小児耳鼻咽喉科
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41 巻, 3 号
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巻頭言
第15回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
臨床セミナー
  • 石川 浩太郎
    2020 年 41 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    難聴対策推進議員連盟の設立など,社会での難聴への注目が高まる中,原因診断としての難聴遺伝学的検査の重要性が注目され,日常診療に定着しつつある。先天性難聴の遺伝子診断は2012年から健康保険の対象となり,2015年から19遺伝子154変異の解析が可能となった。さらに若年発症型両側感音難聴の遺伝子診断も保険適応となっている。原因遺伝子変異が同定されることで,難聴の予後予測や介入方法の選択などで有益な情報が得られ,難聴を診療する上で有用なツールとなっている。一方,遺伝子治療は悪性腫瘍や神経疾患などではヒトへの応用が始まっているが,難聴は実験動物や培養細胞レベルの研究にとどまっている。しかし,研究成果には着実な進歩があり,今後,その発展が期待される。

  • 前田 貢作
    2020 年 41 巻 3 号 p. 254-258
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    1)気管狭窄症(Tracheal stenosis)

    保存的治療:狭窄の程度が軽く,呼吸症状が軽度な場合,去痰剤,気管支拡張薬,抗菌薬の投与にて経過観察する事が可能である。

    外科的治療:狭窄が気管全長の1/3までの症例では狭窄部を切除し端々吻合が可能である。それ以上の長さの狭窄では種々の気管形成術が行われている。狭窄部中央の気管を横断した後,側々吻合するスライド気管形成(slide tracheoplasty)が開発され,最近では術式の改良・工夫により次第に治療成績の向上が認められている。

    2)気管・気管支軟化症(Tracheobroncho malacia)

    治療:気管軟化症では,dying spellのある例や,気管挿管や人工呼吸管理から離脱できない例が外科的治療の適応となる。原疾患により治療法が異なるため,原因に合わせた治療法を選択する。

  • 菅 秀
    2020 年 41 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    細菌性髄膜炎,敗血症などの侵襲性細菌感染症は,小児における最も重篤な感染症の一つである。主要起因菌はインフルエンザ菌type bおよび肺炎球菌である。日本でもワクチン導入後,これらの細菌による侵襲性感染症は激減した。しかしながら,ワクチン非含有血清型の肺炎球菌による罹患率増加(血清型置換)が起こった。今後も病原体解析と全数サーベイランスを継続することが非常に重要である。血清型置換に対応可能な次世代型ワクチンの開発も待望される。

    ワクチン予防可能疾患の中で,国内外でまだ十分に制圧できていない疾患の一つが百日咳である。無細胞百日咳ワクチンにより患者数は大きく減少したが,近年では学童期以降の患者割合が増加し,依然として乳児重症例死亡例も報告されており,その対策は喫緊の課題である。学童期以降の追加接種,乳児に密接に接触する可能性のある成人,特に妊婦に対するワクチン接種を進めるべきである。

モーニングセミナー
  • 綾野 理加
    2020 年 41 巻 3 号 p. 264-267
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    歯科における小児の摂食嚥下障害への対応は,バンゲード法が本邦で紹介されたことに始まり,定型発達児の摂食機能の発達過程の解明が障害児の摂食嚥下障害の評価へとつながっていった。

    小児の摂食嚥下障害の原因疾患には未熟性,解剖的異常,中枢神経系の異常,全身状態によるもの,など多岐にわたる。疾患特有の摂食嚥下障害の症状はあるが,まず対象児の摂食機能が摂食機能の獲得段階のどこにあるかを評価することが重要である。そこから必要な食環境指導,食内容指導,機能訓練といった治療計画を立て摂食機能療法を実施する。

    成人と異なり臨床家の指示に従うことが困難な児が多いため,いわゆる訓練は受動的なものが多いが,児や保護者への負担にならずに日々継続しやすい内容をスモールステップごとに定め,再評価をし継続していく。機能を失った成人高齢者とは異なり機能を獲得するという考え方が基となるものが小児の摂食機能療法の特色であると考える。

ランチョンセミナー
  • 小林 泰輔, 弘瀬 かほり, 福永 一郎, 兵頭 政光
    2020 年 41 巻 3 号 p. 268-271
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    高知県では2016年度から,全額公費負担による新生児聴覚スクリーニングを開始した。同時にスクリーニングと精密聴力検査の結果の追跡が可能になった。2016年度から2018年度の新生児聴覚スクリーニングの受検者数は13,023人,受検率は92.4%であった。この間の新生児聴覚スクリーニングによる「要精密検査」児は98人,要精査率は0.75%であった。一側難聴は23人(出生数の0.12%),両側難聴は32人(出生数の0.16%)であった。現在は,各市町村と書面で直接連絡をとり,結果の集計とフォローアップを行っている。今後はフォローアップシステムをデジタル化するなどで,医療と行政の連携を強化し,あらたなフォローアップシステムの構築を検討しいく必要がある。

  • 池田 浩己
    2020 年 41 巻 3 号 p. 272-276
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    いまや国民病の一つともいえる鼻アレルギーの有病率は,2019年に50%に迫っておりなかでもスギ花粉症の有病率が急増している。鼻アレルギーの治療法として,患者とのコミュニケーション,抗原除去と回避,薬物療法,アレルゲン免疫療法(皮下・舌下),手術療法などが鼻アレルギー診療ガイドラインでも推奨されている。適切に鼻アレルギー治療を行うには,その原因を診断することが重要であるが,小児鼻アレルギーは患児の訴えが多岐に富んでおり,しばしば診断困難なケースも経験する。筆者は詳細な問診と,下鼻甲介粘膜や鼻汁の視診から概ね診断は可能と考える。検査は患児への侵襲を考え鼻汁好酸球検査を多用している。治療は投薬が中心であるが,手術加療や適応年齢が5歳に引き下がった舌下免疫療法も積極的に実施している。今回,小児鼻アレルギーについて,和歌山県下耳鼻咽喉科医師を対象に実施したアンケート結果もまじえて診断治療の現状を報告する。

  • 中野 貴司
    2020 年 41 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    おたふくかぜはムンプスウイルスによる全身感染症であり,無菌性髄膜炎や難聴をはじめとして合併症の多い疾患である。したがって予防することが望ましく,おたふくかぜワクチンは広く接種を促進してゆくことが大切と考えられる。かつてのMMRワクチンによる教訓も踏まえて,定期接種化に向けては弱毒生ワクチンの副反応リスクの評価が必要であり,現在も議論が継続されている。これまでに得られたエビデンスや審議の経緯,呈示された論点を考慮すると,以下の3点が重要と考えられる。①早期からの予防と高い接種率につながり,かつ副反応のリスクが低いと考えられる1歳での初回接種を推奨する。②無菌性髄膜炎の発症頻度に影響をおよぼす因子についての検討は継続する。③重篤な副反応の監視とリスクコミュニケーションに力を注ぐ。

  • 橋本 亜矢子
    2020 年 41 巻 3 号 p. 284-287
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    ムコ多糖症患者の診療には耳鼻咽喉科医が長期にわたり関わる必要があり,診断,診療に関わる事で,予後を改善させる事ができる疾患である。皆さんの日常診療とムコ多糖症患者とその家族の助けとなれば幸甚である。ムコ多糖症II型に対する治療としては対症療法として中耳炎に対する鼓膜換気チューブ留置術,気道狭窄に対するアデノイド切除,口蓋扁桃摘出術などがある。根治的治療としてイデュルスルファーゼ(エラプレース®)による酵素補充療法,造血幹細胞移植,頭蓋内酵素補充療法,などがあるが,早期に治療を開始する事でその症状の進行を抑える事が可能なため,より早期に診断をする事が重要である。また,手術,検査の際の全身麻酔においては気道管理,循環管理におけるリスクが高いため,熟練した麻酔科医の協力が必要不可欠である。また,症状が多岐に及ぶため,他科との連携も重要となる。

共通講習
  • 田内 久道
    2020 年 41 巻 3 号 p. 288-292
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    医療機関では数多くの患者を限られたスタッフが担当するため,常に院内感染が起こりやすい状態にある。そのような環境で院内感染を防止する最も有効な方法は適切な手指衛生である。院内のほとんどの病原微生物はヒトの手を介して広がっていくが,アルコールを用いたラビング法による手指衛生により日常診療で問題となる微生物の多くは死滅する。皮膚を貫いて行われる医療行為は常に感染の危険を伴うが,点滴はかなり危険な医療行為で,点滴ルートのどこかに微生物が混入すると,その微生物は患者の血管内から深部臓器まで直接流し込まれることになる。そのため点滴を扱うときは手指衛生に万全を期す必要がある。医療機関では環境が不潔で細菌が増殖している状況では患者の感染リスクは上昇する。環境菌をすべて取り除くことは不可能であるが,清潔な環境を保持するため水回りの環境整備とホコリをためない努力が必要である。

原著
  • 金丸 朝子, 吉冨 愛, 馬場 信太郎
    2020 年 41 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    口蓋扁桃摘出術は一定の頻度で術後出血を経験する。出血のリスクや出血時の状況を事前に本人,保護者へ伝えることは出血時のイメージを持ち有事に対応を行ったり,予防策を立てる上で有益である。我々は当院で2010年5月から2019年3月までに口蓋扁桃摘出術を施行した小児1469例に対して出血の契機や状況について検討を行った。術後出血は24例(1.63%)で認め,その内4例は全身麻酔下での止血術を要した。性別や年齢による出血率の有意差は認めなかった。術後1週間後が最も出血しやすく,58.3%の症例が就眠時に出血を認めており半数弱は出血前に咽頭痛を伴った。また運動後に出血した症例は認めなかった。術後に咽頭痛が悪化した場合は出血する可能性が上がるためより柔らかいものを摂取するなどの対応が求められる。

  • 坂井田 麻祐子
    2020 年 41 巻 3 号 p. 299-305
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    小児の気道異物事故の啓発には乳幼児定期健診の機会が有効である。健診に携わる三重県内全29市町の保健所所属保健師110名及び各市町保健所代表者29名に対し,気道異物の知識・健診時の啓発状況・啓発に関する要望などをアンケート調査した。各保健師への調査Aでは,気道異物の知識は豊富だが,誤飲の原因異物との混同が示唆される結果が得られた。健診時の啓発実施率は,窒息が58.2%,乾燥豆類による事故が34.5%と低率であった。一方,各市町保健所代表者への調査Bでの啓発実施率は窒息が69.0%,乾燥豆類による事故が51.7%で,ともに保健師より高率であり,実際の指導状況と異なっていた。保健師は気道異物を学習できる機会が非常に少ない(6.9%)上,新たな啓発ツールを希望していることが分かった。各保健所・保健師間での知識・啓発手段の統一,啓発ツール作成が必要であると考える。

  • 前田 稔彦, 前田 雅子, 西村 龍夫, 笠井 正志, 松元 加奈, 森田 邦彦, 矢野 寿一
    2020 年 41 巻 3 号 p. 306-312
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    2017年7月から2018年6月までの1年間にまえだ耳鼻咽喉科クリニックにて急性中耳炎と診断された小児(0~15歳,224例)を対象に,重症度と治療内容,および予後を後方視的に調査した。小児急性中耳炎診療ガイドライン2018に基づいた診断の結果,初診時の重症度は軽症79%,中等症17%,重症4%であった。軽症178例のうち,19例(11%)は前医で既に抗菌薬が処方されていたが,自院からの処方は13例(7%)であり,146例(82%)は抗菌薬を処方せず経過観察できた。抗菌薬の処方がなかった中で第2診目以降に抗菌薬を投与したのは6例(4%)であった。軽症例全体の88%で治癒を確認できた。

    耳鼻咽喉科診療所を受診する小児急性中耳炎の患児は軽症例が多数を占めることから,ガイドラインの重症度分類に基づいた治療を行うことで,不必要な抗菌薬の投与を減らすことにつながるものと考えられる。

  • 川島 佳代子, 山本 雅司, 奥野 未佳, 田中 久美, 亀田 誠
    2020 年 41 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    舌下免疫療法はその方法の正しい理解と,長期間の継続が求められる治療法であるが,小児患者に対しては,患児だけでなく保護者も一緒に取り組むことが求められる。今回,舌下免疫療法を希望する小児に対して,夏休み初期に舌下免疫療法初回集団投与の試みを行った。夏休みに施行することで,初期の副反応に対して自宅での観察が行いやすいことや,親子で毎日の服用習慣を確立できることを想定した。また多くの小児患者を効率的に,かつ十分に指導を行える方法として多職種による集団指導を取り入れた。保護者へのアンケート結果では集団指導について“よかった”“ややよかった”という回答が78%であり,良好な評価であった。2018年に集団でダニ舌下初回投与を行った小児の継続率は,個別にダニ舌下免疫を開始した小児と同様に高かった。多職種で取り組んだ小児に対する舌下免疫療法初回集団投与は効率的かつ有効な手段であると考えた。

症例報告
  • 細萱 理花, 大森 蕗恵, 青木 美紀, 鈴木 雅明
    2020 年 41 巻 3 号 p. 319-325
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    2005年に発達障害者支援法が施行され,吃音は精神障害者保健福祉手帳(以下,手帳)を取得する対象となった。従来,吃音者が手帳を申請希望する目的は成人吃音者が福祉的就労のために行うことがほとんどであった。しかし,今後,吃音者は成人だけでなく小児も手帳を取得し,就労目的だけではなく自分の障害を証明し各方面の支援を得やすくするために手帳を活用する可能性がある。症例は4歳男児。通園先の幼稚園で吃音に対する理解は低く,患児の母は吃音が障害として軽視されている印象を持っていた。母は吃音を障害として公的に証明し周囲の理解を得るために手帳申請の記載を医師に希望,手帳を申請し取得した。母の話では取得後は園で手帳を開示することで一定の配慮を認めるようになった。

    手帳申請時には医師の診断書記載が必須であり,吃音を診断する医師の役割が今後も重要であると考えられる。

  • 宮部 はるか, 鎌倉 武史, 廣瀬 正幸
    2020 年 41 巻 3 号 p. 326-331
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    鼻性眼窩内合併症は副鼻腔の炎症が眼窩内に波及し,視力障害などの眼症状を来たしうる疾患であり,とりわけ小児では迅速かつ適切な診断,治療が求められる。我々は眼窩下壁の一部骨欠損が原因と考えられた眼窩骨膜下膿瘍の8か月女児を経験したので報告する。患児はインフルエンザ罹患後に右眼瞼腫脹,眼球突出を認めたため当院眼科を受診した。明らかな視力低下は認めないものの,造影CT,MRIにて鼻性眼窩骨膜下膿瘍が疑われたため,当科を紹介受診した。全身麻酔下に緊急内視鏡下上顎洞開放術を施行し,下鼻道から対孔を作成,膿汁を吸引した。抗菌薬投与により炎症反応は軽快し,術後7日目に退院した。退院後も発熱時に眼瞼腫脹を認めた。眼窩骨膜下膿瘍の原因として,眼窩下壁の骨欠損が考えられたが,外傷,手術などの既往がないため先天的な欠損である可能性が考えられた。

  • 木下 慎吾, 稲木 勝英, 徳永 英吉
    2020 年 41 巻 3 号 p. 332-336
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

    ランゲルハンス細胞組織球症はまれな疾患で,臨床経過も多彩であることから,確定診断までに時間を要することも多い。

    今回われわれは,外来での外耳道生検で診断に至らず,全身麻酔下で乳突洞内の腫瘍性病変を生検することで,確定診断できた1歳男児の症例を経験したため報告する。

    乳突洞内の生検では,外耳道の生検と同様に壊死組織が中心で腫瘍病変の同定に苦慮した。壊死組織が多く含まれていたのは,側頭骨由来の病変本体が二次性変化を起こした結果と考察した。難治性外耳道炎で特に肉芽を伴う症例では,ランゲルハンス細胞組織球症を念頭におき,生検では腫瘍性病変を同定し,病理組織学的検査,特に免疫染色検査を行うことが重要である。

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