1969年4月から1980年6月までの約11年の太陽黒点周期にわたり,0.1nTの観測精度を有するプロトンデータを用いて水沢― 柿岡の地磁気全磁力地域差(以後GTFDと称す)の経年変動が次の外部磁場消去法により検出された. (1)Kp指数― 太陽黒点法 (2)外部磁場enm消去法 (1)の解析から,太陽黒点周期の影響によると思われる準二年変動が,11年黒点周期を消去した後のGTFDの経年変動中に見られる.準二年変動以外のGTFDの経年変動の位相型は1974年頃に極小の位相を示すが,これは鉛直分力の地域差の経年変動中にもみられる. 一般的に言えば,GTFDの経年変動中には,年変化,準二年変動及び不規変動がある.これらは夏至― 冬至間の磁気圏形成の変化,太陽黒点11年周期以外の太陽周期及びこれらの周期の複合周期か或はtectonomagneticな経年変動による影響にそれぞれ対応しているように思われる. 上記の結果を調査するため(2)の解析から,tectonomagnetismの影響によると思われる現象が,三陸及び館山の地殼変動観測所の歪データと比較しながら,1976年~1980年6月の期間で検出された.地殼変動がGTFDより約1.5ヶ月程先行するらしいということがわかった. 結論として,水沢― 柿岡のGTFDの経年変化は,太平洋プレートから受ける圧縮場によるtectonomagneticな効果として大部分説明できることが可能かも知れないということが示唆される.GTFDの微細構造の変化の起源は未だ確定してはいないが,大局的なGTFDの経年変動の速度勾配の変化と周波数変調が1974年後半部頃からわずかに見られる.
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