山階鳥類研究所研究報告
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32 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 藤巻 裕蔵
    2000 年 32 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    札内川下•中流部の河川敷で調査地6か所を設け,1994~1999年5,6月に線センサス法により鳥類を調査した。調査地の環境は,河畔林,潅木草原,農耕地がモザイク状となっており,調査地6か所で,55種の鳥類が観察された。このうち,森林性鳥類は30種,潅木草原性鳥類は12種,水辺の鳥類8種,その他5種であった。主な種は,オオジシギ,キジバト,カッコウ,アリスイ,アカゲラ,コアカゲラ,ヒバリ,ビンズイ,ヒヨドリ,コルリ,ノゴマ,ノビタキ,アカハラ,エゾセンニュウ,センダイムシクイ,キビタキ,ハシブトガラ,シジュウカラ,アオジ,カワラヒワ,ベニマシコ,シメであった。各調査地における鳥類相の多様度指数は3.95~4.31で,調査地間で大きな差はなかった。調査地では一部の森林性鳥類を欠くが,河川敷の環境は人為的な環境における鳥類相の多様性を大きくする役割があり,とくに潅木草原性鳥類にとっては,重要な生息環境となっている。
  • ラコトマナナ ハジャニリナ, 中村 雅彦, 山岸 哲, 千葉 晃
    2000 年 32 巻 2 号 p. 68-72_1
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    マダガスカル北東部に位置するマソアラ半島にて1999年10~11月にマダガスカル特産ヘルメットオオハシモズの抱卵期の巣を2巣(Nest A & B)発見し,雌雄の抱卵行動,胃内容物,精巣サイズと精巣熟度を調査した。Nest A,Nest Bはともに地上から2.3mの木の股の部分にコケ,植物繊維や小枝を巣材に椀形に造られ,いずれの巣も一巣卵数は3卵であった。抱卵行動を観察したNest Aでは雌雄は交互に抱卵し,一回の抱卵時間の平均は雌が72.5分,雄が80.0分だった。Nest Bでは抱卵初期の雄(体重は103g)を捕獲したがその直後に死亡した。この雄の精巣は成熟状態にあり,湿重量は体重の0.28%を占めた。胃内容物としてコウチュウ類3種が確認された。ヘルメットオオハシモズは一夫一妻種のため雌雄が交互に抱卵し,精巣サイズは体の大きさに比べ小さいと考えた。
  • 千葉 晃, 中村 雅彦
    2000 年 32 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    乗鞍岳山頂部の繁殖地で捕獲された交尾期と抱卵期のイワヒバリ雌成鳥2個体を用いて精子貯留腺を解剖学的に検索し,本種の特異な配偶システム(多夫多妻)との相関を検討した。本種の精子貯留腺は,他種と同様,卵管の子宮•膣移行部粘膜襞内に存在し,非分岐性の細管として認あられた。1羽当たりの精子貯留腺総数は約1,000個と試算され,各細管(腺)の平均長は交尾期の個体で265.0±39.0μm,抱卵期の別個体で116.5±33.5μmあった。また,腺腔に貯留されている精子の数は,1羽当たり49,000個と推定された。腺は単層の柱状上皮細胞からなり,細胞頂端に多数の微絨毛を持つが繊毛を欠き,細胞質に脂質滴様空胞が多数存在するなど,その細胞•組織構造は鳥類で一般に見られるものと酷似していた。本種は乱婚で高い交尾頻度を示すが,配偶システムの異なる他種と較べて,精子貯留腺が特に発達していたり,形態学的特化を示すようなことはなかった。
  • 2.カッショクペリカンの筋肉図
    黒田 長久
    2000 年 32 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    カッショクペリカンPelecanus occidentalis(動物園で死亡)1個体の剥皮体につき,背面の筋肉系,胸筋の構成,上膊一肘部の翼筋を図示した。背面の濶背筋は変化に富む筋で,本種では帯状であった(カツオドリなどでは幅広)。大胸筋には同目の他種と同じく深部pars profundusがあり,主部pars propriusの裏(下面)に中層部pars mediusが独立はせずに密着した状態で認あられた。大胸筋の鎖骨付着部の下には薄い帯状筋(本報告でpars clavicularisと命名)を認めた(Fig.2E)。これについては黒田(1960)が言及しているが,2,3例と共に別報の予定である。なお,肘部の小筋m.humerotricepsにも言及した。また,筋肉重量,脳重,腎臓(長さと重量)を付け加えた。
  • 田村 實, 上田 恵介
    2000 年 32 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    一般に鳴禽類では,メスの囀りは一般的ではないが,著者らは1998年5~7月に,山梨県清里において,コルリの繁殖生態を調査中に,コルリのメスが囀るのを観察•記録することができた。観察したのは繁殖期の後半(6月下旬)で,2つのなわばり内の巣で,メスが巣内ビナに給餌を行っていた時期と,巣立ち雛を連れている時期に観察され,ビデオ撮影•録音された。またヒナが巣立った直後に発見した別のなわばり内の巣のメスも,巣立ちビナを連れながら,さえずっているのが観察された。メスの囀りにもいくつかのレパートリがあったが,オスの囀りと異なり,囀り4パターンの中,2パターンにおいて,オスの囀りに特徴的な「チッ,チッ,チッ…」という前奏が聞かれなかった。メスはオスよりも低い声で,また,オスよりも弱い声で囀っていたが,囀りのパターンは部分的にはよく似ている傾向が見られた。メスが囀ることの意味は,まだよくわからないが,人の巣への接近という状況下で起こっていることから,メスによる巣の防衛行動に関連した機能があると思われた。
  • 前田 琢
    2000 年 32 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2000/12/29
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦南岸の水田地帯において,日没後0.5~3.5時間のあいだに1回20分間の定点センサスを行ない,タマシギ雌のディスプレーコールの回数,時間,位置を記録し,季節的な変化を解析した。ディスプレーコールは5月中旬に開始され,次第に鳴く頻度が高まり,6月下旬にピーク(平均22±12(SD)バウツ/20分)に達した。しかし,7月初旬以降はより低頻度(<8バウツ/20分)で推移し,9月上旬で聞かれなくなった。ディスプレーコールの発せられた位置数もほぼ同様な季節変化を示した。1回のディスプレーコールの平均継続時間は5~7月には20~30秒であったが,8月以降やや短くなり,9月には10秒になった。センサスが行なわれた時間(日没時刻基準)とディスプレーコール頻度との間には,どの調査時期にも相関関係は見られなかった。声を用いたタマシギのセンサス調査およびその比較には,時期によって変化するディスプレーコール頻度を考慮する必要が示された。
  • 2000 年 32 巻 2 号 p. 96
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/11/10
    ジャーナル フリー
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