昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
22 巻, 3 号
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〈原著論文〉
  • 渋谷 園実, 桐谷 圭治, 福田 健二
    2019 年 22 巻 3 号 p. 77-89
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,千葉県柏市の里山,大青田の森(35°54′N, 139°55′E)で,2011~2013年にピットフォールトラップと空中トラップを用いて行った.アトボシアオゴミムシChlaenius naevigerの後翅は,翅の先端部に短縮が見られた翅端短縮型と,径脈の先端部から翅端までが長い翅端正常型のものがあった.両者において,後翅長や体長,後腿節長,蔵卵数の違いを調べた.また,一年を通じて週1回行った調査から季節消長を調べ,併せて解剖によって飛翔筋の有無や繁殖様式,食性などを明らかにした.

    卵巣の解剖の結果から,アトボシアオゴミムシは初夏繁殖型の種で,大卵少産型であった.食性は,消化管内容物からヨウ素反応によるデンプン粒の染色が認められなかったことから,種子は摂食しておらず,BDRを滴下したところ,青色に染まったことから,肉食の捕食者であると考えられた.また,消化管内容物から検出された定形物から,大形の餌生物の内部を摂食している可能性が高かった.

    後翅は,翅端短縮型の個体が56%,正常型が44%であった.翅端短縮型と正常型について,後翅長を比較すると,短縮型が有意に短かったが,他のオサムシ科の翅二型のように両者の翅長に大きな差(非連続性)はなく,バッタの相変異に見られるような翅長の連続性が見られ,環境要因の関与が示唆された.次に,短縮型と正常型を体長と後腿節長,蔵卵数で比較した.短縮型の体長と後腿節長は,正常型に比べて,有意に大きかった.これは,径脈から先端の部分をなくし,その分を体の大きさに投資している可能性がある.蔵卵数は,短縮型と正常型で有意な差はなかった.

    アトボシアオゴミムシは,里山を構成する森林や水田,畑地,草地に至る幅広い環境に出現し,里山の環境指標生物として期待されている.本種は,環境によって後翅の翅端を変化させることで,生息地の環境変化に敏感に反応している可能性がある.

〈短報〉
  • 工藤 慎一, 矢野 真志
    2019 年 22 巻 3 号 p. 90-93
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

    Here, we describe the reproductive behaviour and life history traits of Acanthosoma firmatum (Walker, 1868) (Heteroptera: Acanthosomatidae). Females laid eggs in tight masses on the underside of leaves of the host plant and the clutch size often exceeded 130, which seems to be the largest among those recorded from Acanthosoma and the related Sastragala species. Females stayed on the clutches in a straddling posture. When disturbed, females showed aggressive responses, such as tilting the body towards the source of disturbance. No female was observed tending to the second instar nymphs that had left the natal leaf. The females sometimes copulated with males during maternal care.

〈新記録ノート〉
〈特別寄稿〉
  • 小川 直記
    2019 年 22 巻 3 号 p. 96-105
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

    昆虫には,跳躍機能を持つものがしばしば知られる.強力な跳躍を行う昆虫は,大きな跳躍筋だけでなく,その収縮で産み出されるエネルギーを弾性のある組織に一度蓄え,一気に放出することのできるカタパルト機構という仕組みを持つ.多くの昆虫はこの仕組みを脚に持つが,半翅目は,全昆虫の中でも珍しく,飛翔機能のある胸部内にカタパルト機構を用いた跳躍機能を獲得している.さらに,このような特殊な機能の発達が,同じ目の中で複数回起こっていることもわかってきた.本稿では,昆虫の跳躍機能について概説するとともに,このような半翅目における跳躍機能の進化史について,これまでに得られている知見をまとめた.

〈連載〉
〈グラビアシリーズ〉
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