小児耳鼻咽喉科
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34 巻, 3 号
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第8回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
会長講演
  • 荒川 浩一
    原稿種別: 会長講演
    2013 年 34 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      アレルギー疾患の発症・増悪因子を解明することは,発症予防および難治化を防ぐうえで重要である。気管支喘息の発症に関わる候補遺伝子はこれまで多数報告されている。我々も,Th2 サイトカインである IL–4 や IL–13の細胞内信号伝達因子である STAT6 の GT リピートに関する多型を報告した。しかしながら,多因子疾患では環境要因との関わりを直接結びつけることは難しい。そこで,後天的に遺伝子修飾を変え,転写を制御する機構であるエピジェネティクスに注目し,IL–12プロモーターの DNA メチル化に関して検討し,その一部を報告した。一方,臨床的に発症要因を検討する手段として出生コホート研究が重要である。前橋市で実施しているコホート調査は 6 年目の解析が終了し興味深い結果が出ている。会長講演では,これらのデータを交えてアレルギー疾患の発症因子について言及した。
特別講演2
  • 中川 信子
    原稿種別: 特別講演
    2013 年 34 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      1 歳—3 歳時期のことばの遅れは,障害に由来する場合も,生理的な個人差による場合もあって,判別は困難である。
      ことばや発達の遅れの可能性のある児については①聴力 ②理解 ③対人関係・コミュニケーション ④こだわりの有無 ⑤落ち着きのなさ などに焦点をあてて観察する。
      乳幼児期には,訓練的なかかわりによって言語発達を促進することは困難であり,からだ,こころを含めた全体発達の中で考えてゆく必要がある。ことばの遅い子の保護者は焦って教え込みに走りがちだが,毎日の生活体験の中から分かることをふやすようなかかわり,いっしょに楽しく遊ぶ中でのコミュニケーションの改善,特に,感覚統合的な視点からのからだを使った遊びを提案する。
      また,乳幼児期から親子でしっかり目を合わせ,共同注意の成立を図るかかわりが大切である。
ミート ザ エキスパート 1
  • 氷見 徹夫, 高野 賢一, 山下 恵司, 小笠原 徳子, 正木 智之, 小幡 和史, 堤 裕幸, 小島 隆, 一宮 慎吾, 澤田 典均, 横 ...
    原稿種別: ミート ザ エキスパート
    2013 年 34 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      粘膜防御機構は自然免疫の最前線であり,上皮細胞に加えて免疫系細胞などを含む複合的なシステムで構築されている。耳鼻咽喉科領域では扁桃・アデノイドに代表される粘膜関連リンパ装置は,その抗原捕捉機構を駆使して,免疫記憶の形成と特異的抗体産生機構に関与している。一方,上気道の最前線である鼻粘膜もまた抗原捕捉に伴う免疫反応を行っているとともに,ウイルス・細菌感染やアレルギー炎症の場としても重要である。われわれは,扁桃やアデノイド,そして鼻粘膜の上皮についての研究を行い,機械的バリアを含む自然免疫の新しい概念を提唱してきた。ここでは,われわれの研究より得られた知見をもとに,扁桃,鼻粘膜の基本的な免疫臓器としての機能解析と,それぞれの類似性・相違性,自然免疫・獲得免疫での位置づけについて言及する。
ミート ザ エキスパート 2
シンポジウム 1―プライマリー医が悩む小児気道症状
  • 湯田 厚司
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 252-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      小児(特に未就学児)アレルギー性鼻炎の鼻視診には工夫を要する。耳鏡での診察や小児吸引管の使用も有用である。鼻汁は感染性鼻副鼻腔炎を伴う例が多いので隠れたアレルギー性鼻炎を見逃さないことが重要であり,鼻汁スメアーを自ら検鏡すると有用である。最近になり治療薬は増加しているがまだ充分でなく,問題点も多い。剤型,適応年齢での制限があり,錠剤は 7 歳以上からの適応となる。用量は体重換算と年齢による規定のどちらかであり,年齢によって効果が不十分になる事もある。成人の鼻閉に効果的な抗ロイコトリエン薬は,小児での有効性が明確でない。また,抗ヒスタミン薬は服用法で影響を受け,食事や飲物が血中濃度に影響し得るが,周知されていない。新規治療として舌下免疫療法が保険適応になるが,小児での適応は先送りとなる。我々は小児スギ花粉症に舌下免疫療法を行っているが,効果は良好であり,今後の適応追加に期待したい。
  • 林 達哉
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      小児の睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の一番の特徴はアデノイドと口蓋扁桃肥大の関与が大きく,手術治療が非常に有効な点である。OSAS として矛盾のない症状に加えてアデノイドや口蓋扁桃肥大があり,睡眠時の呼吸障害が証明されれば手術の適応となる。OSAS 診断のゴールドスタンダードは睡眠ポリグラフ検査(PSG)だが,携帯型睡眠モニターも含めて施行困難例も多く,家庭での睡眠時ビデオ撮影が診断に役立つ。従来,アデノイド切除術がためらわれた 2 歳未満の低年齢小児に対し,内視鏡とマイクロデブリッダーを用いて安全に手術を行う事が可能となった。術後は成長曲線の正常化などの目に見える効果のほか,患者家族の満足度も高く,手術を必要とする患者全員に手術を受ける機会を届ける必要がある。
シンポジウム 2―難治小児疾患へのチャレンジ airway problem と嚥下障害
  • 守本 倫子, 益田 慎, 安岡 義人
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      小児の声門後部狭窄は,新生児期の挿管により後連合の瘢痕が披裂軟骨関節まで広がり,輪状披裂軟骨関節が固着し,一見声帯麻痺にみえるが,神経麻痺がなくとも声門開大制限が生じることで知られている。かつてはこうした小児声門後部狭窄症例に対して喉頭截開術による手術が行われたが,我々は小児に対してより侵襲が少ない手術として,内視鏡下に輪状軟骨後部の瘢痕部位を縦に切開し,軟骨を挿入する内視鏡下輪状後部形成術を施行した。瘢痕による声門部や関節の固着がとれて声帯運動が回復し,発声機能もほとんど低下は認められず,術後 1 年でカニューレ抜去が可能であった。本治療法は小児の喉頭に大きな侵襲を加えずにより自然な回復が期待できるものと考えられ,低年齢児に対しても広く応用が可能になることが期待できた。
  • 渡辺 美緒
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 268-272
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      神経・筋疾患患者において呼吸障害は患者の生命予後や日常生活に大きな影響を及ぼす。その病態は基礎疾患,年齢,合併症などにより様々であり,個人の病態に合わせた対応が必要である。特に小児の神経・筋疾患では,身体的発達や社会心理的発達にも影響し,呼吸状態の改善および安定化は延命という意味だけでなく,子どもたちの心身の成長発達を促し,彼らが生きる世界を広げることへ繋がる。そのため当院では多職種で連携し,早期からの介入を試みている。ここでは,神経・筋疾患の呼吸障害の病態と,当院における呼吸管理の取り組みについて述べる。
  • 森 正博
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      難治小児疾患へのチャレンジとして,嚥下障害への取り組みについて私の経験した 7 症例を報告し,課題や問題点について検討を加えた。症例 1 では不随運動,症例 2 では体力の消耗をそれぞれ軽減するため,口腔内処理が容易な食形態を選択する重要性を示した。舌突出嚥下に対する摂食介助として,症例 3 では下顎のコントロール,症例 4 ではコップの利用の有効性を示した。嚥下障害と呼吸障害との関連で,症例 5 では過開口時に鼻呼吸から口呼吸へ変化していることを確認した。過開口時の摂食介助において,呼吸に注意を払うことの重要性を示した。症例 6 では呼吸が最も楽な姿勢での摂食の重要性とその限界を示した。症例 7 では摂食中のけいれん発作と気管支喘息の存在が,嚥下時の危険性を高くしていることを示した。症例 6・7 の場合,胃瘻造設術や誤嚥防止術を選択する条件や時期について,早い時点から小児科主治医や家族と具体的に検討する必要がある。
シンポジウム 3―中耳炎に対する保存療法,手術療法の選択
  • 伊藤 真人
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 279-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      中耳炎には慢性中耳炎(化膿性中耳炎,真珠腫性中耳炎),滲出性中耳炎,急性中耳炎があるが,特に小児中耳炎の手術にあたっては,成人にはない問題点がいくつか挙げられる。本シンポジウムではそれら小児特有の注意点に配慮しながら,それぞれの中耳炎の手術適応について考察する。小児の慢性中耳炎では耳管機能の未熟さと,特に小児真珠腫手術では再発率の高さが問題となる。したがって,熟練した術者が術式を吟味して行なうべき手術である。私はどのような耳科手術においても,良好な視野で安全・確実な手術操作が重要であると考えている。小児の急性中耳炎の手術適応は,反復性中耳炎で保存的加療が無効であるときと,急性乳様突起炎などの合併症を来した場合である。2 歳を過ぎても急性中耳炎を繰り返す場合には,安易に反復性中耳炎と考えずに,先天性真珠腫などの他の中耳疾患や先天性免疫異常症が隠れていないか注意が必要である。
  • 金兼 弘和
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
シンポジウム 4―予防接種のインパクト
  • 石和田 稔彦
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      小児に細菌性髄膜炎を惹起する 2 大原因菌は,インフルエンザ菌 b 型(Hib)と肺炎球菌である。また,Hib は急性喉頭蓋炎の主要な原因菌でもある。Hib,肺炎球菌による感染症を予防するワクチンは,世界中の国々で使用され劇的な効果をあげている。一方,日本においては2008年12月から Hib ワクチンが,2010年 2 月から 7 価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が使用可能となった。Hib ワクチン,PCV7 は,当初任意接種ワクチンとして導入されたが接種率が低く十分な予防効果が認められていなかった。しかし,2011年になり,全国的に公費助成が受けられる体制が出来たことから接種率が上昇し,髄膜炎をはじめとする重症感染症が全国的に減少している。今年両ワクチンが定期接種化されることで,更なる効果が期待される。今後ワクチンの有効性を正しく評価するためには,正確な罹患率調査と分離菌の莢膜型別解析が重要な課題である。
  • 齋藤 昭彦
    原稿種別: シンポジウム
    2013 年 34 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      2008年以降,国内には 8 つの新しいワクチンが導入され,乳幼児期の予防接種スケジュールは,過密を極めている。ワクチンで予防できる疾患(VPD : Vaccine Preventable Diseases)が増え,国内で接種できるワクチンが増えてきた。また,2013年 4 月には,ヒブワクチン,肺炎球菌ワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチンの 3 つのワクチンが,任意接種のワクチンから定期接種のワクチンへ変更された。これらの新しい動きは,日本の予防接種制度の歴史の中でも画期的なことであり,ワクチンギャップを埋める大きな動きであることに間違いない。しかしながら,その具体的な接種方法に関しては,様々な問題点が出てきている。すなわち,元来存在する予防接種制度が,その速い流れに追いついていない現状がある。例えば,水痘ワクチン,おたふくかぜワクチン,B 型肝炎ワクチンなどは,未だに任意接種のワクチンであり,接種する場合には,費用負担が極めて大きい。また,国際的に標準的な医療行為である同時接種が十分に普及していない現状がある。更には,接種部位と接種方法,異なるワクチンの接種間隔,予防接種に関する教育,そして,予防接種の諮問委員会のあり方など,課題は多い。実際の接種をできるだけ実行可能とするために,日本小児科学会は,同時接種に関する考え方,学会推奨のスケジュールを提示したが,その普及にはまだ多くの解決しなくてはいけない課題が存在する。
      予防接種の最終的な目的は,予防接種を早期に行い,子どもたちを VPD から守ることである。これを可能にするためには,医療関係者の予防接種に対する正しい理解が必要であり,同時に,予防接種制度の更なる改革が必要である。
ランチョンセミナー 1―小児急性中耳炎・鼻副鼻腔炎診療ガイドライン
  • 尾内 一信
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2013 年 34 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      近年,市中感染症の原因菌の耐性菌が増加し憂慮される。一方,新規抗菌薬は,今後あまり期待できない。急性中耳炎や急性副鼻腔炎の治療においても,不必要な抗菌薬は極力使用せず,抗菌薬が必要な場合にはガイドラインなどを活用し PK/PD に基づいた有効な治療法(高用量)を心掛けて抗菌薬の適正使用に努めることが重要である。
  • 工藤 典代
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2013 年 34 巻 3 号 p. 306-311
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      小児急性中耳炎と急性鼻副鼻腔炎はともに急性上気道炎に属する感染症である。両疾患の診療には感染症としての考え方に共通点がある,細菌が起炎病原体の場合の抗菌薬治療も同様である。両疾患とも肺炎球菌とインフルエンザ菌が 2 大起炎菌であり,2 菌種ともに薬剤耐性化が進んでいる。両疾患の診療ガイドラインには,さらに耐性化が進まないよう,エビデンスに基づいた抗菌薬治療が推奨されている。治療の流れは,臨床症状と局所所見から軽症・中等症・重症の 3 段階に分類し,ウイルス感染が疑われる軽症例の第一段階では抗菌薬非投与で経過観察とする。細菌感染症の場合は AMPC を第一選択薬とする。耳処置や鼻処置に関してのエビデンスは乏しいが,臨床医の経験からこれらの処置は重要と考えている。診療ガイドラインは診療を拘束するものではなく,診療にあたり臨床的判断を支援するためのものであり,活用されることを願っている。
ランチョンセミナー 2―小児難聴,人工内耳
  • 加我 君孝
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2013 年 34 巻 3 号 p. 312-319
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      新生児聴覚スクリーニングは,欧米だけでなく世界各国で実施されるようになり,わが国では約10年が過ぎた。各国の現在の状況はそれぞれ異なる。しかし共通した問題は,先進国においても聴覚口話法の教育施設が不足していることにある。この点はわが国も同様で,早期発見されても療育の体制が不十分であること,さらに新生児聴覚スクリーニングの実施率が約60%に過ぎないことが大きな問題である。この問題の解決のためには公費で全出生児の新生児聴覚スクリーニングを実施する他選択肢はない。
  • 竹澤 公美子
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2013 年 34 巻 3 号 p. 320-325
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      筆者は 2 歳時に原因不明の両側高度感音難聴になり,幼少期から補聴器と読唇,口話,筆談を主なコミュニケーション手段として活用してきた。それらの方法は遊びの中から習得し,また読書の習慣により語彙が増えた。幼稚園から高校まで普通校に通い,2001年に医学部に入学した。大学 2 年の後期から講義の内容を理解することが困難になったため,2003年に右人工内耳埋込術を受けた。まず音が入るようになり,次に言葉が,そして会話が理解できるようになった。それには長期間を要し,今でも十分な聞こえであるとは言えない。しかし,聞こえそのものの獲得はもちろん,コミュニケーションの方法が広がり,会話を楽しむことができるようになったこと,そして何よりも社会の中の自分という視点を得ることができるようになった。幼少期に失聴し,長い失聴期間を経て人工内耳を装用した耳鼻咽喉科医として,経験を報告する。
ランチョンセミナー 3―アレルギー性鼻炎
市民公開講座―子どもの鼻炎と中耳炎
原著
  • 千田 いづみ, 島田 亜紀, 宇高 二良, 佐藤 公美, 長嶋 比奈美, 武田 憲昭
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      新生児聴覚スクリーニングの実施率の低かった平成16年度に徳島県で出生した児の新生児聴覚スクリーニングの実施状況,両側難聴と診断された児の診断に至った経緯と 7 年間の経過を追跡調査した。平成16年度に徳島県で出生した新生児6493人のうち,2894人(45%)が新生児聴覚スクリーニングを受けたにすぎず,23人が refer と判定されたが,1 次精査機関を受診した児は12人のみであり,1 人が両側高度難聴と診断された。4 か月で補聴器を装用し,聴覚学習を開始した。ところが,新生児聴覚スクリーニングを受けて pass した児の中から 1 人が,2 歳11か月時に両側中等度難聴と診断され,進行性難聴が疑われた。一方,新生児聴覚スクリーニングを受けなかった3599人から,5 人が両側難聴と診断され,補聴器の装用開始は22か月から61か月であった。新生児聴覚スクリーニングの実施率の低い県の場合,難聴の早期診断ができず療育の遅れにつながると考えられた。
  • 今井 直子, 熊川 孝三, 安達 のどか, 浅沼 聡, 大橋 博文, 坂田 英明, 山岨 達也, 宇佐美 真一
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 3 号 p. 352-359
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    【目的と方法】
      先天性難聴の原因として最も頻度が高いのは GJB2 遺伝子変異であり,一般的に非進行性難聴を呈するとされる。今回我々は GJB2 変異97例について遺伝子型と難聴の進行の有無について検討した。
    【結果】
      遺伝子型は従来アジア人に多いとされている235 delC が最も多く,欧米人に多い35 delG は認められなかった。当初からの重度難聴例を除いた41例のうち,1 年以上の間隔で聴力が 2 回以上測定されている症例は32例であった。明らかな難聴の進行例は 1 例,進行疑い例は 3 例であったが,遺伝子型の特定の傾向は認められなかった。
    【結論】
      GJB2 変異においては難聴の進行は稀であり,進行性難聴を呈する特定の遺伝子型は指摘できなかった。しかし乳幼児では特に難聴の程度が言語発達に大きく影響を与えるため,GJB2 遺伝子変異例であっても稀に難聴が進行するということをふまえて注意深く難聴の経過を追う必要がある。
  • 小笠原 徳子, 高野 賢一, 阿部 亜由美, 才川 悦子, 海崎 文, 関 伸彦, 吉野 真代, 今野 綾美, 山内 誠, 新谷 朋子, 四 ...
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 3 号 p. 360-365
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      先天性小耳症は発生頻度の低い稀な先天奇形であるが,外表奇形として出生直後より認識され,聴力評価などで耳鼻咽喉科を初診することが多い。外表奇形に対する手術は本邦では形成外科で施行される。今回我々は当院形成外科にて耳介形成術を施行した患児73例に対して,外表奇形の分類,聴力評価,味覚障害の有無,顔面神経麻痺の評価,中耳・内耳奇形の有無について解析を行い,外表奇形とそれぞれの項目に関して比較検討をおこなった。さらに国内外における従来の報告と本解析に相違があるかを検討した。
      小耳症は,片側小耳症が90%をしめ,多くは外表奇形に対する治療が中心となる。しかしながら,聴力の継続的評価や真珠腫性中耳炎の早期発見,外耳道形成術,伝音再建の適応など耳鼻咽喉科医が把握,対応する事項の重要性が再認識された。
  • 坂井田 麻祐子
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 3 号 p. 366-370
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      ピーナッツなどの乾燥豆類による気道異物事故は,乳幼児に多く,毎年一定数起こっている。保護者への教育が肝要であるが,そもそも,保護者がどの程度気道異物の危険性を認識しているかを把握したいと考えた。2011年 6 月,ある幼稚園にて気道異物に関する講演会を行い,園児保護者46名に対し,気道異物に関する 7 項目のアンケートを実施し集計した。
      保護者の65.9%が「気道異物」という言葉を知っており,65.2%が,乾燥豆類は気道異物の原因となり危険だと認識していた。しかし,危険性を認識していた保護者の50%,危険性を認識していなかった保護者の75%が,子供に乾燥豆類を与えていた。講演終了後は,ほとんどの保護者が,乾燥豆類を与えないようにすると回答した。
      保護者への十分な教育によって気道異物事故が予防できる可能性がある。地域の耳鼻咽喉科医は,様々な形で乳幼児を持つ保護者に地道に啓発する責務があると考える。
  • 那須 隆, 小池 修治, 窪田 俊憲, 渡辺 知緒, 伊藤 吏, 欠畑 誠治
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
      2001年から2012年までに当科で気道管理に関わる手術治療を行った超重度身障児24例を対象に,治療の実態や特徴,問題点を検討した。気道管理に関わる手術を必要とする症例は,2 歳未満で全体の60%を占め,特に乳児の割合が多かった。手術内訳として気道確保を目的とするものが全体の約50%,誤嚥防止を目的とするものが約40%であった。誤嚥防止を目的とした症例の約 4 割に気管切開術が行われていた。経年的な脊柱変形の進行により誤嚥が出現する症例もあり,誤嚥防止手術を施行した症例の半数は学童期以降に行っていた。超重度障害児においては,細やかな術後管理が必要となる場合が多いことや,経年的な変化により新たに気管喉頭手術が必要となる可能性があり,小児科医と連携し適切な対応が取ることが重要であると考えられた。また,術式選択に当たっては,気道手術について十分な説明を行い患者家族の理解を促す必要があると考えられた。
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