2014年 2 月に日耳鼻福祉医療・乳幼児委員会より公表された小児人工内耳適応基準(2014)により手術適応年齢が 1 歳以上(体重 8 kg 以上)に引き下げられ,小児人工内耳手術の低年齢化が加速している。
個々の症例について,複数の聴力検査(COR, ABR. ASSR など)や,画像検査(CT, MRI)により手術時期を決定するが,画像検査では原因不明である例が多く,早期手術を躊躇してしまうことがある。
そこで,近年発達した難聴の遺伝学的検査による原因診断が有効と考えられている。原因遺伝子の診断率は35%程度と高率であり,原因遺伝子が同定されれば,今後,自然経過による改善の見込みはないと考えられる。また,遺伝子型から予想される臨床像(聴力像,発症年齢,難聴の進行性,内耳奇形の有無,随伴症状,人工内耳の効果など)が人工内耳手術の時期や,残存聴力活用型人工内耳(EAS)の選択,電極の長さの選択に有効であると考えられる。
このように,遺伝学的検査は手術適応や治療方針の決定に重要な情報を提供してくれる検査である。難聴の診断がついたら早めに検査を行い,検査結果に基づいた治療方針を決定するのが望ましいと思われる。
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