先天性梨状陥凹瘻は下咽頭梨状窩から甲状腺背側に向かって発生する先天性の瘻孔であり,幼少期に急性甲状腺炎や頸部感染症を契機に発見されることが多いが,新生児期では頸部腫瘤や呼吸症状を呈し発見されることがある。
症例は日齢6の女児。出生時より左側頸部に約3 cm大の腫瘤を認めNICUより紹介。頸部超音波検査,CT検査にて左側頸部に単房性嚢胞を認めた。穿刺吸引にて黄色の内容液を吸引し腫瘤は縮小したが,哺乳開始に伴い再び増大した。喉頭内視鏡検査にて,吸引した液体と同様の液体が左梨状陥凹から排出されるのを認め先天性梨状陥凹瘻と診断した。日齢20に直達喉頭鏡下での瘻管閉鎖術を試みるも,術中に瘻孔を同定できず頸部切開排膿術のみを施行した。日齢48に瘻管閉鎖術を施行し,左梨状陥凹に瘻孔を認め10%硝酸銀にて焼灼した。術後は頸部腫瘤の増大なく経過している。
新生児期,乳児期の瘻孔閉鎖術において,10%硝酸銀は有効な薬剤であると考えられた。
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