小児耳鼻咽喉科
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34 巻, 1 号
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総説
  • 竹内 正人
    原稿種別: 総説
    2013 年 34 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      本稿では RSV の最近の話題として,まず疫学に関する最新の知見について述べる。次に現時点で唯一認可されている RSV 重症化予防薬である palivizumab に関する議論を整理し,近年の海外の動向について記述する。最後に RSV ワクチン開発の現況に関しての概説を行う。
  • 加藤 久美, 毛利 育子, 谷池 雅子
    原稿種別: 総説
    2013 年 34 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      小児の健やかな発育・発達のためには十分な睡眠が必要である。乳幼児期の睡眠不足は後の多動性や肥満に関連することが知られている。しかし,我が国の小児の睡眠時間は世界一短く,小児の睡眠が軽視されていると言わざるを得ない。また,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)やレストレスレッグズ症候群(RLS),ナルコレプシーなどの小児の睡眠関連疾患は小児の認知・行動面に影響を及ぼす場合があるが,決して稀な疾患でないにも関わらず,一般的には認知されていない現状があり,適切な治療を受けるのに年月を要するケースも珍しくない。年齢依存的に出現する症状や小児に特有の病態など,小児の睡眠関連病態は成人とは異なる点が多い。本稿では,小児の睡眠の重要性と主たる睡眠関連病態について,小児科の立場より解説する。
原著
  • 細川 久美子, 細川 誠二, 三澤 清, 三澤 由幾, 峯田 周幸
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      難聴児の早期発見法として新生児聴覚スクリーニングが普及し,1 歳 6 カ月児健康診査や 3 歳児健康診査が定着してきた。しかし,発見のタイミングやその後の療育および介入体制において,患児を取り巻く家庭環境や地域による格差という点が注目されてきている。今回,発見および診断が遅れた,先天性と思われる難聴児の 1 例を経験した。症例は13歳で,主訴は難聴の疑いであった。コミュニケーションの障害から時に問題行動を起こし,健診でも難聴を強く疑われていたにも関わらず,親の対応により放置されていた。両親と学校側の本児に対する障害への対応が出来ておらず,結局補聴器装用のみで経過観察されるという結果に至った。今後社会が多様化し,このような症例が増加する可能性があるため,医療者も家庭や学校への対応において注意が必要であると思われた。
  • 益田 慎, 長嶺 尚代, 福島 典之
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      読字困難あるいは書字困難から学習障碍へと発展する児を早期発見することを目的としたスクリーニング検査を試作し,その精度について検証した。スクリーニング検査の構成はなぞり書き,図形のイメージの言語化,点図形模写,音韻分解,音韻抽出の 5 つの課題である。
      精度を確認するための検討対象は,当科でスクリーニング検査を 5 歳台で受け2009年から2012年の間に就学をした161例とした。読字習得を意図して半年学習をしても平仮名清音で構成された単語を読むことができなかった症例を読字習得困難例と定義した。書字習得を意図して半年学習をしても平仮名清音を書くことができなかった例を書字習得困難例とした。これらの定義にしたがって,24例の読字習得困難例と読字が可能であった116例を対比し,23例の書字習得困難例と書字が可能であった95例を対比することでスクリーニング検査の精度をそれぞれ検証した。
      その結果,読字習得困難例の検出にはスクリーニング検査の中で音韻抽出課題が特に有用と考えられた。実際の臨床場面では,このスクリーニング検査の結果に構音検査の結果などを加味し読字習得困難を予想することが現実的だと考えられた。一方,書字習得困難例の検出に本スクリーニング検査は実質的には有用ではないと思われた。
  • 冨山 道夫
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      伝染性単核球症に対するぺニシリン系抗菌薬(PCs)投与は高率に皮疹を生じるため禁忌である。一方細菌性急性咽頭・扁桃炎の主な起炎菌は A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)で,PCs が第一選択薬とされている。今回 A 群溶連菌感染症を合併した伝染性単核球症の 1 例を経験した。症例は 7 歳女児で咽頭痛,発熱を主訴に受診した。上咽頭,口蓋扁桃に白苔,発赤を認め A 群溶連菌迅速診断陽性であった。自動血球測定装置でリンパ球優位の白血球上昇がみられたため,肝機能検査,Epstein-Barr (EB)ウイルス抗体検査を行うとともに cefditoren pivoxil を投与した。細菌検査では上咽頭,口蓋扁桃より A 群溶連菌が 3+ 検出された。血液検査では肝機能低下,異型リンパ球,EB ウイルス感染を認め伝染性単核球症と診断された。治療後 3 日目に解熱した。A 群溶連菌迅速診断陽性の急性咽頭・扁桃炎に対する抗菌薬選択にあたり,白血球分画を測定する必要があると思われた。
  • 加藤 俊徳
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      受動喫煙は小児中耳炎の危険因子のひとつとされ,受動喫煙が中耳炎の発症,遷延化に関与するという研究は多数ある。しかしこれらの報告の多くは外国のもので,国内の文献の多くは外国の文献を参考にして,受動喫煙により中耳炎の発症,再発のリスクが増加するとしている。国内の耳鼻科医が中耳炎に対する受動喫煙の関与を検討した報告は見当たらない。そこで,小児中耳炎に対する受動喫煙の関与を検討した。
      その結果受動喫煙は小児中耳炎の遷延化に関与している可能性があり,母親より父親また父母以外の祖父とかの喫煙が関与していた。中耳炎児の診察において家族の喫煙状況を問診し,受動喫煙の危険性を説明することが必要である。
  • 林 達哉, 平田 結, 野村 研一郎, 岸部 幹, 高原 幹, 國部 勇, 片田 彰博, 原渕 保明
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      急性中耳炎と急性鼻副鼻腔炎に対するガイドラインの発表後,推奨抗菌薬の使用機会は相対的に増加した。この様な環境が抗菌薬の感受性に与える影響に注意を払う必要がある。
      北海道根室市立病院にて治療を受けた小児の上咽頭から分離された肺炎球菌,インフルエンザ菌に関して,ガイドライン推奨抗菌薬に対する MIC50 および MIC90(MIC : minimum inhibitory concentration)を指標として薬剤感受性の変化を比較した。
      肺炎球菌では MIC が悪化した薬剤は見られなかったが,インフルエンザ菌では2003年と2011年を比べるとアモキシシリンとセフカペンの MIC50 がそれぞれ 2 管悪化していた。アモキシシリンの悪化はアンピシリン耐性株(BLNAR など)の増加が関与したと考えられた。セフジトレンはセフェム系の中で最も処方機会が多いにも拘わらず,調査期間を通じて MIC 値の悪化を認めなかった。
  • 石野 岳志, 井門 謙太郎, 竹野 幸夫, 平川 勝洋
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      乳幼児血管腫は,自然縮小例が多いものの,時に,その存在部位により気道狭窄などが生じるために,早急な治療が必要となる。治療方法は,優れた有効性と低侵襲性を背景に,プロプラノロール投与による治療が第一選択となりつつあるが,本治療無効例も一部の報告で認められている。今回,我々は気道狭窄を呈する巨大舌下部乳幼児血管腫症例に対しプロプラノロール投与を行ったものの,治療効果が得られず,他の治療にて腫瘍縮小が得られた症例を経験した。症例は舌下部主体の巨大乳幼児血管腫でプロプラノロールおよびステロイド投与にて加療も腫瘍の増大が継続したため,治療開始 1 カ月の時点でビンクリスチンおよびステロイド投与を主体とした治療に切り替え,腫瘍縮小が得られた。巨大乳幼児血管腫では,プロプラノロール投与が無効となる可能性があるため,治療効果が不十分な場合には,他の治療方法を考慮する必要がある。
  • 丸中 秀格, 折田 頼尚
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      1 歳 6 カ月男児の左上顎骨に発生した歯原性粘液腫を経験した。粘液腫は良性の疾患であるが,病変の完全切除のために時には拡大切除を要する。今回は顎顔面の成長と術後の整容および機能を考慮して,上顎骨および上顎洞粘膜,眼窩下神経を温存した摘出・掻破術を行い順調な経過をたどった。本疾患において手術治療を行った国内最年少例として報告する。
  • 富澤 晃文, 佐久間 嘉子, 遠藤 まゆみ, 坂田 英明, 加我 君孝
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      0 歳代より補聴器装用を開始した乳幼児10名(良聴耳聴力レベル:50~100 dB)を対象に,0~3 歳代までの日常のきこえの発達を縦断的に評価した。対象児の補聴器の装用開始月齢は 3 カ月~10カ月まで分布し,1 名が 2 歳代で人工内耳に移行した。評価ツールとして,5 つの発達段階から構成される EASD(early auditory skill development for special populations)の表を日本語による 3 段階評定の質問紙に改変して使用した。全例に補聴器装用後に発達の追い上げがみられ,0 歳代にかけて前言語期にあたる発達段階 1~3 に到達した。言語期にあたる発達段階 4 以降では,正常範囲内の発達の者もいた一方で発達の個人差もみられはじめた。本質問紙による早期補聴後の追跡評価の意義,および発達の個人差を生む要因について考察した。
  • 長尾 明日香, 小森 正博, 池永 弘之, 西窪 加緒里, 弘瀬 かほり, 兵頭 政光
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      深頸部膿瘍は重篤な疾患で,特に小児においては集学的な治療が必要である。今回,それぞれ異なる部位に発生した小児深頸部膿瘍の 3 症例を報告する。症例 1:2 歳,男児。高熱と左頸部の腫脹と疼痛を主訴に当科受診。超音波・CT・MRI 検査により左副咽頭間隙膿瘍と診断した。頸部切開排膿を行い,良好な術後経過を得た。症例 2:5 歳,男児。高熱,左頸部痛,いびき,流涎を主訴に当科受診。CT 検査により左咽後膿瘍と診断した。経口的排膿手術と気道狭窄の可能性に対して術後 1 日間の気管挿管を行い,良好な結果を得た。症例 3:6 カ月,女児。左頸部腫脹を主訴に当科受診。症状出現の10日後に経皮的穿刺を行い,膿貯留を認めた。超音波・CT・MRI 検査により左耳下腺部膿瘍と診断した。左頸部切開排膿により軽快した。深頸部膿瘍に対しては早期の排膿処置と適切な抗菌薬治療が重要であり,乳幼児では気道管理にも配慮する必要がある。
  • 岩崎 麻衣子, 守本 倫子, 泰地 秀信
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      急性中耳炎から硬膜外膿瘍に至り,乳突洞から膿瘍腔を開放し得た 1 才 6 か月女児例を経験した。発熱と鼻漏を主訴に近医小児科を受診したところ,血液検査で炎症反応高値のため精査加療目的に入院となった。精査を進めたが原因が特定できず,入院 6 日目の頭部 CT で右後頭蓋窩に硬膜外膿瘍を認めたため,国立成育医療研究センター紹介となった。CT では右乳突洞に軟部陰影が充満し,急性中耳炎から乳突洞・乳突蜂巣経由で生じた硬膜外膿瘍と診断した。乳様突起削開術を行い,後頭蓋窩の硬膜外膿瘍を開放することができた。耳性頭蓋内合併症では CT による診断が有用で,後頭蓋窩の硬膜外膿瘍であれば乳突洞から開放し得ることがある。また本例では耳漏や耳後部腫脹などの耳症状がなく,診断まで時間を要した。乳幼児の原因不明の発熱では,急性中耳炎や乳様突起炎に伴う頭蓋内合併症もあり得る。早期診断と早期治療に努め,必要があれば速やかに外科的治療を行うことが望ましい。
  • 田中 学, 安達 のどか, 浅沼 聡, 坂田 英明, 加我 君孝
    原稿種別: 原著論文
    2013 年 34 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/06/17
    ジャーナル フリー
      乳児期あるいは小児期早期に発症した後天性顔面神経麻痺に関する報告は少ない.埼玉県立小児医療センター神経科を2002年からの10年間に受診した発症 2 歳未満の症例について,診療録を後方視的に調査した.検索条件を満たしたのは 7 例で,発症は 1 歳 0 カ月から 1 歳10カ月であった.麻痺の原因は単純ヘルペス感染,中耳炎および顔面打撲がそれぞれ 1 例ずつで,他の神経徴候との合併が 1 例,Bell 麻痺は 3 例であった.重症度評価は40点法を用いて行われたが,可能項目数は 3~6 であり,十分な評価とは言えなかった.乳児期症例にも適用できる評価法が望まれる.再発例を含む全例で90%以上の症状回復が得られたが,回復までの期間は 1 週間以内から 4 カ月までと様々であった.1 例を除く全例で,急性期にステロイド剤が投与された.ステロイド剤使用の是非に関する議論は未解決であるが,自験例では明らかな副作用なく治療を行えた.
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