量係数として考えた場合、0.3~0.5 程度であると推定された。

  • 飯田 克弘, 和田 侃樹
    p. 393-400
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    近年,工事規制区間に誤進入する事故が急増している.本研究では,規制始端部から誤進入する事故への対応として,法定標識と,法定外看板である図看板を組み合わせた場合の規制情報提供の提案を試みた.具体的には,ドライビング・シミュレータを用いた室内走行実験結果により被験者ごとの情報取得と運転行動を明らかにし,図看板の設置効果を評価した.ここでは表示の設置間隔が狭いと見落としに繋がることも明らかにした.この結果を踏まえてヒアリングを行ったところ,規制車線側の斜め矢印線が長く描かれた図看板は車線変更の必要性を伝え,車線変更を促すことが示唆された.これらの結果を踏まえ,工事規制区間での誤進入抑制が期待できる規制情報提供を提案した.

  • 百松 将兵, 本間 良平, 松尾 幸二郎
    p. 401-405
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    有料道路に関わる車両の誤進入は、逆走といった危険行動の要因にもなるため問題となっている。愛知道路コンセッション株式会社が管轄する知多半島道路の大高 IC では、原付や車両の誤進入事案が多く、対策が急務となっていた。大高 IC の流入ランプは、国道の第一車線から直結しており、路面標示等が設置されているものの、利用者からの視認性が低く、走行する車線の先が有料道路であることが認識しづらい状況であった。そこで、事故対策ワーキンググループにおいて、対策の検討、実施、効果分析を行った。その結果、車両の誤進入率が前年同月比で減少した月も見られた。ただし、誤進入台数は依然として多いため、経過観察や潜在的な誤進入台数の把握等、今後も継続的改善が必要である。

  • 知多半島道路大高料金所を対象として
    松尾 幸二郎, 本間 良平, リーシャ ムティア, 杉木 直
    p. 406-410
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    知多半島道路の大高本線料金所の下り方面は、直前に本線と大府西 IC 流入ランプとの合流部があり、特に大府西 IC から流入してくる車両の多くが、料金所手前の短い区間で本線に合流することから、事故危険性が高くなっている。2024 年 10 月に、大府西 IC から流入してくる車両に、料金所通過後の本線への合流を促すためのキープグリーンラインが設置された。本研究では、本施策実施前後における車両感知器データおよび料金所レーン通行台数データを用いて、キープグリーンラインの効果評価を行った。その結果、設置前に比べて、設置後は左側レーン群利用率を増加させる効果があるとともに、設置後 4 ヶ月まで時間が経つにつれてその効果が徐々に大きくなっていることが示された。

  • 植森 真一, 小川 浩生, 牧野 修久, 植木 治雄, 安藤 雅則
    p. 411-414
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    名古屋高速 5 号万場線・黄金入口(以下,「黄金入口」という)は,ハーフインターチェンジであることや,入口部から料金所ブースが視認できない道路構造であることなどから,高速道路入口部における逆走・誤進入発生件数が名古屋高速道路全線の中で最多となっている.そこで,過去 2 年間で件数が大きく増加した逆走の発生実態と要因を把握するために,現地に設置したビデオによる長時間連続の調査を実施した.その結果,実態把握のための長時間ビデオ調査の有効性が明示できる結果を得られた.また,調査結果を踏まえた効果的な対策案を検討・実施するとともに,効果検証においても長時間ビデオ調査結果を活用し,逆走件数が減少傾向にあることを確認した.

  • 服部 蓮奈, 張 馨, 中村 英樹, 川口 正
    p. 415-422
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    近年,高速道路ネットワークが拡充し,ジャンクション(JCT)周辺など分合流部が近接して連続する区間が増加している.このような中で,利用者にとってわかり易いことはもちろん,交通流の安全性や円滑性に対する負の影響を最小限とするような,適切な案内誘導のあり方が問われている.本研究では,分岐上流部における案内標識の表示方法が車線変更などの運転挙動に与える影響を,ドライビングシミュレータ(DS)実験を行うことで分析することを目的とする.4 種類の分岐構造形式において,3 種類の案内標識代替案について DS 実験を行った結果,各車線の進行方向を明示することで不要な車線変更などの円滑性を妨げる挙動が減少することが明らかになった.

  • 向井 瑛紀, 鈴木 弘司, 田中 淳
    p. 423-427
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では,高速道路分岐部における案内標識と路面標示が交通流の安全性に与える影響について事故統計,映像および車両制御データを用いた分析を行った.まず,東名高速道路下り線の豊田ジャンクションを対象とした事故統計分析より,JCT1km 手前案内標識付近で 4 割程度の事故が集中していることを示した.次に,当該箇所における車両制御データを用いて,分岐方面車両の追越車線から第一通行帯への車線変更,本線走行車の第一通行帯から追越車線への車線変更が JCT1km 手前案内標識付近における多数発生していることを確認した.さらに,同箇所の映像データによる解析により,JCT1km 手前案内標識の前後区間での車線変更に伴う潜在的な交錯リスクが存在することを示した.これらの分析結果を踏まえ,当該区間の改善案を提案することができた.

  • 森本 清誠, 田中 淳
    p. 428-434
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    我が国の高速道路ネットワークの拡充に伴い,JCT が増加することで分岐,合流が連続する複雑な道路構造が増加するなかで,交通流の安全性や円滑性を確保できるような案内標識のあり方を検討することが必要であり,そのためには案内標識による表示内容と車線利用行動に関する実態の把握が重要である.そこで,本稿では,カープローブデータを用いて,案内方法の異なる複数の高速道路の JCT における案内標識の設置位置や表示内容の違いがドライバーの車線利用行動に与える影響を分析した.その結果,案内標識の違いにより車線利用行動が変化すること等を確認した.

  • 飯田 克弘, 石原 大貴
    p. 435-441
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    交通死亡事故の主要因は,運転者の不注意による危険発見の遅れと報告されている.そのため,事故削減には注意の実態を明らかにし,それに基づいた対策を講じることが不可欠である.先行研究では標準検査法が確立している注意機能に着目し,その機能と運転挙動との関係を分析した結果の一つとして, Selective attention が低いと標識視認が遅れることが示唆された.本研究では,ドライビングシミュレータを用いた室内走行実験と注意機能検査を行い,注意機能と標識視認のプロセスで発生する注視運動(視覚的注意)との関係性把握を試みた.その結果,Selective attention が低いと判断される人は探索範囲が狭く,また前方注視率が低いため標識視認が遅れることが明らかになった.

  • 佐藤 尚, 外山 敬祐, 上野 渉, 松田 雄太, 中林 悠, 石田 貴志
    p. 442-449
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では、東京外環道(内)のボトルネック戸田西 IC 付近における PML を対象に、先行研究の持続効果分析に最新年データを追加した効果のモニタリングを継続するとともに、令和 6 年に実施した消灯実験に伴う比較分析を行うことで、PML による渋滞対策の再評価を行った。持続効果分析の結果、交通容量は対策直後に対策前と比べて増加したものの、対策直後から 4 年後までに年々低下傾向であることを改めて確認した。さらに、消灯実験の比較分析により、PML を再評価した結果、数多く展開されている PML のうちの 1 区間の知見ではあるものの、対策 4 年後(令和 6 年時点)において、PML 消灯時と点灯時で交通容量に差がないことから、当該ボトルネックにおける PML による対策効果が消失した可能性があることを示した。

  • 江種 鼓太郎, 澤田 咲季, 白柳 洋俊, 倉内 慎也, 平田 篤嗣
    p. 450-457
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    運転支援システムを搭載した車両では,手動運転から自動運転への移行時に認知的負荷が低下し,ドライバーが注意散漫状態の一種であるマインドワンダリングに陥る可能性があり,安全運転上の潜在的なリスクとなる恐れがある.マインドワンダリングの自覚を促す手段として,視覚刺激の有効性が示唆されている.そこで本研究では,第一に,手動運転から自動運転への移行によってマインドワンダリングが生じやすくなる,第二に,その状態にあるドライバーに視覚刺激を提示することでマインドワンダリングの自覚が促される,との仮説を措定し,ドライビングシミュレーターを用いた室内実験により検証した.実験の結果,仮説を支持する結果が得られた.

  • 三村 泰広, 樋口 恵一, 山岸 未沙子, 村上 滉一, 伊藤 僚
    p. 458-465
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は,高齢運転者が出合い頭事故の第一当事者となりやすい空間特性を有する無信号交差点における高齢運転者の視線挙動と前頭前野反応の関係性について,視線追従機能を備えた HMD 及び NIRS を用いた実験を通じて検証した.高齢運転者(n=29)及び非高齢運転者(n=14)の 5 つの無信号交差点通過映像視聴時における単位時間当たりの総ヘモグロビン濃度変化(ΔtHb)と水平方向の視線移動距離(EMD)の関連性を分析したところ,非高齢運転者は両者に有意な負の相関がある一方で,高齢運転者は両者に一貫した傾向があるとはいえないことを示した.

  • 近藤 美鈴, 川本 義海
    p. 466-474
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    無信号横断歩道の安全環境向上を図るには電柱や支柱などのドライバーが横断待機者を視認することを阻む視認阻害物の設置位置の安全基準が必要であるが、明確な設置位置の基準に関する規定は未だなされていない。そこで本研究ではVR(Virtual Reality)を用いて、無信号横断歩道を設置した道路を自動車で走行する実験を行った。無信号横断歩道周辺の歩道に設置されている視認阻害物の設置位置と自動車の走行位置を変化させることで、視認阻害物の設置位置とドライバーが横断待機者を視認する距離との関係を明らかにした。その結果、周辺条件やドライバーの個体差に左右されない視認阻害物の設置位置は、車両進行方向前方の横断歩道の縁石の端から30m手前でドライバーが横断待機者の全身が見える視認阻害物の設置位置(始点設置位置)から3m離れた位置であることが分かった。

  • 宝寄山 颯太, 富山 和也, 浅利 祐伸
    p. 475-479
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    ロードキルは死傷や経済損失、生態系への影響を伴う深刻な社会問題である。特に北海道ではエゾシカとの衝突事故が増加し、効果的な対策が求められる。既存対策は、横断構造物といった野生動物対象としたものと警戒標識や路面標示など人間を対象としたものに大別される。前者は高コストで環境負荷が大きく、後者は低コストで導入可能である。しかし警戒標識の効果は限定的であり、路面標示効果の科学的根拠は十分でない。そこで本研究は、「シカ注意」路面標示の有効性を検証するため、ドライビングシミュレータを用い、反応時間実験と主観評価アンケートによる試験を実施した。その結果、路面標示の反応時間への影響は限定的であることが示唆された。本研究成果は、ロードキル防止に関する科学的根拠を提供し、低コストな対策手法の確立に寄与する。

  • 植田 真生史, 中西 航
    p. 480-487
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    ドライビングシミュレータ(DS)は特有の利点を有する交通調査方法である.しかし,その構築や運用には設置空間,コスト,技術の観点で課題がある.これに対し,近年は家庭用コンピュータ上に仮想空間を構築するための3次元データや開発環境が充実し,仮想空間内での視点移動を遅延なくモニタに表示する環境も比較的安価に入手可能となっている.本稿では,DSの構築や運用における課題を低減した「簡易なDS」という考え方を提示し,DSを用いた実験の活用事例増加に貢献することを目的とする.まず,既往のDSの活用事例を概観し,簡易なDSで対応可能な実験の存在を確認した.つぎに,簡易なDSの構築方法を体系的に整理し,個別のステップごとにその方法を具体的に説明した.さいごに,簡易なDSの構築例とそれを用いた実験例を提示した.

  • 披田 曉, 吉井 稔雄, 倉内 慎也
    p. 488-491
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は、ラウンドアバウトや横断歩道といったエネルギーを必要としない交通制御施設を取り上げ、ドライビングシミュレータを用いた走行実験を通じて、これらの設置が車両速度に与える影響を明らかにする。実験では、集落部を通過する幹線道路を想定し、集落の入口付近にラウンドアバウトと二段階横断施設を、集落内に無信号横断歩道と二段階横断施設を設置した場合の車両走行速度低減効果を評価する。実験の結果、ラウンドアバウトや二段階横断施設の設置が有意な車両走行速度低下効果を有すること、ならびに二段階横断施設の設置によっては、通過後も低速走行が維持される傾向があることを示した。

  • 顧 鈺, 大枝 良直, 外井 哲志
    p. 492-498
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    運転スタイルは、走行中における安全距離に対する感度に影響を与えると考えられる。パーソナルスペースは、運転スタイルの違いに基づく運転者の感知差を評価する有効な手段である。そこで 、本研究では、パーソナルスペースを定量的に表現するために改良型楕円モデルを導入し、合流車両と本線上の先行車・後続車、ならびにランプ上の先行車との臨界車頭距離を定義することで、最小安全距離モデルを構築した。さらに、提案したモデルの有効性を検証するため、ギャップ選択および安全距離に基づく車線変更モデルの枠組みに本モデルを導入し、セル・オートマトンを用いた交通流シミュレーションを実施した。その結果、提案した最小安全距離モデルは、交通流の再現性向上に寄与することが確認された。

  • 古橋 郁一, 羽藤 英二
    p. 499-505
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    自動運転ではカメラ画像など高次元センサ情報を制御層へ直接反映する仕組みが不可欠だが、精度と解釈性を両立する追従モデルは未確立である。本研究は、画像を CVAE で潜在空間に圧縮し、得られた特徴量を深層学習ベースの追従モデルに統合する画像駆動型追従モデルを提案する。東名・新東名高速道路で収集した多量のデータを用いて検証した結果、平均二乗誤差は他モデルに対し最大約 8 % 改善した。さらに潜在空間を線形補間し直線路から急カーブへ連続変化させた数値実験により、道路線形の悪化がストリング不安定性を増幅することを示し、走行環境が追従挙動へ与える影響を定量化できる基盤モデルを構築した。本成果は、マップレス自動運転システムへの実装や走行環境を忠実に再現する交通シミュレーションの高度化に寄与する。

  • 門田 瞬翼, 矢端 伸一朗, 坪田 隆宏
    p. 506-511
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    車両追従行動の研究は長年にわたり行われてきた。従来の研究では、車両追従行動の理解を目的としていたが、近年ではその予測精度の向上に焦点が当てられている。木下らは、データ駆動型の車両追従モデルを構築し、一般的な交通流の再現を試みた。しかしながら、このモデルには非現実的な車両挙動が生じることが明らかとなった。そこで本研究では、物理法則を組み込んだデータ駆動型のハイブリッド車両追従モデルを構築し、交通シミュレーションを実施した。その結果、提案するハイブリッドモデルは、従来のデータ駆動型車両追従モデルと比較して、より高精度な予測を実現することが示された。

  • 野口 徹, 宇野 伸宏, 松中 亮治, 西垣 友貴
    p. 512-519
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は、自動運転車両と手動運転車両が混在する交通環境において、手動運転車両の運転行動の多様性を考慮したうえで、自動運転車両の運転特性や混入率が交通流の円滑性と安全性に与える影響を明らかにした。阪神高速道路塚本合流部の実車両軌跡データを用い、遺伝的アルゴリズムによって手動運転車両の運転特性を推定・分類したうえで、自動運転車両を 3 タイプに設定し、VISSIM によるミクロ交通シミュレーションを実施した。分析の結果、cautious 型は混入率が高いと円滑性が向上するが、低いと逆に低下する傾向があり、aggressive 型は円滑性に優れる一方で安全性に課題があった。normal 型は円滑性と安全性の両面でバランスが取れており、特に混入率 20~40%の移行初期に導入することが有効であると考えられる。

  • 葛西 誠, 長谷川 裕修
    p. 520-526
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    ACC 車のような等車間時間制御車は高速道路サグ部の渋滞抑制に寄与すると期待されている。一方、速度が低下する状況では車間時間を一定に保っても車長の影響で車頭時間は増加してしまい、流率の低下が避けられないと考えられる。本研究では、ACC 車の制御ロジックに類似するシンプルな追従挙動モデルとして、等速度および等車間時間を実現するような「希望速度希望車間時間追従挙動モデル」を構築し、サグ部を有するコース上で交通流を生成しこの提案追従挙動モデルの特性を観察する。またこのモデルのパラメータ値とサグ上流断面に対する下流断面の流率比率を考察する。希望速度項の影響が大きくなるにつれてサグ下流断面での流率低下を抑制する傾向が見られ、ACC 車の設計に際して参考になる結果と考えられる。

  • 石田 貴志, 大口 敬, 邢 健, 甲斐 穂高, 村上 雄馬, 中林 悠
    p. 527-534
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では、国内自動車メーカーの ACC 設定車間時間を調査するとともに、都市間高速道路における現地アンケート調査より現時点の ACC 利用実態を分析している。メーカー・車種別に ACC 設定車間時間を調査した結果、それぞれの設定値があること、適宜見直しが行われていることが把握できた。最新車種に着目すると、4 段階が主流になっており、長モードは 2.16~2.52 秒でメーカー間のバラツキがやや大きい。また、現地アンケート調査結果より、現時点の交通流における ACC 装着率は 52%、ACC 稼働率は 23%(サンプリングの偏りを考慮すると、平日は 27%、休日は 20%)であることを明らかにしている。ACC 設定速度は規制速度より低く、設定車間距離モードは長モードが多い。いずれも、一度設定したらあまり変更しない。

  • 矢端 伸一朗, 坪田 隆宏, 吉井 稔雄, XING Jian, 倉内 慎也
    p. 535-538
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では,風が高速道路を走行する車両の速度に及ぼす影響についての基礎分析を行った.東名高速道路上り線の 32.79KP の車両感知器の交通流データと海老名地域気象観測所(アメダス)の風向・風速データを統合し,車体に当たる風を向風・追風・横風の 3 種類に分類した上で,風速階級別および交通量階級別の分析を行った.その結果,いずれの種類の風も,200(台/10 分)〜700(台/10 分)の自由流領域における一部の交通量階級で,風速と空間平均速度の間に統計的に有意な関係が確認された.特に向風は,交通量階級 300(台/10 分)〜400(台/10 分)において,速度低下に影響する可能性が示唆された.本分析の結果を踏まえ,今後は高速道路設置の風速計を用いたより詳細な分析を行う予定である.

  • 平山 裕太, 木村 真也, 早河 辰郎, 阿部 義典, 大宮 博之
    p. 539-545
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    都市間高速道路の分流部で発生する渋滞のメカニズムを分析した事例は少なく、発生メカニズムを理解したうえで有効な渋滞対策を検討することが求められる。そこで本研究では、分流渋滞の対策の方向性を示すことを目的に東名(下)豊田 JCT を対象に広範囲の撮影が可能な UAV を活用した調査を実施し、分流渋滞の発生メカニズム分析を行った。その結果、50km/h 程度で走行車線を走行する低速車両(渋滞発生要因車両)の後方に形成された車群内に追越車線から車線変更する車両が存在し、それが誘因となりショックウェーブが発生することで渋滞に至ったことを明らかにした。渋滞対策の方向性としては、JCT 案内標識や路面標示の修正・撤去、減速車線への接続方法を見直すチャンネリゼーションなど、走行車線に利用が集中することの緩和が有効と考えられる。

  • 大宮 博之, 友廣 大成, 小峰 健義, 野中 康弘, 川島 陽子
    p. 546-553
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    案内標識や路面標示による案内は適切に行われなければ、ドライバーを適切な車線や進路に誘導できないのみならず、不必要な車線変更や加減速等の車両挙動をもたらすことで、交通流の安全性や円滑性に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、高速道路分岐部を題材として案内標識と車両挙動の関係性を紐解くことを目指して、CCTV 画像データを活用した車両挙動解析の実用性について検討した。その結果、CCTV を AI 画像処理した車両挙動データによる解析には一定の実用性があること、JCT 分岐部付近では 2 車線以上を跨いだ車線変更による流出やランプ部から本線への復帰等、望ましくない挙動が発生していることを示した。また、これらの発生頻度が全体に占める割合は概して小さいものの、絶対量に注目すると看過できない発生量であることの問題を提起した。

  • 武藤 憲弘, 平井 章一, 市村 康平
    p. 554-560
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    都市間高速道路のリニューアル工事等の車線規制により発生した渋滞が、ジャンクションを跨いで他路線に延伸することがある。その際、他路線での渋滞は片方の車線に偏って車列が形成されるため、他方の車線からの割込み行動が多く発生する。割込み行動は、新たな渋滞の誘発や事故などの交通安全上の懸念がある。本稿の目的は、割込み行動する車両に訴求するための基礎資料とするために、割込み位置等の定量的な把握を行うことである。中央道岡谷ジャンクション付近のリニューアル工事による渋滞を対象とし、VTR データと ETC2.0 プローブデータを用いて確認を行った結果、平日と比較して休日のほうが割込み台数の構成割合が多い、平日と休日では割込み行動の特性が異なる、等の知見を得た。

  • 長田 陸, 赤羽 弘和
    p. 561-566
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では、複数カメラによるビデオ画像上のトラッキングデータを、車両の並進運動の状態方程式と射影変換式を組み込んだ観測方程式を拡張カルマンスムーザに適用し、車両の走行軌跡を最小二乗推定する手法の精度改善を目的とした。第一に、同一区間を複数の角度から撮影したビデオ画像上のトラッキングデータを使用することによる精度向上効果を評価した。第二に、一部の角度からのビデオ画像において画面上の車両の重なり(オクルージョン)によりトラッキングデータが取得できなかった場合に、走行軌跡推定の実行可能性と精度低下の度合いを評価した。周回コース上を走行させた観測車両の RTK-GPS 測位値を基準として推定精度を評価したところ、複数角度からの撮影による精度向上効果、およびオクルージョン対策効果を確認した。

  • 梶田 佳孝, 堀江 良一, 川畑 光輝, 清水 直弥, 水井 めぐみ
    p. 567-570
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究は、省力化、自動化が進む交通観測に関して、機械観測によるセンシング手段の一つである LiDAR を用い、実際に横浜市内の交差点 2 箇所での観測を実施し、機械観測データと人手目視確認との精度差異について、国が定める精度差異許容値の基準に収まっているかどうかを検証した。また、機械観測ならではの新たな活用価値を見出す為、LiDAR 等のデジタル機器で観測可能な「速度情報」の活用による可視化可能事項について、実測データを基に確認した。結果として、個々の車両の交差点通行速度のみならず、通行速度の集中や分散、中心値などが明らかとなり、更には非混雑時、通常時、混雑時、夜間など、時系列による通行速度変化の可視化が可能である事を確認した。

  • 矢島 義之, 生藤 大典, Hemant PRASAD, 鈴木 健正, 冨永 慎, 櫻井 均, 大谷 学
    p. 571-577
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本稿は分布型光ファイバセンシングと交通流シミュレーションのデータ同化による短期渋滞予測技術について述べる。渋滞は多大な悪影響を与えるため、深刻化する前にその影響を正確に予測する技術が必要となる。そこで、道路全線を死角なく、リアルタイムに交通流を観測可能な分布型光ファイバセンシングによる平均速度データと、交通流理論モデルに基づくシミュレーションのデータ同化手法を開発した。そして、データ同化した交通流の時間発展をシミュレーションすることにより、近未来の渋滞状況を予測する。本手法を 2 つの高速道路で得られた実渋滞データを用いて検証し、従来法と比較したところ、提案手法による予測結果は 30 分先迄の渋滞長の予測誤差を 69~77%、旅行時間の予測誤差を 43~81%低減させ、特に時間変動が速い渋滞について著しい改善が見られた。

  • 宮本 啓旦, 西田 秀志, 佐藤 尚良, 松尾 久美子, 松岡 謙介, 関谷 浩孝
    p. 578-584
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    道路インフラに大きな影響を及ぼす重量違反車両の抑制を目的に有料道路料金所や道路本線において多数の走行車両重量計測設備(以下、WIM)が導入されている。WIM の定期点検では、予め静止時の重量を計測した試験車両を数十回走行させることで精度や稼働状態を確認するが、多額な費用が必要となっている。一方、走行車両の重量分布は法律で定められた限度値付近に集中することが想定され、これを利用することで WIM の劣化を検出できることが欧米で提案されている。本研究では、日本国内の国道に設置された WIM で計測されたデータに当該手法を適用し、基準の設定、分布の抽出、特徴量の検出手法の検討、および安定性の評価を行った。その結果、国内の大型車両において代表的な車種である 3 軸、4 軸単車を対象に、道路法車両制限令の最高限度値(20t、22t、25t)と空荷(12t)に分布の特徴(ピーク)があることを確認した。これを基準値(全 6 基準)とし、過去 6 年間の計測データ(9 地点、20 車線)に対して安定性の評価を行ったところ、3 つ以上の基準で限度値±10%以内(2σ)に全車線が収まっていることが確認できた。本手法を自動化することにより、試験車両の走行を必要としない継続的で効率的な WIM の定期点検が可能になると考える。

  • 小林 貴
    p. 585-592
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    本研究では、全国の市町村が策定した 1202 件の地域公共交通計画を収集し、記載内容を横断的に分析し、計画内容の実態と課題を明らかにした。記載項目の集計結果や、記載内容による自治体のクラスタリング、地域公共交通計画の記載項目間の関連性の分析を行った。分析の結果から、地域交通課題に関する記述と移動需要把握に関する記述の関連性は見られるものの、移動需要把握と計画の具体性との関連性はないことが明らかになった。このことは、多くの自治体は地域交通に関する課題の認識は十分にしており、計画立案者が移動需要に関するデータにアクセスしようとする意図は認められるものの、適切なデータの収集、収集したデータを活用した最適なルートやダイヤの設計など、計画の具体性に十分に結びついていない現状を示すものであると考えられる。

  • -圏域分類の検討-
    義浦 慶子, 内田 敬
    p. 593-600
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    地域公共交通は,まちづくり等の観点から期待される一方で,交通事業者の独立採算での維持が困難となって久しい.令和 2 年改定の地域公共交通活性化再生法では,地方公共団体に対して地域公共交通計画の策定が努力義務となり,国等からの支援が計画と結びついている.このため,計画策定が進められているものの,その多くが市区町村単独での計画である.しかしながら,主な生活移動である買い物や通院,通勤,通学が,市区町村内で収まるとは限らない.本研究では,都府県の所管区域を圏域として取り上げ,構成市町村の財政面における相互関係に基づく分類,圏域の人口密度の関係性を加味して分析する.そして,ひとつの分類に属する 4 圏域を取り上げ,複数市町村での地域公共交通計画策定の有無の要因について検討するものである.

  • ―岡山県パーソントリップ調査を用いてー
    林 晃紀, 橋本 成仁, 氏原 岳人, 海野 遥香
    p. 601-607
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    我が国では高齢者の免許返納を促す動きが活発化している。一方で利用者の減少等によって、鉄道や路線バスの運行路線の縮小や採算の取れない路線からの撤退が生じており、公共交通のサービスレベルが低下しているのが現状である。そこで本研究では、時間的な利便性とデマンド交通を加味した公共交通の利便性指標を導入し、高齢者の居住地と公共交通利便性との関連性、移動特性について明らかにした。まず、高齢者は公共交通の利便性が低い地域に居住する割合が高く、利便性が高い地域においては免許保有割合が低いことを示した。現在免許を持っていない高齢者の移動特性について、利便性の高い地域では外出する割合が高く、利便性が高い地域かつ免許の保有経験がない場合に公共交通を利用する割合が高いことを明らかにした。

  • 池谷 風馬, 安藤 貴史, 木原 健
    p. 608-612
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    公共交通において、車内や駅構内の混雑、乗り換え環境の不便さなどはサービスの質が低下する要因となっており、利用者数の減少を引き起こすなど、公共交通利用を促進する上で大きな障害と想定される。また、これらの要因は利用者に心的負担感を与え、well-being の低下につながる可能性が指摘されている。本研究では、公共交通を用いた移動時の一連の行動における心的負担感の把握に加え、パーソナリティ指標を用いた個人間の変化の把握を行った。アンケート調査に基づく統計分析より、所要時間や混雑度を揃えた場合、乗換え行動時の心的負担感が高くなる可能性があること、個人特性の違いによって、公共交通利用時の心的負担感に差が生じる可能性があるなどを明らかにし、公共交通利用を対象にする場合、一連の行動や個人特性に着目する重要性を示唆した。

  • 近藤 響志郎, 大枝 良直, 外井 哲志
    p. 613-617
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    モータリゼーション化の進行により,渋滞緩和や環境問題への対処を目的として,公共交通機関の利用が推奨されているが,特に地方都市における公共交通機関の分担率は低い.本研究では,公共交通手段である路面電車と路線バスに着目し,それぞれの交通手段がもつサービスレベルが手段選択に与える影響を定量的に評価した.Web アンケート調査により所要時間をはじめとするデータを取得し,非集計二項ロジットモデルを用いて分析した.その結果,通勤・通学行動においては全旅行程のうちイグレス時間を短くするために乗車時間の長くなる交通手段,それ以外の行動ではアクセス時間が長くなる交通手段を選択していることが確認され,サービスレベルが公共交通手段の選択に影響を与えている可能性が示唆された.

  • 杉本 陸, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    p. 618-623
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    我が国で最初の全線新設の芳賀・宇都宮 LRT が 2023 年 8 月に営業を開始した。路面電車としても 75 年ぶりの新規開業ということもあり初年度の利用者数は、休日は当初の推計値を上回り、開業直後は推計値の約 3 倍もの利用者数が観測された。また、平日の利用者数も開業後から着実に増加している。本研究では、LRT 新規開業時における需要推計値と実利用者数の乖離要因を明らかにすることを目的とする。交通系 IC カードデータを用いてクラスター分析と決定木分析を実施し、LRT 利用者特性を把握した結果、本事例の乖離要因として、開業直後に本源需要利用者を含む私事利用者が多数存在した点と時間経過に伴い既存利用者が通勤・私事利用者へ移行し利用が定着した点の 2 点が明らかになった。

  • 大窪 智博, 冨岡 秀虎, 森本 章倫
    p. 624-630
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    従来、移動は目的地での活動のためにやむなく行われる手段、すなわち派生的需要に依ると捉えられてきた。一方、近年は次世代交通や観光列車の導入等が盛んで、移動自体が目的となる需要、移動の本源的需要を評価する必要が高まっている。そこで本研究では、本源的需要・派生的需要双方による移動が含まれる路面電車に着目し、移動の本源的需要の評価を行う。アンケート調査を通じて、路面電車の利用には一定程度本源的需要が含まれることや、年齢によって本源的需要が発生する要因が異なることが明らかとなった。さらに実際の行動データの分析を通じて、本源的需要による行動は路面電車の路線の特性により異なることが示された。路線の特性や利用者の特性に合わせた沿線の空間整備や賑わい創出事業等、本源的需要に合わせたサービスの創出が有効である。

  • 阿部 透世, 森本 章倫
    p. 631-638
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    公共交通が充実した大都市においても鉄道駅やバス停から離れた場所における公共交通不便地域の解消が課題となっている。住民が望むより豊かな生活を実現し、適切な地域公共交通の導入を進めるには、住民が公共交通に対して形成する満足度について理解を深めることが重要である。本研究では駅・バス停までの徒歩時間や鉄道・バスの運行間隔といった客観的な要素のみならず、主観的な要素にも注目し、公共交通のサービス水準に対する満足度に影響を与える要素の分析を行った。その結果、公共交通の利便性が高い東京都のような大都市において満足度は客観的な要素によってのみから決定されるのではなく、徒歩時間と運行間隔(待ち時間)に対する抵抗感や、過去との時間視点と他地域との空間視点での比較意識といった主観的な要素によっても左右されることが明らかになった。

  • 平田 晋也, 龐 岩博, 関本 義秀
    p. 639-644
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/10
    会議録・要旨集 認証あり

    少子高齢化が進む地方都市では、公共交通の縮小により、高齢者の移動手段の確保が大きな課題となっており、コミュニティバスの需要を的確に予測することが求められている。従来のアンケート調査や利用実績データでは、非利用者を含む潜在的な移動需要を捉えにくく、スマートフォンの GPS データも、サンプル数が少ない場合には拡大推計の精度に課題がある。そこで本研究では、人口統計や施設配置、行動特性に基づいて人の移動を仮想的に再現した「擬似人流データ」を用い、スマートフォン非所持者を含む住民全体を対象とした需要予測を行う。これにより、路線やダイヤの見直しに対する柔軟なシミュレーションが可能となり、持続可能な地域交通の計画立案を支援することを目指す。

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