免疫の研究は, 16世紀末のJcnncrによる経験的な天然痘予防法に始まり, 一方では, 生化学的な技術の進歩により, 抗体分子の構造と機能の関係が明らかにされ, また他方では, 細胞生物学や臨床医学の進歩が, 免疫系の発達とリンパ球の2つの役割 (T-細胞とB-細胞) を明らかにしてきた. さらに, 分子遺伝学の導入は, 免疫グロブリンの合成とその多様性についての研究を進め, 細胞の表面抗原の遺伝子支配とい5問題を解明しつつある. 近年, 著しい進歩をもたらした生体膜の研究も免疫学と結びつけて論じられるようになった. Kinskyらは補体反応を人工脂質膜で起こさせ,
in vitroでの研究を大きく前進させた.スピンラベル法の創始者で, 膜の動的構造の解明に多くの業績をあげてきたMc Connellらも, 免疫反応の究明に積極的に取り組み, “膜学者”の観点からユニークな研究を行なっている. 最近では, 膜表面の運動を顕微鏡下で直接に測定するFPR (Fluorescence Photo-bleachihg Recovery) 法を導入した研究も始まっている.
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