(1) 一つの場所における一年間のセンサス結果をもとに,留鳥8種の個体数変動にについて,おもに他種の個体数を要因として考えた分析を行なった。
(2) 各科の個体数に基づいたクラスター分析によって,各センサスの結果を4つの群に分けた。この4群は季節的にまとまった分布を示し,気象観測値を用いて4群の判別分析を行なうと,平均気温と平均風速とが説明変数として選択された。
(3) ヒヨドリ科,ツグミ科,ウグイス科,ヒタキ科,メジロ科,ホオジロ科,アトリ科の個体数について,群間で有意の差が認められた。このうちツグミ科,ホオジロ科,アトリ科はおもに冬鳥からなり,この3科だけを用いた判別分析によって63.9%が正しい群に分けられ,群間の違いはおもに冬鳥の渡来によると考えられた。
(4) おもに冬鳥の有無に基づいて一年間を二つに分けて,留鳥8種の個体数について重回帰分析を行なうと,多くの場合個体数変動の50%以上が,平均気温,平均風速,おもな渡り鳥の個体数,他の留鳥の個体数によって説明された。また説明変数として選択された要因は,二つの季節の間で大幅に異なっていた。
(5) 以上の結果は,留鳥の生息場所選択に影響を与える要因が季節的に変化する可能性を示唆していると考えられた。
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