小児耳鼻咽喉科
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30 巻, 3 号
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第4回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
特別講演
  • 川城 信子
    原稿種別: 特別講演
    2009 年 30 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      小児耳鼻咽喉科の歴史は本格的には1976年第 1 回 ESPO(ヨーロッパ小児耳鼻咽喉科学会)がイタリーで行われたことに始まる。ESPO は世界の小児耳鼻咽喉科学に多大な影響を与えた。日本では1979年に鈴木淳一顧問,古賀慶次郎顧問のもとに第 1 回の研究会が発足した。年 2 回主題を中心とした研究会が行われ,26年が経過した。2006年に学会となり,2009年第 4 回が行われた。2009年学会編集による「小児耳鼻咽喉科診療指針」が発刊された。その中では小児耳鼻咽喉科の扱う担当領域,到達目標が示された。経験に頼っていたが,EBM にもとづいた学問に発展した。今後,小児を中心としてよりよい医療がどうあるべきかを考慮しながら各科の協力,コメディカルの協力のもとに歴史を積み重ねていくことになる。
教育講演
シンポジウム
  • 阪本 浩一
    原稿種別: シンポジウム
    2009 年 30 巻 3 号 p. 200-205
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      小児の持続性咳嗽は,耳鼻咽喉科医が比較的よく遭遇する疾患である。しかし,その診断には,成人,小児それぞれの特徴を理解する必要がある。成人の持続性咳嗽では,咳喘息,アトピー咳嗽,後鼻漏症候群,胃食道酸逆流症(GERD)が,大半を占めるとされる。耳鼻咽喉科より見ると,喉頭アレルギーの重要性も忘れてはならない。一方,小児では,GERD の頻度は低く,非定型菌の感染症が多いとされる。また,年齢により,喉頭軟弱症,扁桃肥大,心因性咳嗽など多岐にわたる原因が考えられる。副鼻腔炎による後鼻漏例,胃食道酸逆流に関連する 2 例,扁桃肥大例の 4 症例を取り上げた。耳鼻咽喉科医が診る,小児持続性咳嗽の多様さ,重複する原因による診断の困難さなどを示し,鑑別診断の考え方を示すと共に,下気道を中心とした内科,小児科医との連携を持って診断に当たることの重要性を重ねて強調したい。
  • 望月 博之
    原稿種別: シンポジウム
    2009 年 30 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      これまで,呼吸器症状の中でも喘鳴については,その鑑別診断や治療について議論が重ねられてきたが,半面,咳嗽では,長期間に及んだとしても計画的な治療がなされることが少ないのが現状であった。しかるに,近年,小児科領域においても持続する咳嗽のへの関心は高くなり,ひとつの疾患単位として考えられるようになっている。持続する咳嗽の原因疾患として,喘息,鼻漏性疾患,胃食道逆流などが報告されているが,喘息やアレルギー性鼻炎など,アレルギーに関連する疾患の頻度は極めて高い。また,原因疾患を特定できない慢性咳嗽も一部に認められるが,このような症例の中には,アレルギー性の気道炎症の存在が推測されている咳喘息(Cough Variant Asthma, CVA)も含まれる。小児の遷延する咳嗽を鑑別,治療していくにあたり,3 週から 8 週未満であれば気道感染症,8 週間以上であれば気道のアレルギー性疾患を念頭に置く必要がある。
  • 増田 佐和子
    原稿種別: シンポジウム
    2009 年 30 巻 3 号 p. 212-216
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      小児の 4 週間以上続く咳嗽の原因疾患として,小児科では喘息または咳喘息が多く,一般的な気管支炎や肺炎の他,百日咳,心因性咳嗽なども認められる。一方耳鼻咽喉科では副鼻腔炎が半数を占め,湿性咳嗽を生じていることから後鼻漏の関与が大きいと考えられる。またアレルギー性鼻炎は副鼻腔炎や喘息を合併しやすいという点で咳嗽との関連に注意すべきである。その他に,原発性線毛機能不全,異物,喉頭アレルギー,咽喉頭酸逆流症といったさまざまな疾患が長びく咳を引き起こし,さらには複数の疾患が合併することも少なくない。持続する咳嗽であっても原因疾患に対する治療により多くが改善することから,小児科と耳鼻咽喉科が連携して多方面からアプローチし,的確な診断と治療を行うことが重要である。
  • 小松原 亮
    原稿種別: シンポジウム
    2009 年 30 巻 3 号 p. 217-221
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
原著
  • 平井 美紗都, 福島 邦博, 片岡 祐子, 長安 吏江, 前田 幸英, 假谷 伸, 西﨑 和則
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 222-226
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      Townes-Brocks 症候群(TBS)は,1972年に Townes PL と Brocks ER が初めて報告した,手指,鎖肛などの多彩な外表奇形に加えて,外耳道閉鎖症をはじめとした各種の耳形態異常を伴う常染色体優性遺伝の奇形症候群である。今回我々は,内耳形態異常による高度難聴を伴った TBS の 1 例に対して人工内耳埋め込み術を行ったので報告する。
      症例は,外耳,内耳の高度形態異常を伴っていたが,医療用画像診断システムを用いた解析により人工内耳埋め込み術の適応決定,及び術前のプランニングを行うことが可能であった。
  • 成尾 一彦, 宮原 裕, 家根 旦有, 細井 裕司
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      症例は 7 歳女児。平成18年 4 月 5 日より発熱と前頸部腫脹があり当院小児科に入院となり,左甲状腺炎周囲の炎症が疑われ化膿性甲状腺炎と診断された。抗生剤の点滴で消炎後に,下咽頭造影検査で左梨状窩より造影される瘻管を指摘され,下咽頭梨状窩瘻と診断された。同年 7 月26日に瘻管摘出術を施行した。まず直達鏡を挿入し左梨状窩に開口している瘻孔を同定しピオクタニンを注入し瘻管を染色した。その後,頸部襟状切開し染色された瘻管を同定した。瘻管は周囲と軽度癒着みられたが慎重に剥離し梨状窩粘膜近傍まで瘻管を追い摘出した。左甲状腺は合併切除しなかった。瘻管摘出術に際しては,瘻管の同定が困難な場合もあり,いくつかの瘻管の同定方法が報告されている。直達鏡下に瘻孔を確認し染色する方法を推奨している報告が多く,同法では甲状腺を温存できる可能性も高く第一選択になりうると考えられる。
  • 宇野 芳史
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 232-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      2003年から2007年に当院を受診した小児上気道感染症患児の鼻咽腔から検出された Streptococcus pneumoniae 5720株を対象に薬剤感受性および耐性率について検討を行った。S. pneumoniae の penicillin G に対する薬剤感受性の変化は,いずれの年度も 2 峰性のピークを示していた。耐性率では PSSP, PISP, PRSP 毎の割合で検討してみると,2006年を境に,特に PRSP の割合の減少,PSSP の割合の増加が顕著であった。PRSP と PISP を合わせた耐性化率は,2003年には90%を越えていたものが,2007年には75%を切るところまで低下していた。pbp 遺伝子の変異について検討を行うと,いずれの年度においても,pbp1a, 2b, 2x の 3 遺伝子とも変異している株(gPRSP)の割合が最も多く,約60%の割合で認められた。しかし,年度を追うごとにその割合は減少しており,2003年では70%近く認められていたものが,2007年では60%を切るところまで減少していた。3 遺伝子とも変異している株に引き続き,pbp2x, pbp1a+2x, pbp2b+2x が変異している株が各々約10%前後認められた。また,2003年には pbp 遺伝子の変異を来していない株(gPSSP)はほとんど認められなかったが,2007年にはその割合は10%近くまで増加していた。Erythromycin に対する感受性の変化は,いずれの年度も 2 峰性のピークを示していた。
  • 呉 晃一, 松井 和夫, 大田 隆之, 三好 豊
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      我々は先天性中耳真珠腫に対して経鼓膜的に鼓膜切開で摘出した 6 症例を報告する。対象は鼓膜前上象限 antero-superior quadrant(以下 ASQ)に限局した先天性中耳真珠腫であり,耳小骨病変を有さない 6 症例である。CT 所見で,概ね 3 mm 大の真珠腫であり,通常の鼓膜切開を ASQ に行い,ローゼン氏の探針などを用いて経鼓膜的に摘出した。
      6 例中 5 例は術後現在再発を認めていない。1 例は鼓膜張筋腱に術中遺残した可能性があり経過観察中再発を認めたため,2 年後に鼓室形成術を行った。
      鼓膜切開による経鼓膜的真珠腫の摘出は,低侵襲であり,ASQ に局在する先天性中耳真珠腫に対する外科的治療として,今後も検討していく必要がある。
  • —慢性咳嗽と滲出性中耳炎の小児例—
    遠藤 明, 田中 大介
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      咳嗽が持続し内科的治療が奏功しなかった慢性副鼻腔炎の 2 小児例と治癒しがたい滲出性中耳炎の 1 小児例に対してキリアン・久保洗浄管を用いて上顎洞洗浄を施行した治療経験を示した。単純 X 線撮影により小児の慢性副鼻腔炎と診断した。キリアン・久保洗浄管を用いてくり返し上顎洞洗浄を施行したところ症状は改善し,副鼻腔炎は軽快した。幼小児においても反復して施行可能である自然孔経由の上顎洞洗浄は小児副鼻腔炎の治療方法として有効であり,再評価すべき治療法と考えられる。
  • 田中 美郷
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 259-267
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      3~6 歳の就学前児にみられることば及び言語発達の遅れの原因を知るための簡便な検査法を開発した。この検査は以下の四つの下位検査よりなる。
    ①猫,鳩,金魚,西瓜,飯茶碗,及び時計の 6 個の絵に対する自発語検査
    ②上記 6 個の絵の名を肉声で言って,それに該当する絵を指させる
    ③同じ検査をささやき声で行う
    ④上記 6 個の絵に関する質問の理解検査

      53名の臨床例について検討したところ
    イ.環境心理学的問題があって生じたと考えられる言語発達の問題
    ロ.聴覚障碍による言語発達の遅れ
    ハ.中枢性言語発達障碍
    ニ.神経筋疾患ないし構音器官の運動機能異常によることばの遅れ,
    などが大まかに分類できた。

  • 宇野 芳史
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 268-285
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      2003年 6 月から2004年 5 月の 1 年間に当院を受診した15歳未満の急性中耳炎および急性鼻副鼻腔炎患児の鼻咽腔から検出された Streptococcus pneumoniae1322株を用い,微量液体希釈法で薬剤感受性の測定と,PCR 法でペニシリン結合蛋白(PBP)遺伝子変異およびマクロライド耐性遺伝子の検出を行い比較解析した。薬剤感受性による分類では PSSP 145株(11.0%),PISP 544株(41.1%),PRSP 633株(47.9%),PBP 遺伝子変異による分類では,gPSSP 59株(4.5%),gPISP 391株(29.6%),gPRSP 872株(65.9%)であった。マクロライド耐性遺伝子のうち mefA 遺伝子のみ検出したものは447株(33.8%),ermB 遺伝子のみ検出したものは593株(44.9%),mefA 遺伝子と ermB 遺伝子の両方とも検出したものは97株(7.3%),耐性遺伝子を検出しなかったものは185株(14.0%)であった。PBP 遺伝子変異とマクロライド耐性遺伝子の関係を見てみると,PBP 遺伝子の変異数が増加するに従ってマクロライド耐性遺伝子を検出する割合も増加していた。今回の検討では,薬剤感受性による分類と PBP 遺伝子変異による分類では S. pneumoniae の耐性の頻度にはほとんど差が認められず,β–ラクタム系抗菌薬の感受性は,以前と比較すると全体的に低下していた。また PBP 遺伝子変異が増加するに従って,β–ラクタム系抗菌薬の耐性は増加しており,マクロライド耐性遺伝子が増加するに従って CAM および CLDM の感受性も低下していた。今後とも,薬剤感受性および遺伝子解析を含めたサーベイランスが必要であると考えられた。
  • 上出 洋介, 田口 智英
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 286-292
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      反復する中耳炎の要因としてI.乳児の免疫学的未熟性,II.多剤耐性菌の増加,III.社会環境,家庭環境の変化が挙げられているが,極めて難治な反復性中耳炎ではさらに胃食道逆流症が関与している可能性を考える必要がある。
      今回,胃食道逆流症が背景にある小児反復性中耳炎の 4 症例を経験した。これらの症例は中耳炎の制御が極めて難しく,鼓膜切開,鼓膜チューブ留置など外科治療も含め,長期に抗菌薬を服用していた。さらに 3 症例は制御の難しい呼吸器症状を伴っていた。24時間食道 pH モニタリング,上部食道造影検査,食道シンチクラフィーなどの検査方法を組み合わせることで胃食道逆流症の診断が可能であった。
      治療の中心は保護者に対する胃食道逆流症の啓蒙と食事に関する生活指導である。薬物療法については H2 受容体拮抗剤,クエン酸モサプリドを処方している。しかしながら当院では現在のところ十分な効果が得られているとはいえない。
  • 成相 昭吉
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      鼻道の他覚的所見から乳幼児急性細菌性副鼻腔炎(ABS)を診断することは,小児科医には容易ではない。アメリカ小児科学会(AAP)は臨床症状から診断する診療ガイドライン(GL)を2001年に公表し,10日以上30日以内持続する湿性咳嗽が重要であることを示した。
      今回,外来において小学入学前の 6 歳以下の乳幼児を対象に,湿性咳嗽が10日以上持続する症例を ABS と診断し,アモキシシリン(AMPC)80 mg/kg/日,分 3,3 日間を初期治療とする診断治療指針を作成した。2008年 3 月~2009年 2 月の間に運用し,この診断治療指針が妥当であるか検討した。
      診断例は16例(平均年齢:2.8歳)であった。湿性咳嗽の持続時間は平均12.7日,膿性鼻汁は15例,後鼻漏は 3 例,診断時に38°C≦の発熱は 6 例で認めた。AMPC 初期治療が有効だったのは13例(78.6%),いずれも 2 日間追加し終了とした。一方,無効例は 3 例で,いずれもアジスロマイシンに変更し軽快した。
  • 川畠 雅樹, 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 299-303
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      鼻腔内異物を疑われた小児の鼻腔内逆生歯 2 例を経験したので報告する.
      症例 1 は 6 歳の男児。鼻閉を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診した。右総鼻道に白色塊を認め,異物を疑われ摘出を試みられるも困難であった為,同日,当科紹介となった。全身麻酔下に摘出術を行った。白色塊は鼻腔底より肉芽組織を伴って突出しており,鉗子を用いて容易に摘出できた。歯根を伴った歯牙であった。
      症例 2 は 8 歳の男児。急性中耳炎にて近医耳鼻咽喉科を受診した際,左鼻腔内の白色塊を指摘された。鼻腔内異物を疑われ摘出を試みられるも困難であった為,当科紹介された。左総鼻道に固い白色塊を認め,先端は下鼻甲介に刺入していた。全身麻酔下に摘出術を行った。鉗子を用いて容易に摘出できた。犬歯状の歯根を伴った歯牙であった。
      2 例とも萌出歯は過剰歯であった。小児の場合,鼻腔内逆生歯は鼻腔内異物を疑われる可能性があり,念頭に入れるべき疾患であると考えられた。
  • 佐久間 直子, 南部 多加子, 小河原 昇, 佃 守
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 304-307
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      当科で過去10年間に施行した気管切開術症例95例の検討を行った。手術施行時年齢の年代分布は 0 歳児が54例を占めていた。原疾患は,気管気管支軟化症,声門下狭窄,神経疾患の症例が多かった。約半数で気管カニューレ抜去のためには,外科的治療が必要であった。気管カニューレ抜去可能例の割合は全体では35%であったが,歩行可能程度以上の運動能力がある生存例のみでは82%と増加した。また,気管カニューレ抜去不可能であった生存例の中で,歩行ができない例は82%であった。このことより,歩行程度の運動能力がない例の気管カニューレの抜去は難しい傾向にあると考えられた。
  • 宇野 芳史
    原稿種別: 原著論文
    2009 年 30 巻 3 号 p. 308-320
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
      2003年から2007年に当院を受診した小児上気道感染症患児の鼻咽腔から検出された Haemophilus influenzae 5297株を対象に薬剤感受性および耐性率について検討を行った。H. influenzae の Ampicillin に対する薬剤感受性の変化は,いずれの年度も 2 峰性のピークを示していたが,ピークの位置は各年度で異なっていた。耐性率では BLNAS, low BLNAR, BLNAR, BLPAR 毎の割合で検討してみると,2003年には,BLNAS の割合が約55%であったものが,2005年以降は70%を超えるところまで回復,特に2006年には85%近くにまで回復していた。ただ,2007年にはそれまでの年度と比べ BLPAR の割合が10%を超えるところまで増加していた。また,逆に low BLNAR と BLNAR を加えた割合は2004年には45%を超えるところまで増加していたが,2007年には10%前後にまで減少していた。PBP 遺伝子の変異について検討を行うと,2003年のみいずれの遺伝子も変異していない株が最も多く認められたが,その後の年度は pbp3–1, 2 の両 PBP 遺伝子とも変異している株が最も多く認められた。また,TEM 型遺伝子の出現と pbp3–1, 2 の両 PBP 遺伝子の変異が認められた株は年度を追う毎に増加していた。耐性率を gBLNAS, glow BLNAR, gBLNAR, gBLPAR, glow BLPACR, gBLPACR 毎の割合で検討してみると,gBLNAS と glow BLNAR の割合は徐々に低下しており,逆に gBLNAR の割合は2003年から2007年にかけて倍近く増加していた。TEM 型遺伝子を持つ gBLPAR, glow BLPACR, gBLPACR を合わせた割合は2007年には2003年の約 2 倍以上に増加していた。しかし,薬剤感受性による耐性率の分類と遺伝子変異による耐性率の分類との間に乖離があり,今後検討を要するものと考えられた。
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