本論文は前面隅肉を象れる軟鋼試驗片を利用して破壞に至る迄の歪模樣の進展を研究し、滑り及び切斷に關する假設を設けて實驗結果に説明を加へ、更に同一假設を適用して各種熔接の強度間の關係を論じたものである。
先づ前面隅肉を象れる軟鋼に於ては、滑りが喉部を貫通する時に對して
1.滑り面は不均剪斷應力の最大なる面即ち軸と略22.5゜傾きをなす。
2,滑り而に於ける平均剪斷應力度は材料の降伏剪斷應力度の1.1倍である。
なる結果を得た。
破壞に對して
3.破壞面は不均剪斷應力度の最大なる面即ち軸と略22.5゜の傾斜をなす。
4.破壞面に於ける不均剪應力度は材料の剪斷應力度に等しい。
事が確かめられた。
次に破壞に對して得た上の結果に更に假説を加へ各種熔接型式の破壞應力度間の關係を論じた結果、衝合熔接の引張強度を1とするとき
衝合壓縮は1.54
衝合剪斷は0.77
前面隅肉は0.90
側面隅肉は0.77
となるべき事を論じた。此の研究は理論的のものである。實際の熔接に於る現象に就いては更に機を得て確め度い希望を有するものである。
終りに望み、本論に對する諸賢の御批判を仰ぎ、将來の研究の資となすを得ば筆者の幸甚とする所である。猶本研究に當つては東京帝國大學大學院學生工學士仲威雄君の助力を得たることを感謝するものである。
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