昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
16 巻, 2 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
〈原著論文〉
  • 籠 洋, 横川 昌史, 藤澤 貴弘, 野間 直彦
    原稿種別: 本文
    2013 年16 巻2 号 p. 87-96
    発行日: 2013/04/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    全国各地で放棄竹林が問題になっており,地域の生物多様性の保全の観点から適切な竹林の管理方法が必要とされている.放棄竹林でのタケの伐採が地表性甲虫群集(コウチュウ目オサムシ科)に与える影響を評価するため,タケの密度を4段階に変えた実験区を設定し,無餌ピットフォールトラップを用いて地表性甲虫群集の調査を行った.落葉広葉樹とマダケが混交する滋賀県彦根市の犬上川河辺林において,タケ全稈伐採区(0本/m2)・強間伐区(0.5本/m2)・弱間伐区(0.7本/m2)・放置区(1.8本/m2)を設定し,2010年7月から12月の間で週に一度トラップの回収を行った.調査の結果,全稈伐採区で25種676個体,強間伐区で18種703個体,弱間伐区で15種829個体,放置区で12種531個体の地表性甲虫が捕獲された.統計解析の結果,地表性甲虫類の種数・多様度指数・下層植生の体積は全稈伐採区で最も高かった.2つの間伐区の地表性甲虫類の種数は放置区よりも高かった.除歪対応分析によって,地表性甲虫群集の序列化を行ったところ全稈伐採区の種組成は,他の3つの処理区と異なることが明らかになった.全稈伐採区を特徴づける種群はゴモクムシ亜科数種,コガシラアオゴミムシやアトボシアオゴミムシなどであった.ゴモクムシ亜科数種,コガシラアオゴミムシは草地性種であり,これらの草地性種が全稈伐採区に侵入した結果,全稈伐採区で種数や多様度指数が増加し,種組成が変化したと考えられた.間伐強度が異なる4つの処理区について1反復で調査を行ったため,処理の効果を明言することは難しいかもしれないが,本研究の結果は,落葉広葉樹林に侵入したタケの全稈伐採や間伐を行うことで,多様な地表性甲虫群集を維持できる可能性を示している.
  • 貴志 学, 藤崎 憲治
    原稿種別: 本文
    2013 年16 巻2 号 p. 97-103
    発行日: 2013/04/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    和歌山県中部の農業用貯水池6ヶ所において,侵入種トガリアメンボと在来種ナミアメンボの季節消長,雌の成熟卵母細胞保有割合,また長翅率を調査した.その結果,トガリアメンボは年4化以上,ナミアメンボは年2化を示すと考えられた.また産卵基質内に産卵されるトガリアメンボ卵は冬季の乾燥と低温条件下で4ヶ月以上の期間を生き残ることができることを示した.ナミアメンボの長翅率は夏季に低下したが,逆にトガリアメンボの長翅率は夏季の一時期のみ上昇した.またナミアメンボの繁殖雌の割合は9月に低下するが,トガリアメンボは12月上旬まで繁殖雌の割合が高かった.以上の結果から,日本の気象条件によるトガリアメンボのr戦略者的な形質の発現が日本での定着に寄与していることが示唆された.
  • 永幡 嘉之, 越山 洋三, 梅津 和夫, 後藤 三千代
    原稿種別: 本文
    2013 年16 巻2 号 p. 104-112
    発行日: 2013/04/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    電柱から回収されたカラスの巣から,ハナムグリ亜科の空の土繭2個と幼虫の死体1個体を発見した.この昆虫種および巣の持ち主の鳥種を同定するため,土繭の中に残っていた蛹殻,幼虫の死体,および巣材からDNA試料を抽出した.昆虫種については,ミトコンドリアDNAのCOI領域を分析対象とした.まずコウチュウ目用のユニバーサルプライマーセットを用いてPCRを行い,その後ダイレクトシーケンス法でPCR産物の塩基配列779bpを決定することで種同定した.鳥種については,ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域を分析対象とした.ハシブトガラス,ハシボソガラス,ミヤマガラスの各種に特異的なプライマーと全種に共通なプライマーを用いてPCRを行ったのち,そのPCR産物のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,増幅されたバンドの鎖長でカラスの種類を判定した.その結果,土繭と幼虫の死体の計3個体は全てアカマダラハナムグリであり,巣の主はハシボソガラスであることが判明した.また,これらのアカマダラハナムグリ3個体で2つのハプロタイプが識別されたことから,少なくとも2個体のメス成虫がこの巣に産卵したことがわかった.アカマダラハナムグリは,これまで猛禽類など動物食性鳥類の比較的大型の巣内で幼虫が腐植土や雛の食べ残しを餌として発育することが知られていたが,雑食性で比較的小さい巣を作るハシボソガラスの巣も繁殖資源として利用していることが,今回はじめて明らかとなった.
〈フォーラム〉
  • 田中 誠二
    原稿種別: 本文
    2013 年16 巻2 号 p. 113-121
    発行日: 2013/04/05
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    コガネムシの1種,Lepidiota mansuetaは,インド,アッサム州を流れる大河,バラマプトラ川に形成された世界最大の中州島,マジュリ島において2008年以降に個体数を急増させ,サトウキビをはじめさまざまな作物の根茎を食害し,農作物に深刻な被害をひきおこしている.筆者は2012年11月にこの島を視察し,このコガネムシの生態と被害の状況などに関する情報を収集した.この論文は,L.mansuetaの生活史,被害の状況,防除対策,問題点,今後の計画と展望について報告する.また生活史や行動パターンが,この種に似ている日本の沖縄県宮古島におけるケブカアカチャコガネDasylepida ishigakiensisと比較し,生態や防除対策に関して論議する.
〈連載〉
feedback
Top