歯ブラシによる咽頭外傷から縦隔気腫を来たした1歳男児例を経験した。
歯ブラシをくわえたまま転倒し直後は経口摂取可能で出血もなかったが次第に活気が低下してきたため総合病院を受診した。喉頭内視鏡所見では上咽頭に血液付着するのみであったが,頸部単純CTにて咽頭後間隙から縦隔まで進展する気腫が認められたため当院へ転院となった。当院到着時は意識清明であり呼吸窮迫症状も認めなかったが,徐々に活気が低下してきた。全身状態のさらなる悪化や,啼泣による気腫拡大や気道狭窄を危惧し気管挿管を行った。直後に喉頭内視鏡を行ったところ,アデノイド直下の咽頭後壁の腫脹を認め数分の間に急激に喉頭浮腫が増強し声門が全く見えなくなった。鎮静・人工呼吸管理の上,抗菌薬による保存的加療を行い受傷後7日目に喉頭浮腫改善を確認し19日目に退院した。
小児の場合,軽症と思われる咽頭外傷においても重篤な状態に陥る危険性があり,特に縦隔気腫に至った症例は急激な呼吸状態悪化の可能性を念頭におき迅速に挿管管理が出来る体勢を整えておくべきと考えた。
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