筆者は先に北上山地に於ける二疊系を3分し, 坂本澤・叶倉・登米統となし, 叶倉統は岩質及化石内容に依り更に合地澤・岩井崎・小演階に區分される亭を述べた。此の中岩井崎階に於いては, Y
abcina, Vcrbccbina等の紡錘蟲と並んで
Waagenophyllum, Wentzelella及び
Wentzelelloides等の珊瑚類が示準者として重要な役割を演じてゐるが, 猶其の他に
Yatsengiaの1種が是等と併せて可成り廣く分布してゐる様子なので茲に其の記載をなした次第である。記載は筆者の採集品の他に, 東北帝大理學部地質學古生物學教室の所藏標本にも據つた。該種は樂及黄が中國・南京丘陵地の棲霞石灰岩より記載した
Yatsengia kiangsuensis YOH.に殆ど一致するけれども, 猶完全なる同定は暫く將來にまちたい。中國に於いては
Yatsengiaは棲霞石灰岩に限つて産出するに封し, 日本に於いては
Yabeina, Waagenophyllum, Wentzelclla等と共存する事は興味深い。
猶此の短報に於ては
Corwenia, Waagenophyllum, Yatsengia等の屬め識別にDissepimenteの形態及びDissepimentenzoneの厚薄が, 大切な目印であるとの筆者年來の見解を述べておいた。又記載に於いては各固體の大いさに應じてのSeptenの數及びColumellaの形態上の変化に就いて特に注意しておいた。
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