交通工学研究発表会論文集
Online ISSN : 2758-3635
第42回交通工学研究発表会
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第 42 回 交通工学研究発表会
  • 小嶋 文, 金子 由愛, 間邊 哲也
    p. 1-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    自転車乗車時の子どもに対する適切な安全指導や注意喚起について検討するため、自転車乗車時の危険行動やヒヤリハット事象の特徴について、Web アンケート調査により検証した。子ども自身は危険行動を自覚していないことも多いと考えられることから、本研究では保護者の認識を調査した。回答結果を数量化3 類により分類し、年代別の特徴と危険行動と危険事象の関連性について分析を行った。分析の結果、危険行動は「1.運転による楽しさ/運転以外の楽しさ」と「2.無意識的な油断/意識的な油断」の 2 つの軸で分類できる可能性が見られた。また、小学生は運転による楽しさと無意識的油断に伴う危険行動、中高生は運転以外の楽しさと意識的油断に伴う危険行動を取りやすいことが分かった。

  • 松尾 幸二郎, ヌッサカ・ニムマヴォン , ミタル・チャクマ , 宮崎 耕輔, 杉木 直
    p. 7-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では,交通公園の交通安全教育への寄与に関する基礎的な研究として,児童の交通公園の利用経験が交通ルール認識に与える影響について把握を行うことを目的とし,豊橋市の児童およびその保護者を対象としたアンケート調査により,豊橋市内の交通公園の利用頻度と交通ルール認識との関係の分析を行った.結果として,児童の入学前の交通公園の利用頻度が高い児童ほど,自転車乗用時に「止まれ」の場所で一時停止をする行動が高まることや,無信号横断歩道で一時停止して横断者へ道を譲るという意識および行動が高まることなど,多くの交通ルールの認識に良い影響を与えていることが示された.一方,自転車の左側通行については,入学前の交通公園の利用頻度によって意識は向上するものの,行動までには繋がっていないことも示された.

  • 原田 昇, 須永 大介, 大津 浩志
    p. 15-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    近年、少子高齢化に伴って高齢ドライバーの死亡事故の増加が問題視されている。その対策として免許返納施策があるが、高齢者の生活に急激な変化をもたらす恐れがある。そこで、本研究は、免許返納の代わりに自身の運転技能低下を考慮し安全に運転する「補償運転」に着目し、特に死亡事故になりやすい夜間と雨の日について補償運転の実態と促進策に関するアンケート調査を行った。促進策としては、夜間と雨の日の運転が危険だという情報を提供することと、自身の運転を振り返って運転技能の低下を認識してもらうことの 2 つを挙げた。その結果、運転頻度や運転の自信と補償運転実行者率の関係を把握するとともに、情報提供、運転の振返りの両方が補償運転実行意向の変化に有効であること、運転技能低下を認識させることが有効であることを明らかにした。

  • 森 文香, 池田 武司, 村上 舞穂, 平川 貴志, 小林 寛
    p. 19-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    ハンプやスムーズ横断歩道などの物理的デバイスの導入により、規制速度が 30km/h を超える路線においても、自動車の速度抑制、ひいては無信号横断歩道の安全性向上が期待出来る。そこで本研究は、技術基準から高さや勾配を緩和した形状のハンプを走行する実験によって、規制速度が 40km/h の路線に適応するハンプの形状を速度抑制効果及び走行安全性の観点から検証した。今回検証した形状では、目標とした速度 40km/h を超えて走行した場合に不快感・危険感の上昇が大きく、40km/h を超えた速度で走行する自動車への速度抑制効果が期待出来る結果となった。ただし、形状によっては、不快感が小さいため速度抑制効果への期待が低いものや、ハンプ進入時の急減速の発生が懸念されるものもみられた。

  • 倉科 慧大, 森本 章倫
    p. 23-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    我が国における交通事故の発生状況は改善の傾向を示しているが、近年は下げ止まり状態となっている。この傾向は生活道路において顕著である。生活道路では、幹線道路と比較して交通量などのデータ取得が困難であり、安全対策に関わる分析が限定的であった。しかし、近年では ETC2.0 の普及などにより生活道路における使用可能データが増加傾向にある。一方で、交通事故予測の分析手法に着目すると重回帰分析をはじめとする多変量解析法に対して、近年効果的な交通事故分析を目的として AI(人工知能)の応用が期待されている。そこで、本研究では ETC データと AI の一種である逆強化学習を活用し、生活道路における急ブレーキや高速運転といった潜在的な危険の要因の推定を行った。そして、逆強化学習を用いた事故要因特定の可能性に関する知見を得た。

  • 菅 忍, 河内 夏海, 吉城 秀治, 辰巳 浩
    p. 31-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    令和 3 年 6 月には千葉県八街市で下校中の児童の交通死亡事故が発生し、緊急合同点検が行われた。過去にも平成 24 年 4 月京都府亀岡市での交通死亡事故を受け、3 省庁から都道府県知事等に対し、学校、警察、道路管理者等が連携・協働し、学校の通学路の安全点検や安全確保を図るよう管内市区町村等へ周知するよう依頼されている。令和 4 年 3 月 4 日に 3 省庁から「通学路における合同点検の結果について」が発表されたところであるが、市区町村の合同点検に対する取り組についての実態は明らかにされていない。本研究では、ホームページ調査からは判断できない合同点検の実態について、アンケート調査を実施し、年平均点検箇所数等から、類似団体グループ自治体での合同点検の実態を明らかにした。

  • 白木 輝, 鈴木 弘司
    p. 39-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では,路面表示による右折時事故対策が実施された複数交差点に着目し,対策前後での右折車の挙動の変化から,事故対策が車両に与える影響および交差点による影響の違いを検証した.結果として,交差点内の右折車動線を示す白色破線の施工,赤色塗装によるカラー化や中央分離帯先端部ゼブラへのラバーポールの設置は,事故に繋がる可能性のある危険挙動の発生割合を低下させる効果や,本来の右折時進路から左右に大きく逸脱した走行を減少させる効果をもたらすことがわかった.また,対向直進車がいない場合,自由走行である場合,信号表示が右折矢である場合などに,交差点内の走行位置が左右にずれることや,白色破線および交差点内停止線の施工は,交差点内での対向直進車待機時の停止位置を上流に移動させる効果があることがわかった.

  • 塚田 悟之
    p. 47-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    交通死亡事故数は、これまで関係諸機関で講じられてきた交通安全対策が効果をあげ、減少傾向にある。今後、この数のさらなる低減へは、ドライバーの認知エラーの要因一つひとつを解明した対策の検討が必要である。本研究では、信号交差点における右折車と対向直進車の衝突事故、いわゆる右直事故に着目し、その予防策を検討した。具体的には、“ドライバー自身の『思い込み』を除去することが認知エラーを防止する最善の予防策になる”との仮説を置き、信号交差点における右折挙動調査を実施した。そして、対向直進車の短い車頭間隔で右折する車両と長い車頭間隔で右折する車両の挙動比較を通じて、本仮説を実証すると共に、認知エラーの対策要件として、思い込み自体の是正、思い込みのきっかけ除去、思い込みによる影響連鎖の遮断、の 3 つを導出した。

  • 西堀 泰英, 中島 陵, 橋本 竜真, 松尾 幸二郎
    p. 51-56
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究は、交通事故削減の効果が示され、全国で整備が進められている歩車分離式信号に着目し、整備による交通事故削減の効果をさらに高めるための条件を検討するため、歩車分離式信号の様々な条件が交通事故件数に及ぼす要因を分析した。分析は、実際の交通事故発生状況のデータと、交通事故リスク評価のために負の二項回帰モデルを用いて行った。その結果、当事者の違いによって交通事故リスクに影響する要因が異なること、自転車歩行者事故のリスクを高める要因として、停止線間距離が長いことや角地土地利用があることが確認できた。また、自動車事故のリスクを高める要因として、枝数が多いことや交差角度が大きいこと、縁石・ガードレールがないこと、などが確認できた。

  • 平澤 匡介, 伊東 靖彦, 佐藤 義悟
    p. 57-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    ワイヤロープ式防護柵は、支柱が細いので設置のための必要幅が少なく、既存道路への設置や狭い幅員の分離帯用として使用することが有利である。2017 年から高速道路の暫定 2 車線土工部中央にレーンディバイダーとして整備された結果、正面衝突による死亡事故抑止などの安全性が確認された。本研究では、ワイヤロープ式防護柵の設置可能区間を拡げるために、コンクリート舗装への設置仕様を開発した。端末金具に金属拡底式あと施工アンカーを使用することで、鋼管杭の端末基礎が不要になり、既設橋梁用支柱基部プレート式と、金属系、または、接着系のめねじタイプのあと施工アンカーを使用することで、スリーブが不要になる。さらに、ロープ連結材を使用することで土工部標準仕様と同程度の変形性が見込まれることが明らかになった。

  • 平田 篤嗣, 佐藤 志帆, 永井 基貴, 春藤 康仁
    p. 65-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    令和元年に公表された安心安全計画にも記載されているが,対面通行区間(暫定区間)ではワイヤーロープを設置することとなっている.従前よりワイヤーロープ区間の設置により飛出事故は減少し,死傷に繋がる事故は設置区間では減少している.その反面,ワイヤーロープに接触する事故により通行止めが発生し,緊急対応で行う補修工事を実施する状況である.本論文では全線暫定区間として供用している徳島自動車道(付加車線事業を除く)を対象としワイヤーロープの設置後に発生した事故について設置箇所別に事故件数を整理し事故の特徴を整理し検証を行った.検証結果より事故発生箇所は挙動履歴が他と異なる傾向があることが確認できた.多くの事故は漫然運転による事故が主流であることも確認できた.

  • 佐藤 志帆, 平田 篤嗣, 永井 基貴, 春藤 康仁
    p. 69-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    高速道路ではソフト面やハード面も含めた多くの事故対策を実施している状況である.特に事故軽減となった対策は,線形要素が厳しいランプでの舗装補修による対応である.ランプは本線に比べて急な縦断勾配や小さい曲線半径の平面線形でかつ事故種別が路面湿潤時の事故が多いため舗装補修による効果が大きい.しかしながら,通常の高速本線は第 1 種道路で小さい半径の平面線形や急勾配な縦断設定がないため,舗装補修後における事故軽減はあまり確認されていない.そのため舗装劣化と事故発生箇所の関係性が評価できていない.特に事故種別と舗装劣化の関係性は評価した中で舗装補修につなげているものはない.本論文では事故種別を大きく 3 分類し事故の発生状況と舗装劣化状況の関係性について分析し将来的には事故と舗装の関係から補修箇所の選定や規模の基礎資料となるよう検証を行う.検証結果では舗装補修範囲の設定は事故軽減に重要な要素であることが確認できた.

  • 上畑 旬也, 櫻井 光昭, 稲吉 龍一, 大宮 博之, 深井 靖史, 野中 康弘, 赤羽 弘和
    p. 73-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    わが国の高速道路は、構造体の老朽化対策としての保全工事に伴う車線規制時の交通事故が増加している。人身事故の場合は、現場検証を経ることで交通事故発生時の状況を比較的把握しやすい一方で、工事車線規制始端部での矢印板への接触事故といった軽微な物損事故の原因を特定することは難しい。そこで、注意喚起のための発光体と突発事象発生時の録画機能を併せ持つ資機材として開発された超高輝度 LED 警告灯『ピカドラ』を工事車線規制始端部に配備することとし、矢印板への接触事故の瞬間の映像を入手できるようになった。本論では、『ピカドラ』に録画された交通事故発生時の映像から工事車線規制始端部における交通事故発生時の状況について観察し、車線規制方法別や車種別等の事故形態の実態を明らかにした。

  • 赤羽 弘和, 香取 樹, 後藤 和夏, 上畑 旬也, 野中 康弘
    p. 81-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究においては、中央自動車道の片側 3 車線区間の路肩側第 1 車線の規制に伴う走行車両の第 2 車線への合流挙動、および被合流車、あるいはそれらの後続車両の挙動を、複数のビデオカメラによる録画データにより分析した。録画データの目視観測により、減速灯点灯や走行軌跡の急変などを目安にして、錯綜の発生例を抽出し、6 区分した。上記区分毎に関係車両の 1/30 秒毎の走行軌跡を推定し、錯綜に到るまでの過程を詳細に分析した結果、リスクが特に高まったパターンで規制による車線減少の認識遅れ、および並走車両との意思疎通の齟齬が主因を構成していると推定された。車線減少点および関係車両を頂点とする多角形の面積でリスクを評価する錯綜指標 PIC を提案し、その適用性を確認した。

  • 稲垣 亮, 松尾 幸二郎, 杉木 直
    p. 89-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    近年,自動車プローブデータを活用した生活道路の地点別事故危険性評価の試みが盛んとなっている.しかし,プローブデータ活用による地点別事故危険性評価の精度向上効果についての理論的考察は十分には行われていない.そこで本研究では,まず出合頭事故危険性評価理論モデルを構築し,理論上の事故危険性の算出,および確率試行による事故データ,自動車プローブデータ(通過量,急減速数)の生成を行った.そして,理論上事故危険性と,生成された各データを用いた推定事故危険性との比較を行い,プローブデータ活用による危険性推定精度向上効果を評価した.その結果,プローブ通過量活用による危険性推定精度の向上が確認できた一方,本理論モデルの枠組みにおいては,プローブ普及率により,急減速数活用による効果が表れない場合も見られた.

  • 水野 翔太, 河本 一郎, 山口 樹, 井上 徹, 西 剛広, 西岡 悟史
    p. 95-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    近年、高速道路では逆走・誤進入が社会的な問題となっており、阪神高速道路においても、実態の把握、対策に尽力しているところである。現在、阪神高速道路では、逆走予備軍として考えられる誤進入車両の、ETC データを活用した定量的な把握を試みている。しかしながら,ETC データでは高速入口へ誤進入する手前の一般街路における行動が分析できないため、主に誤進入車両の多い高速入口での水際対策に留まっている。本稿は、上述した誤進入車両について、ETC データを活用する手法に加え、ETC2.0 プローブデータを活用することで、誤進入する手前の一般街路における挙動分析手法を提案するものである。

  • 松尾 幸二郎, 野口 萌衣, 杉木 直
    p. 101-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では,豊橋市の電停のうち,唯一安全島が設置できない東田電停における安全対策として,「電停への路面電車の到着(乗降)に合わせて東西方向の信号現示を赤にすること」 (以下,本信号連携策)について,その効果や自動車交通流への影響などを評価することを目的とした.ビデオ観測による乗降状況の分析を行った結果, 乗車がない「降車のみ」の場合に安全でない乗降の割合が高いこと,乗降時の信号現示が青の場合は赤の場合に比べて安全でない乗降の割合が高いことなどが明らかとなった.さらに,ミクロ交通シミュレーションにより本信号連携策が自動車交通円滑性に与える影響を分析した結果,東西方向の自動車交通処理に大きな影響は与えないことが予想された.

  • 櫻井 陸斗, 五百藏 夏穂, 福田 大輔
    p. 109-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    近年,観光客数増加に伴うオーバーツーリズムが世界的に問題視されている.その対策の一つとして混雑課金の導入が検討されている地域もあるが,既存の導入事例の多くは通勤交通が卓越した都市中心部を対象としており,過去の事例を参考に観光地での施策導入効果を予測することは難しい.本研究では,観光周遊行動を対象としたアクティビティ型交通行動モデルを混合整数計画問題の枠組みを拡張して構築した.その上で,混雑による旅行時間増加を考慮した観光客の移動・活動スケジュールの動的利用者均衡配分を求め,観光周遊量の変化を予測した.鎌倉市を想定した分析の結果,課金額の増加に伴いネットワークの混雑は解消されるものの,観光客の効用は低下することを示した.

  • 土方 康裕, 中村 文彦, 有吉 亮, 田中 伸治, 松行 美帆子
    p. 117-121
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    グローバル化が進展する中、持続的な成長を果たすためには、「空港」という「ネットワークの基盤」の整備が不可欠である。あわせて空港までのアクセス交通(以下「端末交通」と呼ぶ)の整備も重要で、空港の評価に影響を与える要素となっており、端末交通の手段選択特性を把握し、より利用者ニーズに合った交通を実現する必要がある。本研究では、端末交通における手段選択特性に着目し、個人による交通行動の本質的な違いをより明確にとらえ、行動タイプのニーズに対応した的確な検討を行うために、空港後背地の都市指標により主成分分析とクラスター分析を実施し空港を分類した。検討の結果、5 つの空港グループの設定を行いその違いを明らかにするとともに、端末交通手段選択において空港グループ間の比較に関する議論が可能になることを確認した。

  • 寺山 一輝, 高井 咲音, 小谷 通泰
    p. 123-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    都心を活性化させるためには,商業地域内で来街者の回遊行動を誘発させることができる空間を創出することが必要である.本研究は,来街者の事前活動計画からの変更挙動を考慮した回遊行動モデルを構築することを目的とする.まず,回遊行動を計画行動と追加行動に区分した上で,計画店舗数の決定,回遊の継続・帰宅の選択,活動内容の選択,目的地の選択,滞在時間の選択をそれぞれモデル化する.次に,構築したモデルを用いて,来街者の回遊行動を再現するとともに,施設配置の変化が事前活動計画からの変更挙動に及ぼす影響を明らかにする.分析の結果,いずれのモデルにおいても良好な精度で推定することができた.また,地域内の施設数が増加することによって,追加行動としての訪問店舗数・滞在時間が増加することが明らかとなった.

  • 片井 拓真, 嶋本 寛
    p. 129-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では宮崎市においてバスレーン規制が本格実施された前後の期間を対象として,プローブデータを集計した経路交通量と逆推定モデルにより推定された経路交通量の比較を行った.その結果,2 つの交通量に共通してバスレーン規制後に相当する 2 月において,規制時間帯中はバスレーン規制区間のみならず規制区間周辺の交通量も減少する一方で,規制時間帯前後はバスレーン規制区間と規制区間周辺の交通量が増加する傾向にあることを確認した.一方,両者の異なる傾向として,プローブデータの集計結果では,規制後に相当する 2 月の規制時間帯中において,規制区間よりも離れた場所に位置する有料道路の通過台数が増加したが,逆推定モデルにより推定された経路交通量ではそのような傾向が見られないことを確認した.

  • 原 隆博, 宇野 伸宏, 倉内 文孝
    p. 137-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では,中国道リニューアルプロジェクトに伴い,中国自動車道の一部区間において実施された長期通行止めに着目し,新名神高速道路への迂回積極性の分析,および経路選択要因の評価を試みた.迂回積極性の分析では,離散変数を用いた判別分析を行い,新名神への迂回に積極的であった利用者の特性を分析した.経路選択要因の分析では,AHP を用いて被験者個々の評価基準の重みを算出するとともに,クラスター分析を行うことで,経路選択基準の類型化を行った.また,判別分析により明らかになった説明変数毎のクラスター分布を示すことで,新名神への迂回を促すクラスターの決定方法,および各クラスターに対する迂回促進の考え方を提案した.

  • 江橋 恭士朗, 福田 大輔
    p. 143-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    適切な交通情報の提供により交通流の改善を図る自律分散型交通管理のため、Iwase et al. は交通流の振動現象(ハンチング)を抑制する情報提供方式である “自己実現シグナル”の概念を提案した。さらに鵜飼・福田は、自己実現シグナルによるハンチング抑制効果を集団室内実験を通じて検証した。しかし、その実験は小規模でハンチング抑制効果を適切に分析するには不十分であった。そこで本研究では、より多数の被験者が参加するインタラクティブ・オンライン経路選択実験を実施し、自己実現シグナルによるハンチングの抑制効果を分析した。実験の結果、自己実現シグナルに基づく交通情報の散らばりが大きい場合においてハンチングの抑制効果が確認された。さらに、 Mixed Logit Model を用いて個人レベルでの情報遵守行動を統計分析し、その規定要因を明らかにした。

  • 鈴木 美緒, 山田 竜矢
    p. 151-155
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    2021 年 6 月に千葉県八街市で起きた事故を受け,小学生の通学路での事故対策が改めて課題として認識されるようになった.同年には全国で通学路の合同点検が実施され,76,404 箇所の対策必要箇所が抽出される一方,通学路に設置される横断歩道橋は老朽化による撤去が進み,今後は横断歩道を通学路指定する事例が増えると予想される.通学路のルール遵守徹底が必要であると考え,本研究では信号機付き横断歩道における小学生の横断挙動を調査した.その結果,大人が無理な横断をしない横断歩道においても子供は無理な横断をする横断歩道が存在することが明らかとなった.また,この違反挙動には,交通状況の誤判断のみでなく,集団での行動が優先される,注視が足りない,大人が違反している,といった,道路環境とは異なる要因が影響する可能性が示唆される.

  • 藤田 蓮土, 山田 真衣, 橋本 成仁, 海野 遥香, パク ミンジョン
    p. 157-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    令和 3 年における横断歩道横断中の交通事故死者数のうち約 6.5 割がドライバーの横断歩行者妨害違反により亡くなっていることから、一時停止義務などの横断歩道における歩行者優先が必ずしも遵守されていない状況が伺える。この現状を踏まえ、警察は取り締まりの強化を行っているがその効果にも限界があると考えられる。本研究では、歩行者側からの横断意思をドライバーに明確に伝えることが可能となれば、より一時停止率を向上させることが可能となると考え、横断待機時の歩行者の立ち位置と振る舞いに着目し調査を行った。その結果、自動車の停止率には、横断待機方法では振る舞いよりも立ち位置の方が影響を与えることが明らかとなった。また、自動車に回避行動をさせなければ、立ち位置や振る舞いによる停止率への効果を高められる可能性を示唆した。

  • 安部 みちか, 海野 遥香, 寺部 慎太郎, 栁沼 秀樹, 田中 皓介
    p. 165-170
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    我が国での交通事故件数・死者数は年々減少しているが,歩行中死亡事故に着目すると約60%の歩行者が横断違反をして死亡事故に遭っており,横断歩道外横断のメカニズムに関して明らかにすることが必要である.そこで本研究では,無信号横断歩道でビデオ観察調査を行い,歩行者とドライバーの双方の行動を分析した.その結果,横断歩道外横断者は,左確認をしない,横断前会釈をしない,自転車に乗るなどの傾向があることが分かった.また歩行者は,奥側車線の自動車交通が流れている時に横断歩道を利用する傾向があることが明らかになった.道路環境に着目すると,横断歩道外横断をする要因として歩行可能領域が関連していることが把握され,横断歩道の位置と歩行可能領域を合わせて整備する必要性があることが示唆された.

  • 中島 孝規, 井料 美帆
    p. 171-178
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    近年、歩行者の横断歩道外横断(乱横断)を抑制し、安全な横断機会を増加させるため、二段階横断施設を含めた無信号横断施設の設置が検討されている。しかし、横断施設の設置位置や種類の違いによる乱横断抑制の定量的効果は明らかになっていない。そこで本研究では、バーチャルリアリティ(VR)を利用した実験を行い、無信号横断施設の設置位置や種類が個々の歩行者の横断位置選択に及ぼす影響要因を分析した。その結果、無信号横断施設が設置してある場合にはその地点を高確率で選択すること、横断歩道の路面標示がある施設の方が交通島のみのものに比べ選択されやすいことが分かった。さらに、事前に宣言した経路の乱横断割合に比べると、実際に選択した乱横断の割合が高く、歩行中の到着車両の存在の有無によって乱横断が選択されることが示された。

  • 新井 棟大, 木平 真, 森 健二, 萩田 賢司
    p. 179-186
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    交差点の幾何構造は様々な交通事故リスクに影響を与える要因と考えられているが、幾何構造を示す各特徴量がどのような効果をもたらすかを明確にするにはさらなる検討が必要である。そこで本稿では、このような特徴量のうち横断歩道間距離と横断歩道セットバック距離に注目し、オープンデータである交通規制情報をもとに作成した横断歩道の位置データを用いてこれらを計算することで、交通事故リスクの分析に用いることのできるデータセットを作成した。得られたデータセットを用いて千葉県内の交差点で発生した左折事故を分析したところ、一定以上の大きさの交差点において、計算した横断歩道セットバック距離が左折事故における巻き込み事故の比率に影響を与えることが示された。

  • 長谷川 裕修, 鈴木 璃子, 葛西 誠, 田村 亨
    p. 187-191
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
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    本研究では,通学路において歩行者がどこを注視し,どのように認知資源を配分しているのかを「路面状況」と「交通環境」に着目して,歩行者の視覚的注意に与える影響を評価することを目的として,実験条件を統制可能な実写VR環境における動画視聴実験を実施した.結果として,以下の3点が明らかとなった.1) 積雪と可動物のいずれかが負荷増となった場合,不動物AOIに配分可能な認知資源が相対的に減少した結果,不動物AOIの合計注視時間割合が減少する,2) 積雪と可動物が同時に負荷増となった場合,視覚的注意の働きが低下し,不動物AOIの合計注視時間割合が増加する,3) 不動物に対する交通安全意識はAOI分析の結果と整合的である

  • 持田 侑季, 室町 泰徳
    p. 193-197
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、自動運転車の普及が歩行者流動に与える影響について、非自動運転車の歩道進入による路外駐車場利用と自動運転車の路肩乗降利用をシミュレーションを用いて比較することにより検討した。その結果、本研究における都市開発の進展に関するシナリオにおいては、路外駐車場に歩道進入して入庫する駐車方式よりも路肩乗降の方が歩行者快適性は高いことが示された。一方、自動車交通流については、路肩乗降の方が平均旅行速度は低くなった。さらに、3D シミュレーション動画から、非自動運転車の歩道進入による歩行者流動への影響が、自動運転車の普及により解消されていくことが示され、自動運転車の普及は、歩行者流動の快適性に貢献する可能性があることが明らかとなった。

  • 曽 翰洋, 鹿島 翔, 葉 健人, 土井 健司
    p. 199-206
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    近年、街路空間を車中心の空間からよりローカルな歩行者中心の空間へと転換することに関心が高まっている。特にニューノーマル時代のもとでは、今後、人々の自己効力感や幸福感を高めるためのニューローカルデザインが求められる。この実現に向けては、ひと中心の交通まちづくりの観点から歩行空間の質的向上、すなわち Walkability と共に Lingerability の向上が必要である。そこで本研究では、国内の歩行空間を対象として、画像認識技術を活用し、空間性能の評価およびその要因分析を目的とする。まず、ファインチューニングを施した画像認識 AI モデルによる歩行空間評価を実施し、Grad-CAM を用いて空間性能に影響を及ぼす空間要素を可視化し、特定した。そして各空間のポジショニングを通じて対象空間同士の関係性を把握し、国内の歩行空間の空間性能改善に向けた重要な知見を得た。

  • 水谷 晃啓, 日野 慧, 松尾 幸二郎
    p. 207-213
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は屋外で休憩する人物が歩行しながら移動してくる人物に対してどのようなパーソナルスペースを形成するか実験を行い,その結果を分析・考察した。実験は大学構内の街路空間と特性が近い場所にて,休憩者と見立てた被験者に対し歩行者と見立てた接近者が歩行しながら接近する場合とそうでない場合のパーソナルスペースを測定し比較した。休憩者が歩行者に対して形成するパーソナルスペースは,従来の屋内等で調査された静止した者に対して形成されるパーソナルスペースよりも拡大する傾向を示すことがわかった。より詳細な調査が必要であるが,歩行者に対する休憩者のパーソナルスペースは「位置」・「姿勢」・「向き」といった街路空間の環境と関係し,実質的な空間量が小さくなるほど歩行者への接近時の反応が増大する可能性があると考えられる。

  • 日下部 貴彦, 新井 祐子, 本間 健太郎, 杉野 勝敏, 菅 芳樹, 丹羽 由佳理
    p. 215-222
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    駅をはじめとした公共施設では、バリアフリールートの整備が進められてきた。これまでのバリアフリー施策では、利用者を基軸とした利便性等の観点からの評価が十分には実施されていない現状がある。本研究では、離散選択モデルに基づく経路選択行動モデルに適用し、パラメータを求めることが可能な駅構内の経路選択に関する Stated Preference(SP)調査を設計し、実施した。SP 調査の結果に対応する NL モデルを構築・適用することにより、駅構内での経路選択特性を明らかにした。推定結果より、車いす利用者及びその介助者にとって、駅員の介助を要さずに乗降ができるくし状ゴムの設置は、時間短縮効果と比較して大きな負担軽減につながることが明らかになり、自力乗降可能な環境整備の重要性が示唆された。

  • 大西 一真, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 海野 遥香
    p. 223-226
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    IoT の普及によりデータの時間的解像度が格段に上がったことや,分析環境が充実したことなどにより,時系列分析が活用される場面が増えている.また,実社会の交通量や訪問者数などが,インターネット上に現れる人々の言動に影響されることが想定される.本研究は,複数の時系列データの関係を回帰分析することで,交通に関連する需要と,人々の興味・関心の間の構造を知りたいとするものである.ここでの需要は,道の駅の買物来訪者数で,2 つの道の駅から 3 年強と 1 年分のデータ提供を受けた.人々の興味・関心は Google 検索数と Twitter の投稿数から得た.回帰分析を行ったところ,Google 検索数は有意でなかったものの,Twitter 投稿数は 2 つの道の駅ともに 1%有意で,ツイートの件数が 1 増加すると買物来訪者数がそれぞれ約 17 人増加,約 1 人増加という結果が得られた.

  • 武藤 智義, 黒土 晴基, 金子 雄一郎
    p. 227-232
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    新型コロナウイルス感染症の流行以降,わが国で普及している在宅勤務を中心としたテレワークについては,業種等によって利用状況が異なることが報告されているが,これらの状況が地区毎の人口分布にどのような影響を及ぼしているかは明らかにされていない.本研究では企業の本社機能等が集積している東京都心部を対象に,携帯電話の基地局データに基づく人口統計であるモバイル空間統計を用いて,感染流行前後での滞在人口の変化を 500 m メッシュ単位で把握した.その結果,都心地区(大手町,丸の内,日本橋,有楽町等)や副都心地区(新宿,渋谷)で減少が大きいことが確認された.また,経済センサスの産業別従業者数を用いて滞在人口の変化との関係を分析した結果,情報通信業が都心 5 区の滞在人口の減少に大きく寄与していることがわかった.

  • 有賀 敏典
    p. 233-236
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    近年,携帯電話位置情報から得られる時間帯別人口が交通計画に利用ができるか関心が集まっている.しかし,施設立地が時間帯別人口にどのような影響を与えているのか分析した例が少ない.影響を分析できれば,施設立地が変わった時の時間帯別人口を推測する際に有用である.そこで本研究では,東京 23 区を対象にして,Agoop 社の流動人口データから得られる 2015 年 10 月平日 2 時間ごと 3 次メッシュ人口を被説明変数,経済センサス-基礎調査から得られる 2014 年 3 次メッシュ業種別事業所数および国勢調査 2015 年 3 次メッシュ人口を説明変数とする重回帰分析を行った.さらに,東京 23 区の重回帰分析で得られた偏回帰係数(パラメータ)を大阪市に適用し,異なる施設立地の都市構造の場合に,時間帯別人口分布が妥当な形で推計されたかどうかを検証した.

  • 有田 禎之, 高橋 君成, 佐々木 邦明
    p. 237-240
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    開発途上国においては、データの入手容易性や低廉性から、インフラの計画、整備・運営にかかるビックデータの活用が期待されている。しかしながら、我が国の支援で実施される都市・交通インフラの計画・設計業務を例にとっても、未だ大規模なパーソントリップ調査を含む各種交通調査や実測調査に頼っており、途上国の計画業務の現場においてビックデータは有効活用されていない。本研究では、ラオスにおいて GPS プローブデータを活用し、同国で実施されたパーソントリップ調査と比較しながら、GPS データの特性、トリップの推計や定義の際の課題を把握し、同 GPS データの都市・交通インフラの計画業務への適用可能性を検証した。

  • 楠瀨 凱, 佐々木 邦明
    p. 241-246
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    開発途上国では、経済発展に伴う市街地の急速な拡大が進んでおり、交通渋滞など様々な都市問題が発生している。諸問題に対処するため、正確な交通需要予測をもとにした円滑な都市計画策定が急務であるが、既存のパーソントリップ調査を高頻度で実施することは難しく、それに代わる調査手法として、GPS プローブデータの利用が注目されている。本研究では、GPS データを用いた交通需要予測手法を提案することを目指し、カンボジア・プノンペンにおいて、実際に市販のデータからトリップの抽出、移動目的、移動モードの推定を行った。また、既存の調査との比較やデータの分析を通じて GPS データの特性、推定における課題などをまとめ、既存調査の代替可能性を検証した。

  • 小林 貴
    p. 247-252
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では交通量が未観測の細街路の交通量を、幹線道路の交通量から推計する手法を開発するために、細街路と幹線道路の交通量変動の類似性を示すことを目的とする。全国約 9 千断面の細街路と付近の幹線道路のペアにおける交通量変動を分析した結果、次の 3 点を明らかにした。第 1 にペアの交通量変動には高い相関(平均 0.7)がみられた。第 2 に地域全域の交通量変動の類似性から生じる見かけ上の相関(幹線道路間及び細街路間の相関)と比べ、ペアの相関は有意に高かった。第 3 に幹線道路が付近にあるペアは 5km 以上離れているペアと比べて相関が高く、平行関係にあるペアのほうが交差関係にあるペアより相関が高い傾向が見られた。これらの類似性の知見は、細街路の交通量を周囲の幹線道路の交通量から推計できる可能性を示していると考えられる。

  • 林 信吾, 白柳 洋俊, 倉内 慎也
    p. 253-260
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、高速道路走行時の注意の解放により、眠気の上昇が軽減し、安全運転に関わるパフォーマンスが改善するとの仮説を措定し、ドライビングシミュレーターを用いて同仮説を検証した。高速道路走行時は、進行方向遠前方に注意を維持しながら、単調な環境下を長時間運転する。そのため、ドライバーは馴化状態に陥り、眠気が上昇し、安全運転に関わる運転パフォーマンスが悪化する。馴化の緩和には、注意の解放が有効であり、本研究では、眠気上昇の軽減ならびに、安全運転に関わる運転パフォーマンスの改善に対する注意の解放効果を二重課題に基づき検討した。その結果、注意の解放により、眠気の上昇が軽減し、安全運転に関わる運転パフォーマンスが改善する、すなわち、仮説を支持する結果が得られた。

  • 飯田 克弘, 丸橋 慧士, 大田 一成
    p. 261-267
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    衝突被害軽減ブレーキなどの先進運転支援システムの普及による,道路交通の安全性,円滑性向上が期待されている.しかし一方で,近年発生した交通事故のうち,工事区間始端部における衝突事故増加が各方面で懸念されている.この問題に対し,本研究では,運転手に焦点を当てた対策を優先すべきと考え,視認しやすく指示が伝わりやすい,工事区間始端部の規制情報デザインを考案し,評価を試みた.ドライビング・シミュレータを用いた室内走行実験から,運転挙動データとヒアリングデータを収集した.分析の結果,背景が赤と白の市松模様で,車線変更を促す矢印が大きく強調された標識車を含む工事区間始端部が,事故リスク低減を期待できる規制情報デザインであるという示唆を得た.

  • 本間 英貴 , 加藤 寛道, 石垣 博将, 清宮 広和, 中林 悠, 石田 貴志
    p. 269-275
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    関越道(下)の片側 3 車線区間である東松山 IC~嵐山小川 IC では、車線境界線や車道外側線の内側に緑線の路面標示を施工する「車線キープグリーンライン」を、全国の都市間高速道路で初めて渋滞対策として実施した。本研究では、この車線キープグリーンラインの効果検証を目的として、交通容量分析と車線利用率分析、車線変更状況分析を行った。効果検証の結果、上流側で当初第 1 走行車線と第 2 走行車線を利用していた車両が、当該車線を利用し続けるようになり、その結果として追越車線利用率が低下することや、車線変更回数が減少することを把握した。このような交通挙動になったことで、渋滞発生時交通流率が増加した。車線キープグリーンラインは、渋滞対策効果があり、簡易的なソフト対策として機能することを明らかにした。

  • 長谷川 裕修, 田村 紬寧, 葛西 誠, 田村 亨
    p. 277-282
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    高速道路における逆走での死傷事故率は高く逆走対策の重要性は高い.本研究では特に事例の多い視覚的な逆走対策について,最も逆走事故を起こしやすい年齢層である高齢者を対象とし,積雪期・非積雪期の逆走を疑似体験が可能な実写VRを作成し,映像視聴実験を行った.実験参加者に対しては,視線計測可能なVR・脳活動計測可能なNIRSを用いて視聴時の視線挙動・脳活動を計測し,実験実施後のアンケート調査で対策実施箇所に対する認識状況を調査した.これらの分析によって逆走対策の有効性を評価した結果,逆走対策として最も有効であるのは積雪期・非積雪期問わず路面上の矢印標示であることが明らかとなった.

  • 永見 豊, 呉 敏, 藥師寺 真奈, 青木 秀剛
    p. 283-287
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    高速道路での逆走の原因の一つに IC 出口部への誤進入が挙げられる。本研究では一般道路から交差点を経由して IC 入口へと進むルートの進路誘導を目的とした、カラー舗装や文字による路面標示の比較評価を行った。カラー舗装は全面、両側、無し、交差点内は実線、破線、無し、高速入口部は文字標示の縦配置、横配置、無しとし、3×3ラテン方格により9サンプルを作成し、ドライビングシミュレータを用いた評価実験を行った。その結果、誘導効果への影響が最も大きいのはカラー舗装のタイプであり、全面舗装が最も評価が高いものの、両側舗装でもその6割の効果があることが分かった。交差点内では実線が最も評価が高く、破線はその5割程度の効果であった。

  • 永見 豊, 呉 敏, 古林 拓弥
    p. 289-294
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    路面標示は運転者の視野の大部分を占めることから、メッセージの伝達に有効であり、法定外表示として様々な文字標示が敷設されている。筆者らは文字が立体的に見える 3D 文字標示の開発を進めており、その可読性の高さを特徴として挙げているが、通常の 2D 文字標示との定量的な比較は行っていない。そこで、本研究では、3D 標示を含めた路面標示の種類別の運転者視点による視認距離と可読距離の評価実験を行った。その結果、視認距離は路面標示の種類にあまり影響せず、60~70m の範囲であった。可読距離は路面標示の種類に影響し、3D 標示は 2D 標示と比べて 13~20m 遠くから可読出来ることが分かった。その要因は文字配置であり、縦書きよりも横書きで、かつ一文字の文字高が高い方が可読性が高い傾向にあることが分かった。

  • 大江 航介, 田中 伸治, 松行 美帆子, 有吉 亮, 井上 卓磨
    p. 295-302
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    我が国における交通死亡事故の大半は道路横断中に発生しており,無信号横断歩道での車両一時停止率の低さが一因となっている.これらの対策としては,路面標示の設置が挙げられ,低コストで導入可能等の利点がある一方で,地域によって表記や配色が異なるという課題もある.そこで本研究では,ドライビングシミュレータを用いた走行実験を行い,「速度おとせ」,「横断者注意」,カラー舗装,対策なしの路面標示対策案を対象に,無信号横断歩道接近時におけるドライバーの運転行動や運転意識に与える影響について明らかにした.また,同対策がドライバーの運転行動に与える影響力を把握するために要因分析を行い,ドライバーは主に路面標示を視認することで減速行動に遷移すると共に,路面標示の視認性が減速行動に影響することが示された.

  • 川本 義海, 梅津 拓, 宇津 悠祐, 川村 一博, 鷲見 泰央
    p. 303-310
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    無信号交差点における交通事故抑止対策として、安全余裕のために停止線を交差点から大きく後退させる方法から、逆に停止線を交差点に近づけることで非優先側からの視認性及び安全意識を高める改善策を提案しその効果を検証した。具体的には、非優先側道路から優先側道路を見通しやすい位置に停止線を前進させるとともに横断歩道幅員を実効幅に適正化し、さらに停止線手前のカラー段差舗装により一時停止率向上と速度抑制を目指した。その結果、一時停止率は 4.2%から 9.3%へ最大 5.1%向上し、停止線手前の区間平均速度は 20.3km/h から 17.3km/h へ最大 3km/h 低下した。以上より、一時停止率向上と速度抑制に一定の効果を確認したとともに、同様の無信号交差点における事故抑止対策としての応用可能性を示唆した。

  • 長谷川 裕修, 吉田 健人, 葛西 誠, 田村 亨
    p. 311-318
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    交通安全教育の一つとして,危険予知訓練(KYT)の実施が進められている.従来のKYT教材に使用されるメディアの多くは三人称視点であり,静止画像であった.一方,近年のVR技術の発展により,一人称視点かつ360度全方位確認可能な実写VR教材を作成することが可能になりつつあるが,学習過程における視線挙動と教育効果との関係については明らかになっていない.そこで本研究は,VR教材と写真教材による交通安全KYT過程の視線計測を実施し,学習過程における視線挙動が教育効果に与える影響を分析した.分析の結果,VR教材と写真教材では視線挙動が異なるが,交通安全意識についての短期的・中期的な教育効果はどの教材でも違いはなく,視線挙動との関係性は見られなかった.

  • 福井 千菜美, 高橋 翔, 萩原 亨
    p. 319-326
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では,信号交差点右折時のドライバーによる横断歩行者目視タイミングに着目し,横断歩行者に対するドライバーの衝突回避行動を分析した.VR ドライビングシュミレーターを用いてドライバーの行動を計測し,歩行者目視タイミングと衝突可能性の関係を明らかにした.目視計測の結果からドライバーと歩行者の衝突可能性を評価する総合安全度を提案した.提案した総合安全度を評価し,衝突可能性を評価する指標としてその有効性が示された.また,信頼性の高い安全度評価を行うためには,総合安全度に加え到達時間差を考慮するべきとなった.さらに,右折時における歩行者との衝突を防止するための情報提示のタイミングと提示すべき情報の内容について考察し,ドライバーの歩行者目視タイミングに応じて提示する情報を変えるべきであると示唆できた.

  • 吉村 暢洋, 小早川 悟, 田部井 優也
    p. 327-333
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    無信号横断歩道での歩行者優先を高めていく取り組みにおいて、車両運転者の譲りに影響を与える道路交通要因に着目した研究はあまり多くない。そこで本研究では、道路改良による安全対策などが施されていない無信号横断歩道において実態調査を行った。その結果、広幅員な道路に設置された横断歩道では、歩行者の横断位置が near-side より far-side で、歩行者の横断前挙動では車道よりも歩道で横断待機するほうが車両の譲りが下がることがわかった。また、信号交差点に近い横断歩道では車両信号表示が赤よりも青の状態のほうが車両の譲りが低くなる傾向にあることが示された。走行状況では対向車が存在していない自由走行と比較して対向車が存在している状況のほうが全体として譲らない傾向にあることが示唆された。

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