POR欠損症は先天性副腎酵素欠損症の一つである。本疾患と中耳疾患との関連性を示す報告はほとんどない。今回,耳小骨奇形を合併したPOR欠損症の1例を報告する。
2歳10か月の男児。生下時に外性器異常のため精査され,POR欠損症と診断された。母親が言語発達遅滞を心配し,兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科に紹介受診となった。
ASSRは4分法で右56.3 dBHL,左82.5 dBHL,ABRは右50.0 dBnHL,左40.0 dBnHLでV波を認めた。側頭骨CTで両側キヌタ骨の長脚が細く,耳小骨奇形が疑われた。新版K式発達検査では言語・社会機能の発達遅滞を認めた。
オーディトリーバーバル法(AVT)開始後,語彙数は増加した。また右耳に骨導補聴器を装用したところ,装用閾値は20 dBと良好であった。耳小骨奇形に対し左アブミ骨手術,右鼓室形成術III型を施行し,聴力の改善を認めた。
本症例においても耳小骨奇形は手術加療が有効であり,AVTで年齢相応の言語機能を獲得できたことから,聴力活用は十分に可能であると考えられた。
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