環境システム研究論文集
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33 巻
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  • 佐々木 努, 松岡 譲, 藤原 健史
    2005 年 33 巻 p. 1-10
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    アジアの発展途上国では廃棄物発生量が急増しており, 適正な廃棄物対策が求められている. しかし対策のもととなる各産業部門や家庭部門からの廃棄物発生量やリサイクル量については, 実態が掴めていないのが現状である. そこで本研究では, 報告書や論文等から得られる限られた廃棄物報告排出量と, 産業連関表を含む各種産業統計量を基にして, アジア諸国の廃棄物発生量とリサイクル量を推計する手法を提案するとともに, 推計したアジアの廃棄物発生量とリサイクル量について考察する.
  • 川本 清美, 井村 秀文, 森杉 雅史
    2005 年 33 巻 p. 11-20
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会形成のための廃棄物処理行政の重要性が高まる一方, 国・地方の財政事情は厳しさを増しており, 事業の効率性を適切に評価し, その改善を図ることが重要となっている.また, 効率性の評価においては, 金銭的に見た費用対効果の側面だけでなく, 人・技術・パートナーシップといった要因によって形成される管理能力の役割を評価することの重要性も認識されつつある. そこで本研究では, Data Envelopment Analysis: DEA手法を用い, 都道府県データにより, 一般廃棄物処理事業における管理能力が資源化率, 総廃棄物収集量に与える影響を評価し, DEAの有効性を検証する. この結果, 県民の経済レベルが高くなるほど効率が高まる傾向があり, 管理能力がバランスよく利用されることが示された.
  • 堀江 典子, 萩原 清子
    2005 年 33 巻 p. 21-28
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    循環型社会の構築とゴミの減量を目指す生ゴミ堆肥化の取組みとして様々なシステムが模索されているが、土壌還元可能な緑地が存在しなければ循環システムは機能しない。本研究においては、堆肥の品質と施用可能性という観点から都市内緑地を区分した「R緑地」への土壌還元を前提として、家庭生ゴミ堆肥化システムを世帯単位、コミュニティ単位、自治体単位で整理した。その上で、東京都特別区における家庭生ゴミ堆肥化にかかわる施策の状況と、区ごとのR緑地の必要面積及び存在面積との対応について考察し、家庭生ゴミの堆肥化システムの選択においては各区のR緑地の利用可能性を考慮して検討することが必要であることを示した。
  • 平山 修久, 河田 恵昭
    2005 年 33 巻 p. 29-36
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 1999年以降の水害による災害救助法が適用された市町村に対する災害廃棄物に関するアンケート調査結果に基づいて, 住家被害を考慮した災害廃棄物の発生原単位を算出した.その結果, 水害時の浸水による被災区分である床上浸水, 床下浸水では, それぞれ4.6トン/世帯, 0.62トン/世帯の災害廃棄物が発生するものと推定された.
    また, 災害廃棄物発生量推定式による廃棄物推定量と平常時のごみ総排出量から算出した災害廃棄物量相対値が, 初動時における応援体制をどのように構築すればよいのかを容易に把握することが可能となるひとつの指標となりうることを示しえた.
  • 石崎 俊夫, 小宮 哲平, 中山 裕文, 島岡 隆行, 久保市 浩右, 眞鍋 和俊, 大野 博之
    2005 年 33 巻 p. 37-45
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    広大な面積を有するアジアメガシティの大規模廃棄物処分場を効率的にモニタリングするシステムの構築を目指し, その基礎調査として上海市の老港廃棄物処置場において現地調査を実施した. 具体的には, 埋立地表層の植生状況に関する調査結果を埋立地の安定化指標として活用できるかを検討するため, 埋立完了からの経過時間の異なる4区画において, 埋立地表層の植生状況と埋立ガス等の安定化指標との関係について調査した・その結果, 埋立完了後最初に植物が出現するのは, 覆土が比較的厚く保水性が高い場所であったこと, 埋立完了後2年の区画では, 被植地において埋立ガスフラックスが大きかったこと, 埋立完了からの時間経過とともに, 被植地では埋立ガス濃度が減少していた一方, 裸地では埋立ガス濃度は高い値を維持していたこと, および, 老港廃棄物処置場における植生遷移系列の特徴, を確認した.植生情報は, 埋立区画内の相対的な安定化度の違いを評価するための指標としでの利用可能性があることを述べた.
  • 松田 晋太郎, 市川 新
    2005 年 33 巻 p. 47-54
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    不法投棄量の90%以上が建設廃棄物由来であると報告される中で、建設廃棄物処理・処分に関する透明性・信頼性の確保が建設業界の最大の課題のひとつとなっている。建設廃棄物の徹底管理を目的に、電子マニフェストが導入され始めている。しかしながら、電子マニフェストには、「情報」(マニフェスト) と「物」(廃棄物) が分離する “情物不一致” の問題が引き起こされ、適正な廃棄物管理を阻害する要因となっている。本研究では、廃棄物の重量管理および追跡、全員参加と情報共有を重要な要素であると考え、導入のための管理情報拠点として “車載端末” を新規に開発した。これらの要素を統合した「建設廃棄物管理システム (CWMS)」は、“情物一致” を実現し、このシステムが不法投棄防止および適正処分推進のために効果的であることを示した。
  • 入江 光輝, 河内 敦, 石神 卓美, 石川 忠晴
    2005 年 33 巻 p. 55-62
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    石垣島アンパル干潟は名蔵川河口に広がる潟湖干潟で, その地形的特長のために水理・底床環境の空間分布が複雑に入り組んでいる.その環境条件の分布に従い, 複数種のカニが各々好ましい環境を求めて棲み分けしている.本研究では干潟に多数生息するコメツキガニ (Scopimera globosa) とミナミコメツキガニ (Mictyris brevidactylus) に注目し, 多地点で生物定量調査を行うと共に, 各地点での生息環境を評価し, 統計的手法により各種のカニの生息適正環境について考察を行った.その結果, ミナミコメツキガニは摂食に関する条件が生息地選択の上で重要な因子であると考えられた一方, コメツキガニは物理的な環境因子以外に, なわばりをつくるシオマネキ類が生息しないことが適正条件として重要であることが示された.
  • 宇多 高明, 清野 聡子, 三波 俊郎
    2005 年 33 巻 p. 63-71
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    宮崎県一ツ葉海岸を対象として海岸侵食の原因を考察し, アカウミガメCaretta carettaの産卵地保護のあり方を示した. 近年, この海岸では侵食が深刻であり, 海岸線に沿って高い浜崖が形成され, アカウミガメの産卵が非常に危惧される状況となっている. 侵食原因は, 宮崎港の防波堤による波の遮蔽域形成と航路浚漢により波の静穏域へと砂が移動して周辺域の土砂が吸い込まれたこと, また一ツ瀬川河口導流堤による南向きの沿岸漂砂の阻止と河口での航路浚渫である. 近い将来における日本最大のアカウミガメの産卵地の消滅を防ぐには, 問題への根本的な対応が必要である.
  • 野村 康弘, 倉本 宣
    2005 年 33 巻 p. 73-78
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では多摩川に生息するカワラバッタについての分布状況と生息地間の移動に関して調べた. 分布調査の結果, 生息地が39ヶ所確認され, 本種は多摩川において連続的に生息していることが確認された. 標識再捕獲調査の結果, 標識数4641匹のうち85匹が生息地間を移動していたことが確認された. また, 総個体数と砂礫質河原面積には正の相関, 移出率と砂礫質河原面積には負の相関があった. 本種の通常起こりやすい移動距離を300mとしたbuffer-1と最大値の810mのbuffer-2を各生息地に発生させたところ, 本種の地域個体群が多摩川の河口から52.6~53.2km付近で大きく分断化されていることが推測された. 本種の保全のためには分断化されている地域個体群のネットワークをつなげることが重要と考えられた.
  • 大西 暁生, 井村 秀文, 韓 驥, 方 偉華
    2005 年 33 巻 p. 79-88
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    改革開放政策に転じて以来, 中国農業は大きな転換を経験した. 単位土地面積あたりの生産性 (土地生産性) の向上によって, 国全体の食糧生産は増大してきた. 中国の重要な穀倉地帯である黄河流域においてもこの事情は同じであるが, 生産性の向上が実現された要因についてはまだ十分な分析がなされていない. ここで, 土地生産性は地域ごとの自然条件や社会条件に大きく依存する. このため, 本研究では, 黄河流域を上流域・中流域・下流域・扮河流域・滑河流域の5流域に分類し, 1980年, 1991年, 1997年, 2000年の4年次を対象として, 流域別に土地生産性に影響を与えた要因の同定を行った. その結果, 生産性に影響を与えた要因は流域によって異なることを確認した. また, 生産性向上のための方策を流域別に検討した.
  • 米・小麦・トウモロコシ生産を事例として
    豊田 知世, 金子 慎治, 田中 勝也
    2005 年 33 巻 p. 89-96
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    中国では, 農業生産性向上のため, 年々多くの化学肥料が投入されており, 現在世界第一位の肥料消費国である. しかし, 増え続ける大量の肥料投入が, 生産性を高め続けているだろうか. 本研究は, 1986年から1996年を対象に, 米, 小麦, トウモロコシの各品目について化学肥料投入の効率性を省別に測定し, その効率性の違いに影響する要因の特定を試みた. その結果, 以下の点が明らかになった. 第1に, 全国的に年々米の肥料効率値は下がり, 小麦の肥料効率値は上がっている. 第2に, 農村の所得水準が上がるにしたがい, 肥料効率性は下がる傾向がある. 第3に, 化学肥料を多く生産している省ほど肥料効率性が低い. 第4に, 米と小麦の肥料効率は気象条件により大きく影響を受ける.
  • 村井 啓朗, 高橋 潔, 増井 利彦, 原沢 英夫, 松岡 譲
    2005 年 33 巻 p. 97-104
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    適応を考慮した上で, 地球温暖化がイネ・コムギの潜在生産性に与える影響について, 全球レベルでの評価を行った.Takahashi et al.(1997) の既存の農業影響評価モデルと比較して, 灌漑の導入と投入労力レベルの変化, 作物品種の細分化という改良を加えることで, 適応策を勘案した場合の生産性について, より現実的な評価が可能となった.本研究で検討対象とした適応策は, 作物品種の変更, 栽培期間の変更であり, いずれも農場レベルで行うことができる.評価作業の結果, それぞれの適応作が温暖化の悪影響を緩和する効果を有していることが明らかになった.
  • NPO法人びわこ豊穣の郷サイトを事例に
    木村 道徳, 井手 慎司
    2005 年 33 巻 p. 105-113
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, インターネット環境情報サイトである, NPO法人びわこ豊穣の郷のホームページを対象にサイト開設時の1999年から2004年までのアクセスログ解析をおこない, サイト利用状況の変遷とサイト構造の問題点を把握することを試みた. その結果同サイトのビジター数は年々増加しているが, サイトに比較的長時間滞在するビジターの割合は減少傾向にあること, 学術ユーザーは知識系情報に, 個人ユーザーは交流系情報に関心を示す傾向が開設時から現在まで続いていることなどが明らかになった. また, 環境NPOなどが運営するWebサイトにおいても, アクセスログ解析がサイトの利用状況の把握や改善に利用できる可能性を見出すことができた.
  • 加用 千裕, 天野 耕二, 島田 幸司
    2005 年 33 巻 p. 115-124
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    建築用木材の利用に関わる炭素収支について, 国内の森林と建築分野における木材需給バランスを考慮した上で木材利用量を変化させるシナリオを検討し, 2050年までの炭素収支を分析した, 国内の森林は, 1990年時の森林蓄積を維持した上で, 京都議定書で定められた炭素吸収量を確保しながら建築分野における最大木材利用量を供給可能であることが確認できた, これを受けて, 木材需給バランスを変化させるシナリオによって炭素フローを評価した結果, 建築用木材利用量の政策目標達成シナリオでは, 現状推移シナリオと比較して2050年に1990年時国内総CO2排出量1.7%相当の炭素削減効果があると推計された. また, 同ケースの炭素ストック評価では, 2050年までの炭素蓄積増加量は現状推移シナリオの1.24倍相当と推計された.
  • 谷口 守, 古米 弘明, 小野 芳朗, 大久保 賢治, 諸泉 利嗣
    2005 年 33 巻 p. 125-131
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    生活の質 (QoL) の向上や循環型社会の形成を実現するため, まちづくりの中で高い比重を占める水環境整備のあり方について, 分野横断的な政策提言が求められる状況にある. 本研究では2, 000人以上に及ぶ都市居住者の身近な水環境評価に対する意識調査結果をもとに水環境評価モデルを構築し, あわせてまちなかの水環境に対する意識面での水質要求特性の分析を行った. 分析の結果, まちなかに「流れ」が不足している地区への「流れ」の導入が特に効果的で, 多少の化学的水質を落としても居住者の評価意識の面では問題ないことが定量的に示された, 具体的な政策提言として, 下水処理水の一部を地下涵養し, 再び居住者評価の低い流域に上流還元することで, 水環境評価を効果的に改善できることを明らかにした.
  • 柴田 英美, 増田 直也, 倉本 宣
    2005 年 33 巻 p. 133-139
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    2001年より, 東京湾岸の下水処理施設の屋上において市民と行政の協働により, 絶滅危惧種であるコアジサシの保全活動が行われている. 本研究では, 活動に参加した市民の意識を把握することにより, 活動に対する評価を行うとともに, 今後も活動を継続して行うための基礎的な知見を得ることを目的とした.
    作業に対する満足度, 作業後の活動に対する関心より, 活動は参加者によって高く評価されていると考えられる. また, 年代により情報収集の手段や情報内容に対する要求に有意な差がみられたことから, 活動を継続する際には, 参加経験者と新規参加者の両方に適した対応を考えるとともに, 対象者の年代に考慮した情報提供の方法を考える必要がある.
  • 奥田 隆明, 鈴木 隆, 幡野 貴之
    2005 年 33 巻 p. 141-147
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    中国では急速な経済成長によって水問題が深刻化し, 水資源の管理が重要な課題として浮かび上がってきている. 本研究では, 中国国内の移出入に伴う水資源の地域間移動 (これを仮想水移動と呼ぶ) の実態を明らかにし, 1990年代後半の急速な経済成長によって中国国内の仮想水移動がどのように変化したのかを明らかにする. 論文の前半では中国国内の仮想水移動を明らかにするために必要となる水分析用地域間産業連関表の推計方法について検討する. また, 論文の後半では仮想水移動の分析が行われ, 1) 水資源の豊富な南部沿海部から水資源の乏しい内陸部, 黄河流域への仮想水移動が増加していること, 2) 黄河流域でも下流域から中流域, 上流域への仮想水移動が増加していること, 3) 上流域, 中流域でも水需要が増大しており, 流域内の相互依存関係の変化を考慮して水利用のあり方を再検討する必要があること等が明らかにされる.
  • 藤森 真一郎, 諏訪 亮一, 河瀬 玲奈, 松岡 譲
    2005 年 33 巻 p. 149-158
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 全世界の人間活動に伴う炭素のフローを推計する手法を開発した. 全世界の炭素のフローを記述する表として全世界有機物勘定表(GOAT) を作成した. GOATは投入表, 産出表, 貿易表の3種類の表から構成される. フローの推計には物質密度という考え方を用い, 物質収支調整計算を行った. 物質密度とは単位金額あたりの物質量であり, 物質収支調整計算とは財の投入産出データと各種生産統計とを整合的に調整し, 産物と部門で物質収支をとる計算である. さらに本研究では, 1997年におけるこれらの表を作成した. その結果, 全世界で14107Mt-Cが環境から人間活動に取り込まれ, 4237Mt-Cは処理・再利用過程を経て土壌や水系へ投入され, 9600Mt-Cが大気へ放出されることが分かった.
  • 日下 博幸, Fei CHEN, Mukul TEWARI, 平口 博丸
    2005 年 33 巻 p. 159-164
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    次世代の天気予報モデルWRFが米国大気研究センター, 米国環境予測センター, 米国海洋大気庁予報システム研究所などによって開発されている. しかしながら, このモデルにおける都市の取り扱いはまだ不十分である. 本研究では, Kusaka et al.(2001) によって開発され, Kusaka and Kimura (2004) によって改良された都市キャノピーモデルをWRFモデルに導入し, そのインパクトを評価した. 都市キャノピーモデルを導入した結果, モデル地表面は日没後も大気を暖めるようになった. これは, 都市キャノピーモデルを導入することによって, 従来から指摘されてきた都市気候の熱収支の特徴を, 領域気象モデルで定性的に表現できるようになりえることを意味している. また, 都市キャノピーモデルの導入が数値予報の精度を向上させる可能性を示唆するとともに, 夜間のヒートアイランドに対する都市のキャノピー効果の重要性も示唆している.
  • 方 偉華, 井村 秀文
    2005 年 33 巻 p. 165-170
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    蒸発は, 地圏の物質とエネルギー循環の重要なプロセスである.黄河流域は, 過去数十年来, 深刻な水不足に悩んできた.パン蒸発 (PE) の空間的・時間的な特徴は, 黄河流域において水循環と水資源を解析するのに重要である.本研究では, 1971年から2000年の黄河流域におけるPEの空間的・時間的変化を詳細に検証することを目的としている.
    以下に, 本研究で得られた知見をまとめる.(1) 世界的なPEの変化は減少傾向にあるが, 逆に, 黄河流域では1980年代後半からPEが増加傾向にある.(2) 黄河流域の多くの地域では, PEは春と夏に減少し, 秋と冬に増加する.しかし, プン河流域のように, PEが全季節で増加する地域も存在する.(3) 主な傾向として, 1971年から2000年の間で, 日射時間と風速の減少によりPEが減少した.また, 日射時間の増加が1980年代後半からのPEの増加につながった.
  • 久田 由紀子, 松永 信博, 安東 聡
    2005 年 33 巻 p. 171-178
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    福岡都市圏ではヒートアイランド現象が深刻な問題となっており, ヒートアイランド現象の実態を解明するため, 2003年夏から長期広域多点観測をおこなってきた. 本論文では, 人間の生活空間をとりまく熱環境の季節変化について検討するため, 得られた観測データをもとに, 夏季および冬季のヒートアイランド構造について解析する. ヒートアイランド強度は, 夏季・冬季ともに日中に小さくなる. 最も大きくなるのは冬季夜間で2.0℃以上になる. 夏季日中の福岡都市圏の気温分布は全体に高温域が点在する. 夏季夜間の気温分布は, 高温域が都心部に集中し, 郊外に向かうにつれて気温が低下するという典型的なヒートアイランド構造をもつ. 冬季日中は夏季日中と同様に全体に高温域が点在する. 冬季夜間は等温線が海岸線とほぼ平行に並び, 海岸に近い地域ほど気温が高く, 内陸に向かうにつれて低温になる.
  • 平野 勇二郎, 大橋 唯太, 亀卦川 幸浩, 近藤 裕昭, 玄地 裕
    2005 年 33 巻 p. 179-188
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    東京都心部を対象とし, 都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルを用いて緑化や高アルベド化などの各種ヒートアイランド緩和・省エネルギー方策の効果を評価した. 都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルとは, 鉛直1次元の局地気象モデルに空調負荷計算モデルを組み込み, 街区内の建物の熱負荷や空調によるエネルギー消費量, 気温変動を計算するモデルである. まず典型街区を対象として夏季の晴天日の計算を行い, 各街区タイプにおける空調負荷の生じ方について分析し, また各対策のヒートアイランド緩和効果と省エネルギー効果を定量化した. 次に東京都心部を中心とした約20km×20kmの範囲での広域評価を行い, 各対策の省エネルギー効果を評価した.
  • 亀卦川 幸浩, 玄地 裕, 近藤 裕昭
    2005 年 33 巻 p. 189-197
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 空調熱源と電力供給システムの構成が夏季の都市熱環境に及ぼす影響について, 中層高密な典型的事務所街である大阪市中央区の街区領域を対象とし, 数値シミュレーションによる検討を行った, 検討には著者らの都市気象・エネルギー連成モデルを適用し, 以下の知見を得た.
    ・システム構成に応じた人工排熱の増減は, 顕熱が-86~+78%, 潜熱が-100~+418%の範囲と予想された,
    ・この排熱変化に伴う気温影響 (最大0.5℃低減) は, ヒートアイランド対策と同程度と推定された.
    ・以上により, 省エネ・CO2削減に加え, 都市熱環境保全の観点より都市エネルギーシステムを評価する事の重要性が定量的に示された.
  • 滋賀県の工業系汚濁負荷を対象として
    石本 貴之, 井手 慎司
    2005 年 33 巻 p. 199-205
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 琵琶湖への工業系水質汚濁負荷量の産業連関表生産額当たりの流入原単位 (186部門) を1995年と2000年の両基準年について算定した. その結果, 両基準年間に工業系負荷量が大幅に減少しており, 原単位が平均49%減少していることが明らかとなった. また, 同負荷量減少の要因を事業所アンケート等によって調査したところ, 事業所の操業停止または事業規模縮小による減少分 (平均寄与率) が約27%, 濃度削減対策が約9%, 排水量削減対策が約8%, 下水道接続が約4%であることが明らかになった.
  • スリランカの事例から
    佐伯 健, 山田 淳, Victor MUHANDIKI, 中園 隼人
    2005 年 33 巻 p. 207-214
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, ODAの質の向上及び説明責任の確保のために, ODA評価の重要性が再認識されている。本研究は各国援助機関において, 重点分野として扱われている水供給分野のプロジェクトについて評価手法を提案することを目的とした。スリランカにて, 裨益住民を対象としたアンケート調査, 関係者に対するインタビュー, 水源から水栓までの施設調査および水質調査を行った。その調査結果をふまえて, DAC評価5項目すべての評価指標について検討し, 収集したデータを用いて提案した評価手法を検証した。妥当性は住民の満足度から評価した。インパクトは水量, 水質, 水運搬労働, 水利用可能時間の変化を定量的に評価した。有効性は計画の達成度を評価した。効率性は費用便益分析の概念とインパクトの評価結果を用いて評価した。自立発展性はプロジェクトの投入, 活動, 施設の維持管理体制から定性的に評価した。
  • Jordan MITEV, Yoshimi HAGIHARA, Michinori HATAYAMA, Maiko SAKAMOTO
    2005 年 33 巻 p. 215-220
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Applying the system and spatial approach in studying diverse aspects of nature disaster risk occurrence in Arda River Basin, Bulgaria, makes possible researching risk within its triggering sources, interactions and impacts on Social, Eco and Geosystem. Implementation of the Interpretive Structuring Method analysis techniques provides for recognizing the social, ecological and geosystem, finding out the relationships between elements of the 3 systems, categorizing and ordering elements. Revealing spatial aspects of nature disaster risk by GIS enables to map it and determine the extent of risk exposure by processing and analyzing various types of spatial and attributive geo-information.
  • 花岡 達也, 河瀬 玲奈, 甲斐沼 美紀子, 松岡 譲
    2005 年 33 巻 p. 221-232
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 従来の温室効果ガス排出シナリオデータベースを更新し, 緩和シナリオについて地域別の特徴を考察した. 特に, IPCC第三次評価報告書以降の新しい緩和シナリオに注目し, GDP, 人口, 炭素集約度, エネルギー集約度および炭素税など, SRES4地域分類で定量的な分析をした. その結果, GDP成長率とエネルギー集約度改善率の関係に相関関係がみられた. エネルギー集約度と炭素集約度の関係については, 21世紀前半にエネルギー集約度の改善によってCO2が削減され, 21世紀後半では炭素集約度の減少によってCO2が削減される傾向がみられた. また, 炭素税については, 50~1400$/t-Cと大きな幅が見られ, また, 同率の炭素税が全地域に課された場合, 地域毎にその影響の度合いが異なっていた.
  • 和田 安彦, 中野 加都子, 尾崎 平
    2005 年 33 巻 p. 233-239
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, PETボトル拠点回収について住民のPETボトル回収への協力・非協力要因を検討し, 拠点回収によるPETボトルの回収率の向上を図る施策について検討した.その結果, PETボトル拠点回収への住民の協力・非協力に影響を与える要因は「ごみ問題に対する関心の有無」, 「周辺住民の拠点回収への協力の有無」等であることが明らかになった.また, 自宅から回収拠点までの距離の遠近よりも, 住民のリサイクル意識の方が協力・非協力に与える影響が大きい.拠点回収による回収率向上には回収拠点数の増加等のハード対策も重要であるが, それ以上にごみ問題への関心度等の住民意識を高める啓発を行う方が効果的であることを明らかにし, さらに住民意識が向上した場合の拠点回収への協力率, PETボトル回収率の向上効果を定量化した.
  • 志水 章夫, 楊 翠芬, 井原 智彦, 玄地 裕
    2005 年 33 巻 p. 241-248
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 施設の組合せや地域属性等を考慮しながら乳牛・肉牛を対象とした家畜排せつ物の地域内適性処理システムを設計するための評価モデル構築を行った. またプロセスインベントリデータベースと地域環境情報データベースを基に, 混合整数計画法を用いて環境影響及び経済性双方を検討するための設計支援環境を構築した.
    さらに, ケーススタディーとして千葉県の山田町を対象にシナリオ別解析を実施し, 改善案の検討を行った. その結果, 費用面を考慮した場合には集約型の施設構成が, 環境面で地球温暖化影響対策を考慮する場合, 分散型の処理施設構成が示されるなど, 経済性向上と環境負荷削減の双方を考慮可能な施策検討が可能であることが示された.
  • 埼玉県におけるケーススタディ
    村野 昭人, 藤田 壮, 星野 陽介
    2005 年 33 巻 p. 249-258
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 埼玉県の住宅ストックを対象として, 木材の循環利用を促進する技術の開発, 多段階活用による環境改善効果およびコストを算定する. 木材の循環利用技術として, 解体材を再び構造材として再利用する部材リユース, チップ化した廃木材をエンジニアードウッドの原料として再生利用するマテリアルリサイクル, 廃木材をチップ化して燃料代替としてエネルギー利用するサーマルリサイクルを取り上げる. 各循環利用技術を組み合わせた循環利用施策プログラムを設定し, 木造住宅のライフサイクルにおけるCO2排出量およびコストの算定を通じて評価を行う.
  • 吉田 登, 川端 宏紀, 金子 泰純, 日下 正基
    2005 年 33 巻 p. 259-266
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 紙リサイクル原料古紙の地域間物流が輸送量及び輸送エネルギー消費に及ぼす影響を分析した. まず, 古紙統計年報等から求めた都道府県間の古紙発生・購入量に対し, 線形計画法を用いて現状の古紙パルプ生産能力を制約として, 総輸送トンキロを最小とする地域間発生・購入量を推計し, 現状と比較して約4億トンキロの輸送量及び現状の輸送機関分担率で2, 053百万MJの輸送エネルギーが削減される結果を得た. また古紙回収が進み地域間移出入量が増大した場合でもエネルギー輸送原単位は削減する傾向と推計された. さらに, 各地域での古紙受入能力を2倍に拡大した場合には, 輸送エネルギーは約7割に削減し, 北海道, 東北に広域の, その他の地域には自地域内中心の移出入が形成される結果となった.
  • 山崎 裕貴, 山本 祐吾, 吉田 登, 盛岡 通
    2005 年 33 巻 p. 267-273
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    持続可能な生産と消費を物質的側面から実現するためには, リユースや高質な素材リサイクルなどの高度なループ・クロージングの形成を図っていくことが必要である. 本研究では, 部品リユース計画における構想と意思決定を支援する評価フレームの構築を目指し, 部品リユース性の評価基準を策定した上で, 家電製品への適用を通じて評価基準と代替案の重要度を定量化した. また, 評価結果より得られる部品リユース特性について, 家電リサイクル工場に回収される使用済み製品の部品を対象とした実証的なデータの調査, 取得をおこない, 部品リユースの実現可能性を評価した.
  • 武藤 慎一, 伊藤 聖晃
    2005 年 33 巻 p. 275-284
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現在の都市環境問題は, 自動車交通に起因する部分が非常に大きい. しかし, 自動車を抑制するための環境施策は, 社会経済に与える影響も多大であることが懸念されている. そこで, 本研究では, 極力, 社会経済への影響が小さくかつ環境負荷の抑制が達成できる環境施策を見出すために, 立地均衡を考慮した応用一般均衡 (CGE) モデルの開発を行った. CGEモデルは, これまでも環境政策の社会経済へ与える影響まで含めた評価を行うための手法として用いられてきた. しかし, 都市環境施策を評価するためには, 従来のCGE分析の枠組みに加え, 主体の活動拠点を決定するメカニズムである立地の分析も必要と考えたものである. さらにここでは, 開発したモデルの挙動を確認するために, 大阪府を対象とした簡単な数値計算も実行した.
  • 金森 有子, 松岡 譲
    2005 年 33 巻 p. 285-294
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    家庭のライフスタイルの変化が環境負荷発生量に与える影響を考察するためには, 物質, 財の家計への投入と家計生産及ひ環境負荷発生の関係を検討することが重要となる. そこで, 本論文では, 家計とそれを取り巻く社会及び環境の, 物質・財の収支を表現する家計・環境勘定を作成した. この勘定は, 所得支出勘定, 家計生産投入表, 資本ストック表, 環境負荷発生表, 環境負荷処理表からなる. 家計・環境勘定ではマクロな経済データと整合性のある所得と支出のバランスを示し, さらに財・サービス・時間の投入と生産される便益の関係, 家庭内の資本ストック量, 家庭が購入した財と発生する環境負荷量との関係, 環境負荷と処理方法の関係を表現できる. 本研究では2000年の日本における世帯分類別の家計・環境勘定を提案し, 試算を行った.
  • 谷本 圭志
    2005 年 33 巻 p. 295-304
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境管理施設の健全な機能を維持するにはその更新が必要である. その際, 異なった主体がそれぞれ所有するいくつかの施設をまとめて同時に更新することで, 各主体の維持管理の費用を削減できる可能性がある. しかし, 個々の主体が選好する更新のタイミングが一致する保証はない. 本研究では, 動的協力ゲーム理論を援用して, 複数の施設をまとめて同時に更新することで節減できる費用を主体に適切に配分するとともに, 効率的に総期待割引費用を削減するためのメカニズムを構築する. その上で, 費用配分ゲームの特徴が更新費用の節約額の関数によって特徴づけられることを示す. さらに, 費用配分手法に要請される公理を明らかにするとともに, それらを満たす手法としてシャープレイ値が有効であることを示す.
  • 東京-北京の事例
    市橋 勝, 金子 慎治, 吉延 広枝
    2005 年 33 巻 p. 305-315
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本稿は、複数の産業連関表を利用して、国際地域間の相互の経済取引とそれによって引き起こされる環境負荷を、東京、北京、日本のその他地域を例にして、計測・分析を行った。分析から得られた主要な結論は、東京は北京にとって需要都としての性格が強いのに対し、他地域日本は北京にとって供給者としての性格が強い。従って、北京は東京向け輸出によってより大きな誘発効果をもたらしているということが分かった。また、誘発された生産額に伴って発生したエネルギー消費とCO2排出量は、日本側よりも北京のほうがより深刻で規模が大きいことが分かった。特に、東京との比較では、北京は1, 000倍にも及ぶ環境負荷を誘発することが示された。
  • 奥山 忠裕, 林山 泰久
    2005 年 33 巻 p. 317-327
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は個人の選好における環境質の代替関係を想定し, 環境質の便益評価に与える影響について理論展開を行ったものである. まず, 環境質の代替関係を明示的に表現するためにKuhn-Tucker Modelに依拠したモデルを構築し, 厚生経済学的便益定義を行う. 最後に, 環境質の代替関係を考慮したプロジェクト評価について議論する.
  • 岡野 雅通
    2005 年 33 巻 p. 329-334
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    事業活動における環境と経済の関係を評価する指標である環境効率がWBCSD等によって提唱されており, 日本国内における多くの企業も導入しているが, 実際の企業活動において参照しようとした際には, 結果的にどのような数値になったか, という事後的な現状分析の評価が中心となり, 将来目標を提示するにとどまっている. 本稿では, 企業の財務指標と環境指標を用いて環境効率を4つの指標に要因分解することにより, 持続可能あるいは循環型という将来像に至るまでのロードマップの提示に寄与するための基礎的な検討を行うものである.
  • 小泉 明, 稲員 とよの, 荒井 康裕, 吉井 恭一朗
    2005 年 33 巻 p. 335-341
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文では, 配水管網の更新計画に関して, 適正な管径を選択するための最適化手法を提案した.管網更新計画に関する問題の定式化を行い, 管路及び節点の水理的な制約条件を満たしながら, 管路建設コストの最小化を目的とする数理計画問題について述べた.経済的な観点に加え, 管内流速の安定性についても言及し, 異なる目的関数を用いた多目的最適化への拡張方法を示した.以上の計画問題に対して, 管網解析プログラムを内在化させた遺伝的アルゴリズムを提案し, これをHGAモデルと定義した.最後に, このモデルによるケーススタディを行った結果, 多目的HGAモデルの適用により, 管路建設コストの削減と, 管内流速の安定化を同時に実現する計画代替案の策定が可能となった.
  • 池上 貴志, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
    2005 年 33 巻 p. 343-354
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    代表的な未利用エネルギーである下水熱の利用価値を定量的に評価するため, 下水幹線のシミュレーションモデルと地域冷暖房 (DHC) プラントのシミュレーションモデルを開発した. これらと地理情報システム (GIS) データによって, 下水幹線上の各地点での月別時刻別の下水流量や下水温度を計算し, 下水熱利用DHCを導入した場合の環境負荷低減効果を計算することができる. 下水温度や負荷率によって変化するヒートポンプの効率やDHCを導入した場合の下流側での下水温度変化の効果なども考慮できる点が特徴である. これらを用いて, 東京都芝浦処理区にDHCを1ヶ所導入した場合と, 1本の幹線上に5ヶ所のDHCを導入した場合の解析を行った.
  • ウォン ルーイファン, 藤田 壮, 鈴木 陽太, 岡寺 智彦
    2005 年 33 巻 p. 355-366
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では地理情報システムを用いた東京湾流域圏の有機廃棄物の発生量と分布をデータベース化した上で、循環政策システムとしてメタン発酵システムを下水処理場に導入するケースについて、再利用エネルギーにより二酸化炭素 (CO2) の削減効果を評価する。ケース1では下水汚泥と家計、食品流通業、製造業から発生する食品残渣が対象となる。一方、ケース2については農村連携を考えた上でケース1の有機残渣とともに農業廃棄物と家畜排泄物も含んでいる。
  • 川崎エコタウンにおける循環型セメント事業のケーススタディ
    大西 悟, 藤田 壮, 長澤 恵美里, 村野 昭人
    2005 年 33 巻 p. 367-376
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    産業共生 (Industrial symbiosis) の理念および川崎エコタウンの調査に基づき, 循環型事業の計画手法を提案し, 環境改善効果を算定するための枠組みを提示した. 次に, 川崎エコタウンを対象とし, セメント工場を核とした循環型事業を計画し, そのLCCO2を算定した. その結果, 廃棄物を利用しないケース (ベースライン) と比較して, 現状での循環型事業では, 約3.6万t-CO2/yの削減効果があることが示された. また, 川崎市内から排出される産業廃棄物, さらに川崎市内から排出される産業廃棄物および一般廃棄物を利用した循環型事業では, それぞれ約3.8万t-CO2/y, 13.7万t-CO2/yの削減効果があることが示された.
  • 東京湾流域の水需要のケーススタディ
    岡寺 智大, 藤田 壮, 渡辺 正孝, 鈴木 陽太
    2005 年 33 巻 p. 377-387
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は流域管理への適用可能な環境負荷排出インベントリーシステムの開発を目的に, 流域内外での流通活動の影響が評価可能なマクロインベントリーシステムと, 環境負荷の分布特性が把握可能な分布型インベントリーシステムを構築し, 東京湾流域の水需要に対して適用した. その結果, 東京湾流域では, 鉄鋼業, 化学工業などが多い沿岸地域での水需要量が多く, 6~7割は流域外での消費活動に誘発される構造にあることが明らかとなった. 一方, 東京都の水需要量は少ないが, 東京都での消費活動により東京湾流域で約35億m3の水需要が東京都以外の地域で誘発されるという結論が得られた. また水需要分布は, 部門ごとに分布の形態や強度が異なることが示された.
  • 吉延 広枝, 金子 慎治, 市橋 勝
    2005 年 33 巻 p. 389-397
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    京都議定書の第1約束期間を目前に控え、地方自治体においても地球温暖化対策の策定・実施が求められている。本研究は通常用いられる領域原則にもとづく二酸化炭素排出量をもとに各都市が削減目標を設定することが適切であるかどうかを検討するために、産業連関分析によりサービス都市 (福岡市) と工業都市 (北九州市) のエネルギー消費、二酸化炭素排出構造について比較分析した。その結果、1人当たり二酸化炭素排出量について、都市域内から直接排出される二酸化炭素のみを対象とする場合と、都市の移輸入・移輸出を通じた外部との間接的な二酸化炭素排出量のやり取りを考慮した責任排出量では、大きく結果が異なることが示された。
  • 玉木 光, 近藤 隆二郎
    2005 年 33 巻 p. 399-406
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 自然保護の必要性を主張するあまり, 自然とかかわりの深い生業の営みが否定されるという齟齬が生じている。このような問題に対し, 自然保護のあり方を問い直すための環境教育が必要である。通常は自然にとって有益と考えられている「自然保護」が, 実際には自然破壊を食い止めるだけの効果は無く, 「自然保護」をおこなっても「人間=強者, 自然=弱者」の関係は変化しない。このような人間と自然との間にあるコンフリクトを体験させ, 日常生活にはない視点から考えさせるツールが必要であると考えた。本研究ではこのことを目的としたゲーミングシミュレーション『Paint it Black』を開発し, 学習効果の検証を行った。高校生・大学生へ対する実験の結果, 『Paint it Black』の体験により, 自然保護をめぐる4つの立場が立ち現れ, 相互の考え方について比較することで, なぜそのような立場がありうるのかという学習へ展開していくことが可能であることが示された。
  • 市川 新
    2005 年 33 巻 p. 407-414
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は、福岡大学院工学研究科資源循環・環境工学専攻において、実験的に行っている「総合演習」を紹介し、その成立にいたる考え方を述べる。「総合演習」とは、環境問題が提示されている所、循環型社会形成のために努力している場所等を重点的に見学し、それらの位置付け、目的、効果、これからの課題等を大学院生に考えさせることにより、様々な分野から進学してきた大学院生に環境工学・リサイクルに関する一定の知識を与えるだけでなく、将来環境工学を専門とする大学院生にとって必須の「総合的視野をもたせる」ことに成功していることを示した。そのような経験を紹介することにより、これからの環境工学教育のあり方と、今後の課題を整理し述べたものである。
  • 坂本 麻衣子, 萩原 良巳, 畑山 満則
    2005 年 33 巻 p. 415-422
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    水資源開発をはじめ公共事業計画において, 住民参加が重要な位置を占めてきており, 地域住民をプレイヤーとして認識することが必要になると考えられる. 特に, 水資源の開発はその影響圏が広範に及ぶため, 多くのステイクホルダーが関与することになる. 多くのステイクホルダーが計画に関与する場合, どのような枠組みでもって一個のプレイヤーとして捉えれば良いのかという問題が生じる. 本研究では, 一般に分析者の判断に委ねられがちなプレイヤーの設定を, その根拠が明らかとなるような分析を経て行うためのプロセスを提案する. 吉野川第十堰問題を事例としてそのプロセスを示し, コンフリクト分析を行う. そして, 提案するプロセスの有用性と, 吉野川第十堰問題の今後のコンフリクトマネジメントの方向性と可能性について考察する.
  • 山田 淳, 小野 敦史, 平井 昭三
    2005 年 33 巻 p. 423-430
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年、住民の環境や行政への関心が高まっており、施策の実施に際して、行政と住民との間の合意形成が求められている。特に下水道のように、施策実施に伴う費用負担が直接生じる場合の合意形成は重要な課題である。このような合意形成を円滑に進めていくためには、住民の施策評価の視点を明らかにし、意思決定プロセスを把握する必要がある。本研究では、水環境保全施策に関する情報提供を繰り返し実施することにより、住民の理解を深め合意形成を図る手法を提案し、琵琶湖流域において、同一者を対象に3回のアンケート調査とその間のニューズレター配布を行い、情報提供による住民の意識変化を評価することにより同手法の効果を検証した。その結果、市街地排水対策や下水処理の高度化に関しての住民の評価が高まった。また、水環境保全のための費用負担に対しても支払意志が向上するなど一定の理解が得られた。下水道の整備・管理を最終目標とした意思決定プロセスの方向を示すことができた。
  • 平山 奈央子, 井手 慎司
    2005 年 33 巻 p. 431-440
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 滋賀県における超高度下水処理導入問題に関する社会的合意形成を支援するために, 社会的合意が成立していると見なしうる琵琶湖の総合保全という目標達成に対する一般住民の更なる支払意思額を仮想市場調査法 (CVM) によって, 保全施策全体の中に占める下水道事業の重みを一般住民と専門家の分担で行う階層分析法 (AHP) によって求め, 両者の積によって下水道事業に対する更なる支払意思額を求めるツールを考案した. 一般住民や行政担当者を対象にしたアンケートと一部住民を対象にしたワークショップによって同支援ツールの仮説の検証を試みたところ, 上記支払意思額の回答者間の変動係数が小さいなどのツールとしての有効性を部分的に確認することができた.
  • 金谷 健, 増田 哲児
    2005 年 33 巻 p. 441-452
    発行日: 2005/11/03
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 「パブリックコメントの実施状況の把握」と「パブリックコメントでの意見が素案に与える影響の把握」とを研究目的とした. 前者は, パブリックコメントを制度化している35都道府県を, 後者は, 「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例案要綱」と, 「(仮称) 琵琶湖レジャー利用適正化基本計画 (案)」とを対象にした. 調査方法は, 35都道府県のHP公開情報の整理分析と, 滋賀県庁の担当者へのヒヤリングである. 調査の結果, 募集期間と意見数の関連, 意見数と変更数の関連, 意見が素案に与える影響の条例と計画との共通点と相違点がわかった.
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