昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
14 巻, 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
〈原著論文〉
  • 岡本 素治
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 4 号 p. 263-275
    発行日: 2011/10/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ヒラズゲンセイの配偶システムについて,羽化脱出直後からの行動観察に基づいて概要を明らかにし,あわせて生活史に関して得られた知見を報告し考察した.ヒラズゲンセイはキムネクマバチに寄生し,成虫は,長い擬蛹期と蛹期を経て,近畿地方では5月の末から6月の中旬に出現する.羽化してクマバチ巣から出ると,雄は特徴的な姿勢をとり,恐らくフェロモンを放出して雌を呼ぶ(コーリング行動).雌は,羽化脱出してしばらくすると飛び立ち,雄のいる巣を探索する.数10m離れた遠方から匂いを頼りに雄の周辺に飛来するのは容易なようであるが,そこから雄がいる巣の場所に到達するには時間がかかる.特に,雄がコーリング行動を止めると,雄のそばに到達するのに要する時間は著しく増大する.雌が雄のそばに至ると交尾が行われるが,通常のマウンティングに先立ち,雄が雌の上に逆向きに重なる特異な行動パターン(「逆マウント」と名付けた)が見られた.交尾がすむと,雌は産卵のためにクマバチ巣内に侵入しようとするが,クマバチによるさまざまなレベルの抵抗を受ける.侵入・産卵に成功した雌は,巣坑内で卵を防御する位置にとどまる.雄も雌に続いて巣坑内に侵入するが,その後も午前中は巣坑外に出てコーリングを行う.2週間程度で孵化した1齢幼虫は,クマバチの毛に大腮でしがみつき,分散していく.トウネズミモチの花の雄蘂の上で訪花活動を行うクマバチを待つヒラズゲンセイの1齢幼虫を発見し報告した.
  • 藏之内 利和, 望月 淳, 鈴木 一隆, 小島 啓史, 五箇 公一
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 4 号 p. 276-280
    発行日: 2011/10/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ヒラタクワガタ(Dorcus titanus pilifer)幼虫を朽ち木破砕物で羽化まで飼育し,窒素量と炭素量の変化をN/Cアナライザを用いて調査した.幼虫飼育により全窒素量は8.3%増加した.このことから,ヒラタクワガタ幼虫を飼育することにより空中窒素固定が誘起されていることが推察された.一方,全炭素量は幼虫飼育の有無にかかわらず30%以上減少した.
  • 平松 新一
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 4 号 p. 281-289
    発行日: 2011/10/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    筆者は,2001年および2003年夏季に,高山帯の雪田環境で,雪渓後退に伴う地表性ゴミムシ類の出現状況について,ピットフォールトラップ法を用いて調査した.多くの種の採集数は,7月中旬から8月上旬あるいは中旬まで高く,その後急減していた.L. arboreusは,広範囲にわたって採集された.B. fujiyamaiおよびBembidion sp.は,高山帯の雪渓に近接した場所に多く,特に前者はより雪渓との結びつきが強いようだった.P. honshuensisおよびAgonum sp.は,雪渓からはなれた場所でより多く確認された.
  • 赤嶺 真由美, 佐藤 宏明
    原稿種別: 本文
    2011 年 14 巻 4 号 p. 290-296
    発行日: 2011/10/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    奈良市内で同所的に生息する大型の糞虫3種(オオセンチコガネ,センチコガネ,ゴホンダイコクコガネ)のニッチ分割のパターンを明らかにするため,季節消長,糞の鮮度選好性,日周活動性,餌種類の選好性を調べた.出現期は3種とも4月下旬から11月下旬だった.オオセンチコガネとセンチコガネでは新鮮な糞を好んだが,ゴホンダイコクコガネで鮮度への好みがあるとは言えなかった.ゴホンダイコクコガネとオオセンチコガネは腐肉よりも糞を好み,センチコガネは糞よりも腐肉を好んだ.さらにオオセンチコガネとセンチコガネは,主に4:00から16:00の日中に出現したが,ゴホンダイコクコガネは主に16:00から4:00の夜間に出現した.これらの結果からニホンジカの新鮮な糞をめぐる競争において,センチコガネが他2種へ影響を及ぼしているとは推定できなかった.一方,2種とも鹿糞を好むオオセンチコガネとゴホンダイコクコガネの間では,新鮮な鹿糞をめぐる競争関係が推定され,主に活動時間帯が異なることで同じ資源が使い分けられていると考えられた.
〈連載〉
feedback
Top