急性中耳炎による顔面神経麻痺は成人と比較して小児に多い。治療は保存的治療,手術治療があるが,特に小児ではエビデンスが乏しく明確な選択基準はない。今回異なる重症度の急性中耳炎に伴う顔面神経麻痺の1歳児2例を経験し,いずれも保存的治療で治癒した。症例1は1週間以上続く上気道炎後に耳漏と右顔面の麻痺が出現した。右乳様突起炎を伴う両側重症急性中耳炎と右顔面神経完全麻痺を認めたが,保存的治療で発症74日目に治癒した。症例2は発熱後左顔面神経麻痺を発症し小児科で抗ウイルス薬とステロイドの投与が開始された。翌日左中等症急性中耳炎が判明し,鼓膜切開,抗菌薬経静脈投与を追加し,発症28日目で治癒した。
乳幼児の急性中耳炎では顔面神経麻痺の合併を認めても明らかな乳突蜂巣の破壊や膿瘍形成がなければ,まずは保存的治療を行い,改善を認めなければ外科的治療に切り替えてもよいと考える。
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